産業革命の光と影
翻訳家の山形浩生氏がエンゲルスの『イギリスの労働階級』の全訳をしたようで、ざっと読んでみると確かに読みやすく、少なくとも岩波文庫版よりは読みやすい。講談社学術文庫あたりに入れても良いかもしれない。
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20150616/1434432416
で、いうまでもなく、産業革命の全体像を知るためには、光り輝く産業化の最先端の英雄たちの姿を描くだけでも駄目だし、こういう劣悪なプロレタリアートの姿をを描くだけでも駄目で、両方をちゃんとバランスよく目配りしながら見ていかなくてはいけない。米倉誠一郎の『経営革命の構造』だけで分かった気になってはいけないし、エンゲルスだけでも片翼。
そしていうまでもなく、(山形氏自身だって本当はちゃんと分かっているように)『冨岡日記』だけで日本の産業化を語ってはいけないし、『女工哀史』だけでもいけないわけです。わかってないふりをしているのは、もろもろの事情があるからだと理解はしていますけどね。
最近何かと話題の明治日本の産業革命遺産も同じこと。資本家主導のイギリスでも、共産党主導のソビエトでも、どこでも産業化はすべて光と影がある。その総体が近代社会を作り上げてきたわけです。一番いけないのは、そういうそれ自体普遍性を持つ話に妙なナショナリズムを注入することでしょう。
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