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絵に描いたような一知半解

朝日の澤路毅彦さんのツイートに出てくる「外資系コンサル」氏の言っていることが、三流評論家にもよくあるタイプの絵に描いたような一知半解なので、思わず笑ってしまいました。でも考えてみれば、こういう低レベルの「勉強会」に出て、一生懸命一知半解の講師の言葉をお勉強してしまう人もいるのか、と思うと、いささか心が冷える思いも・・・。

https://twitter.com/sawaji1965/status/569755939944865793

今日の午前中は外資系コンサルタント会社のメディア向け勉強会。「同一労働価値同一賃金」がテーマだったのでの参加してみました。職務給制度の案内が中心で、それはそれでわかるのですが、前段は頭の中が「?」。日本型雇用の特徴の一つが、「労働時間に対する賃金支払い」だそうです。

https://twitter.com/sawaji1965/status/569756673574703104

続き)その特徴は「ホワイトカラーにも成果でなく労働時間の長さで賃金が支払われる」(趣旨)。そのメリットは「経営側による搾取を防止できる」。デメリットは「サービス残業、ブラック企業、残業代泥棒」。これを解消するには、「ホワイトカラー・エグゼンプション制度など、法令の変更が必要」。

https://twitter.com/sawaji1965/status/569757753826095104

続き)正社員特権というのも日本型雇用の特徴で、これを解消するには「解雇法制の変更が必要」との説明。さすがに「何を変更するのか」と尋ねると、判例法理のことだと。岡田先生がご苦労された、「雇用指針」はどこに?

https://twitter.com/sawaji1965/status/569758753739771906

続き)一番驚いたのは、「女性活用・若者の処遇改善、正規・非正規の格差解消に向けた3点セット」。「職務主義人事制度」「管理職の評価能力強化」はまあわかるとして、ここに「労働時間でなく成果に基づく給与決定」がくるのはなぜ?

https://twitter.com/sawaji1965/status/569763863123484674

雇用指針を確認。「共通に適用されるルールについても、裁判所は個々の判断に際して典型的な日本企業に多くみられる『内部労働市場型』の人事労務管理と、外資系企業や長期雇用システムを前提としない新規開業直後の企業に多くみられる『外部労働市場型』の人事労務管理の相違を考慮することがある」

https://twitter.com/sawaji1965/status/569852700457771008

夕方、他社の記者とあれこれ話す。今日の午前中あった勉強会について。労働契約法も労働基準法もちゃんと読んでいない可能性がある。ナショナルウエストミンスター銀行事件の名前を出したのですが、反応なし。日本の解雇規制を議論するときに、知らなかったら素人でしょう。

わかっている人にはこれで尽きていますが、念のために蛇足を付け加えると、欧米型ジョブ型労働市場における同一労働同一賃金の基本形は、ノンエリートに適用されるシンプルな職務給、すなわち、厳密な意味で「労働時間に対する賃金支払い」。

欧米のエリートの査定付き職務給は、それをベースにしつつ、その職務の成果が報酬に反映されるので、時間とのリンクが切れる。

これに対して、日本の賃金制度はそもそも職務ベースじゃないから、時間あたりの価値という概念がない。残業代のところだけ割増賃金が義務づけられているが、それはもともと職務と無関係。ここまで話がひっくり返っている議論も珍しい。

外資系コンサルといいながら、欧米の労働者の賃金制度を知らないとしか思えない。

正社員特権云々も、未だに言い続けている莫迦な三流評論家もいるけれど、規制改革会議や産業競争力会議をはじめとしてまっとうなところは既に、雇用契約の問題だということをちゃんと理解するに至っている。

呆れるのは、「これを解消するには「解雇法制の変更が必要」との説明。さすがに「何を変更するのか」と尋ねると、判例法理のことだと」という問答。

いやはや、この外資系コンサル氏は、雇用契約の無限定性に基づいて、裁判所が権利濫用という民法の一般法理を使って判断していることを、国家権力を使って無理矢理代変えさせることができると思っているようです。この外資系の本国は、多分三権分立という概念がなく、独裁政党が命令すればどんな判決でも出させられる国なのでしょう。

いずれにせよ、こういうもののわかった新聞記者から哀れみのまなざしで見られるような「外資系コンサル」氏と似たよう手合いが、もののわかっていない低能マスコミの世界にはまだまだ生息し続けられるのですから、日暮れて道遠しです。

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コメント

 すみません。最初のツイートの「同一価値同一賃金」を「同一労働労一賃金」と訂正させて下さい。
 このコンサルティング会社の名誉のために補足すると、コンサルする内容は職務給制度や職務評価の方法であって、そのプレゼンは、私のレベルで理解する限りおかしなものではありませんでした。
 ただ、その「商品」をアピールするためのストーリーが奇妙なものだったので、大変驚いたというわけです。

投稿: 澤路 | 2015年2月25日 (水) 12時54分

再度申し訳ありません。言うまでもなく、「労」→「同」です。

投稿: 澤路 | 2015年2月25日 (水) 21時02分

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