上司の不適切な仕事の振り方が部署の業績や部下の成長に与える影響
リクルートワークス研究所の『Works Review Vol.10』にいろんな論文が載っていますが、タイトルに目をひきつけられたのがこれです。
http://www.works-i.com/research/works-review/r010.html
http://www.works-i.com/pdf/150603_WR10_10.pdf(上司の不適切な仕事の振り方が部署の業績や部下の成長に与える影響 by 萩原牧子)
本稿では,「些末なことにこだわり仕事量を増やす」「部下に思いつきの仕事を指示する」といった一見すると不適切に思える上司の仕事の振り方が,部署の業績や部下の成長に与える影響について検証した。分析の結果,単独ではマイナスの効果となるこれらの仕事の振り方は,上司のふだんの指導タイプ(PM の組み合わせ)と組み合わさると,そのマイナスの効果がほとんど見出されないことが明らかになった。不適切な仕事を振ることによる効果は,上司のふだんの指導タイプによって再解釈される可能性がある。
「些末なことにこだわり仕事量を増やす」「部下に思いつきの仕事を指示する」ような困ったちゃん管理職がいると、当然組織や部下に悪影響を与えるはずだと思われるのですがそうでもない、と。
その理由について、最後のところでこう推測していますが、
これは,不適切な仕事の振り方をされても,部下がふだんの上司の指示の在り方に従って仕事を進めることで,不適切な仕事の指示でも再解釈や方向転換がなされるのかもしれない。
自分の職場のだれかれを思い浮かべながら、確かにそうだよなあ、と思う人も多いかもしれませんが、しかし、ここで忘れられているのは組織や部下への悪影響の有無よりはむしろ、当該その上司への悪影響ではないでしょうか。
つまり、「些末なことにこだわり仕事量を増やす」「部下に思いつきの仕事を指示する」ような本来間違った、悪影響が出て本人の指導力が適切に批判されなければならないにもかかわらず、それが結果的にうまくいってしまうことで、当該その上司やその上司を評価するさらに上のクラスの人々が、当該その上司の指示が適切であったと認識してしまい、その認識が維持されたまま、当該その上司がさらに上位に昇進してしまい、そこでも同じように、「些末なことにこだわり仕事量を増やす」「部下に思いつきの仕事を指示する」やり方をし続けながらも、同じように「部下がふだんの上司の指示の在り方に従って仕事を進めることで,不適切な仕事の指示でも再解釈や方向転換がなされ」ることで、そのやり方が修正されることがないままきてしまい、終にトップに上り詰めてしまう・・・・・・ということもありうるわけです。
そうなったころに、当該その上司が日本的なおみこしではだめだ、欧米型のトップダウンでなくちゃ、と妙に意気込んで、中身は同じままリーダーシップを発揮しだしたりしたら、結構目も当てられない状況になったりするかもしれません。
日本的な「変な指示はやりすごし」ながら、部下が適切に再解釈や方向転換することを通じて結果的にうまくやっていくという絶妙なフレクシビリティの持つ、見えにくい弊害がここにあるような気がします。
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