« はじめからメルトダウンしていた古賀茂明氏の倫理感覚 | トップページ | カープの試合がある日は残業なしに 広島労働局が提案 »

2015年3月29日 (日)

岩佐卓也『現代ドイツの労働協約』

German業務上の必要があって岩佐卓也『現代ドイツの労働協約』(法律文化社)を通読。

著者は労働史・社会史の立場から、過去10年強のドイツ労働協約の動きを見事に描き出しています。

第1章 協約拘束範囲の縮小―変化の起点(労働協約システムの概要;協約拘束範囲の縮小とそれをめぐる紛争;労働協約システムの構造変化)

第2章 協約規制の個別事業所化―2004年プフォルツハイム協定とIGメタル(ブフォルツハイム協定の成立;プフォルツハイム協定からジーメンス社補完協約まで;「コントロールされた分権化」の困難;転轍の可能性)

第3章 協約交渉の対立先鋭化―2007/2008年小売業争議(小売業の変容;2007/2008年小売業争議の開始;小売業争議の展開と妥協)

第4章 協約賃金の低水準化―NGGと法定最低賃金(旅館・飲食業における低賃金と協約政策;食肉産業における低賃金と協約政策;NGGの法定最低賃金導入論―「協約自治」の壁;運動の展開と政治の変化)

補論 派遣労働と労働協約

ドイツの労使関係の動きについては、主として労働法学研究者が継続的に様々な紹介、分析をしてきていますが、岩佐氏は広い政治史的な観点も持ちつつ労使関係論から叙述しており、労働法的な研究と相補的に読まれるべきものでしょう。

労働法の世界でもよく指摘されてきた協約規制の「分権化」の実態について書かれた第2章も、IGメタルのプフォルツハイム協約ができてからの実際の各事業所ごとのせめぎ合いが活写されていて大変興味深いものですが、労働法学の研究ではあまり出てこない第3章のヴェルディの争議戦術の研究なんか、最近日本ではとんと影を潜めた労使関係論ならではの分析で、大変面白かったです。

さらに、第4章は最近注目されているドイツの最低賃金法に至る労働組合運動と政党をまたがった政治過程を丁寧に跡づけていて、法政策研究としても一級です。ここでは、もともと労働組合運動とりわけ強力なIGメタルなどからは拒否反応の強かった最低賃金を求める運動が旅館・飲食業という組合の弱い産業のNGGという組合から始まり、またEU統合の中で東欧からの請負労働者の流入で低賃金が進んだ食肉産業の状況を背景に進められたということが丁寧に説明されています。また、もともとDGBの中でも少数派だった最低賃金推進派が次第にSPDに、さらにはCDU/CSUにも浸透していくサマの叙述も圧巻です。このあたりは政治学的素養を感じます。


|
|

« はじめからメルトダウンしていた古賀茂明氏の倫理感覚 | トップページ | カープの試合がある日は残業なしに 広島労働局が提案 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/3288/59450008

この記事へのトラックバック一覧です: 岩佐卓也『現代ドイツの労働協約』:

« はじめからメルトダウンしていた古賀茂明氏の倫理感覚 | トップページ | カープの試合がある日は残業なしに 広島労働局が提案 »