八代尚宏『日本的雇用慣行を打ち破れ』
八代尚宏さんから新著『日本的雇用慣行を打ち破れ―働き方改革の進め方―』(日本経済新聞出版社)をお送りいただきました。
http://www.nikkeibookvideo.com/item-detail/35632/
解雇をめぐる規制、年齢の差別、労働時間規制や女性・外国人雇用をどう考えるべきか? 誰にとっても働きやすい、自由で自立した働き方の仕組みとは? 少子高齢化、低成長、グローバル化時代の雇用の姿を提示する。
八代さんが過去十数年口を酸っぱくして言い続けてきたことを、再三再四にわたって繰り返し説いている本であり、その内容はほとんど変わりがありませんが、一方で日本的雇用慣行の説明ぶりに、少しずつ違いも見られます。
特に、p44あたりからの「無限定な働き方のリスク」などでは、それが職務の定めのない雇用契約であることからもたらされるものであるということを繰り返し述べています。
第1章 日本の労働市場の何が問題か
第2章 効率的な労働時間規制へ
第3章 女性の管理職比率30%をどう実現するか
第4章 「年齢差別」からの解放
第5章 解雇ルールの明確化で「労・労対立」を防ぐ
第6章 不安定雇用を助長する労働者派遣法
第7章 労働契約法の正しい活用を
第8章 外国人労働者の活用
第9章 日本的雇用慣行の相互補完性:なぜ「岩盤規制」なのか
終 章 人事部の改革はなぜ必要か
どれも八代さんが繰り返し説いてきたことであるので、ほとんどつっかえずに読み進められますが、一点、気になったのは、第8章の外国人労働者のところです。p238あたりの記述は、どうも2009年入管法改正前の研修・技能実習制度時代の記述をそのまま持ってきているような節があり、今回の技能実習法案の文脈がやや理解されていない感があります。
いずれにしても、一部の物事がよくわかっていない規制緩和派の人々と違って、日本の雇用に「岩盤」なるものがあるとすればそれは六法全書に書かれているものではなく、企業の人事部が日々行っていることにこそあるという重要な真実を、きちんと踏まえた上で論を進めているという点において、ある種のいい加減な人々の本とは違って、労働問題を真剣に考える人々が真摯に読むべき本であることだけは間違いありません。
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