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2015年6月 8日 (月)

「日本型雇用システムと職業教育の逆説」@『産業と教育』6月号

Img_contents_01「文部科学省の全面的な編集協力のもとに発行している産業教育振興中央会の機関誌」である『産業と教育』2015年6月号が、「学校から社会・職業への円滑な移行」という特集を組んでいて、その巻頭論説に「日本型雇用システムと職業教育の逆説」を寄稿しました(左の表紙は今号ではありません)。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/sanshin1506.html

前半から真ん中までは今までの概説ですが、最後の2節で若干今日的話題に棹さしております。

1 日本型雇用システムの構造
2 日本型雇用システムと企業内教育訓練システム
3 公的教育訓練システムの低い位置づけ
4 公的教育訓練システム中心の構想
5 企業内教育訓練体制の確立
6 職業指向型教育システムに向けて

7 普通高校と専門高校の逆転

 一方、職業教育の意義が高まってくる時代とは、普通高校の存在意義が改めて問われる時代でもある。フリーターやニートを生み出しているのはむしろ普通高校である。
 今日の状況を鮮やかにえぐり出しているものに、『教育社会学研究』第92号(2013年8月)に掲載された児美川孝一郎「教育困難校におけるキャリア支援の現状と課題」という論文がある。これは、なにかと問題の多い大阪の偏差値の低い高校「教育困難校」3校を取り上げて、その状況や取り組みを述べているのであるが、職業的レリバンスがない高校ほどほどひどい状態になっているという結果が示されている。
 最初の普通科X校は、偏差値36である。尼崎に近いところのようで、ずっと定員割れが続き、入学者の半分しか卒業に至らず、卒業者の半分がなんとか就職にこぎ着ける。先生方は丁寧な寄り添うような進路指導をするのだが、いわゆる「荒れた学校」で、授業が成立しないような生徒たちに履歴書を書かせるので精一杯であり、その困難はきわまる。
 次の工業科Y校は、偏差値37である。中小企業集積地とあるので東大阪であろう。偏差値はX校と大して変わらないが、入試倍率は1倍を下回ることはなく、就職実績は遙かに高い。約3割は工学系の大学や専門学校に進学し、7割が就職するがすべて正規雇用で、大手・中堅も多い。
 非常に面白いのがY校と同じ地域にある普通科Z校であり、偏差値37である。X校同様の「荒れた学校」として「Z校に行っているなんて、とても言えない」ような状況だったが、地元密着の学校づくりを目指し、普通科高校でありながら2年次から専門コースを設け、週1回インターンシップに行かせるなどしたところ、その評判は「見違えるくらい変わった」という。
 というとZ校の成功物語のようであるが、実はよくなったのは専門コースだけである。そして、2013年度からこの専門コースを総合学科として独立させることになっていて、取り残された普通コースは依然として「困難校」のままである。同じ偏差値なら普通科に行くより専門高校に行く方がはるかに人生の未来が開かれるというこの現実を、しかし普通科進学が議論の余地なき「善」であった時代に青年期を過ごした世代の親たちは、必ずしもよく知らないまま子供たちの進路を左右しているのではなかろうか。

8 動き出した専門大学構想

 そして、存在意義が問われているのは大学も同様である。今日大学進学率が5割を超え、能力不足ゆえに進学できない者はほとんどいなくなってきた。大学は、「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥を極めて、文化の進展に寄与する」という建前と、現実の就職先で求められる職業能力とのギャップをどう埋めるのかという課題に直面している。
 既に2011年1月に中央教育審議会が文部科学大臣に答申した『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』では、高等教育レベルにおける「職業実践的な教育に特化した枠組み」の創設が提起されていた。もっともその後、文部科学省では専修学校の枠内に「職業実践専門課程」を設けるということに矮小化されてしまった。
 ようやく昨年7月になって、官邸に設置された教育再生実行会議が「今後の学制等の在り方について」という第5次提言を出し、その中で「実践的な職業教育を行う高等教育機関を制度化する」と、再び政策課題として提起された。そしてそれを受けて、文部科学省の有識者会議で本格的に、「大学」という枠組みの中で実践的な職業教育機関をどう作っていくかという議論が始まった。
 世間では冨山和彦氏によるG型大学、L型大学論ばかりが面白おかしく取り上げられ、誤解に満ちた反応も多かったが、今年3月に取りまとめられた「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の在り方について(審議のまとめ)」では、かなり明確な方向付けがされている。ここでは大学の一類型として位置づけることを想定し、「専門職業大学」「専門職大学」という名称が想定されている。産業界のニーズへの対応を重視することから、「企業等の参画を得ながら教育の質を確保できる体制やプロセス」の確立が提起され、具体的には、教育内容については教育課程編成へ企業等が参画することが、教員の一定割合については各職業分野において卓越した実績を伴う実務経験を有する者(実務家教員)を配置することが義務づけられている。
 日本型雇用システムを暗黙の前提とした普通科万能、職業教育否定の感覚が、いよいよ高等教育レベルでも追い詰められてきている時代と言えよう。

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