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2015年1月22日 (木)

「若者雇用対策法の概要」 @『労基旬報』1月25日号

『労基旬報』1月25日号に「若者雇用対策法の概要」を寄稿しました。

 去る1月9日、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会に、「若者の雇用対策の充実について」という報告書案が提示されました。昨年9月から審議されてきたトピックで、近々にもとりまとめられる予定です。

 このもとになったのは、与党の公明党が昨年5月に、「若者の雇用の促進に関する法律」(仮称)の制定を求めて政府に要請を行ったことです。これを受けて6月の「『日本再興戦略』改訂2014」に「未来を創る若者の雇用・育成のための総合的対策の推進」が盛り込まれ、就職準備段階から、就職活動段階、就職後のキャリア形成に至るまでの若者雇用対策が社会全体で推進されるよう、法的整備も含めた検討を行い、次期通常国会への法案提出を目指す、とされていました。今回の報告書を見ると、提出される若者雇用対策法案の内容がほぼ明らかになっていますので、法律事項以外のものも含めて一つ一つ見ていきましょう。

 まず、「マッチングの向上に資する情報提供」にかかる項目です。これは、近年いわゆるブラック企業問題が社会問題となり、劣悪な労働条件の企業をきちんと見分けて、そういうところに就職しないで済むようにすべきという問題意識が背景にあります。

 その第1は「労働条件の的確な表示の徹底」で、報告書案では法律事項ではなく、新法に基づき策定される指針(若者の募集・採用及び定着促進に当たって事業主等が講ずべき措置に関する指針)に盛り込むべきとしています。この点について、資料の中ではいくつか具体的な例が挙がっていて、例えばこういう記載があります。

・「固定残業代への対応として、求人票に欄を設け、しっかりと記載できるようにすべきではないか」という課題に対し、「ハローワークの求人票の特記事項欄に「固定残業代には○時間分の残業手当を含む。○時間を超えた場合は別途残業手当を払う」旨を記載するよう指導している。今後、現行の取り組みを徹底する。」

 この問題については、連合が昨年11月の中央執行委員会で「求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方」を確認しており、そこでは、具体的な法改正事項として

(1) 労働基準法第15条
①「労働条件の明示」の内容について、「事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。この規定により、明示された労働条件と実際の労働条件が異なる場合について、労働基準監督官の指導・監督を可能とする。
②「労働条件の明示」の方法について、パート労働法第6条を参考に「書面の交付」を明文化する。
③「労働条件の明示」の時期として、「原則として実際の就労開始前とする」旨を明らかにする。
④「労働条件の明示」がなされていない場合も、第2項・第3項が適用されることを明らかにする。
(2) 職業安定法第5条の3
上記(1)①と平仄を合わせて、「明示する労働条件は事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。

(1) 労働基準法施行規則第5条第1項を改正し、労働基準法第15条第1項後段で書面の交付で明示しなければならない労働条件に「法定労働時間を超える労働があるときの時間外割増賃金の計算及び支払の方法」を追加する。

といったことを求めています。今回の報告書は若者対策ということなのでここまで踏み込んでいませんが、こうした一般対策は今後労働条件分科会なりで検討されていく可能性があります。

 マッチングの第2は「職場情報の積極的な提供」です。ここは法律上の義務及び努力義務規定が設けられる予定です。具体的には、新規学卒者の募集に対する応募者や応募の検討を行っている新卒者が求めた場合には、次の項目について事業主が選択して情報提供を行うこととしています。応募者や応募検討者以外に対しては努力義務です。また、ハローワーク等に求人を出す場合には、ハローワーク等にこれら情報を提供することになります。

(ア)募集・採用に関する状況
   (過去3年間の採用者数及び離職者数、平均勤続年数、過去3年間の採用者数の男女別人数等)
(イ)企業における雇用管理に関する状況
(前年度の育児休業、有給休暇、所定外労働時間の実績、管理職の男女比等)
(ウ)職業能力の開発・向上に関する状況
(導入研修の有無、自己啓発補助制度の有無等)

 これについては、経営側がかなり抵抗した結果、やや限定的な仕組みとなりましたが、選考プロセスの中にいる応募者が「こんなことを敢えて尋ねたら選考からはずされるのではないか」と心配して自己規制してしまう可能性が高いようにも思われます。本質的には、これら情報が関係者以外には秘すべき機密情報なのか、それとも一般に公開すべきパブリックな性格の情報なのか、という問題がありそうです。

 マッチングの第3は、新聞等でも大きく報じられた「公共職業安定所での求人不受理」です。現行職業安定法では、求人の内容自体が違法な場合でなければ、すべての求人を受理しなければならないこととされていますが、残業代不払いなど労働法違反を繰り返す(具体的には1年間に2回以上是正指導を受けたなどの)悪質な求人者からの求人申し込みを、一定期間(法違反を重ねないことを確認する期間として、具体的には6ヶ月間)受理しないことができるという特例を設けることにしています。これは新規学卒者の求人に限った特例ですが、そもそも論からすれば一般求人の場合には悪質な求人者からの求人でも許されるのはなぜかという議論もあり得ましょう。また、ハローワークへの求人だけを規制し、それ以外の媒体であれば許されることへの疑問も提起されそうです。

 以上のような規制的な手法とともに、促進的な手法として「認定制度の創設」があります。これは現在既に行われている「若者応援宣言企業」事業を、法律上の認定制度に引き上げるものですが、現在の事業に対して「実際にはブラック企業も紛れ込んでいるではないか」という批判もされていることから、認定基準をかなり厳格なものにしようとしています。具体的には、単に実績を公表していることだけではなく、新卒者の定着状況については3年前就職者の離職率30%以下を満たしていること、年休については平均取得率70%以上又は平均取得日数10日以上、育休については男性取得者1名以上又は女性取得率75%以上、所定外労働時間については月平均20時間以下又は週労働時間60時間以上労働者割合が5%以下、といったものが示されています。認定を受けた企業に対しては助成金が支給されることになります。

 過去10年、若者雇用問題が労働論壇のホットトピックになり、近年はブラック企業問題が取りざたされてきましたが、若者を対象にした雇用法規は作られてきませんでした。今回、公明党の要請に基づく動きの結果としてこういう立法化が実現する方向になったことは、政治主導のよい事例と見ることができるかもしれません。

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