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2015年3月 2日 (月)

「若者雇用対策法はどこまで役に立つか?」 @損保労連『GENKI』2月号

114損保労連『GENKI』2月号 に「若者雇用対策法はどこまで役に立つか?」 を寄稿しました。

法律の名前が、勤労青少年福祉法を改正して「青少年雇用促進法」になるとは知らないときに執筆したので、その点だけは若干アウトオブデートですが。

 今年1月23日、労働政策審議会が「若者の雇用対策の充実について(案)」の報告書を取りまとめました。これを元に現在開催されている第189回通常国会に若者雇用対策法案が提出される予定です。今回は報告書の内容を確認するとともに、提出される法案が若者の雇用労働環境の改善に役立つのか、一緒に考えていただければと思います。
 報告書では、若者雇用対策の方向性として「新規学校卒業者等の就職活動からマッチング・定着までの適切かつ効果的な就職支援の在り方について」と示されています。その冒頭では「学校段階からの職業意識の醸成」というやや目新しくない項目がありますが、文中には近年のワークルール教育への問題意識を反映し、「社会的自立に不可欠な知識として労働関係法令などの基礎的な知識の周知啓発を推進することが重要」と、労働法教育の必要性が強調されています。これは若者雇用対策の基本点に位置すべき事項と認識すべきものです。
 その上で、重要となる項目が、次に示されている「マッチングの向上に資する情報提供」です。これは、近年社会問題となっているブラック企業と言われる劣悪な労働条件の企業を若者がきちんと見分けて就職しないで済むようにすべきという問題意識が背景にあります。
 この項目のなかでは3つのポイントが示されており、1つめは「労働条件の的確な表示の徹底」です。報告書には、これを法律事項ではなく、新法に基づき策定される指針(若者の募集・採用及び定着促進に当たって事業主等が講ずべき措置に関する指針)に盛り込むべきと示されています。たとえば近年問題となっているいわゆる固定残業代の表示に関しても、求人票に「固定残業代には○時間分の残業手当を含む。○時間を超えた場合は別途残業手当を払う」旨を記載することを指導するといった内容が考えられているようです。この問題に対しては、連合が昨年11月の中央執行委員会で確認した「求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方」のなかで、労働基準法第15条や職業安定法第5条の3を改正すべきと提案しています。今回の報告書は若者対策に関する取りまとめのため、この点は触れられていませんが、こうした一般対策は今後労働条件分科会などで検討される可能性があります。
 2つめは「職場情報の積極的な提供」です。具体的には、事業主が次表(ア)~(ウ)の情報を、募集に対する応募者や応募の検討を行っている新規学校卒業者から求められた場合には法律上の提供義務を、それ以外に対しては提供の努力義務が設けられる予定です。また、ハローワーク等に求人を出す場合には、ハローワーク等にこれら情報を提供することになります。
(ア)募集・採用に関する状況
   (過去3年間の採用者数及び離職者数、平均勤続年数、過去3年間の採用者数の男女別人数等)
(イ)企業における雇用管理に関する状況
    (前年度の育児休業、有給休暇、所定外労働時間の実績、管理職の男女比等)
(ウ)職業能力の開発・向上に関する状況
    (導入研修の有無、自己啓発補助制度の有無等)
 この内容は、経営側が強く抵抗した結果、やや限定的な仕組みとなっており、選考プロセスの中にいる応募者が「このようなことを敢えて尋ねたら選考から落選する懸念もある」との不安から自己規制してしまう可能性が高いとも思われます。本質的には、これら情報が関係者以外には機密情報であるのか、それとも一般に公開すべきパブリックな性格の情報であるのか、という問題がありそうです。
 3つめは、新聞等でも大きく報じられた「公共職業安定所での求人不受理」です。現行職業安定法では、求人の内容自体が違法な場合でなければ、すべての求人を受理しなければなりませんが、今回の取りまとめでは、残業代不払いなど労働法違反を繰り返す(具体的には1年間に2回以上是正指導を受けたなど)、悪質な求人者からの求人申し込みを、一定期間(具体的には法違反を重ねないことを確認する期間として6ヶ月間)受理しないことができるという特例を設けることにしています。なお、本特例は新規学校卒業者の求人限定ですが、そもそも一般求人の場合には悪質な求人者からの求人を規制しないことに対する議論もあり得ると考えます。また、ハローワークへの求人だけを規制し、それ以外の媒体における求人は許されることへの疑問も提起されそうです。
 また、報告書では、以上のような情報提供に関する規制的な手法とともに、促進的な手法として「認定制度の創設」が示されています。これは既に導入されている「若者応援宣言企業」事業を、法律上の認定制度に引き上げるものですが、現在の事業に対して「実際にはブラック企業も紛れ込んでいるではないか」という批判もなされていることから、認定基準は非常に厳格にしようとしています。具体的には、単に実績を公表していること以外に、新規学校卒業者の定着状況の基準(3年前以内の離職率30%以下など)、ワーク・ライフ・バランスの基準(年次有給休暇の平均取得率70%以上又は平均取得日数10日以上、育児休業の男性取得者1名以上又は女性取得率75%以上、所定外労働時間の月平均20時間以下又は週労働時間60時間以上労働者の割合5%以下)を満たすことが示されています。なお、認定された企業に助成金が支給されることになります。
 過去10年、若者雇用問題が労働論壇のホットトピックになり、さらに近年はブラック企業問題も取りざたされてきましたが、これまで若者を対象にした雇用法規は作られてきませんでした。この新法が若者の雇用労働環境を改善する上での効果が注目されます。また、若者を受け入れる側の労働組合としても、会社・職場内の人材育成の実効性確保に向けた労使協議など、法律には規定されていない側面から若者の雇用や労働環境の改善について考えるべきことは多くあるのではないでしょうか。

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