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2015年5月

2015年5月31日 (日)

反トラスト法のビューティフルなマインド?

わたくしは無知な人間で、アメリカ労働史の一応の知識があるのと、ナッシュについてはナサーの『ビューティフル・マインド』を一遍読んだだけでしかないのですが、それにしてもこれを見て、頭にはてなマークが点灯する程度の知識はあります。

https://twitter.com/yagiyagi0419/status/602649696213929984

ナッシュ均衡が反トラスト法の元である事は日本ではあまり知られていませんね。アダムスミスを否定し「個々人が自己の利益のみ追求しても、全体の利益は促進されない」=全体の便益を同時に達成する事こそが経済発展になる。彼の死はとても象徴的に思えます。May he rest in piece

反トラスト法については、

http://www.jil.go.jp/institute/rodo/2013/documents/010.pdf (『団結と参加-労使関係法政策の近現代史』)

Danketu 第8章 アメリカ*1

1 労働差止命令とシャーマン法

 アメリカでは団結禁止立法は制定されませんでしたが、コモンローの下でまず刑事共謀の法理が、次いで民事共謀の法理が労働者の団結に適用され、19世紀を通じて労働運動に打撃を与えました。

 賃金の増額を要求する靴職人の団結に初めて刑事共謀法理を適用したのが1806年のフィラデルフィア製靴工事件判決です。これが1842年のハント事件判決により変更された後、労働組合運動を抑圧するために用いられたのが労働差止命令(レイバー・インジャンクション)であり、その根拠として発動されたのが1890年の反トラスト法(シャーマン法)でした。

 差止命令とは衡平法(エクイティ)上の救済方法で、コモンロー上の損害賠償では十分な救済が得られない場合に、契約内容の履行を命じたり一定の行為を禁ずるものです。一方、シャーマン法は企業の独占を排除し、取引の自由を確保するために、州際通商を制限する一切の契約、トラスト等の団結や共謀を不法とし、刑罰、差止命令、さらに損害額の3倍の賠償請求権の対象としたものです。シャーマン法の審議の過程では、労働組合を適用除外するという修正が盛り込まれていたのですが、最終的に脱落してしまいました。

 シャーマン法は施行後労働組合にも適用されるようになり、1908年のダンベリー帽子工事件判決で連邦最高裁もこれを認めました。こうして労働組合による「取引を阻害する共謀」は差止命令や3倍額賠償の対象となりました。

2 クレイトン法

 労働組合の20年余の立法闘争の結果、民主党のウィルソン大統領の下で、1914年10月にクレイトン法が制定されました。同法は「人間労働は商品または商業の目的物ではない。反トラスト法のいかなる規定も、相互扶助の目的で設立され資本を有さずまたは営利行為をしない労働団体の存在及び活動を禁止し、または労働団体の構成員が当該団体の正当な目的を合法的に遂行することを禁止・制限するものと解釈すべきでなく、さらにかかる団体またはその構成員が反トラスト法の下における不法な団結または取引を制限する共謀であると解釈されてはならない」(第6条)と宣言し、さらに第20条では平和的争議行為の類型を列挙してそれらの行為に差止命令を発してはならないと規定しました。同法に対し、アメリカ労働総同盟(AFL)のゴンパース会長は「労働者のマグナカルタ」と絶賛しました。

 ところが連邦最高裁はその期待を裏切り、1921年のデュプレックス事件判決は同情ストに対する差止命令の発出を認めました。さらに悪いことに、クレイトン法16条は「何人も反トラスト法の違反による損害を受けるおそれがあるときは差止命令を請求する権利がある」と規定していたために、以前は検事しか請求できなかった差止命令を使用者が活用することができるようになったのです。

 この労働差止命令の頻発を食い止める立法は、1932年のノリス・ラガーディア法によってようやく成立します。

ナッシュについては、

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89-%E5%A4%A9%E6%89%8D%E6%95%B0%E5%AD%A6%E8%80%85%E3%81%AE%E7%B5%B6%E6%9C%9B%E3%81%A8%E5%A5%87%E8%B7%A1-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%83%8A%E3%82%B5%E3%83%BC-%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2/dp/4102184414/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1433045266&sr=8-2&keywords=%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89

Nash 恐るべき早熟な頭脳を持ち、21歳のときに経済学に革命的進歩をもたらすゲーム理論を打ち立てながら、統合失調症を発病。入退院を繰り返して30年以上の闘病生活を送った後に、奇跡的な回復を遂げてノーベル経済学賞に輝いた数学者ジョン・ナッシュ。綿密な取材をもとに心を病んだ天才の劇的人生に光をあて、人間存在の深淵と生きることの美しさを描いた感動のノンフィクション。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5

ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニアJohn Forbes Nash, Jr. 1928年6月13日 - 2015年5月23日[1]

1928年に生まれたナッシュが、1950年頃に20歳そこそこで作り出したナッシュ均衡理論が、19世紀末から20世紀初め頃に反トラスト法という形になって、労働組合を痛めつけたというのは、大変素晴らしい歴史像ではあります。若干順序が合わない気もしますが。

実はちょうど今、AFLの創始者サミュエル・ゴンパースの自叙伝を再読しているところで、しかもちょうど立法をめぐる運動でクレイトン法にかかるところ(下巻の360ページあたり)を読んでいるところで、こんなツイートが眼に入ってきてしまったので、余計なこととは思いながら、ついつい一言申し上げてしまいました。

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2015年5月30日 (土)

『企業・事業所レベルにおける集団的労使関係システム(ドイツ編)』

Yamamoto JILPTの山本陽大研究員による報告書『企業・事業所レベルにおける集団的労使関係システム(ドイツ編)』がアップされました。

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2015/0177.html

前の『現代先進諸国の労働協約システム―ドイツ・フランスの産業別協約(ドイツ編』に引き続き、事業所協定と企業別労働協約について詳しく検討しています。

下に要約を転記しておきますが、事業所協定についても、企業別労働協約についても、喧伝されるほどの「分権化」についてはやや否定的な認識が示されています。

本報告書には、もう一つ、近年のドイツの法政策の動きについてのかなり詳しい解説が載っています。法定最低賃金、一般的拘束力制度、そして先日本ブログでも取り上げた協約単一原則の立法化といったトピックが取り上げられていて、大変勉強になります。

Ⅰ.ドイツにおける事業所内労使関係システムの現状

まず本報告書の第一章においては、ドイツにおける事業所内労使関係を支える事業所組織法上の規制内容について概観したうえで、かかる労使関係の担い手であるところの事業所委員会(Betriebsrat)の組織運営、事業所内労働条件決定、および産別協約が定める開放条項の利用の実態について、筆者が2013年の7月および9月にヒアリング調査を行った、金属電機産業に属するC社A事業所およびD社B事業所における事業所委員会を採り上げ、検討を行った。

(1)事業所組織法に基づく事業所委員会の労働条件規整権限

それによればまず、ドイツの二元的労使関係システムのもとでは、事業所内の民主的選挙手続に基づく従業員代表機関である事業所委員会に対しても、事業所組織法に基づいて共同決定権が付与され、労働関係に対する規範設定(集団的労働条件決定)を行うことが可能となっている。特に、事業所内秩序や労働時間の配分等のいわゆる社会的事項(事業所組織法87条1項)に関する規整に関しては、事業所委員会には同意権としての共同決定権が付与され、使用者と完全に同権的な地位に位置付けられており、かかる事項については、使用者は一方的な決定を行うことはできないこととされている。そのうえで、共同決定の対象事項について、使用者と事業所委員会との間で合意に至った場合には、事業所協定が締結され、かかる事業所協定は当該事業所に属する全ての労働者に対して、規範的効力をもって適用されることとなっている。

(2)労働組合との関係

もっとも、ドイツにおいては憲法上(基本法9条3項)、労働組合こそが労働者代表の中心に位置付けられていることから、事業所委員会が労働組合、特に産業別労働組合の企業横断的な労働条件規整力を侵食することのないよう、事業所組織法上も労働組合が事業所委員会に対して優位に位置付けられている。このことを最も端的に示しているのが事業所組織法77条3項1文が定める「協約優位原則(Tarifvorrangsprinzip)」である。かかる原則により、ドイツにおいては、現に労働協約によって規整されている労働条件、あるいは協約で規整されるのが通常となっている労働条件については、事業所協定の対象とすることができない。事業所協定によって、事業所レベルで、協約規整とは異なる柔軟な労働条件規整を行うことが可能となるのは、産別協約が開放条項(Öffenungsklausel)を置くことで、これを許容している場合に限られている。また、このほかにも事業所組織法上、事業所委員会の活動に対しては、労働組合の様々な支援や監督のための権限が認められている。

(3)企業内組合支部的役割を果たす事業所委員会

このことからも分かるように、ドイツにおいては、労働者の自発的加入意思に基づく団結体である労働組合と、事業所内民主的選挙手続に基づいて強制的に当該事業所における全労働者を代表する事業所委員会とでは、法的にはその性格を完全に峻別されている。もっとも、伝統的なドイツ二元的労使関係のもとでは、両者は非常に協調的関係にあることは、日本においても早くから紹介されてきた。すなわち、従来から事業所委員会の委員はその大多数が産別組合の組合員でもあり、また、比較的大規模な事業所においては産別組合の職場委員(Vertauensleute)が活動しており、事業所委員会の決定を各職場の労働者に伝達し、また逆に職場の声を吸い上げ事業所委員会に伝達する役割を担っている。このように、事業所委員会は従来、その実態としては産別組合の企業内組合支部的役割を果たしてきたといえる。

(4)事業所委員会および事業所内労働条件規整の実態‐ヒアリング調査から

そしてまた、筆者がヒアリング調査を行ったC社A事業所およびD社B事業所では、かかるドイツ二元的労使関係の基本構造が、現在なお維持されていた。すなわち、これらの事業所においては、組合組織率が比較的高く、また事業所委員会委員も大多数が組合員であり、更にその下で、産別組合に所属する多数の職場委員が、事業所委員会をサポートするという、産別組合と事業所委員会の非常に緊密な関係を看て取ることができた。

そのうえで、C社A事業所およびD社B事業所における事業所内労働条件決定の実態をみるに、基本的労働条件を一括して規定している各事業所の就業規則によれば、賃金額や週所定労働時間等の実質的労働条件については、産別協約による規整に依拠しつつ、他方で事業所内秩序等、共同決定権の対象となっている社会的事項については、同就業規則中で詳細な規範設定が行われており、協約によって規制されるべき事項と、事業所協定によって規制されるべき事項の役割分担が、上記・2つの事業所においては、まずは就業規則をもって明確に区別されていることが明らかとなった。

(5)柔軟な労働条件規整の実態-ヒアリング調査から

また、本研究の目的の1つには、特に協約政策の柱となる賃金および労働時間に関して、ドイツにおける事業所内労使当事者が上記でみた産別協約上の開放条項を利用しているのか否か、利用しているとすればそれに基づいてどのように柔軟な労働条件規整を行っているのかを検証することにあったわけであるが、この点に関するC社A事業所およびD社B事業所における各事業所委員会委員へのヒアリングによれば、いずれの事業所においても、開放条項は「利用していない。」との回答であった。もっとも、企業・事業所レベルでの柔軟な労働条件規整が全く行われていないわけではなく、C社A事業所・D社B事業所のいずれにおいても、労働時間(特に、週所定労働時間の延長)に関しては、産別協約とは異なる規整が行われていた。

しかし、それはあくまで開放条項を利用したものではなく、産別レベルの労使当事者たる産別組合および使用者団体が、C社およびD社に適用対象を限定して、産別協約上の労働時間規整を変更するという、“補充的労働協約(Ergänzungstarifvertrag)”の締結によって行われているものであった。かかる方法による柔軟な労働条件規整は、事業所委員会および使用者が開放条項を利用してこれを行うよりも、産別組合および使用者団体自身が締結当事者となるぶん、産別レベルからの強いコントロールが及んでいるものと解される。

なお、C社A事業所およびD社B事業所では利用されていなかったが、両事業所に適用されている金属電機産業バーデン-ヴュルテンベルク協約地域の産別協約は、賃金の額自体に関しても、事業所レベルでの柔軟な規整を行うことを認める規定を置いている。しかし、ここでもやはり逸脱のツールとしては、上記の補充的労働協約をもって行うこととされており、事業所委員会と使用者のみによって、産別協約上の規整から逸脱することはできないこととなっている。

このようにみてゆくと、確かにドイツにおいては、賃金および労働時間の領域につき、産別協約上の規定のみに拠っているわけではなく、企業・事業所レベルでの柔軟な労働条件規整という現象は生じてはいる。しかし、少なくとも、産別組合および使用者団体の手を全く離れて、事業所内労使当事者の判断のみによってこれを行うことは、現実的には困難な実態があるように思われる。とりわけ、上記でみたような補充的労働協約を用いる場合には、規整権限自体はなお産別レベルの労使当事者が保持し続けているのであるから、このような形でのドイツにおける労働条件規整の柔軟化という現象は、「分権化(Dezentralisierung)」という用語をもって表現するには必ずしも適切ではなく、むしろ産別労使当事者による労働条件規整の「個別企業・事業所化」と表現したほうが、実態をより的確に示しているといえよう。

Ⅱ.ドイツにおける企業別労働協約をめぐる法理論と実態

続いて、第二章では、ドイツにおける企業別労働協約に対し、法理論と実態の両側面から検討を行った。

(1)企業別労働協約をめぐる法理論

この点につき、まず法理論的側面についていえば、通説および判例の立場によれば、ドイツにおいて個別使用者は、社会的実力(sozial Mächtigkeit)の有無、使用者団体への加盟の有無、および加盟使用者団体の規約中における企業別協約締結禁止条項の有無に関わらず、労働組合と企業別協約を締結する能力(協約締結能力〔Tariffähigkeit〕)が認められている。また、労働組合側は、使用者団体と締結している産別協約から生じる相対的平和義務に抵触しない限りにおいて、使用者団体に加盟している個別使用者に対しても、企業別協約の締結を求めて争議行為を行うことが可能となっている。ましてや、個別使用者が使用者団体に加盟していない場合に、これが可能であることはいうまでもない。それゆえ、ドイツにおいては、労働組合が個別使用者と企業別協約を締結するに際しては、特段の法律上の制約は無いと評価されてよい。

(2)分権化のツールとしての企業別労働協約?‐ヒアリング調査から

そのうえで、実態に目を向けると、ドイツにおいてはまず、フォルクス・ワーゲンに代表される幾つかの大規模企業において、伝統的に企業別協約が用いられてきた。もっとも、そこでは産別協約よりも有利な労働条件規整が行われるのが通常であるから、産別協約の企業横断的な労働条件規整力を危殆化させるような意味での分権化現象はそこでは見受けられない。

他方で、ドイツにおいては1990年以降、従業員数200~499人程度で、使用者団体に加盟していない、あるいは使用者団体を脱退した中規模企業が、産別組合と企業別協約を締結する例が増加しており、こちらは確かに、従来のドイツ集団的労使関係システムには見られなかった変化ではある。とはいえ、筆者のヒアリング調査による限り、そこで締結される企業別協約は、実態としてそのほとんどが承認協約(Anerkennungstarifvertrag)なのであって、産別協約が定める内容から大幅に逸脱する形で労働条件規整を行うツールとして機能しているわけではない。従って、従来に比べ、現在のドイツにおいては企業別協約を用いた労働条件規整権限の分権化現象が進んでいると評価するとしても、このような形での分権化は、あくまで産別組合によって「コントロールされた分権化(kontrolierte Dezentralisierung)」と表現すべきものである点には注意を要しよう。

このようにみると、ドイツにおいて今後、企業別協約により、産別レベルでの労使当事者がこれまで保持してきた労働条件規整権限が掘り崩されていくのかという問題については、現時点では否定的に応答しておくのが適切といえる。

Ⅲ.ドイツにおける集団的労使関係をめぐる法政策上の動向

最後に、第三章では、2013年11月にキリスト教民主社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)との間で締結された連立協定に基づき、現在、第三次メルケル政権下で推し進められている、ドイツの集団的労使関係をめぐる各法政策につき、検討を行った。

(1)法定最低賃金制度の施行

かかる法政策としてまず挙げられるのが、2014年8月11日の協約自治強化法(Gesetzs zur Stärkung der Tarifautonomie)に基づいて、2015年1月1日から施行されている最低賃金法(Mindestlohngesetz)である。同法は、ドイツにおいて初めての全国一律に適用される法定最低賃金制度を規定するものであり、これによって2015年1月1日以降、ドイツにおいて労働者を雇用する全ての使用者は、法定された最低賃金額(2016年12月31日までは、1時間当たり8.50ユーロ)以上の賃金の支払いを義務付けられている。かつてのドイツにおいて、二元的労使関係システムのもと産別協約が広く労働者をカバーしてきた時代にあっては、このような法定最低賃金制度は不要とされてきたが、1990年以降に始まる産別組合および使用者団体の組織率の低下や、「協約が適用されないメンバー資格(OTメンバー)」を選択する企業の増加等を受けて、産別協約の適用率が著しく低下し、低賃金で就労する労働者層が増加したことが、かかる最低賃金法制定の背景となっている。

(2)一般的拘束力宣言制度の改正

また同じく、2014年8月11日の協約自治強化法により、一般的拘束力宣言制度を定める労働協約法5条が改正され、これまでよりも実体的要件が緩和された。具体的には、従来の50%基準要件が廃止され、「公共の利益にとって必要と思慮される場合」という広範な要件へと変更されている。周知の通り、従来、一般的拘束力宣言制度が適切に機能してきたことが、ドイツの産別協約が高い適用率を維持してきた一因であったが、上記でみたように、使用者団体の組織率が低下し、またOTメンバー企業が増加するなかで、これまでの50%基準要件を充たすことができない場面が増えたことが、かかる改正の背景となっている。

(3)協約単一原則の立法化

更に、ドイツにおいては2014年12月に、これまで判例法であった「協約単一(Tarifeinheit)原則」を立法化するための法案が閣議決定されている。これは、1つの事業所において複数の労働組合により締結された複数の労働協約が競合している場合(「協約衝突(Tarifkollision)」現象)に、当該事業所において、これらの協約のうち労働者の多数に適用されている協約のみを適用することとし、それ以外の協約の適用を排除しようとするものである。

この点につき、従来ドイツにおいては、労働組合のナショナル・センターであるドイツ労働総同盟(DGB)の産業別組織原則(Industrieverbandsprinzip)ゆえに、1つの産業を管轄する労働組合は1つに限定されてきたため、労働組合間での対立は回避されてきた。しかし、2000年以降になると、パイロットや機関士、医師など特定の専門職に就く労働者が専門職労働組合(Spartengewerkschaften)を結成し、独自の協約政策を展開する動きがみられるようになったことで、上記のような協約衝突現象が生じうることとなった。また、連邦労働裁判所も2010年以降になると1事業所における複数協約状態を認めるようになったため、産別労使団体はこれまでに協約単一原則を立法化すべきことを強く求めてきたわけであるが、かかる要求が、このたび連立協定中に明記されたことで、実現の運びとなりつつある。また、かかる協約単一原則の立法化は、同時に専門職労働組合が行う争議行為の適法性にも波及するであろうことが予想されている。

(4)ドイツ集団的労使関係法政策をめぐる2つの方向性

このようにみると、これらの法政策のうち一般的拘束力宣言制度の改正および協約単一原則の立法化は、伝統的なドイツの協約システムに対する国家の「支援」としての方向性を有するが、法定最低賃金制度の導入は、(協約自治強化の名の下に行われているのであるが)国家による「介入」としての方向性をも有する。従って、今後、協約自治保障(基本法9条3項)と法定最低賃金制度の関係につき、理論的な整序がドイツにおいては求められているといえる。

Ⅳ.まとめ

以上を要するに、本研究の目的に対応させていえば、筆者のヒアリング調査による限り、現代ドイツにおける集団的労使関係システム全体のなかでは、労働条件規整の柔軟化という現象は、「個別企業・事業所化」の範囲に留まるか、あるいは「分権化」によるものであるとしても、その際にはあくまで産別組合によるコントロールが及んでいるものであるため、産別レベルでの労働条件規整権限にとり、さほどに深刻な問題とは捉えられてはいないようである。しかし、その一方でドイツにおいてはそもそも労働協約や事業所協定による保護の範囲外にある層が年々増大しており、筆者がヒアリングを行った労使団体および研究者のいずれにおいても、むしろこちらのほうがシリアスなテーマとして問題視されていた。それゆえに、現在の第三次メルケル政権下においては、国家が、これまで労働協約が担ってきた労働条件の最低基準設定機能を一部を引き受けるとともに、協約システム自体に対しても積極的なサポートに乗り出している状況にあるというのが、ドイツ集団的労使関係(法制)をめぐる現状となっている。

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2015年5月29日 (金)

『ニューリーダー』2015年6月号

1233366_p 『ニューリーダー』2015年6月号に、わたくしの「労働組合は再生できるのか」というインタビュー記事が載っています。

http://www.fujisan.co.jp/product/1281679819/b/1233366/

ニューリーダー・インタビュー

労働組合は再生できるのか/濱口桂一郎.....9

その他にもいろいろ雑多な記事が一杯載っていますな。

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2015年5月28日 (木)

「文」の業界

たまたま目にしたある新聞記事と、ある中東研究者のブログの文章の一節が、なぜか頭の中でらせん状にくるくると回り出したようです。

http://www.sankei.com/life/news/150528/lif1505280016-n1.html (国立大学の人文系学部・大学院、規模縮小へ転換 文科省が素案提示)

文部科学省は27日、全国の国立大学に対して人文社会科学や教員養成の学部・大学院の規模縮小や統廃合などを要請する通知素案を示した。理系強化に重点を置いた政府の成長戦略に沿った学部・大学院の再編を促し、国立大の機能強化を図るのが狙いで、6月上旬に文科相名で大学側へ通知する。

これにも例によっていっぱい批難のツイートがついているようですが、まさにそういう「文」の世界に育ってきたこの方のこの言葉の鋭いこと。本題よりはその後の嘆息めいた部分ですが。

http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-entry-340.html (人質事件の検証委員会報告への反応を目にして)

・・・私自身が、文学・文化に埋め尽くされた家に育って、大学も当然のように文学部に行きながら、徐々に「文」の業界からは距離を置いていった経緯を、ふと思い出した。私は、日本の文学・文化やジャーナリズムといった業界に染まった大部分の人たちの、日本の外の世界に対する全般的で決定的な無知、論理的な思考能力の欠如、自由人ぶっていながら実は業界の「空気」を読んで流行に同調することが求められる不自由さ、そしてそのような自らが自らに選んで課しているはずの不自由さの由来を自覚することを可能にする内省の契機を備えていないように見えること、あまつさえその不自由さを外部の責に帰する言動が相次ぐことを、たび重なり積み重なって目撃した末に、ある時期から耐えられないほど、嫌になったのである。それは、私が生まれ育って学んで触れて憧れてきた「文」の美質とは、無縁であった。ある国の「文」はその社会の文化的生活を反映しているのだろう。そうであればなぜ、日本の「文」はなぜここまで貧しくなってしまったのか。あるいは「文」が精神の豊かさや高貴さではなく、貧しさや浅ましさだけを反映するような、何らかの変容が起こったのだろうか。

その後も私はごく自然に欧米圏の文化・文学には触れているし、アラブ圏の文学・文化にも研究対象としての興味を抱いている。そこには何か光るものが今でもある。しかし日本におけるその対応物には、かなり以前に深い失望を抱いて以来、触れていない。仕事で依頼されるとその瞬間だけ触れるが、仕事が終わると全て処分して忘れてしまう。「文学的」ということが事実に基づかず国際性がなく非論理的で情緒的に叫ぶことと同一視されるようになったのはいつからなのか。「哲学的」ということが頑固な思い込みを権柄づくでゴリ押しすることと同一視されるようになってしまったのはいつからなのか。・・・

特段のコメントはしません。本ブログである種の「文」な方の議論の仕方に対する違和感を表明したエントリとして、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-b43f.html (「就活に喝」という内田樹に喝)

神戸女学院大学文学部総合文化学科教授の内田樹氏が、就活で自分のゼミに出てこない学生に呪いをかけているようですな。・・・・

内田氏のゼミの学生と企業の担当者が、内田氏の教えている学問の内容が卒業後の職業人生にとってレリバンスが高く、それを欠席するなどというもったいないことをしてはいけないと思うようなものであれば、別に内田氏が呪いをかけなくてもこういう問題は起きないでしょう、というのがまず初めにくるべき筋論であって、それでも分からないような愚かな学生には淡々と単位を与えなければそれで良いというのが次にくるべき筋論。

もちろん、そういう筋論で説明できるような大学と職業との接続状態になっていないから、こういう呪い騒ぎが起きるわけですが、そうであるからこそ、問題は表層ではなく根本に立ち返って議論されるべきでありましょう。

哲学者というのは、かくも表層でのみ社会問題を論ずる人々であったのか、というのが、この呪い騒ぎで得られた唯一の知見であるのかも知れません。

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OECD技能アウトルック2015年版

872014011mOECDが昨年に引き続き、『技能アウトルック』2015年版を公表しました。

http://www.oecd.org/education/oecd-skills-outlook-2015-9789264234178-en.htm

日本語版のプレスを引用しておきますと、

16~29歳のニート(就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない者)は、OECD諸国全体で3500万人を超えています。概して若者は、働き盛りの世代とくらべて2倍失業しやすいことがわかっています。OECDの最新レポートは、各国政府は若者がワークライフの良いスタートをきれるように、就職において支援すべきであると述べています。

OECD技能アウトルック2015によると、OECD各国におけるニート人口の約半数は就学もせず、職を探してもいないため、国の教育、社会、労働市場制度のレーダーから抜け落ちてしまっています。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、ベルリンで本レポートを発表し、「この問題に関して議論することは何も道徳心からではない。経済の観点から必要だからだ。あまりに多くの若者が適切な技能を修得することなく学校教育を終えてしまっている。習得した者でさえ、その後効率的に技能を活かす機会がない。このような若者は将来困難に直面することが多いため、われわれが支援しなければならない。」と述べました。

今回のレポートは2013年に発表された第一回OECD成人力調査(PIAAC)から派生したもので、若者がいかにして技能を修得し活用するか、その一方でいかなる潜在的障害に直面するか詳細を示しています。

OECD全体では、新卒の10%が低いリテラシー技能を持っており、14%が低い数的技能を持っていることが示されています。高等教育を終了する前に中退した生徒の40%以上は低い数的技能とリテラシーを持っています。

仕事と教育は、いつも全く別物として扱われてきました。OECD加盟国の中の22カ国と地域において、職業訓練に在籍している生徒の50%以下、学校教育に在籍している生徒の40%以下が調査当時に何らかの職業ベースの教育に参加していました。高い技能を持った若者でさえ仕事を探すのに苦労しています。また、多くの企業が、労働市場における経験のない個人を雇用することは高くつくと考えています。

仕事をしている若者もまた、技能を発展させるにあたり組織の中での障害に直面することがあります。例えば、若年労働者の4人に1人は非正規雇用であるため、持っている技能を活用する機会が少なく、正規労働者と比べても訓練の機会が限られています。

より多くの若者を労働市場に参加させるためにOECDは以下を提案します。


•教育成果の格差が生じないように、そして全ての児童が教育開始で力強いスタートをきれるように、全ての児童が高いレベルの就学前教育を受けることができるようにする。
•教師や学校長が、早い段階から成績の悪い生徒を特定し、十分な読解、数学、科学の能力を習得できるよう、そして学校教育において落第することを防ぐために必要な支援を提供する。
•公的雇用サービス、社会福祉機関、教育及び訓練制度が、教育や訓練において所謂第二のチャンスを提供できるようにする。社会保障を受ける代わりに、若者は社会福祉や公的雇用サービスに登録することを義務付け、将来の教育や訓練に参加する。
•教育提供者とビジネスセクターは、協力し合い、新卒者が実際保有している技能を十分に示すことができるような資格の枠組みを作る。
•職業訓練や高等教育において、職場基準の教育が統合されること。

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2015年5月27日 (水)

鵜飼良昭・徳住堅治・井上幸夫・鴨田哲郎編著『労働者の権利 (軌跡と展望)』

14078 鵜飼良昭・徳住堅治・井上幸夫・鴨田哲郎編著『労働者の権利 (軌跡と展望)』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/996?osCsid=78t01d2k4m7la2n6mo407o8j95

本書は、日本の労働弁護士の代表とも言うべき宮里邦雄さんの弁護士活動50周年記念の論文集です。

刊行委員会曰く:

 本書は、敬愛する宮里邦雄弁護士の弁護士活動50周年を記念して出版するものです。

 宮里弁護士は、1965年弁護士登録されて以来、労働弁護士としてさまざまな労働分野で活動されてきました。先生は、中小企業争議、国鉄闘争、労働委員会闘争などで、働く人のために先頭になって活躍され、その切り開かれた地平は極めて広範囲にわたります。また、先生は、1982年から86年まで総評弁護団幹事長。2002年から12年まで日本労働弁護団の会長を務められるなど、常に弁護団の維持・発展に寄与され、労働弁護士の活動するフィールドを豊かにするために貢献されてきました。先生の薫陶を受けて育った労働弁護士が、現在さまざまな労働分野で活躍しています。先生は、日本労働法学会会員としても活発に発言され、弁護士として初めて理事を務められました。2004年4月から07年3月まで東京大学法科大学院客員教授(労働法と法曹倫理)として、法律家を目指すロースクール生の教育に尽力されました。

 本書の構成は、第Ⅰ部「権利闘争をめぐる状況と課題」、第Ⅱ部「重要判例の形成にかかわって―判例形成の過程と判決の意義と評価」、第Ⅲ部「宮里弁護士の歩んだ50年」から構成され、第Ⅳ部に先生ご自身の執筆による不当労働行為と労働組合の存在意義および略歴と執筆活動を収録しました。

 第Ⅰ部は、労働者の権利をめぐる19の分野について、現在第一線で活躍されている労働弁護士から、その分野のこれまでのたたかいの軌跡と展望を執筆してもらいました。この章をみると、労働者をめぐる各分野の権利闘争の過去・現在・未来を俯瞰することができます。

 第Ⅱ部は、わが国の労働分野における判例法理の確立に重要な影響を与えた14の判例について、事件当時の担当弁護士に執筆してもらいました。「裁判を提起するに至った経緯」、「法廷のたたかいでの出来事・エピソード」、「裁判官の下した結論が出た要因」、「判決の意義・評価とその後の動き」、などを盛り込んでもらいました。通常の判例解説には見られない、重要判例が形成された実相を垣間見ることができます。

 第Ⅲ部は、先生と交流のある方々(弁護士・研究者・組合関係者)から、弁護士50年の先生の活動内容、人柄、交流関係などについて執筆していただきました。人間性豊かで、常にユーモアあふれる先生の人柄を、十分感得していただけると思っています。

 第Ⅳ部は、先生がかかわってこられた不当労働行為事件の経験、JR採用差別とのたたかい、そして組合への思いを込めた労働組合の役割と課題に関する論文を収録しました。

 本書は、宮里弁護士の弁護士活動50周年を記念して出版されるものではありますが、本書が労働者の権利の発展に大いに寄与することを願っていますし、また、寄与すると確信しています。

第1部は時論、第2部は主要判例、そして第3部は寄せ書き風のエッセイですが、とりあえずぱらぱらと読んで面白いのは第3部ですが。じっくり読んで勉強したいという思いに駆られるのは第2部ですね。どうしても判例は判例集で重要部分だけ読んですませがちですが、一つ一つの裁判に労働弁護士がいかに力を込めてきたかが伝わってきます。

第Ⅰ部 権利闘争をめぐる状況と課題

第1章 労働法制の規制「破壊」に反対する取り組み……髙木太郎

第2章 公契約条例の意義……上田絵理

第3章 日本労働弁護団の伝統と、ワークルール教育推進法の制定をめざす取り組み……小島周一

第4章 労働時間をめぐる闘いと課題……小川英郎

第5章 派遣労働者の権利確立の闘い……村田浩治

第6章 ブラック企業の問題点と構造……佐々木亮

第7章 性差別との闘い……中野麻美

第8章 女性差別撤廃条約の個人通報制度……林 陽子

第9章 労災責任と損害賠償請求の闘い……岡村親宜

第10章 会社更生計画と整理解雇―……船尾 徹

第11章 不合理な労働条件の禁止を定めた労働契約法20条訴訟のはじまり……棗 一郎

第12章 労働審判制度の現状と改善課題……後藤潤一郎

第13章 不当労働行為救済制度をめぐる現下の問題点……田中 誠

第14章 官公労働者の労働基本権確立の取り組みと今後の課題……岡田俊宏

第15章 「労働者権」確立―最高裁三判決からさらなる前進を目指して……木下徹郎

第16章 日本の労働者の権利とILOの活用……牛久保秀樹

第17章 公務員の政治活動禁止との闘い―国公法弾圧事件・最高裁判決の意義……加藤健次

第18章 原発労働者の闘いと被曝労働改善の展望―……海渡雄一

第19章 官僚裁判官制度と労働裁判改革の課題・試論……鵜飼良昭

第Ⅱ部 重要判例の形成にかかわって―判例形成の過程と判決の意義と評価

第1章 全逓東京中郵事件・最高裁判所大法廷昭和41年10月26日判決……山本 博

第2章 三菱樹脂事件・最高裁大法廷昭和48年12月12日判決……塙  悟

第3章 東芝臨時工事件・最高裁一小法廷昭和49年7月22日判決……中村洋二郎

第4章 大村野上事件・長崎地裁大村支部昭和50年12月24日判決……熊谷悟郎

第5章 吉野石膏事件・東京高裁昭和54年8月9日決定……上条貞夫

第6章 東亜ペイント事件・最高裁第2小法廷昭和61年7月14日判決……関戸一考

第7章 日立製作所武蔵工場解雇事件・最高裁第1小法廷平成3年11月28日判決……吉田健一

第8章 朝日放送事件・最高裁第三小法廷平成7年2月28日判決……森 信雄

第9章 関西電力事件・最高裁第3小法廷平成年7年9月5日判決……豊川義明

第10章 電通事件・最高裁第2小法廷平成12年3月24日判決い……川人 博

第11章 みちのく銀行事件・最高裁第1小法廷平成12年9月7日判決……横山慶一

第12章 芝信用金庫女性昇格差別事件・東京高裁平成12年12月22日判決……今野久子

第13章 セメダイン管理職組合事件・東京高裁平成12年2月29日判決……君和田伸仁

第14章 山田紡績整理解雇事件・名古屋地裁平成17年2月23日判決外……古川景一

第Ⅲ部 宮里弁護士の歩んだ五〇年

日本労働弁護団(旧総評弁護団)と宮里さん……江森民夫

国鉄闘争の法的リーダーとして……福田 護

労委労協の活動と宮里弁護士……長谷川裕子(全国労働委員会労働者側委員連絡協議会事務局長)

ロースクール教員としての宮里先生……在間文康

宮里先生の労働者への深い愛情を感じる講座……喜多英之(長野県平和・人権・環境労働組合会議事務局長)

宮里邦雄弁護士とともにJRの採用差別をたたかって……後藤 徹

五〇年の活動と交友 宮里弁護士を語る……石井 将

宮里邦雄先生と沖縄……池宮城紀夫

「大阪の地から」……在間秀和

宮里弁護士を目標として……中村和雄

宮里先生に労働弁護士像を見る……徳住堅治

いつまでも労働弁護士第一線の宮里邦雄先生……井上幸夫

宮里弁護士を語る……鴨田哲郎

われらが師宮里先生を語る……山口 広

先生とJR不当労働行為事件について……渡辺 章(筑波大学名誉教授)

労働委員会制度の同志 宮里先生……菅野和夫(東京大学名誉教授)

意見は一致しなかったが……西谷 敏(大阪市立大学名誉教授)

第Ⅳ部 不当労働行為と労働組合の存在意義……宮里邦雄

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週刊東洋経済編集部のツイート

05211407_555d67fe39b73 今週月曜日発売の『週刊東洋経済』5月30日号の内容について、当の週刊東洋経済編集部の方がこういうツイートをしていました。

https://twitter.com/w_toyokeizai/status/602608635005534208

本日発売号の特集は「日本型雇用システム大解剖」です。「雇用規制は岩盤規制」。そんなフレーズをよく聞きますが、では変えるとすれば、どこをどうすればよいのでしょうか。雇用と労働をめぐる疑問を一挙に解決します。ぜひご覧ください!

https://twitter.com/w_toyokeizai/status/603127697846317056

労働時間規制を適用除外する、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」の労基法改正案が国会で審議入りしました。残業代ゼロ法案と批判されていますが、実は、世界では命や健康に直結する物理的な労働時間規制が重視され、割増賃金は枝葉の問題というのが常識です。そして日本は、この物理的な労働時間規制が事実上存在しない、それなのに残業代の議論ばかりしているという、妙な状況に陥っています。

働き過ぎが当たり前の国--。今週号の特集「日本型雇用システム大解剖」では、ホワイトカラー・エグゼンプションの本質的な問題に迫っています。労働問題に関心のある方には是非読んでいただきたいと思います。

https://twitter.com/w_toyokeizai/status/603387545917882368

仕事内容(職務)を特定せずに会社のメンバーになる、という日本独特の雇用契約がいかに世界でもまれな労働社会を作り出しているか。それを際立たせるために、今週号の特集「日本型雇用システム大解剖」では、欧米やアジアなど世界で一般の「職務(ジョブ)型雇用慣行」についても詳しく解説しています。

雇用契約で職務を特定し、その範囲内でのみ労使の関係が成立する。ジョブ型を簡単にいえばそれで終わりですが、そのことが賃金や労働時間から、労働組合、採用、人事、解雇、果ては高等教育や社会保障制度のあり方においてまで、日本との違いを生み出しているのです。そのメカニズムをここまで詳しく可視化した経済誌は初めてだろうと自負しています。是非手に取ってみてください。

ある意味、拙著の手際よいダイジェスト版とも言え、ここまでまとめていただいた東洋経済編集部の皆様の手際に感激です。

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五十嵐泰正/明石純一編著『「グローバル人材」をめぐる政策と現実』

200321五十嵐泰正/明石純一編著『「グローバル人材」をめぐる政策と現実』(明石書店)をおおくりいただきました。ありがとうございます。

http://www.akashi.co.jp/book/b200321.html

ホワイトカラーや専門・管理・技術職など「高度人材」の国際移動は、新自由主義的経済秩序をさらに強化するか、それに対抗する新しい条件がうみだされるか、送出国と受入国にはどんな影響を与えるのかを、日本と各国の例によって詳細に論じ今後の展望を示す。

中ほどに、大石哲之、森山たつを両氏に、五十嵐泰正、駒井洋両氏がインタビューしている「海外就職の可能性」という座談会があり、なかなか面白い議論を展開しています。


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2015年5月26日 (火)

本田有明『続・人材育成の鉄則』

Bk00000360日本経団連常務理事・事務局長の讃井暢子さんより本田有明『続・人材育成の鉄則-上司力を高める25の極意』(経団連出版)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=360&fl=1

人が育っている組織の年配者は、「いまどきの若者はすばらしい」と口をそろえます。そう思えないなら、それは上司の側に責任があるのではないかと、自責の論理で考えてみると、「ではどうすれば人は育つのか」と知恵をめぐらすようになります。本書は、人の動かし方や部下育成の方法にとどまらず、人材マネジメントの要諦、戦略思考の高め方、自己開発の方法など、上司自身の実力をどのように高めるか、その秘訣、極意を具体的に伝授します。

というわけで、「近頃の若者は・・・」症候群に罹りかけた中高年諸氏には、絶好の解毒剤になりそうな本ですね。

最初の「部下の自主的な協力を引き出す」という節には、

「上からの指示だから」は逃げ口上に過ぎない

という厳しい言葉があり、さらに、山本常朝の『葉隠』を引いて、こう語ります。

「ご家中下々のためになるようにと思ってすることが、お上のためにもなる。考え違いをしている者は、お上のためにと思って目新しいことを企て、下々のことなど顧みない。そのため下々たちに困ったことが起こるのだ。これが一番の不忠というものである」

思いたるふしが結構あるのではないでしょうか。

・・・下の者に媚びを売れというのではもちろんない。下の者は、自分たちのことを本気で考えてくれている上司のためにこそ献身的に働く。その道理をよく理解しなければならないということだ。彼らの共感を得られずして、自主的な協力を引き出すことはできない。

ここまででわずか17ページ。なかなかずっしりくる内容でしょう?


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2015年5月25日 (月)

「無拠出セーフティネットへの反発と互酬原理」@『労基旬報』5月25日号

『労基旬報』5月25日号に「無拠出セーフティネットへの反発と互酬原理」を寄稿しました。

 筆者は2004年度から毎年東京大学公共政策大学院で労働法政策の授業を担当してきているが、さすがに水準の高い学生たちとの対話で、毎回目を開かれるような指摘を受けることが多い。先日も「労働市場のセーフティネット」について論じたときに、近年の生活保護やいわゆる第2のセーフティネットをめぐる政策過程に関わって、なぜ日本では無拠出型のセーフティネットに対してマスコミや政治家、ひいてはその背後にある一般国民レベルの反発が強いのだろうかという問題が提起され、教室内で議論が盛り上がった。

 失業保険(日本では雇用保険)が拠出型社会保険であり、それゆえ受給資格がなかったり受給期間が満了してしまったらそこからこぼれ落ちることは世界共通である。しかし、とりわけ多くの欧州諸国では労働市場における無拠出型セーフティネットとして失業扶助が存在し、原則的には特段の行為要件を課することなく一定額の給付がなされる。これは英独仏などどの国も共通である。そしてさらにその外側に最後のセーフティネットとして社会扶助(日本では生活保護)が存在するという3層構造になっている。つまり、収入が無くなるというリスクに対する社会保護システムは切れ目のない形で存在しているのである。

 ところが日本ではそうではない。少なくともそうではないと考えられてきた。それゆえに、2007年に連合が提案した「就労・生活支援給付」は、雇用保険(第1層)と生活保護(第3層)の間の空隙に第2層のセーフティネットを設けるべきだという形で提起されたのである。実を言えば、生活保護法の厳密な解釈上その認識にはいささか問題がある。無差別平等原則からすれば、雇用保険がなくなるその瞬間から生活保護の担当となると解釈することも可能だからである。問題は保護の補足性原理(「保護は、生活に困窮する者が、その利用しうる資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」(第4条))との関係であるが、失業というのはまさに働く能力はあるけれどもそれを(本人の意思に反して)活用できない状態のことを言うのであるから、それを(法の趣旨である)自らの意思であえて働く能力を活用しない状態と同視するのは疑問がある。とはいえ、現実には長らく、客観的に働く能力のある現役世代で障害や傷病がなく母子家庭の母でもない人々は、生活保護の対象からはデフォルトで外されてきた。生活保護統計で「その他」とされていることがその発想をよく物語っているし、上記連合の提案も、それを前提としている。

 連合の提案は、その翌年(2008年)にリーマンショックで大量の非正規労働者が失業し、セーフティネットもないまま労働市場に投げ出されるという事態が発生したことで、急速に実現に向かい、同年末には融資制度、2009年には予算措置による「訓練・生活支援給付」、そして2011年には恒久法として求職者支援法が成立するに至った。しかし、この「第2のセーフティネット」は、欧州諸国の失業扶助とは異なり、職業訓練の受講を要件とするものとして構築された。やや細かく言うと、90年代から2000年代にかけて、欧州でワークフェアとかアクティベーションといった政策が流行し、こうしたセーフティネットについてただ給付するのではなく、職業訓練の受講や試用雇用等といった労働市場プログラムを受けることを要求するようになっていたことを時代背景として(筆者自身もそれらを紹介していた一人であるが)、職業訓練受講を要件とする形で制度設計されてきたのである。

 しかしながらその結果、切れ目のないセーフティネットとして存在することを前提としてそのアクティベーション効果を高めようとする欧州諸国とは異なり、職業訓練を受講しなければそもそも給付の対象にならないという意味で、はじめから切れ目のあるセーフティネットであったし、さらに予算措置による基金訓練時代に(急遽訓練施設をかき集めてやったこともあり)職業訓練政策としてかなり問題のある事例が多く指摘されたことから、求職者支援法の立法時には訓練施設に対しても受講生に対してもさらに厳格な要件を課する方向にシフトした。それはもちろん、職業訓練政策の適正化策としてはもっともなものであったが、隙間を埋めるはずの第2のセーフティネットとしては、そのカバレッジをもっぱら縮小する方向に働くものでもあった。

 一方、社会保障政策の方では、この間就労可能者に対する生活保護の支給が急速に拡大したが、それに対するマスコミや政治家の批判も急激に強まり、地方自治体との協議を経て、一昨年の生活保護法の改正に至った。同時に立法された生活困窮者自立支援法は、生活保護に行く手前でさまざまな支援措置を講じようとするものであり、今年4月から施行されて。その中には「中間的就労」と呼ばれる雇用以外による就労支援も含まれている。興味深いことに行政当局(社会・援護局)はこれを「第2のセーフティネット」と呼んでいる。「第2のセーフティネット」と称する制度が雇用保険寄りと生活保護寄りにそれぞれ一つずつ、計2つ存在し、しかもその間にはなお空隙が存在して、欧州のような切れ目のない状態にもなっていないというのが現在の日本の姿というわけである。

 なぜ日本では無拠出のセーフティネットに対してかくも抵抗が強いのだろうか。あるいは、無拠出の制度に対しては、訓練受講などのなにがしか対価的な行為を要求するのだろうか。ここからはいささか文化人類学的な議論になるが、通常考えられるような意味での市場原理ないし交換原理が強いから・・・ではないのではないか、というのがここでの論点である。市場原理が社会を覆うような市場社会は、近代欧米社会で生み出され、世界に広がっていった、ということは世界史の基礎知識である。しかし、市場社会の本家である欧米といえども、市場原理ないしその基礎をなす交換原理だけで社会が構成されているわけではない。宗教的ないし共同体的性格を残しつつ市民社会レベルでも国のレベルでもさまざまな交換原理によらない-贈与原理に基づく-仕組みが存在している。国レベルの贈与原理を表す一つの例が、本稿で取り上げたさまざまな無拠出型のセーフティネットであろう。

 日本社会がこうした贈与原理に冷たいのは、欧米以上に市場原理が貫徹しているから・・・ではおそらくないのではなかろうか。むしろ、欧米であれば冷静な市場原理だけでビジネスライクに進められるであろうさまざまな関係が、企業間の取引関係であれ、企業内の雇用関係であれ、ある種互酬的ともいうべき疑似共同体的関係、つまり義理や人情のような相互に非特定的な責務を負わせるような関係によって彩られていることは周知の通りである。そのことが、つまり、市場原理が市場原理として貫徹せず、互酬原理が強く働いていることが、逆に欧米であれば市場原理ではどうしようもないとしてあっさり贈与原理の手に委ねられる領域に対しても、やはり互酬原理が働いてしまい、給付をもらうのであればそれに見合うようななにがしかの姿勢を示させずにはおかない、という制度設計をもたらすのではなかろうか。いささか労働政策論の土俵を逸脱した議論ではあるが、世間に提起してみたい論点である。

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日本型雇用システム大解剖@『週刊東洋経済』5月30日号

05211407_555d67fe39b73 『週刊東洋経済』5月30日号が、「日本型雇用システム大解剖」という大特集をくんでいます。

http://store.toyokeizai.net/magazine/toyo/20150525/

「雇用規制は岩盤規制」。そんなフレーズをよく聞く。でも変えるとするなら、どこをどうすれば?雇用と労働をめぐる疑問を一挙に解決。

下の目次に見るように、安藤至大さん、海老原嗣生さん、遠藤公嗣さん、大内伸哉さんと、真打ちばかりをずらり並べた、まさに「一挙に解決」している大特集です。

第1特集

日本型雇用システム大解剖

幸せな社員になる方法

 [Part1] 大解剖!ニッポンの働き方

すべての問題の根っこは日本型雇用慣行にあった!

その俗説、違います!

長時間労働・ブラック企業… あの難題の裏にある日本型雇用システム

【図解】こんなに違う! 日本と海外の働き方

「部下なし管理職」の生き残り法 麻野 進/人事コンサルタント

日本の解雇規制は本当に厳しいのか 安藤至大/日本大学准教授

なるほど! 解雇判例集 岡芹健夫/弁護士資

新卒時に採用されないと永遠に非正規なのか? 海老原嗣生/ジャーナリスト

正社員と労組はリベラル政党の芽を摘んだ

[Part2] 大揺れ!ニッポンの賃金制度

成果主義が総崩れしたワケ 遠藤公嗣/明治大学教授

海外のジョブ型雇用システムの仕組みを全公開

ブラック企業の特徴は、日本型欧米型の混用にあり

電機業界に見る人事改革のうねり

(アジア給与データ18職務 全比較)

有名企業の人事評価と社風 渡邉正裕/My News Japan編集長

[Part3] 大論争!ニッポンの労働時間

誤解だらけの「残業代ゼロ法案」

INTERVIEW│「『残業代ゼロ』と考えるのは間違い」 大内伸哉/神戸大学教授

「多様な働き方を導入しないと競争に負ける」 橘 フクシマ 咲江/経済同友会 前副代表幹事

ドキュメント物流業界 いまここにある「残業代未払い」 刈谷大輔/ジャーナリスト

有給取得・残業時間ランキング101社

私は、最初の日本型雇用システムの解説のところにちょびっとだけ顔を出しています。

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米労働省の最低賃金神話バスターズ

Ghostbusters_logo_svgアメリカ連邦労働省のホームページに、「最低賃金神話バスターズ」(Minimum Wage Mythbusters)というページが出来てます。

http://www.dol.gov/minwage/mythbuster.htm

ゴーストバスターズならぬ、神話バスターズの腕前はいかがでしょうか?

Myth: Increasing the minimum wage will cause people to lose their jobs.

Not true: A review of 64 studies on minimum wage increases found no discernable effect on employment. Additionally, more than 600 economists, seven of them Nobel Prize winners in economics, have signed onto a letter in support of raising the minimum wage to $10.10 by 2016.

神話:最低賃金を引き上げたら人々は仕事を失うことになる。

嘘だよ:最低賃金の引き上げに関する64もの研究で雇用への感知しうる影響は見出されていない。その上、7人のノーベル賞受賞者を含む600人の経済学者が2016年までに最低賃金を10.10ドルに引き上げることに賛成の手紙に署名している。

Myth: Small business owners can't afford to pay their workers more, and therefore don't support an increase in the minimum wage.

Not true: A June 2014 survey found that more than 3 out of 5 small business owners support increasing the minimum wage to $10.10. Small business owners believe that a higher minimum wage would benefit business in important ways: 58% say raising the minimum wage would increase consumer purchasing power. 56% say raising the minimum wage would help the economy. In addition, 53% agree that with a higher minimum wage, businesses would benefit from lower employee turnover, increased productivity and customer satisfaction.

神話:零細企業主はもうこれ以上労働者に払う余裕がないので、最低賃金の引き上げを支持していない。

嘘だよ:2014年6月の調査では、零細企業主の5人の3人以上が最低賃金の10.10ドルへの引き上げに賛成している。零細企業主は、最低賃金をもっと高くすることが重要なやり方でビジネスに有益だと信じている。彼らの58%は最低賃金引き上げが消費者の購買力を高めると言い、56%は最低賃金引き上げが経済を活性化するという。さらに53%が、最低賃金の引き上げで従業員の離職率を下げ、生産性を高め、消費者の満足に役立つと考えている。

というような感じで、まさしく、ゴーストならぬ「最低賃金神話」をバストしていきます。

(追記)

私の無知を告白します。

わたくしは、「Minimum Wage Mythbusters」という字面を見て、その昔見た映画のゴーストバスターズしか思い浮かべることが出来ませんでしたが、それはまことに教養のなさを露呈するものでありました。

「Mythbusters」ってのは、都市伝説を検証するというテレビ番組のタイトルだったんですね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%AA%E3%81%97%E3%81%84%E4%BC%9D%E8%AA%AC

怪しい伝説(あやしいでんせつ、原題: MythBusters)は、オーストラリアのBeyond International制作、ディスカバリーチャンネルおよびBBC 2で放送されているテレビ番組である。アメリカでは2003年から放送されている。

そうか、アメリカ労働省の担当官は、当然それを知っている人を前提にこのQ&Aを作ったわけですな。

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2015年5月24日 (日)

『働くときに知っておきたい労働関連法の基礎知識 テキスト版』

Textbook昨日、京都に行って、NPO法人あったかサポートの第10回総会記念シンポジウム「労働・教育・福祉の一体化に 向けた政策課題を探る」というのに出てきたのですが、

http://attaka-support.org/event/%E7%AC%AC10%E5%9B%9E%E7%B7%8F%E4%BC%9A%E8%A8%98%E5%BF%B5%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%80%8C%E5%8A%B4%E5%83%8D%E3%83%BB%E6%95%99%E8%82%B2%E3%83%BB%E7%A6%8F%E7%A5%89%E3%81%AE

その際に、できたばかりの労働法教育のテキストをいただきました。左上の画像は、5年前のバージョンで、昨日できたばかりのものはタイトルも少し違っています。「授業に使える」→「学校や職場で使える」と、より汎用テキストになっているようです。表紙の絵も、学校の教室風からいろんな職業の男女が絡み合っている絵柄になっています。

労働法教育としては北海道グループや静岡グループが(厚労省の研究会でも呼ばれているように)有名ですが、京都のこのあったかサポートも

こういう各地方地方のNPOが、それぞれに工夫を凝らしながら、労働法教育に取り組んでいるのです。

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2015年5月22日 (金)

武井咲:「ハラスメント」と戦う反逆ヒロイン

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これも一種の労働ドラマかな?

http://mainichi.jp/mantan/news/20150521dyo00m200040000c.html

女優の武井咲さんが7月から放送されるテレビ朝日の連続ドラマ「エイジハラスメント」に主演することが22日、明らかになった。ドラマは、「毛利元就」(NHK総合)や「週末婚」(TBS系)などの内館牧子さんが脚本を務め、“年齢差別”と戦う新人女性社員の姿を描く。主演の武井さんは「(ハラスメントに対し)悔しい思いをされている方も多くいらっしゃるはず。そんなみなさんの思いを代弁する意気込みで、気持ちよく反逆ヒロインになっていきたい」と意気込んでいる。

新人OLが「年齢差別」と闘う、というのが、一般的な年齢差別概念とちょっと違うような気がしないでもないですが、どういうドラマになるのか楽しみではあります。

「エイジハラスメント」は、内館さんの同名小説(幻冬舎)が原作で、仕事に対して意欲、向上心、能力を持つ新人女性社員が、“女性活用”が口先だけの旧体質な総務部に配属され、制服着用義務、笑顔を見せれば男性社員にちやほやされ先輩女性社員のいじめの標的に遭うなど、理不尽なハラスメントと戦う……というストーリー。監督は「ドクターX〜外科医・大門未知子」シリーズなどの田村直己さん。

いかにも・・・、な設定ですが、それって「エイジハラスメント」っていうのかな?

ま、なんにせよ・・・。

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2015年5月21日 (木)

筒井淳也『仕事と家族』

102322筒井淳也さんの新著『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.chuko.co.jp/shinsho/2015/05/102322.html

男性中心の労働環境のため女性が活躍しづらく、少子化が深刻な日本。仕事と家族のあり方は限界にきている。一方、「大きな政府」を代表するスウェーデンと「小さな政府」を代表するアメリカは正反対の国と思われがちだが、実は働く女性が多く、出生率も高いという点で共通している。それはなぜか。歴史的な視点と国際比較を通じて日本の現在地を示し、目指すべき社会を考える。この国で働き、家族と暮らす全ての人へ。

第一章 日本は今どこにいるか?

第二章 なぜ出生率は低下したのか?

第三章 女性の社会進出と「日本的な働き方」

第四章 お手本になる国はあるのか?

第五章 家族と格差のやっかいな関係

終章 社会的分断を超えて

本ブログでも過去何回かシノドスへの寄稿等を紹介したことのある筒井さんが、この問題の本質に突っ込んだ本です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/by-fad8.html(迷走する運命にあるワーク・ライフ・バランス政策 by 筒井淳也)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/wlb-7687.html(男女均等とWLBと日本型雇用)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-377b.html(経営者意識になりすぎたメンバーシップ型労働者を「もっと経営者になれ」と罵る人々)

本書では、第3章の「女性の社会進出と日本的な働き方」が、まさにこの問題を取り上げています。ごく簡単にまとめれば、日本の均等法は、無限定的な働き方の総合職において女性を差別するなという法律であり、それゆえに、その差別禁止が実現した先には性別分業社会になってしまうというパラドクスです。このあたりの消息を、単純に割り切ることなく、丁寧に筋道を追いかけながら辛抱強く論じていくところに筒井さんらしさが現れていると言えましょう。

ちなみに、そのほかに筒井さんが登場する本ブログのエントリは以下の通り。リンク先の文章は本書とつながっています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-f0e9.html(てかこの社会学者がイケメン過ぎてどうしよう)

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この本のトピックとは全然違いますが、こんなのも・・・

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-4f64.html(「権力」概念のない経済学の解雇問題への一帰結)

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ワセダ社労士の『労働・社会保障実務講義』

9784657150028 社会保険労務士稲門会編『労働・社会保障実務講義 社会保険労務士の仕事と役割』(早稲田大学出版部)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.waseda-up.co.jp/newpub/post-725.html

納得の14講。第一線で活躍するエキスパートたちが働く人々の福祉、企業の健全な発展を守るしくみの概要と歴史をやさしく解説。

編者の「社会保険労務士稲門会」というのは、

早稲田大学校友会の正式認定を受けた職域稲門会(早稲田大学卒業生の会)。早稲田大学の建学の精神を旨とし、会員相互の親睦と情報交換を図り、定期的な研修会等を通じて社会保険労務士業務の発展に寄与する全国組織

ということでありまして、私も呼ばれて講演をしたことがありますが、最後の締めで「みーやーこーの、せーいーほーーく♪♪」とみんな一斉に歌い出したのには、「さすがワセダ」と感じたところです。

http://sr-waseda.net/

閑話休題。本書は、「刊行に寄せて」を書いている島田陽一副総長の慫慂と指導の下、JILPTの細川良さんとワセダ社労士のみなさんが執筆した労働法と社会保障法の両方にわたる実務講義書で、こんな内容になっています。

 第1講 序論――社会保険労務士とは(林智子・若林正清)

第Ⅰ部 労働法と人事労務管理の今日的課題

 第2講 労働法――その歴史的展開と現在(細川良)
 第3講 募集・採用――従業員を雇用するということ(大津章敬)
 第4講 就業規則――人材マネジメントにおける就業規則の機能(杉山秀文)
 第5講 労働条件――賃金・労働時間など(若林正清)
  ●いま一度「賃金」をみてみよう(二宮孝)
 第6講 雇用形態――雇用形態の多様化と柔軟な働き方(小泉孝之)
 第7講 人事労務管理――企業への提案を成功させる(和田泰明)
  ●社労士に求められるコンサルティング業務(大津章敬)
 第8講 補論――労働紛争と特定社会保険労務士(森岡三男)

第Ⅱ部 社会保障制度の今日的課題
 第9講 社会保障――その歴史,目的・機能をふりかえる(細川良)
 第10講 安全衛生――労働災害とその未然防止(大南弘巳)
 第11講 労災保険――制度の現状と社会保険労務士の役割(鎌田勝典)
 第12講 雇用保険――失業保険から雇用保険に至る時代背景(林智子)
 第13講 医療保険――制度の歴史・現状と社会保険労務士の役割(曽布川哲也)
 第14講 公的年金――制度の歴史・現状と社会保険労務士の役割(曽布川哲也)

なかなかに意欲的な文章が並んでおり、興味深いのですが、ここでは第8講の森岡さんの「補講」を。なんでこれだけ「補講」になっているのか、よくわからないところもありますが、今や特定社労士にとって個別労働紛争が重要な仕事の一つになりつつあることは確かでしょう。この講の最後の節「コミュニティ・ユニオンとの団体交渉への参与」というところは、個別と集団が交差する微妙なところです。

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2015年5月20日 (水)

ドイツ鉄道:大規模スト、労働法改正に抵抗か の背景

毎日新聞が大変興味深い記事を載せています。まず、何が真の問題なのかを的確に報じている点を褒めたい。

http://mainichi.jp/select/news/20150520k0000e030224000c.html

【ベルリン中西啓介】ドイツ国内最大の鉄道会社ドイツ鉄道で、断続的にストライキが行われている。ストは「今世紀最長」とされた今月5〜10日に続いて20日未明から再開し、数日間続く見込みだ。今週末の連休を前に利用客の不満は頂点に達している。

 「皆さん、運転士たちを責めないでほしい」。ドイツ鉄道の運転士らで作る労組GDLのベーゼルスキー委員長は18日、新たなストを予告する記者会見で理解を求めた。10日までのストでベルリンでは、東京の山手線や中央線に相当する主要鉄道網が運休・減便し、大混乱となった。独公共放送ARDはストにより1日ごとに1億ユーロ(約134億円)の経済的損失が出ていると伝えた。

 新たなストは25日まで続く予定。23日から3連休の独国内ではツアー旅行やイベントが企画されており、会社側は「利用者に対する嫌がらせだ」と憤る。

 表面的には賃金など労働条件を巡る争いだが、GDLの強硬策の背景には政府による労働関連法改正への焦りがある。改正法が成立すれば、企業は最大労組と締結した労働協約のみを有効とすることができる。改正は7月上旬にも行われる見通しで、ドイツ鉄道労組で2位のGDLは実質的な交渉が難しくなる。「会社は法改正まで交渉を先延ばしにする気だ」と言うGDLの訴えからは、法改正前に存在感を示したい思惑が垣間見える。

 ドイツでは5月に入り郵便事業会社の集配所でストがあり、一部の保育園や幼稚園でも無期限ストが続いている。だが、鉄道ストとは違い、社会的評価向上などを求める保育士らのストには賛同の声が向けられている。

 ガブリエル副首相は独紙ビルト日曜版(17日付)でGDLのストを「賃金や労働条件を求めるものではなく権力闘争だ」と強い調子で非難。独メディアも委員長の手法を強く批判している。

そんなの当たり前だろう、って?

いやいや、安易に

http://www.sankei.com/world/news/150519/wor1505190004-n1.html

 賃金など労働条件をめぐるドイツ鉄道との交渉に進展がないとして、同国の運転士労働組合は18日、旅客列車の大規模ストライキを20日午前2時(日本時間午前9時)から再開すると発表した。ドイツのメディアが伝えた。

 同労組は今月5~10日にかけ、6日間にわたるストを実施したばかり。このストはドイツ経済に7億5000万ユーロ(約1020億円)の損害を与えたとの試算もある。

 同労組はストの期間は「前回より長い」として、終了時期は明らかにしなかった。貨物列車のストは19日午後3時から開始する。(共同)

無考えにこう報じるだけの記事もあるわけで。「賃金や労働条件を求めるものではなく権力闘争だ」と副首相が言っていることが大変重要なのですよ。

でも、毎日の記事は、正確ではあるけれど、ドイツの労働協約法制の動向を相当詳しくわかっていないと、何のことやらよくわからないでしょうね。

記事中にある「改正法が成立すれば、企業は最大労組と締結した労働協約のみを有効とすることができる」というのがポイントです。

ただ、これだけでは勘違いしてしまうかもしれません。実は、ドイツではごく最近、2010年まで、まさに「企業は最大労組と締結した労働協約のみを有効」であったのです。これは協約単一性原則と言って、判例法理で確立していました。

それが、2010年の判決でひっくり返され、それこそ鉄道の運転士だけの組合とか、航空のパイロットだけの組合といった職種別組合の職種別協約が可能となったのです。

協約単一性原則の上に成り立ってきた巨大産別とナショナルセンターの側から見ると、これはゆゆしい問題で、判決でひっくり返された協約単一性原則を今度は立法で再確立しようというのが、記事に書かれている「政府による労働関連法改正」なんですね。

そしてこの立法への動きは、DGBの声に基づいて社民党が連立交渉でメルケル首相に要求したものなので、だから社民党の党首であるガブリエル副首相が「賃金や労働条件を求めるものではなく権力闘争だ」と強い調子で非難」しているわけです。

ここまで話を腑分けすると、毎日新聞の記事がよくわかるのではないでしょうか。

(高齢者の中には、その昔、交渉単位制のあった頃の国鉄で、機労(後の動労)が単独行動に走っていたことを思い出す方もいるかもしれません)

(追記)

上記私の説明ではようわからんとお思いの方は、金属労協の機関誌『JCM』2015年春号に、JILPTの山本陽大さんが「第三次メルケル政権下におけるドイツ労働法政策の動向」という論文を寄稿していますので、それをご覧ください。

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EUがドイツ最低賃金法を条約違反だと言ってる

昨日、欧州委員会が、ドイツの最低賃金法をEU条約違反だと言い出したようです。

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-15-5003_en.htm

The European Commission decided today to launch an infringement procedure against Germany, concerning the application of the Minimum Wage Act to the transport sector. Following an exchange of information with the German authorities and a thorough legal assessment of the German measures, the Commission has sent a Letter of Formal Notice to Germany. This constitutes the first step in the infringement procedure.

Whilst fully supporting the introduction of a minimum wage in Germany, the Commission considers that the application of the Minimum Wage Act to all transport operations which touch German territory restricts the freedom to provide services and the free movement of goods in a disproportionate manner.

これを読むと、別に最低賃金法を導入すること自体がけしからんといっているわけではなく(それならけしからん国が山のようにあるはず)、ドイツ国内を走る自動車すべてに適用することが、サービス提供の自由に反するという理屈のようです。

しかし、そういうのを認めていくと、安い外国の運輸業者を使おうという話になるかも知れないわけで、そう簡単に分かりましたという話でもなさそうです。

EU市場統合と労働法の相克というテーマにまた一つトピックが追加されたということですね。

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岸健二編『業界と職種がわかる本 ’17年版』

8376_1431562201岸健二編『業界と職種がわかる本 ’17年版』 (成美堂出版)をお送りいただきました。ありがとうございます。

これから就職活動をする学生のために、業界や職種を11業界・8職種にまとめて簡潔に紹介。就職活動の流れや最新採用動向も掲載。就職活動の基本である業界職種研究の入門書として最適な一冊。
自分に合った業界・職種を見つけ就職活動に臨む準備ができる。

ということで、就活用のガイドブックですが、業界研究に「業界を理解しよう」と並んで「各業界の働く環境を知っておこう」がちゃんと入っていたり、業界研究と並んで職種研究があったりと、結構本格派の本になっています。

◇ 将来を見据えた企業選びのために
 ◇ 最新動向を1ページでおさらい 就職活動ポイントチェック
 ◇ 本書の構成と使い方

【第1章】 業界研究

 1 業界を理解しよう
 2 各業界の働く環境を知っておこう
 3 各業界の仕事を理解しよう

【第2章】 職種研究

 1 企業のしくみを知っておこう
 2 職種への理解を深めよう
 3 企業が求める人物像とは?

【第3章】 就職活動シミュレーション

 1 就職活動の流れを知っておこう
 2 準備なくして勝機なし
 3 いざ、企業にアプローチ
 4 山あれば谷ありの就職戦線
 5 先輩たちの就職活動日記
 6 スケジュールチェックシート

【第4章】 最新採用動向

 1 学生確保の競争が激化
 2 活動期間見直しは続く

【インタビュー】 先輩に聞いた就職活動の極意

♦ 「内定」を得た先に ― 将来を見すえたキャリアデザインをしよう


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2015年5月19日 (火)

児美川孝一郎『まず教育論から変えよう 』

46c4dfc647c5f9b9be13c060ec00327a200児美川孝一郎さんから近著『まず教育論から変えよう 5つの論争にみる、教育語りの落とし穴』(太郎次郎社エディタス)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.tarojiro.co.jp/product/5322/

世の中の多くの人が、教育に関心や意見をもっている現代の日本。
居酒屋談義から、ネット上でのTwitterやSNSにブログまで、
テレビをつければ、バラエティから、政治家による討論まで、
関心の高いトピックとして、だれもが評論家のように教育を語っている。

それはこの国の教育や学校にとって、はたして幸福なことだろうか?

議論をすればたちまちのうちの百花繚乱の意見が噴出。
それをなんとか整理して、対立する意見の折り合いをつけ、
調整しようとしても、結局は調停不能に陥ってしまう。
そして気がつくと、合意形成されることはないまま、
一つの教育政策や方針がただ押し通される──。

なぜそうなってしまうのか。
それは百家争鳴の教育論争に、「落とし穴」が潜んでいるからである──。

現在進行形の5つの論争を通して、
誰もが陥りうる「落とし穴」・”教育語り”の存在と、
“教育語り”がもたらす実際の教育への影響を明らかにし、
教育を語るための”教育語り”から、
教育を変えるための”教育論”へ転換するための方法を提示する。

目次は下の方に載せておきますが、「5つの論争」というのは、道徳教育、ゆとり教育、エリート教育、キャリア教育、大学改革の5つです。キャリア教育については既に児美川節の効いた本が何冊もありますが、さらに土俵が広がっていますね。

が、やはり鋭いのはキャリア教育や大学改革について論じている後半部で、「就職ニーズ偏重への“怨恨”」というパラグラフなど、なかなかきつい。

序章◆教育語り、この「神々の争い」
1◎教育の語られ方、五つのパターン
2◎この本で僕が書いてみたいこと

第1章◆腫れ物としての道徳教育
1◎戦後の道徳教育の変遷——道徳の時間から『心のノート』まで
2◎愛国心や徳目を国家が教えられるか
3◎子どもの規範意識は低下しているのか——少年犯罪といじめ
4◎第三のアクターとしての「大衆的気分」——よりましな道徳教育へ

第2章◆ゆとり教育か、学力向上か?
1◎戦後の学力政策史をたどって
2◎学力格差を是認した「新しい学力観」
3◎子どもの「学力低下」の背景にあったもの
4◎学力政策の振り子を超えて

第3章◆タブーとしてのエリート教育
1◎リーダーを育てるのが「エリート教育」
2◎エリートの劣化と、選抜システムへの危機
3◎エリート養成を論じるために

第4章◆キャリア教育になにが期待できるか
1◎学校にキャリア教育がやって来た
2◎企業に尽くすための「適応型」キャリア教育
3◎「夢追い型」キャリア教育の危うさ
4◎自立した「大人」になるための教育

第5章◆だれのための大学改革なのか?
1◎少子化で様変わりする大学
2◎文科省の巧みな誘導とメディアの視線
3◎変貌する大学——現場からの”言い分”
4◎あらためて「なんのため」から「だれのため」へ

終章◆子どもを「理想」の犠牲者にしないために

あとがき


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高井としを『わたしの「女工哀史」』

3811610今月の岩波文庫には、労働関係者必読の高井としを『わたしの「女工哀史」』が入ったようです。

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/38/5/3811610.html

『女工哀史』の著者細井和喜蔵(1897-1925)の妻高井としを(1902-83)の自伝.十歳で紡績女工になった著者は,労働運動を通じて和喜蔵に出会い,自らの体験を生きた資料として提供した.大正昭和の時代,貧しさのなか,ヤミ屋や日雇いで子を育てながら,福祉を求めて闘いつづけた生涯の貴重な記録.(解説=斎藤美奈子)

『女工哀史』を書いたのは女工ではありませんが、『わたしの「女工哀史」』を書いたのは女工そのものです。

版元の解説では、

 Ⅰ「『女工哀史』日記」は、炭焼きをしていた父のもとで育った少女時代、満10歳5ヶ月のときに始まった女工生活、細井和喜蔵との出会いから死別まで、その後、関西に移り、労農党の活動家だった高井信太郎と再婚するまでを描いた「戦前編」。
 満州事変が起きた翌年(1932年)から始まるⅡ「ヤミ屋日記」は、「戦中編」です。治安維持法により何度も拘束・投獄された夫の不在のなか、幼い5人の子を抱えながらの戦中の暮らし、敗戦間際に経験した空襲の生々しさ、火傷による夫の死、そして「ヤミ屋」として働いた敗戦直後の経験が描かれます。
 Ⅲ「ニコヨン日記」では、戦災からの復興期、1951年48歳のときから、71年まで続けた日雇い労働(「失対」=失業対策事業)での日々、とくに51年に結成した全日本自由労働組合の活動で、日雇い労働者の健康保険の制度化、教科書無償化闘争、託児所や乳児院の設立などのために闘ったようすが、出会った人々との思い出や自作の詩歌とともに記されます。
 「解説」は文芸評論家の斎藤美奈子さん。本書の第一の意義は、「細井和喜蔵の横顔と『女工哀史』執筆の舞台裏を伝える貴重な史料」であることとしつつ、驚嘆せずにはいられないバイタリティによって人生を切り拓いていく姿について、彼女の人生は、「むしろ『女工快史』と呼びたい」と評しています。明治末期に生まれ、大正・昭和の時代を働きながら子どもたちを育てたひとりの女性のこの傑出した一代記が、多くの読者に届くことを願っています。

ここでは、彼女が東京に出てきて東京モスリンに就職し、そこで初めてストライキに遭遇して思わず演説してしまった下りを紹介しておきましょう。

・・・その後、年月日は忘れましたが、あれは夏だっかたと思いますが、東京モスリンでもストライキがあり、決起集会が行われました。場所は寄宿舎内の大広間で、私たちがお茶やお花を習ったり、偉い人の話を聞かされる行動でした。珍しく外から通勤している男の人や、初めてお目にかかる大日本労働総同盟友愛会の偉い人たちがいました。おおぜい集まって、役員さんの話を聞いたのです。世界のうちで日本が一番労働運動が遅れていることや、外国の八時間労働、賃上げ、自由の権利なぞむつかしい話が多く、私たちはぽかんとした顔で聞いていました。

私も何か言いたくてたまらなくなり、思わず立ち上がって演壇に上がりましたが、何を言っていいのやら、目的も考えなかったので足は震えるし、顔は山火事のようで声も出ず、立ち往生でぶるぶると震えていました。書記長の藤山さんが「堀君、そこへ震えに上がったんか。何か言いたいことがあったら言いなさい」と言われて、はっと気がついて、私は子供の頃から弁護士と言われたほどの口達者だったことを思い出し、負けるものかと思いました。

「皆さん、私たちも日本人です。田舎のお父さんお母さんの作った内地米を食べたいと思いませんか。たとえメザシの一匹でも、サケの一切れでも食べたいと思いませんか。町の人たちは私たちのことをブタだ、ブタだと言いますが、なぜでしょう。それはブタ以下のものを食べ、夜業上がりの日曜日は、半分居眠りしながら外出してのろのろ歩いているので、ブタのようだというのです。私たちも日本の若い娘です。人間らしい物を食べて、人間らしく、若い娘らしくなりたいと思いますので、食事の改善を要求したしましょう」こんな内容だったと思います。全員の大拍手で、私は頭がふらふらになりましたが、その要求は次の日、いなり寿司が昼食に出され、次の日はイワシの焼いた物なぞが出されて、カツ丼やカレーライスなどがときどき食べられるようになり、ストライキも終わりました。

・・・・・

ストライキが終わって十日ほど過ぎたある夜、私の部屋へ外の部屋の人たちが怒鳴り込んできました。「こら、演説語りおるか。お前が要らんことを言ったので、ブタやら牛やら食べさせられて、おおぜい腹壊して診療所へ行ってる」と言うのです。室長の青木さんと私は、何がなにやら訳が分からんままに、平謝りに謝って、私は診療所にとんでいって、お医者さんに聞きました。先生は笑いながら、「心配せんでもいいよ。食べ慣れん脂気の多い食べ物を食べたので、胃がびっくりしているのだから、これからも肉や魚をたくさん食べなさい」と言われて、私はやれやれと胸をなぜ、安心しました。

そしたら今度は、お昼に出されたカレーライスに食堂の中は大騒ぎ。「こんなネコのへどみたいなもの食わないよ、また腹痛になると困るから」というのです。だけど女工さんの中にも東京生まれの人も少しはいて、室長をしている廣瀬さんという人が「大丈夫だよ。カレーライスといってね、西洋料理だよ。みんな食べず嫌いはよしなさい。田舎者だと笑われるよ。また堀さんに文句を言ったらいけないよ」と言ってくれましたので、私はつるし上げを免れたのです。・・・・・・

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NPO法人 あったかサポート 第10回総会記念シンポジウム「労働・教育・福祉の一体化に 向けた政策課題を探る」

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2015年5月18日 (月)

違法な長時間労働を繰り返している企業に対する指導・公表について

先週新聞で報じられていた件ですが、本日の臨時全国労働局長会議に資料が出されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000085142.html

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000085321.pdf

公表対象の基準は以下の通りとのことです。

そのまま転記しておきます。

指導・公表の対象は、次のⅠ及びⅡのいずれにも当てはまる事案。

Ⅰ 「社会的に影響力の大きい企業」であること。
⇒ 具体的には、「複数の都道府県に事業場を有している企業」であって「中小企業に該当しないもの(※)」であること。
※ 中小企業基本法に規定する「中小企業者」に該当しない企業。

Ⅱ 「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと。

1 「違法な長時間労働」について
⇒ 具体的には、①労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、かつ、➁1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていること。

2 「相当数の労働者」について
⇒ 具体的には、1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者において、「違法な長時間労働」が認められること。

3 「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」について
⇒ 具体的には、概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で「違法な長時間労働」が認められること。

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2015年5月17日 (日)

日本労働法学会第129回大会@近畿大学

本日、東大阪の近畿大学で日本労働法学会第129回大会が開かれました。

http://www.rougaku.jp/contents-taikai/129taikai.html

プログラムは以下の通りですが、

1.受付開始 8:15~
2.個別報告 9:00~11:10 第一会場テーマ:「疾病による労働契約の終了-疾病休職過程における法的規律の日独比較」
報告者:石崎由希子(横浜国立大学)
司会:荒木尚志(東京大学)

テーマ:「労働協約締結権の再構成-ドイツ法における協約能力の議論を契機として-」
報告者:植村新(和歌山大学)
司会:村中孝史(京都大学)

第二会場テーマ:「EU性差別禁止法の展開―実質的平等法理生成の意義と課題―」
報告者:黒岩容子(弁護士)
司会:浅倉むつ子(早稲田大学)

テーマ:「労働者派遣における契約関係をめぐる法的考察」
報告者:鄒庭雲(九州大学)
司会:野田進(九州大学)

3.特別講演 11:15~12:00 テーマ:「労働法解釈の在り方について-実態の把握、分析、法理論化-」
報告者:萬井隆令

4.昼食・休憩 12:00~12:50
5.総会 12:50~13:20
6.ミニ・シンポジウム 13:30~17:30 第一会場 「労働条件の決定・変更と労働者の同意」司会:唐津博(中央大学)
報告者:奥田香子(近畿大学)
石田信平(北九州市立大学)
土田道夫(同志社大学)

第二会場「ワークルール教育の意義と課題」司会:道幸哲也(放送大学)
報告者:國武英生(小樽商科大学)
淺野高宏(北海学園大学・弁護士)
開本英幸(弁護士)

第三会場「男女雇用機会均等法をめぐる理論課題の検討」司会:浅倉むつ子(早稲田大学)・山川隆一(東京大学)
報告者:相澤美智子(一橋大学)
富永晃一(上智大学)
神尾真知子(日本大学)

わたくしは、個別報告は石崎さんと鄒さん、ミニシンポはやはり今までの行きがかり上、ワークルール教育に出ました。

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2015年5月14日 (木)

谷口明丈編『現場主義の国際比較』

177680谷口明丈編『現場主義の国際比較 英米独日におけるエンジニアの形成』(ミネルヴァ書房)を、執筆者の関口定一さん、田中洋子さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b177680.html

「現場主義」は日本の産業に固有の特性なのであろうか。そんなことはない、かつて日本人は「現場主義」でなかった、とケネス・ホッパーは言う。真実はどこにあるのだろうか。その解を求めて、第一線の研究者が共同で、イギリス、ドイツ、アメリカ、日本におけるエンジニア形成の過程を探る。

[ここがポイント]
◎ エンジニアという職種がどのように形成されてきたか、先進諸国で比較している。
◎ 「現場主義」という言葉の持つ多義性を、国際比較の中で明らかにする。

目次は以下の通りです。

まえがき

第1章 イギリスにおける技師の自己定義と「現場主義」——徒弟制度、高等教育、職業独占(小野塚知二)
 1 技師の入職過程の「現場主義」と職務の非現場的性格
 2 「技師」の非自明性
 3 技師協会と「技師」の再定義
 4 入会者の経歴
 5 管理問題の発見と「現場離れ」

第2章 ドイツの技術開発における現場と理論——クルップ社技師のキャリア分析を事例に(田中洋子)
 1 「現場主義」をめぐる研究史
 2 技師・技術者の定義とキャリア
 3 技術開発の担い手分析⑴——火砲技術
 4 技術開発の担い手分析⑵——合金・ステンレス鋼技術
 5 ドイツにおける技師と技術開発の特徴とは何か

第3章 ドイツ化学企業のエンジニア層の「現場主義」——ゴールトシュミット社の人事書類の分析(石塚史樹)
 1 ゴールトシュミット社とエンジニアの人事書類
 2 企業組織とエンジニア
 3 機械エンジニアの「現場主義」——アントン・ルートヴィヒの事例
 4 化学エンジニアの「現場主義」——ヨーン・ヴァットマンの事例
 5 エンジニアの地位の変化

第4章 立身出世の夢と現実——自由労働から科学的管理へ(木下 順)
 1 「現場主義」と階級形成
 2 フィラデルフィアのメカニック
 3 ウースターのメカニック
 4 科学的管理の生成
 5 「現場主義」の発生

第5章 「現場経験」を通じた大卒エンジニア育成——GEの「テスト・コース」の場合(関口定一)
 1 「現場主義」——アメリカと日本
 2 GEの「テスト・コース」
 3 「テスト・コース」での教育・訓練
 4 「テスト・コース」における「現場経験」
 5 大卒エンジニア育成における「現場経験」の意味

第6章 近代日本の鉄道技術者——日清戦後期における工部大学校出身者の位置と役割(中村尚史)
 1 「現場主義」教育と技術者
 2 鉄道業の急拡張と技術者
 3 日清戦後期における鉄道技師
 4 明治中後期における工部大学校土木学科出身者
 5 「民鉄中心の時代」と工部大学校出身者

第7章 日立製作所の新製品開発と技術者の「現場主義」——「現場主義」の起源(市原 博)
 1 技術者の「現場主義」論の問題点
 2 創業期の技術形成と技術者の職務行動
 3 設計の専門化・標準化と職能間の分離
 4 「現場主義」的な取り組み
 5 「現場主義」の限界
 6 技術者の「現場主義」の起源と限界

終 章 エンジニアの形成と「現場主義」(谷口明丈)
 1 各章で明らかにされたこと
 2 エンジニアの存在の多様性
 3 「現場主義」の多義性
 4 エンジニアの形成と「現場主義」

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精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を大きく上回る

昨日厚労省の発表によると、

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11704000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-shougaishakoyoutaisakuka/0000084782.pdf

ハローワークを通じた障害者の就職件数が5年連続で過去最高を更新
精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を大きく上回る

精神障害者の就職が依然急増しているようです。

身体障害者 28,175 件 132 件減( 0.5%減)

知的障害者 18,723 件 1,074 件増( 6.1%増)

精神障害者 34,538 件 5,134 件増(17.5%増)

その他の障害者 3,166 件 643 件増(25.5%増)

合 計 84,602 件 6,719 件増( 8.6%増)

もちろんこれは、一昨年の改正で精神障害者の雇用が義務づけられることになったことが原因ではありますが、その部分の施行は2018年とまだ3年も先で、まだ省令指針も出来てないどころか審議も始まっていない状況なのに、フライング的に精神障害者の雇用が急増しているのは、どうせ義務づけられるのであれば、今のうちに良い(使える)精神障害者をゲットしておこうという目論見が企業側にあるからなのでしょう。

Mental

リンク先の後ろの方に産業別の状況が載っていますが、ハローワーク全体では医療福祉は21.5%なのに、障害者全体では34.8%、それも身体障害者や知的障害者は31.1-2%なのに対して、精神障害者は医療福祉が40.0%と他を圧しています。

残念ながら、身体障害の部位別数値はありますが、精神障害の内訳はありません。そろそろそういうデータも必要なのではないでしょうか。

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2015年5月13日 (水)

労働オーラルヒストリー一気に3冊

梅崎さんより労働関係オーラルヒストリーの報告書を一気に3冊もお送りいただきました。

『《元連合大阪会長・元クボタ労連委員長》石原利昭氏オーラル・ヒストリー』

『全国一般オーラル・ヒストリー《田島恵一・元委員長、高原壮夫・元副委員長》』

『吉村俊夫オーラル・ヒストリー(元三菱電機労働組合中央執行委員)』

の3冊です。

はじめの二つは、梅崎・南雲・島崎の各氏が、最後のはJILPTの鈴木誠さんがインタビュワです。

ここでは、インタビューに至る経緯が書かれたところを簡単に紹介しておきます。

石原氏については、大阪のエル・ライブラリの谷合さんの推薦で始めたそうです。

全国一般の田島さんは、なんとライバル組織であるゼンセンの二宮誠さんの紹介だったとか。二宮さんについては、本ブログでも以前取り上げましたが、オルグの現場で競い合う相手をお互いに評価しあっているということなのでしょうか。

政治的色分けからすれば、全国一般はいわゆる左派であり、ゼンセンはいわゆる右派ですが、田島さんの言葉を引けば、どちらも「労働組合主義」だということになります。

その田島さん経由でインタビューした高原さんのお話も興味深いものです。

最後の吉村さんは、鈴木誠さんが修士時代に取り組んでいた三菱電機の人事処遇制度の研究で、いきなり電話をかけて資料を見せて欲しいと頼んで以来の関係ということです。

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2015年5月11日 (月)

吉田典史『会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ』

Kuchiguseあの『悶える職場』でおなじみの吉田典史さんから近著『会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ』(KADOKAWA)をお送り頂きました。ありがとうございます。

「社畜になるな」「ウチの部署では無理」「俺は闘ってきた」……。会社で落ちこぼれる人には共通して口にする言葉があり、出世する人には周囲を味方にする言葉がある。会社で生き残る術は口ぐせにあり。

今までの結構重い本に比べると、(よくよく考えるとじわじわと重かったりしますが)わりと軽めのタッチの本です。

その「会社で落ちこぼれる人」の例としてやたらに頻出するのが、吉田さんが付き合っている出版社の方々で、これって業界ではどこの誰だか分かってしまうんじゃない?と余計な心配をしてみたり。

・・・例えば、大手出版社(社員数約600人)の30代後半の編集者や、中堅の出版社(社員数約200人)の40代前半の編集者などは、私との打合せでは、こんな言葉をひんぱんに口にします。

「うちの会社の人事制度は年功序列だから、30代は管理職になれない。それに対して、ベンチャー企業は実力主義だから、力があれば管理職になれる」

私は言い返したくなります。自社の人事制度も知らないくせに、よくそこまで嘘がつけるな、と。

ちなみに、この人達は、後輩である20代社員たちから、「使えないおっさん」と陰口を叩かれまくりなのです。そのことを、面白いくらいに知らないのです。

さらに恥じらいもなく続けます。・・・・・

圧倒的に多くの方々が「あるあるbot」とつぶやきたくなるような光景ですね。

年功序列の真の問題点は、「年功序列のせいで俺様は出世できない」といっている使えない人間をそれでも年功的に処遇せざるを得ないというところにこそあるのでしょう。

それにしても、ここまで特定して大丈夫なの?と思ってしまいますが、この程度では全然特定したことになっていないくらい普遍的な現象ということなんでしょうか。

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遊郭のストライキ!?@『DIO』304号

Dio 『DIO』304号が刊行されたようなので、ざっと見ていったら・・・、

http://rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio304.pdf

いや、その前に、特集は「 「らしさ」にとらわれない生き方 −男性からの視点・女性からの視点」で、これはこれでとても大事です。

なんですが、一番興味を引かれたのは、後ろの方の杉山豊治さんの書評で、山家悠平『遊郭のストライキ』という本が紹介されていて、その文章を読んだら、とても読みたくなりました。

本書の題名にある「遊郭」という 言葉から、読者の方々の中には 誤解をする方もいるかも知れない。し かし、本書が描き出しているのは「遊 郭」という特殊な場所で、耐え難いほ どの厳しい環境の中に身をおきつつ も、働く環境の改善を求め、ストライ キ等の手段を行使しつつ闘ってきた女 性たちの歴史である。

 本書が扱っている時代は、現代から およそ約 1 世紀前、1900 年前半の できごとである。作者は、当時の新聞 記事を中心に丹念に情報を集め、当時 の姿を鮮明に描き出している。読者の 皆さんには、楼主、芸妓を現代の使用 者、労働者に置き換えて、比較しつつ 読んでもらいたい。芸妓の待遇改善な どに真っ向から反対する楼主の対応 と、意図的に脱法行為を行う現代の一 部経営者の姿、働くことに関する知識 が乏しいばかりに、過酷な労働条件を 強いられている現代の労働者と本書の 芸妓の姿には、誤解を恐れずに言えば、 同様の匂いが感ぜられる。・・・

前に本ブログで紹介した『ミッキーマウスのストライキ』以上に、集団的労使関係とは無縁そうに見える世界での労働者の闘いの歴史ですが、それゆえにこそ、現代の労働社会の姿を逆照射するものでもあるのでしょう。

9784907986063 書評では章を追って内容を説明していきますが、そちらは下の方に目次をコピペして代用することにして、ここでは杉山さんが書評の3分の1以上を費やして引用している本書の著者のあとがきの言葉を再引用しておきたいと思います。

 「遊郭の中の女性たちが、ストライ キを生きるための手段を選びとって いった時代から 90 年近くが過ぎた現 在、セックスワーカーや非正規労働者 を取り巻く状況は、やはり困難に満ち ているといわざるを得ない。むろん、 人身売買と過酷な搾取のもとにあった 遊郭の中の女性たちと現在を生きる労 働者とを単純に比較することはできな いが、それでも労働者の団結というこ とに絞ってみるならば、派遣労働や有 期契約のもとで多くの労働者は分断さ れ、ストライキはおろか自分たちの問 題について相談し共有することすら難 しい状況で働き続けることを余儀なく されている。だからこそ、人間性への 搾取と圧倒的な不自由さの中にあって も、言葉を紡ぎあい、状況を切り開く ためにストライキや不正の告発を行 なった芸妓や娼妓たちの生の痕跡に、 現代における抵抗を模索するための重 要な手がかりがあるとわたしは考えて いる。この本が現代を生きるセックス ワーカーや非正規労働者たちが状況改 善を模索する中で、行動のためのひと つの手がかりとなれば幸いである。」  この言葉に、本書の価値が表されて いる。  最後に、当時の芸妓を取り巻く支援 者たちには状況改善や不正の告発とい う当事者の主張を評価する視点が圧倒 的に欠けているように思われるとの作 者の指摘は考えさせられる。

目次は以下の通りです。

はじめに 

語られなかった歴史を語るということ

第1章 芸妓・娼妓を取り巻く環境

遊廓の「近代」の始まり/廃娼運動の誕生/廃娼運動への批判的視座

第2章 遊廓のなかの女性たち

閉ざされた門のなかで/識字率の上昇と情報の流入/遊廓を離れてから

第3章 一九二六年の大転換

遊廓の改善という世論の高揚/新聞にあらわれる「娼妓」たち

第4章 実力行使としての逃走

逃走の時代の幕開け/広島、弘前、ふたつの直接行動/逃走の時代のあとに

第5章 逃走からストライキへ

凋落する遊廓/大阪、松島遊廓金宝来のストライキ/佐賀、武雄遊廓改盛楼のストライキ/遊廓のなかの女性たちが「求めたこと」

わりに 

「解放」と「労働」の境界で

私もまだ書評しか見ていないので、近いうちに入手して読んでみたいと思います。そういう意欲をそそってくれるよい書評でした。

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2015年5月 9日 (土)

第88回日本産業衛生学会

再度のお知らせです。来週金曜日に、大阪で開かれる第88回日本産業衛生学会のシンポジウムに出席します。

http://convention.jtbcom.co.jp/jsoh88/

Jsoh

Pg

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野川忍『労働協約法』

199038野川忍さんより『労働協約法』(弘文堂)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.koubundou.co.jp/book/b199038.html

さてしかし、このタイトルを見て「あれ?『労働契約法』じゃないの?」と感じた方も多いのではないかと思います。

昨今、労働契約法を論ずる人は山のようにいますが、たった一字違いの労働協約法の方は、閑古鳥が鳴いている、とまでは言わなくても、あまり客の寄りつかない寂れた古店という風情で、野川さんが450ページを超える大著をつぎ込むようなテーマとはあまり思われていないでしょう。

でも、本書は『労働協約法』なんです。人気のない集団的労使関係法制の中心テーマに真っ向から切り込んでいます。

 労働組合の組織率が低迷し、多様な雇用・就労形態が進み、個別の労働関係が重視される現代だからこそ、新たな共通の課題を抱えた労働者の新しい団結と連帯が不可欠になってくるのではないだろうか。そして、就業規則ではなく個々の労働契約が労働関係の規範としての重要性を高めることは、他方で、労働者と使用者との実質的対等性に由来する合意としての労働協約の役割を復活させる契機となりうるのではないか。
 そのような問題意識から、雇用社会と労働法制の法的基盤を形づくる機能をもつ労働協約を体系的に論じ、その可能性を探り、雇用社会の未来につき、ひとつのオルタナティブを提示する書です。

野川さんが何を思ってこういう本を書いたのか。

「序 労働協約法の意義」の冒頭と最後のパラグラフで、こう宣言しています。

 本書は、労働協約の新たな機能と効力が、21世紀における労働法学の中心課題の1つになるとの認識を前提として、労働協約をめぐる諸課題を可能な限り包括的に検討しようとするものである。

・・・・・・・

 現在、労働協約に関して不可欠の作業と思われるのは、このように憲法秩序の上でも実際の機能の上でも重要性を失わない労働協約につき、収拾のつかないまま時間のみが経過している諸課題に一定の法的区切りをつけ、日本の憲法秩序の下に適切に位置づけられ、かつ国際的にも普遍性を有するような「労働協約を基軸とした労働関係と労使関係の法的構築」への道筋をつけることにあろう。

言うまでもなく、現実の日本の労働社会は、労働協約が基軸どころか、就業規則が根本規範として通用する社会であるわけですが。

第I編 総 論
  序  労働協約法の意義
  1章 労働協約の意義
  2章 労働協約の主体
  3章 労働協約の法的性格
  4章 規範的効力
  5章 債務的効力

第II編 各 論
 I 労働協約の成立・期間・内容・終了
  1章 労働協約の成立
  2章 労働協約の期間
  3章 平和義務
  4章 労働協約の内容と解釈
  5章 労働協約の終了と終了後の法的課題
 II 労働協約の一般的拘束力
  1章 一般的拘束力の意義
  2章 労組法17条の一般的拘束力
  3章 労組法18条の一般的拘束力
 III 労働協約と他の規範との関係
 IV 労働協約による労働条件の不利益変更
 V 労働協約と現代的課題
 VI 結 語  

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2015年5月 8日 (金)

田中萬年「わが国における「徒弟」法制化の課題」

田中萬年さんから「わが国における「徒弟」法制化の課題」の抜き刷りをお送り頂きました。

ブログを辞められてしまい、なかなか萬年節を聞けないのが寂しいですが、論文では依然お元気そうです。

ご本人が論文を二つに分けてPDFファイルでアップされているので、リンクを張っておきます。

http://www.geocities.jp/t11943nen/ronbun/TOTEImae.pdf

http://www.geocities.jp/t11943nen/ronbun/TOTEIato.pdf

冒頭の第2パラグラフでいきなり私のブログ記事が登場します。

・・・濱口桂一郎はブログでEUの若者上質徒弟制会議について紹介している中で「アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等々の先進国、ブラジル、南アフリカ、中国、韓国までぞろりと登場しているのに、日本の代表は少なくとも発言者としては出ていないようです。/先進国も新興国も、世界共通の政策課題として徒弟制がこれだけ取り上げられているのに、そこに日本の姿がないのは寂しい思いがします。」と記している。"Apprenticeship"という呼称で世界で議論しているにもかかわらず、わが国は、G20にも入っていないような感を与える。何故にわが国は"Apprenticeship"に無関心なのだろうか。・・・・・

以下徒弟学校の推移を述べていきますが、興味深いエピソードが後ろの方に出てきます。

・・・例えば、東京職工学校(今日の東京工業大学)卒業生は当時を次のように回想している。

学生としては到底耐えがたき労苦を嘗めさせられ、・・・小石川砲兵工廠の職工と同様の扱いを受け、・・・近所の子供達には・・・可笑しいな、可笑しいな袴をはいた職人が学校に行くと・・・からかわれた

この職工を見下す意識が、今日の知識人諸氏にも脈々と受け継がれていることを、ブログ閉鎖後も続けておられるツイッター上で萬年節全開で皮肉っておられます。

https://twitter.com/T10000nen/status/596149216805670912

高橋源一郎は立教大学総長の式辞を引用して 「それは、いま、大学を体のいい『職業訓練所』としか考えなくなりつつある社会への反『論』でもあったろう。」と論じている。(朝日新聞4/30)  大学が「体のいい」なら、職業訓練所は体が悪いのか。 「根本から考えるために」に反する論評だろう。

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二つの「第2のセーフティネット」~住宅編

WEB労政時報のHRWatcherに「二つの「第2のセーフティネット」~住宅編」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=383

今年4月に改正生活保護法とともに生活困窮者自立支援法が施行されました。ここには、2012年4月から翌2013年1月まで社会保障審議会(生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会:学識者・支援団体代表等24人、部会長:宮本太郎・北海道大学大学院法学研究科教授)で議論され提起されたさまざまな支援事業が規定されており、厚生労働省社会・援護局は「生活保護に至っていない生活困窮者に対する第2のセーフティネット」と呼んでいます。
※社会保障審議会(生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会)⇒リンクはこちら
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126703

 「第2のセーフティネット」と言えば、労働政策においては雇用保険が受給できない求職者に対する職業訓練受講給付金のことを指して呼んでいます。もともと2008年末に貸付事業として開始し、2009年に予算措置で基金訓練による訓練・生活支援給付として設けられ、2011年に求職者支援法として恒久化した制度です。同じ厚生労働省の中に、「第2のセーフティネット」が二つあるわけです。・・・・・

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2015年5月 7日 (木)

警官労働組合へのストライキ禁止は結社の自由違反か?

去る4月21日、欧州人権裁判所がスペインバスク地方の警察官労働組合の訴えに対して、ストライキの禁止は結社の自由の違反ではないと退ける判決を出したようです。

http://hudoc.echr.coe.int/webservices/content/pdf/003-5067285-6235721

たしかに、人殺しだぁっ、と警察に駆け込んだら、スト決行中なので後にしてくれと言われたら困るので、そういう判決になるだろうなとは思います。

とはいえ、これによると、バスク自治政府の内務省との労働条件についての交渉が決裂したのでストをしようとしたらダメだと言われたので訴えたということのようで、団体交渉権はちゃんとあることは前提のようです。

ちなみに、以前本ブログで話題になった超リバタリアンなアナルコ・キャピタリズムの世界では、警察機能はそのもっとも本質的な部分まで民営化されているので、論理の指し示すところ当然スト権もあることになるでしょうけど。

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2015年5月 4日 (月)

『「日本的雇用システム」の生成と展開』連合総研

Dio 連合総研のホームページに『「日本的雇用システム」の生成と展開』という報告書がアップされています。

http://rengo-soken.or.jp/report_db/file/1430367361_a.pdf

職務ではなく企業組織への帰属をベースとするいわゆる「日本的」な雇用システムは、経済変動や産業構造の変化に伴って見直しや再評価の動きが繰り返され、労使交渉にも影響を与えてきました。最近では、成果主義賃金の導入とその行き過ぎの見直しが指摘されていますが、今後の方向が定まっている状況にはありません。労使が確信をもって交渉を進めていくには、時々の動向に対応していくのではなく、これまでに形成されてきた雇用慣行や労使関係が、どんな歴史的経過を経てきたかをきちんと踏まえることが不可欠となっています。

そこで、2012 年 12 月に「「日本的」雇用システムと労使関係の歴史的検証に関する研究委員会」(主査:佐口和郎東京大学教授)を設置し、これまでの産業構造や社会構造の変化を踏まえたうえで、現代の「日本的」雇用システムがかかえる諸問題の源流と、それらの各時代での扱われ方についての検討を通じて、今後の雇用システムのあり方について検討を行い、その成果を報告書に取りまとめました。

本報告書が、「日本的」雇用システムが変容を余議なくされる中、様々な対応を求められている労使をはじめ関係の皆様にとって、今後の的確な対応を図る上での一助となれば幸いです。

おわりに、本報告書の刊行に当たり、本研究委員会における議論をリードするとともに本報告書のとりまとめにご尽力いただいた佐口主査をはじめ、活発な議論を展開していただいた委員の皆様に、この場をお借りして厚くお礼申し上げる次第です。

執筆者入りの目次がないので、執筆者一覧と目次をコピペして組み合わせておきます。

どなたが何章のどういう論文を書かれたかがこれでわかるでしょう。

第Ⅰ部

第1章 日本的雇用システムと労使関係-戦後史論 主査 佐口 和郎 東京大学大学院経済学研究科教授

第Ⅱ部

第2章 終戦直後から 1960 年代までの賃金体系-「資格給」の確立を中心に-禹 宗杬 埼玉大学人文社会科学研究科教授

第3章 日本的能率管理の形成過程:1950、60 年代 青木 宏之 香川大学経済学部准教授

第4章 非正規雇用・女性雇用 禿 あや美 跡見学園女子大学マネジメント学部准教授

第5章 1970 年代以降の人事・賃金制度 畑 隆 常葉大学経営学部教授

第6章 日本的雇用システムと教育資格・職能 市原 博 獨協大学経済学部教授

第7章 労働組合としての<企業別>組合 上田 修 桃山学院大学社会学部教授

(追記)

https://twitter.com/ryojikaneko/status/595911653788487680

何気に佐口先生の論稿、力作だな。

いや、力作と言うよりも・・・・・・

千頁を超える大著になるべき内容をざっとメモしたレジュメを読まされている感が半端ないんですけど・・・・。

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日本国憲法第27条第2項の「休息」

昨日は憲法記念日でしたが、世間で騒がれるたぐいの話に近寄る気はないので遠巻きにしていますが、とはいえ日本国憲法には(こういう折に騒いでもらえないけれども)それはそれなりに大事な条項もあったりするし、真面目に考えると結構大事だったりする概念がさりげに入っていたりするので、もう7年近くも昔のエントリですが、関連部分をお蔵出ししてみたいと思います。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-807a.html (休息時間なくしてワーク・ライフ・バランスなし)

・・・興味深いのは、休息時間規制は労働基準法にはないけれども、

第二十七条  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

と、憲法にははっきりと明示されていることを指摘していることです。・・・

(追記)

参考までに、英文でいうと、

Article 27.

All people shall have the right and the obligation to work.

Standards for wages, hours, rest and other working conditions shall be fixed by law.

レスト(休息)であって、ブレイク(休憩)ではありませんね。

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「いやあ,戦後,女に選挙権を与えたのがそもそも の間違いでしたな。ワッハッハッハ」

『大原社会問題研究所雑誌』4月号が同研究所のサイトにアップされています。

http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/678/index.html

特集は、「第27回国際労働問題シンポジウム ディーセントな雇用創出と雇用制度改革」で、次のような人々が喋っていますが、

特集にあたって 鈴木 玲 →PDF01

2014年のILO総会について 上岡恵子 →PDF02

第6議題の議論について 上村俊一 →PDF03

政府の立場から 堀場絵里香 →PDF04

労働者の立場から 向澤 茂 →PDF05

使用者の立場から 松井博志 →PDF06

労働法制の展開と課題 野川 忍 →PDF07

パネルディスカッション →非公開

参考資料 →PDF09

一番読んで面白いパネルディスカッションの部分がなぜか非公開になっていますが、

そのパネルで面白いやりとりが起こるネタを作った野川忍さんの発言はPDFファイルで全部読めますので、そのネタの部分を含む一節をご紹介しておきます。

http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/oz/678/678-07.pdf

・・・この高度成長期というのは,どのような特質を持っているのか。高度成長時代の本質は企業における人材の長期的な育成活用です。要するに,企業の中核的な労働力については若い人を採用して,定年まで自分のところの企業か関連企業でもってずっと雇用し続けていく。勤続を奨励し,解雇権は自己抑制し,その代わりに企業に対する精一杯の献身を期待するということで,内部労働市場,つまり企業内労働市場を極めて高度化していく。その代わり頻繁な転職ということは論理必然的に想定されませんので,外部労働市場は未熟なままで進んでいくという状況です。

 労働組合も,企業ごとに正社員を丸ごと組織して,企業と緊密に協力していく。これで企業内労使関係ができて,これは右肩上がりの時代には非常に功を奏したわけです。ちなみに日本の女性が家で働いて,男は朝から晩まで企業で働くのが普通の姿だというイデオロギーも,この時代に出来上がりました。

 というのは,それでうまくいったからなのです。当時の働き方は労働集約的な働き方が中心で,東京にも工場がいっぱいあって,工員さんが働いていて,長く一生懸命みんなで働ければ生産性が上がる時代でした。重筋労働は,一生懸命,力を使って,体力や気力を使って頑張るという仕事なので,そういうことを子どものときからたたき込まれている男のほうがなじむわけです。しかもみんなと一緒になって,濃密な会社との間の人間関係を形成していったほうが効率的なわけです。

 女性はどうするのかというと,専業主婦となって,企業も家族手当だとか住宅手当だとか子女教育手当だとかを出して,家族ごと丸抱えするということに成功しました。経団連の松井さんは違うと思いますが,一定年齢以上の男性たちはいまだに女は家で家事育児をやって,男が働くのが当然だというイデオロギーの持ち主は多いです。

 赤松良子さん,均等法を作ったときの労働省の局長ですが,あの方が本の中で書いていましたけれども,経団連の当時の稲山さんという会長のところに行って,「均等法を作りたいのでお願いします」と言ったら,稲山さんが何と言ったか。「いやあ,戦後,女に選挙権を与えたのがそもそもの間違いでしたな。ワッハッハッハ」と言ったという状況は,本質的に変わっているのかなということがあります。

 長期雇用システムというのはそういう意味でうまくはいったけれども,それをいまだに続けるというのはいかがなものかという状況になってきている。しかしそれを前提として判例法,つまり裁判所によって,企業人事のルールができました。例えば2つだけ申し上げます。

 1つは就業規則法理。アメリカでもドイツでもイギリスでも,一応,人を雇うときにはこれは労働契約だという意識があります。例えば私が住んでいたドイツでも,文房具屋さんに行くと労働契約のフォーマットの書類が売っているのです。それをコピーして必要事項を書き込めばいいようになっています。自分が会社で働くということは会社と契約を結ぶことなのだと考えられています。

自分が賃金いくらで,何時間働いて,休憩時間がどうなっていて,ということは合意の上で決めるのだということが認識されています。

 日本の労働者はそんな認識をしている人はごく少ない。会社で働くということは,組織の一要素となって,全て会社の言った通りに動くことなのだと認識しています。賃金がいくらかも,労働時間がどれくらいか,会社が言ったことに従うのが当たり前なのだと思い込んでいる。

 しかし実際には,民法の世界からいうと,日本でも労働関係は契約関係なのです。契約関係だという原則がありつつ,実態は,会社に入ったら全部就業規則によって会社が労働者を組織の一要素として扱っているという状況があり,原則と実態が乖離しています。法律の原則は契約合意なのに,実態は就業規則による管理だと。これを何とかしなくてはいけないということで,日本の裁判所は,就業規則の内容が合理的で周知されていれば,それは嫌だという労働者もこれに従うということをルールとして確立した。これが7年前にできた労働契約法に取り入れられたわけです。

 もう1つは解雇法理です。解雇権濫用法理という理屈ですが,例えば労働者が解雇される。企業側にはもちろん理由があります。「いくら仕込んでもこいつはだめだ。だからやむを得ず解雇したのだ」と言っても,裁判所に行くと「この解雇は無効だ」と言われることが多い。それをもって企業側は日本の解雇の規制は厳しすぎると言うのですが,実はそんなことは全然ありません。

 それは高度成長期に労使で暗黙の了解の取引があったからです。労働者は企業にほとんど絶対的に服従します。その代わり雇用保障を期待する。逆に,企業からいえば,おまえの雇用だけは命がけで企業は保障するから,夜中でも働いてくれ,東京からどこへでも辞令1本で飛んでくれ。家庭も顧みず働いてくれと。これは取引です。強大な人事権と雇用保障。これが取引で成り立っていたのです。だから日本の労働者もそれで了解していた。

 だとすると,安易な解雇はいわば取引違反です。企業社会自身が作り上げた慣行に違反しているわけです。だから安易な解雇が無効になるのは別に何も理不尽ではなかった。逆にいえば,そういった慣行がなくなっていって,外資系企業あるいは外国の企業型のようにドライでいつ転職してもいいよ,でもいつでも首にするよと,そんなに企業に縛らないよと,契約できちっと決めましょうということになれば,解雇規制も変わっていくでしょう。そういう話です。

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2015年5月 2日 (土)

フランス労使関係法改正案

欧州労研のサイトに、フランス政府の労使関係法改正案とそれに対する主要労組の反応が載っています。

http://www.etui.org/News/Social-dialogue-reform-in-France-trade-union-reactions

On 22 April last, French Employment Minister François Rebsamen unveiled his draft law intended to ‘modernise’ the social dialogue. The main measures contained in this text are the following: creation of a regional representative body for firms with less than eleven employees; broader possibilities for merging worker representation bodies (i.e. trade union delegation, works committee, health and safety committee); lowering of requirements on information, consultation and negotiation.

去る4月22日に公表されたその改正案では、従業員11名未満企業のための地域的労使協議機関の創設や、既存の企業内従業員代表機関(組合代表、企業委員会、安全衛生委員会)の統合が提案されているようで、興味深いです。

その法案自体はここにありますが当然フランス語なので、読みたい人だけが見てください。それぞれの最初のところだけ。

http://travail-emploi.gouv.fr/IMG/pdf/Projet_de_loi_dialogue_social_emploi.pdf

« Art. L. 23-111-1. - I. - Une commission paritaire interprofessionnelle est instituée au niveau régional afin de représenter les salariés et les employeurs des entreprises de moins de onze salariés. ・・・・

L’article L. 2141-5 du code du travail est complété par deux alinéas ainsi rédigés : « Au début de son mandat, le représentant du personnel titulaire ou le délégué syndical bénéficie à sa demande d’un entretien individuel avec son employeur, portant sur les modalités pratiques d’exercice de son mandat au sein de l’entreprise au regard de son emploi. Il peut, à sa demande, se faire accompagner à cet entretien par une personne de son choix appartenant au personnel de l'entreprise. Cet entretien ne se substitue pas à l’entretien professionnel mentionné à l’article L. 6315-1. ・・・・

これに対して、CFDTは賛成で、CGTとFOは反対の姿勢のようです。

http://www.cfdt.fr/portail/salle-de-presse/communiques-de-presse/projet-de-loi-dialogue-social-une-avancee-pour-un-dialogue-social-de-qualite-des-inquietudes-a-lever-srv1_265471

http://cgt.fr/Un-projet-de-loi-marque-par-l.html

http://www.force-ouvriere.fr/projet-de-loi-rebsamen-le-danger-d-un-contournement-des?lang=fr

ちなみに、労相の名前はフランソワ・レブサメンです。ブサメンではないので念のため。

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Thomas Lupton, Angela M. Bowey『Wages and Salaries』

No_cover_thumb ちょっと調べたいことがあって、もう30年以上も前のイギリスの本ですが、Thomas Lupton, Angela M. Bowey『Wages and Salaries』(Gower, 1983)をざっと読んだところです。

1.Relationships between pay levels within the firm 1

2.Comparison with pay levels in other firms 39

3.Designing pay systems to influence employee 62

4.Salary systems and structures 96

5.The design of salary systems 109

6.Salaries for manual workers 133

7.The diagnosis and monitoring of payment systems 142

8.Links between government controls and payment 163

9.Conclusion 168

賃金と給料とめぐるいろいろについて実務的でありつつ深く考察している良い本ですが、とりわけ興味を引かれたのは、第6章の「Salaries for manual workers」です。

原著が出た1980年前後はイギリスでも工場労働者にも(それまでの時給制、週給制のwage systemではなく)月給制salary systemが導入され始めた時期なのですが、それによってそれまで得ていた残業手当が出なくなることへのいろいろな議論が紹介されていて、いろんな意味で面白いと感じました。

この前後のイギリスについては、労働組合の活動とそれを潰しにかかるサッチャー政権との激突は詳しく紹介されていますが、その足下でじわじわと進んでいた賃金制度の変化の動きについては、意外なほどきちんと紹介されてきていないように思います。

性質上どうしても実務書が多いので、学者の関心を引かなかったのかもしれませんが、このあたりを細々とでもキチンと研究し続ける人がいれば良かったのになあ、という気がしています。

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2015年5月 1日 (金)

労務理論学会第25回全国大会@茨城大学

労務理論学会第25回全国大会が6月5日から7日まで茨城大学で開かれますが、

http://jalmonline.org/pdf/20150605_program.pdf

6月6日(土)の13:00~14:30に、わたくしが「日本型雇用システムと労働法制のあり方を巡って」と題して特別講演をします。

司会/コメントは茨城大学の 清山玲さんです。

それにしても、会員になっている日本労働法学会では(幻の神戸大学大会での幻の報告を別にすれば)一回も報告をしていないのに、よそさまの学会でばかりやたらに呼ばれて報告している感がありますな。

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クリエイティブじゃない経済学部学生

04031652_551e46ae058c4_2先日、大坂洋さんからお送りいただいた『経済学と経済教育の未来』をご紹介し、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-f5da.html

そこにコメントいただいた大坂さんがご自分のブログで紹介された後、

http://d.hatena.ne.jp/osakaeco/20150421/p1

稲葉振一郎氏の慫慂に応じて、

http://d.hatena.ne.jp/osakaeco/20150426/p2(吉原直毅氏の参照基準への発言について)

Seminaを書かれ、その中で、『経済セミナー』5月号における岩本康志氏と吉原直毅氏の対談を読むようにと言われていたので、ぱらぱらと読んで見ました。その中に、大変興味深い一節があったので、こちらでもご紹介しておきたいと思います。

吉原さんの発言です。

・・・例えば、私が一橋の学部1年生向け「経済思想入門」を担当した時の経験です。私自身は思想家ではないので、いろいろな学説の理論史的な話を中心に講義しました。この課目は経済学部1年の必修なので、彼らは殆ど履修するのですが、法学部や社会学部の学生も多少受講していました。その試験の答案を見ると、法学部や社会学部の優秀な答案と、経済学部の優秀な層の答案は、非常に対照的でした。

 試験問題は「自分の思うところを述べよ」という、エッセイに近いようなものを出したのです。経済学部生の優秀な答案は、私の教えた理論展開をきちんとフォローしている。要するに数理的な解説部分を忠実に再現し、的確にまとめている。その点で非常に良い。ただ、基本的に私が講義で話したことを繰り返しているだけで、それを自分なりに話を膨らませるなどのクリエイティブな部分が殆どないのです。一方、社会学部や法学部の学生の優れた答案というのは、逆に私自身が与えたテーマを自分自身のテーマにうまく関連づけつつ、読書で得た知識なども加えながら自由に議論を展開する。非常にユニークな論述になっているわけです。

 経済学部生の中に法学部や社会学部タイプの答案は全く見られなかった。これは、現在の経済学の教育の在り方を反映しているのかな、という印象があります。自分なりのモチベーションに結びつけながら、クリエイティブな議論を展開するような学生が、経済学部を志望しなくなっているのではないか。私自身の経験で言うと、昔はそういう学生が経済学部にも間違いなくいました。ところが、そのようなタイプの学生は、今は経済学に魅力を感じていないのではないかと思います。・・・

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スマイルは0円か@日経

本日の日経の1面に、働き方Next第3部の一環として、「スマイルは0円か」という記事が載っています。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASM118H0G_Q5A420C1MM8000/?dg=1

介護、保育など気配りがいる職場で働き手が足りない。心身に負担がかかる割に報酬は安いからだ。良質なサービスの手本とされた「スマイルゼロ円」は正しいのか。

かつて本ブログ上で何回もスマイル0円が諸悪の根源と述べてきた私としては、ようやくかという感じもなきにしもあらずですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-107c.html(スマイル0円が諸悪の根源)

・・・この詳細版で、どういう国のサービス生産性が高いか、4頁の図3を見て下さい。

1位はルクセンブルク、2位はオランダ、3位はベルギー、4位はデンマーク、5位はフィンランド、6位はドイツ・・・。

わたくしは3位の国に住んで、1位の国と2位の国によく行ってましたから、あえて断言しますが、サービスの「質」は日本と比べて天と地です。いうまでもなく、日本が「天」です。消費者にとっては。

それを裏返すと、消費者天国の日本だから、「スマイル0円」の日本だから、サービスの生産性が異常なまでに低いのです。膨大なサービス労務の投入量に対して、異常なまでに低い価格付けしか社会的にされていないことが、この生産性の低さをもたらしているのです。

ちなみに、世界中どこのマクドナルドのCMでも、日本以外で「スマイル0円」なんてのを見たことはありません。

生産性を上げるには、もっと少ないサービス労務投入量に対して、もっと高額の料金を頂くようにするしかありません。ところが、そういう議論はとても少ないのですね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-24ed.html(スマイル0円が「ホスピタリティの生産性」?)

いんちきりんさんが「ホスピタリティの生産性」って言葉で何を意味しているのかよく分からないところもありますが、少なくとも、彼女が感じた「客が感じる価値」の客観的な付加価値生産性は、日本生産性本部の統計上は大変低いのです。

そんじゃあね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-0c56.html(誰の賃金が下がったのか?または国際競争ガーの誤解)

国際競争に一番晒されている製造業ではなく、一番ドメスティックなサービス産業、とりわけ小売業や飲食店で一番賃金が下落しているということは、この間日本で起こったことを大変雄弁に物語っていますね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-8791.html(なにい?労働生産性が低いい?なんということだ、もっとビシバシ低賃金で死ぬ寸前まで働かせて、生産性を無理にでも引き上げろ!!!)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-cbaf.html(サービス価格は労働の値段である)

でも、さすが日経と言うべきか、この記事の締めの言葉がこれですから・・・・

・・・・介護や保育企業参入や経営再編などの競争促進策が事業の革新につながるはずだ。

いやだからその帰結が

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-69b6.html(小林美希『ルポ保育崩壊』)

26719555_1時間内に食べ終えるのが至上命題の食事風景。燃え尽き症候群に襲われる保育士たちや親との会話も禁じられた“ヘルプ”(アルバイトや派遣)のスタッフたち。ひたすら利益追求に汲々とする企業立保育所の経営陣……。空前の保育士不足の中、知られざる厳しい現状を余すところなく描き出し、「保育の質」の低下に警鐘を鳴らす。

なんでしょうけど。

(追記)

またも労務屋さんとかぶったようです。同じ日に同じ日経の記事を取り上げていました。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150501#p1

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日本労働法学会誌125号『労働組合法立法史の意義と課題』

Isbn9784589036780日本労働法学会誌125号『労働組合法立法史の意義と課題』(法律文化社)が届きました。

http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03678-0

再来週末に近畿大学で次回の大会が開かれる前に、前回の大会を思い出すのもいいでしょう。

前回、静岡大学で開かれた大会の大シンポジウムは「労働組合法立法史の意義と課題」でした。野川 忍/富永晃一/竹内(奥野)寿/中窪裕也/野田 進/仁田道夫の諸氏による報告と熱心な討議は大変面白いものでした。

いや、私自身、このての歴史物が大好きなもので、シンポジウム記録にあるように、富永、竹内、中窪さんらに質問をしております。半世紀以上もほとんど改正されてこなかった労働組合法が、その初発時点で、いかに多くの可能性を秘めていたかということが、改めてよくわかります。

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