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長時間労働禁止の本音と建前@『生産性新聞』2月15日号

『生産性新聞』2月15日号に「長時間労働禁止の本音と建前」を寄稿しました。

13日の建議の前に原稿を書いていたので、冒頭がちょびっとアウトオブデートな感じですが、中身はマスコミに横行する山のような論評よりも数倍深いはずです。

 本稿執筆時点ではまだ報告書がまとまるに至っていませんが、労政審労働条件分科会における労働時間法制の審議も大詰めを迎えています。論点は多岐にわたっていますが、私の関心からすると残業代とは切り離した物理的な労働時間の規制が盛り込まれるか否かが重要です。この問題について、かなり前の資料ですが「労働時間法制に関する各側委員からの主な意見」を見ると、労働側が時間外労働の上限規制やインターバル規制に積極的であるのに対して経営側は「上限規制やインターバル規制といった一律の規制は、現場に馴染まず、事業活動の停滞や雇用機会の喪失を招きかねない」と、極めて消極的な態度を取っているように見えます。

 1月に示された報告書案では、一般的には上限規制や勤務間インターバル規制は盛り込まず、高度プロフェッショナル労働制という年収1075万円以上の高給労働者にのみこれらを持ち込むことになっていますが、これらは本来高度でもプロフェッショナルでもない普通の労働者にこそ必要な制度でしょう。ただ、では上記労使の対立図式が正直ベースのものなのかというと、必ずしもそうではなさそうです。

 『労働法律旬報』2015年1月合併号に連合総研前副所長の龍井葉二氏が書かれている「労働時間短縮はなぜ進まないのか?」に、労働側-少なくとも現場レベル-の本音が描かれています。

 もう10年近くも前になるが、連合本部で労働条件局を担当していたときの話である。連合としての時短推進計画を見直すことになり、時間外労働の上限規制が論点になった。われわれ事務局としては、上限規制を強化する方針で臨んだのだが、いくつかの産別から猛反対を食らった。この推進計画はガイドライン的なものであり、もともと縛りの強いものではなかったのに、である。

 われわれは産別本部にまで足を運んで説得に当たったが、頑として聞いてくれない。日本における時間外労働の労使協定時間が異様に長いことは、当時から指摘されていたことであったが、連合がその邪魔をしてくれるな、というのが本音だったと思う。

 おそらくここに現れているのは現場の労働者の本音そのものであり、産別はそれを正直に表示しているだけだというのが真実でしょう。上層部は長時間労働が問題だとご託を並べても、現場は長時間残業してたくさん残業手当を稼ぐことの方が大事だという感覚に満ちているとすれば、使用者側の「現場に馴染まず」という言葉は存外に深いものがあります。しかし、その感覚が異常な長時間労働の蔓延を許し、女性の活躍を妨げる要因になっているとすれば、労使双方の本音に忠実なだけでは物事は進展しないというのもまた事実でしょう。

 報告書案が提示している高度プロフェッショナル労働制について、労働側は「蟻の一穴になる」と盛んに警告を発しています。大変皮肉な言い方ですが、ごく僅かの労働者にしか労働時間の上限規制や勤務間インターバル規制が適用されないような「蟻の一穴」が、今後適用対象をどんどん拡大していくのであれば、つまりごく普通の労働者にも時間外労働の絶対上限や勤務間の休息時間規制が適用されるようになるというのであれば、それこそ望ましい姿というべきではないでしょうか。そういう期待を込めた時に「蟻の一穴」という言い方はしないのでしょうが。

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