この期に及んでも未だに無期雇用と終身雇用の区別がつかない日経新聞
本日の日経新聞の社説が悲惨です。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO83522330S5A220C1PE8000/(撤廃したい有期雇用への規制)
これだけ口を酸っぱくして説き聞かせてきても、未だに特殊日本的な契約の中身が無限定であるが故の終身雇用と、欧米でもごく普通の単に期間の定めがないというだけの無期雇用との違いが全然理解できていないようなのです。
もっとも、この社説が取り上げている今回の特別措置法自体が、国家戦略特区ワーキンググループの八田達夫座長のこういう無知蒙昧な認識から出発していることを考えれば、こういう社説に帰結することも当然なのかもしれません。
偉い経済学者として誰もその首に鈴をつけにいこうとしない八田達夫氏は仕方がないとしても、天下の日経新聞が未だにこんな悲惨な認識では情けないの一言に尽きます。
無期契約というのは、正当が理由があれば解雇できる契約です。仕事がなくなったというのは、欧米型のジョブ契約であれば、もっとも正当な解雇理由です。ところが、特殊日本的な中身が無限定で何でもやらせる契約であれば、たまたま今命じている仕事がなくなったからといって、解雇することが正当になるわけではありません。ところが、日本のことしか目に入らない視野狭窄症の経済学者や経済評論家は、欧米でごく普通の無期契約という言葉を見ると、とたんに特殊日本的な無限定契約だ、終身雇用だと思い込んでしまい、非正規労働者を何でぴかぴかの偉い正社員様にできるんだ、とわめき散らすというわけです。
もちろん、労働契約法18条は有期契約を5年反復更新したら無期契約にすることができるといっているだけです。
有期契約と無期契約はどこが違うのか?
有期契約は、解雇しなくても期間満了で雇止めできるという点だけです。期間の定めがなくなることによる法的効果は、ぎりぎり問い詰めればそれに尽きます。それ以外の諸々はすべて、無期契約なるが故ではなく、「正社員だから」とか「終身雇用だから」とか、「職務の定めがないから」といった、それ自体は期間の定めの有無とは関係のないことどもに基づくものであって、労働契約法18条によってもたらされるものではありません。
雇止めとは何か?
要するに、最初は何年何月何日までの契約だよといっておいて、それを何回も何回も更新して、と言うことは実は最初から何年何月何日まででおわるつもりなんかまったくないまま、都合の良いところで解雇したい、ただし、その解雇が正当な理由があるかどうかをあれこれいわれたくない、というただそれだけのことですね。
言い換えれば、有期契約が無期契約になって何が変わるか?
正社員のように何でもやる契約ではなく、一からこの仕事だけ、この場所でやる契約であるのであれば、その仕事がなくなったから解雇するよ、と一言言えば良いだけの話です。有期であろうが無期であろうが、約束した仕事がないのに雇い続けろという無理無体を要求するほど、莫迦な法律ではありません。
もし、それすらもいいたくないとすれば、それはおそらく、仕事はちゃんとあるのに、その人をクビにしてほかの人に代えたい、という状況だからでしょう。でもね、もしそうなら、その人では使えない理由をちゃんといわなければなりません。そういう最低限の責務も果たしたくないという欲求に応えることが日本の産業の競争力を飛躍的に向上させるゆえんであるとは、まともな人なら考えないでしょう。
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無期→期限の定めがない→死ぬまで一生涯 というのが日本の基本認識だからでしょう。
無期懲役と無期契約は似ているとか。
投稿: yossy | 2015年2月22日 (日) 21時01分