駒村康平『中間層消滅』
駒村康平さんより新著『中間層消滅』(角川新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。
駒村さんからは昨年『日本の年金』(岩波新書)も頂いていますが、こちらはきちんと正座した解説という感じなのに対して、本書は、以前同じ角川レーベルから出した『大貧困社会』と同様、やや風呂敷を広げ気味に、格差問題、社会保障のなんたるかを説いている本になっています。
http://www.kadokawa.co.jp/product/301411000789/
社会経済構造の大変化の中、社会保障制度は壊れ、所得格差が世界的規模で拡大している。トリクルダウン神話が崩壊した今、安定社会の重石たる中間層の消滅をいかに止めるべきか。歴史的視点から処方箋を考えていく。
ポランニーからピケティからいろいろ出てきますが、読み終えて一番心に残っているのは、前横浜副市長の前田正子さんの寿町のエピソードと、そして「おわりに」のこの言葉でした。
この言葉がしみるなあ、と思う人は実は読まなくてもいいのです。本当にメッセージが届いてもらいたい人は、実はこの言葉の意味が理解できない人たちなのでしょう。
・・・ピケティも指摘しているが、経済学は、科学の装いをまとい、理論的な整合性を重視するあまりに、現実の社会に対する関心を失っているのではないか。・・・イギリスの経済学者、アーサー・C・ピグーの言葉、「哲学は驚きに始まる。経済学は汚い饐えた匂いの街を彷徨って湧いてくる社会的情熱である」といった情熱を失っているのではないか。
社会経済問題に関心を持つ経済学者は、中央省庁の会議室で政府高官と議論したり、机上で統計データを分析するだけではなく、生活困窮者や生活保護を受けている人の生活状況、ホームレスが住む無料低額宿泊施設、引きこもりの人の家に行って、そこで感じる空気から現実社会の問題解決への心情、情熱に火をともすべきであろう。
« 日々紹介ビジネスモデルの崩壊@WEB労政時報 | トップページ | メンバーシップ型労働社会のロースクール »
コメント