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2015年5月11日 (月)

遊郭のストライキ!?@『DIO』304号

Dio 『DIO』304号が刊行されたようなので、ざっと見ていったら・・・、

http://rengo-soken.or.jp/dio/pdf/dio304.pdf

いや、その前に、特集は「 「らしさ」にとらわれない生き方 −男性からの視点・女性からの視点」で、これはこれでとても大事です。

なんですが、一番興味を引かれたのは、後ろの方の杉山豊治さんの書評で、山家悠平『遊郭のストライキ』という本が紹介されていて、その文章を読んだら、とても読みたくなりました。

本書の題名にある「遊郭」という 言葉から、読者の方々の中には 誤解をする方もいるかも知れない。し かし、本書が描き出しているのは「遊 郭」という特殊な場所で、耐え難いほ どの厳しい環境の中に身をおきつつ も、働く環境の改善を求め、ストライ キ等の手段を行使しつつ闘ってきた女 性たちの歴史である。

 本書が扱っている時代は、現代から およそ約 1 世紀前、1900 年前半の できごとである。作者は、当時の新聞 記事を中心に丹念に情報を集め、当時 の姿を鮮明に描き出している。読者の 皆さんには、楼主、芸妓を現代の使用 者、労働者に置き換えて、比較しつつ 読んでもらいたい。芸妓の待遇改善な どに真っ向から反対する楼主の対応 と、意図的に脱法行為を行う現代の一 部経営者の姿、働くことに関する知識 が乏しいばかりに、過酷な労働条件を 強いられている現代の労働者と本書の 芸妓の姿には、誤解を恐れずに言えば、 同様の匂いが感ぜられる。・・・

前に本ブログで紹介した『ミッキーマウスのストライキ』以上に、集団的労使関係とは無縁そうに見える世界での労働者の闘いの歴史ですが、それゆえにこそ、現代の労働社会の姿を逆照射するものでもあるのでしょう。

9784907986063 書評では章を追って内容を説明していきますが、そちらは下の方に目次をコピペして代用することにして、ここでは杉山さんが書評の3分の1以上を費やして引用している本書の著者のあとがきの言葉を再引用しておきたいと思います。

 「遊郭の中の女性たちが、ストライ キを生きるための手段を選びとって いった時代から 90 年近くが過ぎた現 在、セックスワーカーや非正規労働者 を取り巻く状況は、やはり困難に満ち ているといわざるを得ない。むろん、 人身売買と過酷な搾取のもとにあった 遊郭の中の女性たちと現在を生きる労 働者とを単純に比較することはできな いが、それでも労働者の団結というこ とに絞ってみるならば、派遣労働や有 期契約のもとで多くの労働者は分断さ れ、ストライキはおろか自分たちの問 題について相談し共有することすら難 しい状況で働き続けることを余儀なく されている。だからこそ、人間性への 搾取と圧倒的な不自由さの中にあって も、言葉を紡ぎあい、状況を切り開く ためにストライキや不正の告発を行 なった芸妓や娼妓たちの生の痕跡に、 現代における抵抗を模索するための重 要な手がかりがあるとわたしは考えて いる。この本が現代を生きるセックス ワーカーや非正規労働者たちが状況改 善を模索する中で、行動のためのひと つの手がかりとなれば幸いである。」  この言葉に、本書の価値が表されて いる。  最後に、当時の芸妓を取り巻く支援 者たちには状況改善や不正の告発とい う当事者の主張を評価する視点が圧倒 的に欠けているように思われるとの作 者の指摘は考えさせられる。

目次は以下の通りです。

はじめに 

語られなかった歴史を語るということ

第1章 芸妓・娼妓を取り巻く環境

遊廓の「近代」の始まり/廃娼運動の誕生/廃娼運動への批判的視座

第2章 遊廓のなかの女性たち

閉ざされた門のなかで/識字率の上昇と情報の流入/遊廓を離れてから

第3章 一九二六年の大転換

遊廓の改善という世論の高揚/新聞にあらわれる「娼妓」たち

第4章 実力行使としての逃走

逃走の時代の幕開け/広島、弘前、ふたつの直接行動/逃走の時代のあとに

第5章 逃走からストライキへ

凋落する遊廓/大阪、松島遊廓金宝来のストライキ/佐賀、武雄遊廓改盛楼のストライキ/遊廓のなかの女性たちが「求めたこと」

わりに 

「解放」と「労働」の境界で

私もまだ書評しか見ていないので、近いうちに入手して読んでみたいと思います。そういう意欲をそそってくれるよい書評でした。

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コメント

遊郭のストライキというと『五番町夕霧楼』を思い出します。水上勉の代表作のひとつで、夕子と正順の悲恋物語なんですが、この中にエピソード的に夕霧楼の芸妓たちのストライキの場面が挿入されていました。労働歌など歌いながら、あまり悲壮感もない場面づくりだったと思いますが、時代を映すエピソードとしては打ってつけなのでしょうね。翻って考えると、遊郭という厳しい職場環境にあっても、山崎憲さん言うところの生きるための「拠り所」が、まだそこにはあったんだなあとつくづく思ったりいたします。

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