前浦穂高「非正規労働者の組織化の胎動と展開」
前浦穂高さんのディスカッションペーパー「非正規労働者の組織化の胎動と展開―産業別組合を中心に―」がアップされています。
http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2015/15-01.html
http://www.jil.go.jp/institute/discussion/2015/documents/DP15-01.pdf
本稿は、産業別組合(以下、産別とする)を対象に、パートタイマーを中心とする非正規労働者の組織化がいつ頃から始まり、どのように展開され、現在の組織化活動につながっているのかを明らかにする。分析対象は、ゼンセン同盟(現UAゼンセン)、商業労連(後のJSD)、電機労連(現電機連合)である。
本稿の分析結果によると、いずれの産別も、パートタイマーが登場する1970年前後から、パートタイマーの組織化を検討し、その方針を掲げ、取り組みを始めた。ただし、その取り組みは、一部の先進的な組合を除き、すぐには全体的な取り組みに発展し、大きな成果を得るまでに至らなかった。その背景には、組織化方針や組合員の資格要件について意思統一を図るとともに、職場の実態を調べたり、法律の施行や改正に対応したりする等、試行錯誤の時間を要したからである。
さらに言えば、単組は必要性を感じなければ、組織化に取り組まないということもあった。パートタイマーの組織化が、統一的で本格的な取り組みに発展し、大きな成果を得るようになったのは2000年以降である。その当時は、流通部門を中心に、職場の従業員全体に占めるパートタイマーの割合が高まった時期であった。その時に、正社員組合が36協定締結の際の過半数代表になり得るかどうか、組織防衛等の観点から、産別を中心に危機感が広がり、産別に促される形でパートタイマーの組織化が進められた。
非正規労働者の組織化は近年のホットテーマですが、この問題にずっと以前から取り組んできた産別労組の動きを歴史研究としてまとめた力作です。
組合関係者にこそ是非じっくりと読んでいただきたい論文だと思います。
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