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2015年3月27日 (金)

「技能実習制度 ようやくまともな法制化」@『全国労保連』2015年3月号

Kaihou1503『全国労保連』2015年3月号に「技能実習制度 ようやくまともな法制化」を寄稿しました。

 去る3月6日に「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」と「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案」が国会に提出されました。後者は法務省と厚生労働省の共同提出となっています。意外に思われるかも知れませんが、外国人労働者に関する立法が労働行政の(共管とはいえ)管轄となるのはこれが初めてなのです。この制度の経緯と今回の内容を簡単に見ておきましょう。
 この制度ははじめからボタンの掛け違いがありました。もともと労働省サイドが「雇用関係の下で実際に仕事を行いながら技能を習得する」仕組みとして構想した案と、法務省入管局が「労働ではない」という建前の下で拡大を図った研修制度とが、奇妙な形で結合して、1993年に創設されたのです。この時はそもそも後半の「技能実習」という在留資格すら正式には設けられず、法務大臣が認める特定活動というお情けカテゴリーでしかありませんでした。その後、とりわけ前半の雇用ではないとされた「実務研修」部分の欺瞞性が累次の判決で指摘され、2009年入管法改正に至ります。
 この改正で1年目の実務研修が「技能実習1号」、2・3年目の特定活動が「技能実習2号」として、雇用関係の下の就労として位置づけられました。しかし、既に多々問題点が指摘されていた団体監理型をわざわざ法律上に位置づけ、お墨付きを与えるような改正でもありました。そのため、その後も技能実習制度をめぐって見直しを求める声が続き、とりわけアメリカ国務省は「人身売買報告書」において、同制度を「労働搾取目的の人身売買」であると強く批判し続けており、日弁連も人権の観点から制度の廃止を求めてきています。そこまで行かなくても、連合など労働組合側からは制度の厳格化を求める声が強く投げかけられてきました。
 一方、とりわけ第2次安倍内閣が発足してから、産業競争力会議や経済財政諮問会議から、再技能実習を認めることや介護分野でも認めることなどが要請されるなど、制度をめぐる政治状況は大きく変わろうとしていました。こうした中で、法務省は出入国管理政策懇談会の外国人受入れ制度検討分科会において、2013年11月から審議を行い、2014年6月に「技能実習制度の見直しの方向性に関する検討結果」を公表しました。その間、産業競争力会議や経済財政諮問会議から、再技能実習を認めることや介護分野でも認めることなどが要請されたことが結論に影響を及ぼす一方、監理団体や受入機関をめぐる様々な問題への対応を図ろうとしています。同じ昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」では、監理監督の在り方を抜本的に見直し、2015年度中の新制度への移行を目指すとともに、実習期間の延長、受入れ枠の拡大等について、2015年度中の施行に向けて、所要の制度的措置を講ずるというスケジュールが示されています。これを受けて同年11月から上記合同有識者懇談会が開かれ、1月末に報告書を出し、3月には法案提出に至ったというわけです。
 最大のポイントは、優良な監理機関・受入機関について、実習生の一旦帰国後2年間の実習を認め、これを(これまでの当初1年間の1号、後の2年間の2号と並んで)3号と位置づけることです。これを認めるための実習生の要件として、技能検定3級相当の実技試験への合格を示しています。これまでは、1号修了時に技能検定基礎2級相当の技能評価試験を受検することを求めていただけですが、2号修了時に3級相当、3号修了時に2級相当の受検を義務づけるので、ようやく技能実習らしい制度になるわけです。対象職種の拡大については、同時に提出された入管法改正案において、介護が専門職として追加されています。
 一方、制度の厳格化については、上記技能評価試験の受検義務化と並んで、監理団体及び実習実施機関のガバナンス強化や問題のある機関の排除が挙げられています。具体的には監理団体に許可制を導入し(今までそうでなかったことの方が不思議ですが)、指導監督を行い、場合によっては許可を取り消すという仕組みです。また、新たに法律に基づく制度監理運用機関を創設し、指導監督を行わせるとされています。言い換えれば、現在のJITCOには実効ある監視ができていないということです。さらに国際的にも問題になっている実習生に対する人権侵害に対応するため、「技能実習関係者が、技能実習生の旅券又は在留カードを保管すること」や「技能実習関係者が、技能実習生の外出等私生活の自由を不当に制限すること」を罰則を以て禁止するなど、実習生保護が図られています。
 いずれにせよ、移民政策は採らないという大前提と、にもかかわらず必要な労働力を外国人で充足したいという喫緊のニーズを、技能の実習という建前で折り合わせるこの制度の微妙なバランスを、労働者保護や人権擁護をきちんと担保しながら維持し続けることの難しさがにじみ出るような法案の内容であることは間違いありません。
 この問題を考える上で参考になるのは韓国の経験です。韓国も1993年に日本を真似て外国人産業研修制度を導入したのですが、やはり人権問題が多発し、2003年からは外国人労働者の雇用許可制が導入されています。実は日本でも、1988年に当時の労働省が雇用許可制を提起したことがありますが、法務省との権限争いに敗れてしまいました。しかし、外国人労働政策の是非は密室の権限争いの勝敗ではなく、国民的議論によって決着されるべきものでしょう。今回の立法構想は、技能実習制という枠内で労働政策としてのあるべき姿を追求したものと言えますが、将来に向けてはもっと広い土俵で論議が進められることが望まれます。

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