フォト
2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
無料ブログはココログ

« 基礎経済科学研究所シンポジウム | トップページ | 「課長・島耕作」は特殊例 中高年にこそ限定正社員制度を@『経済界』2015年2月24日号 »

2015年2月 9日 (月)

WSJで学べない経済英語

いうまでもなく、ベア、ベースアップというのは和製英語ですが、和製というのは表現が和製という生やさしいものではなく、概念自体が完璧に和製であって、いかなる形でも自然な英語にすることは不可能なほど純和風の概念である、ということが分かっていないと、こういう生半可な解説をすることになります。

http://jp.wsj.com/news/articles/SB12052756172436844285404580445152139045856(【WSJで学ぶ経済英語】第167回 ベースアップ)

<今週のキーワード>

base-pay increase(ベースアップ)

ベースアップ」は日本語では広く根づいているものの、実は和製英語でこれをそのまま「base up」としても通じない。英語でいう場合はこの「base-pay increase(直訳すれば基準賃金増)」とか「basic wage rise」などの言葉が用いられる。

base-pay increase」が消費にとって重要なのは、「定昇=定期昇給」の一時的な給与の上昇と違い、生涯賃金全体を押し上げるためだ。「定昇」は勤続年数が1年伸びるに連れて賃金表に従って昇給することだが、「ベースアップ」はその賃金表自体が書き換えられて同じ勤続年数での給与が増えることを意味する。このため、「base-pay」を基に計算するボーナスや退職金も連動して上がることになる。

 春闘の労働組合側を束ねる連合は今春闘でのベースアップ要求を月給の2%以上としている。これに対し経営者側を束ねる経団連は政府の賃上げ要請もあったことからベアを選択肢の1つとしているが、春闘方針となる「経営労働政策委員会報告」では連合の要求水準が「納得性の高いものとはいえない」となるべく低めに抑えることを狙っている。春闘全体の相場形成に影響力を持つ自動車などの産業別労組は組合員平均6000円のベアを要求する見込み。大半の大手企業は春闘要求回答日を3月18日にする方針だ。

いや、申し訳ないけど、この文章自体が日本語以外では理解不能ですから。

日本語のベースアップのもとになっている「ベース賃金」という戦後期の特殊な概念自体が、英語の「base pay」とはまったく異なる概念ですから。

「base pay」(基本給)って概念はあります。その反対語は「additional pay」(付加給)。

労使交渉で賃金を上げるというときに、このジョブの基本給をいくらにする、それとは別に、クリスマスボーナスをいくらにする、そういう概念はあります。

でも、定期昇給の反対概念としてのベースアップという概念は、数ページの戦後日本労働史でもって説明しない限り、「base-pay increase」という一言で理解されるはずがない。

ついでに、英語の「base pay」に近い日本社会の概念に「きま給」(きまって支給する給与)というのがあります。その反対語が「特別に支払われた給与」。

でもね、この一見類似する概念にも大きな違いがあります。前にも本ブログで紹介しましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-e4bf.html(「きま給」)

英語で「base pay」といえば所定時間内給与であって、時間外手当(残業代)は当然(例外的に行う時間外労働の対価なのだから当然)「additional pay」ですが、なぜかわが日本国においては、時間外・休日手当は「決まって支給する給与」なんです。

ま、実態がまさにそうであるからといえばそうですが・・・。

(追記)

上のWSJ日本版の解説の文章をよく読むと、完全に概念が混乱してますな。

日本語の上では「ベースアップ」の反対語を正しく「定昇」としていながら、その定昇の説明を

「定昇=定期昇給」の一時的な給与の上昇と違い・・・

はあ?これって。「定昇」という漢字二字熟語を、「base pay」の反対語である、ゆえに「additional pay」であるにちがいない、ゆえに「temporary」であるにちがいない、と推論して、「一時的な給与の上昇」と書いてしまっているように見えますね。

多分、漢字の読めない人が書いているんじゃないでしょうか。

« 基礎経済科学研究所シンポジウム | トップページ | 「課長・島耕作」は特殊例 中高年にこそ限定正社員制度を@『経済界』2015年2月24日号 »

コメント

「春闘」の英訳も難しいです。annual wage increase negotiations でとりあえず済ませていますが。

 このWSJの解説、さらっと読むと、なかなかよく分かってるじゃんと思ってしまいそうですが、1箇所「ありゃりゃ」とひっかかるのがhamachanもご指摘の「「定昇=定期昇給」の一時的な給与の上昇と違い・・・」ってところですね。定期に上がるもんがなんで「temporary」なのよ?これって究極の混乱ですよ。WSJにも日本人の記者はいるでしょうから、ちゃんと漢字の読める人が書いたんじゃないかと思いますが、漢字が読めただけでは、なかなか業界用語は理解できません。わが国の全国紙の取材を受けた経験からも、最近では日経の記者でもよく分かってない人がいる、というかちゃんと分かってる記者が少ないのが実状でしょう。
 定期昇給というのは時系列で1歳加齢することによって賃金表にそって昇給することで、労務構成が変わらなければ賃金原資は内転して会社の持ち出しはなし。ベアは横断面で見た同一時点の賃金が上がることで賃金表の書き換えと言ってもいいでしょう。WSJの解説者が分かってないのは、定昇にせよベアにせよ上がるのは、どちらも原則として「base pay」=基本賃金だということ。で、基本賃金とは概ね、新卒初任者賃金に含まれる各賃金項目(時間外手当、通勤手当を除く)の合計と考えていいでしょう。いまでは賃金制度も多様化していて、この説明にもピタッと当てはまらない事例が多いけど、「基本」が分かってないと、多様化した実態など、なおさらさっぱり分からなくなりますね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: WSJで学べない経済英語:

« 基礎経済科学研究所シンポジウム | トップページ | 「課長・島耕作」は特殊例 中高年にこそ限定正社員制度を@『経済界』2015年2月24日号 »