求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方
連合のサイトに、本日の新年交歓会の様子もアップされていますが、まあそれはともかく、「求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方」という興味深い中央執行委員会確認文書が載っています。労働法的に興味深いのはこっちです。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/jakunensha/data/20141120job_trouble.pdf
求人票・求人広告等に記載された労働条件と実際の労働条件が異なっているとのトラブルが相次いでいる。・・・・・しかし、求人票・求人広告に記載された労働条件と実際の労働条件が異なる場合について、法的には未整備・未解決の部分が多い。そこで、このような課題の解決に向けて、以下の改善策をとりまとめることとした。今後は、この「考え方」に基づき、政府への要請や労働政策審議会の議論等を通じて、必要な施策の実現を求めることとする。
この問題の実例については、POSSEの皆さんの活躍もあり、かなり知られるようになりましたが、法的課題を具体的に指摘したものはあまりないように思います。
(1) 労働基準法第15条
①「労働条件の明示」の内容について、「事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。この規定により、明示された労働条件と実際の労働条件が異なる場合について、労働基準監督官の指導・監督を可能とする。
②「労働条件の明示」の方法について、パート労働法第6条を参考に「書面の交付」を明文化する。
③「労働条件の明示」の時期として、「原則として実際の就労開始前とする」旨を明らかにする。
④「労働条件の明示」がなされていない場合も、第2項・第3項が適用されることを明らかにする。(2) 職業安定法第5条の3
上記(1)①と平仄を合わせて、「明示する労働条件は事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。
またいわゆる固定残業代については、
(1) 労働基準法施行規則第5条第1項を改正し、労働基準法第15条第1項後段で書面の交付で明示しなければならない労働条件に「法定労働時間を超える労働があるときの時間外割増賃金の計算及び支払の方法」を追加する。
(2) 求人票・求人広告に記載の労働条件のうち、賃金部分(手当部分)の記載内容を明確化する(再掲)。
という提起をしています。
こういった法制的な議論はもちろんきわめて必要ですが、そもそも労働法が想定している労働条件の明示原則が、現実の労働社会では二の次三の次的に見なされている現状の背後にあるものは何なのか、という雇用システム論的な議論も無用ではないように思います。
ジョブ無限定ということは、つまるところ、労働条件の明示と言ったところで、所詮は入社した当座のことにすぎないわけですから。
結局、会社というものを、そこに人を当てはめるべきジョブの束と考える立場からすれば、求人票や求人広告に書かれるそのジョブの中身や雇用労働条件というのはそこに当てはめるべき人との契約内容を形成する最も重要な情報ということになるのに対して、ジョブなんかどうでも良いのであって、要は会社の一員にさえなればそれでいいという発想からすれば、求人票や求人広告に何が書いてあっても、そんなもの大して意味はないという発想になりがちなのは無理からぬところがあります。
そういう人から見れば、こんなことにギャアギャア騒ぐ連中は、結婚してしまってからだまされたと騒いでるようなものだと見えるのでしょう。ここには、雇用関係というものを、民法の規定通り債権債務契約と考えるのか、それとも結婚類似の身分設定契約と考えるのか、という違いが現れているとも言えます。
より正確に言えば就職とは結婚みたいなものだから細かいことをごちゃごちゃ言わないものだ、というメンバーシップ型の『常識』をうまく利用して、実は細かいことをきちんとしとかないと損をさせられる馬の目を抜く市場取引関係をそうでないように偽装することでうまく搾取するという、ブラック企業型のさや取り作戦をする企業が増えてきたということなのかもしれません。
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