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2015年1月

2015年1月30日 (金)

『語り継ぐ連合運動の原点(1989~2014年) 』

Genten連合結成25周年記念企画として刊行された『語り継ぐ連合運動の原点(1989~2014年) 』が少し前に届いていました。今日、連合のサイトにもアップされたので、こちらでも紹介。

発刊にあたって 連合会長 古賀 伸明

第1章 語り継ぐ
身の引き締まる想いだった連合の結成 ~社会的存在価値のある労働運動を目指す~
  連合 初代会長 山岸 章は語る
連合がめざすもの -800万官民の結集とこれからの労働運動-
  連合会長 山岸 章
統一ナショナルセンター「連合号」の離陸 -労働センター12年の足跡を振り返りつつ-
  連合会長・労働センター理事長 山岸 章
“800万連合は一日にしてならず” ~天の時・地の利・人の和 イデオロギーの虚妄から覚めて~
  連合 初代会長代行 藁科 満治は語る
連合の充実・発展に向けて -連合の誕生は終着点でなく出発点だ-
  連合会長代行 藁科 満治
労戦統一問題がクローズアップ -それは自治労書記長時代-
  総評最後の事務局長 眞柄 栄吉
4団体共闘の素地が連合を生む
  同盟最後の書記長 田中 良一は語る
リーダーは責任倫理でなければならない
  元電力総連会長 連合役員推薦委員会委員長 鈴木 治は語る
連合の“力と政策”の政策指南役 ~現代総研で学者・言論人・労組幹部らが熱い政策論議展開~
  元・現代総合研究集団 会長 正村 公宏は語る
“発言力・行動力を高め、存在感ある連合に期待”
  政治評論家 森田 実は語る

第2章 連合結成・誕生のドラマ
1980年代の労戦統一 70年代の統一論議挫折から政推会議発足へ
  統一推進会から全民労協へ 民間連合から官民統一「800万連合」へ
連合?民間から全体の統一へ

第3章 連合結成に命を賭けた群像①
官民統一目指してひた走る
  元全日本民間労働組合連合会会長 竪山 利文
危機的症状を乗りこえて
  元全日本民間労働組合連合会会長・連合顧問 竪山 利文
山田精吾の存在抜きに連合の誕生は語れない
  -政推会議から全民労協-民間連合-連合の初代事務局長歴任-
  『追想 山田精吾』及び新聞連載から
山田精吾の労戦統一の原点は、大阪から
  大阪地方民労協の旗揚げが連合結成への大きなインパクトに
夢追い人・山田精吾という男の真髄
三つの関門があった -新連合への期待-
  IMF・JC議長・連合総研理事長 中村 卓彦

第4章 連合結成に命を賭けた群像②
-トップリーダーに求められる条件とは- 労働運動の原点はヒューマニズム・働く人の幸せ優先
  元金属労協議長 宮田 義二
連合運動の裾野の広がりを期待する
  連合顧問(元総評議長) 黒川 武
労戦統一は民間労組先行を最優先し 民主的労働運動の理念を念頭に総結集を狙う
  元同盟会長 宇佐美 忠信
連合の結成と私の決断 最後に残る問題は何か -労戦統一か統一戦線か-
  元全逓中央執行委員長 宝樹 文彦
労働戦線統一は行動で示す
  全民懇代表幹事 高畑 敬一労働戦線統一は行動で示す

第5章 いま明かす貴重な労戦統一推進会の記録
貴重な労働戦線統一推進会の記録 -激論を交わす中、人間の信頼関係築き、連合に結実-
「統一を進める会」のいきさつと連合の明日を語る
  元自動車総連会長 塩路 一郎

第6章 連合結成に期待を寄せるマスコミ論評・社説など
労戦統一の序曲から統一推進会を経て民間労組先行に向けた“基本構想”発表へ
  マスコミ各紙・論調は労戦統一をどう評価したか

第7章 連合結成への歩み(年表)
貴重な労働戦線統一推進会の記録 -激論を交わす中、人間の信頼関係築き、連合に結実-
「統一を進める会」のいきさつと連合の明日を語る
  元自動車総連会長 塩路 一郎

第8章 連合への期待と注文
貴重な労働戦線統一推進会の記録 -激論を交わす中、人間の信頼関係築き、連合に結実-
各界公式談話(要旨)
  =政党・国会議席順=
  =経済団体=
各界有識者からの500字提言
連合応援団からの熱いメッセージ

第9章 (資料編)①労戦統一の基本構想など
民間先行による労働戦線統一の基本構想 労働戦線統一推進会
「連合」結成宣言
統一大会宣言 -国民の皆さんへのメッセージ

第10章 (資料編)②連合の進路(綱領、基本目標、課題と使命) 連合の「進路と役割」

第11章 発刊の経緯 本冊子発刊の経緯 -連合結成に賭けた先人の熱い志から何を学び、教訓として生かすか-
  連合初代会長代行 藁科 満治は語る

あとがき
参考文献

目次を一瞥すればわかるように、錚々たる面々が目白押しです。

一番はじめの山岸初代連合会長の文章に、塩路一郎氏が初代連合会長になっていたかもしれなかったという話があって、いろいろと思うところがありました。

ロースクールでも「学び直し」給付が貰えます

厚生労働省が専門実践教育訓練の指定講座(追加決定分)を公表していますが、

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072448.html

その指定講座一覧リストを見ると、

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11804000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Ikuseishienka/0000072669.pdf

長い専門学校のリストの後に専門職大学院が並んでいますが、その中にロースクールも顔を出していますね。

中央大学、慶應義塾大学、名古屋大学、京都大学の4校の既修未修それぞれで8コースです。

既修は2年で160万円まで、未修は3年で240万円まで教育訓練給付の対象になります。

L型かどうかはともかくとして(笑)、立派な「職業実践的高等教育機関」であることだけは間違いないのでしょう。

昨日の産業競争力会議

昨日、産業競争力会議の雇用・人材・教育WGと、本会議が開かれた模様です。

雇用・人材・教育WGには金丸主査のペーパーが提出されていますが、

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/wg/koyou/dai3/siryou1.pdf

これを見ると、L型大学・・・じゃない、「実践的な職業教育を行う高等教育機関の制度化」がトップに出てきてますね。

○「プロ」育成機関の社会的地位を確立するとともに、高付加価値化を実現させるような教育実施体制の構築が不可欠である。
〇制度設計に当たっては、専門学校からの転換はもとより、既存の大学からの転換も促進されるような制度にする必要がある。そのためには、既存の私立大学等とのイコールフッティングを確保していくことが重要である。
・例えば、この新たな高等教育機関の卒業時に与えられるサーティフィケート(ステ イタス)を、大学の学位と同等の価値を有するものとすることは重要な観点である。
・また、未就職の若者の就学コストを私立大学等と同水準にしていく観点から、公的助成の均衡(財政支援のイコールフッティング)についても検討課題である。さらに、奨学金制度等の対象とすることも重要である。
・さらに、働き手の学び直しにおいても、教育費用に対する雇用保険制度による個人補助等、職業能力開発施策と連動した仕組みとする必要がある。
(※)これらのことは、前向きな意味で、既存の学術中心の大学教育における職業的意義について見直しをする契機となる。
〇教育プログラム、教員の体制等の構築にあたっては、高等学校を卒業した若者はもとより、既に職を得ている社会人が専門性を身に付け、それを高め続ける場に相応しいものとする必要がある。
・教育内容は、産業界と密に連携をしながら作り上げていくことを必須要件とすべきである。また、企業と協力し、長期間又は定期的に学生が企業に出向き、働きながら必要なスキルや知識を身に付け、その実践をもとに、学校で授業を受け、討議をすることを通じ形式知化していくプロセスとしていくことも不可欠である。
・教員についても、実務家の積極的な登用を図ることも重要である。その際、単に自らの経験を語るのみではなく、知識や経験が十分に形式知化されていることを担保することや、効果的な教授方法を身につけるための訓練を組み込むこと等も課題である。
また、常に最新の知識・スキルを教育できるようにしておくためにも、一定の流動性が図られるようにすべき。
・また、社会人がトレーニングする場として、特定の絞られた知識やスキルを短期間に集中して効果的に学ぶことができるような多様な教育プログラムの提供も可能とすべきである。
・さらに、個々の教育プログラムが、スピーディな産業構造やビジネスモデルの変革に耐えうるよう、常に見直しが行われるとともに、履修者の職業能力向上に効果があったかを検証し、改善がなされるプロセスを組み込むことも重要。
○以上の観点も踏まえた上で、今後、新たな高等教育機関の制度を活用する学校数をどの程度見込むのかも含め、具体の制度設計を早急に詰め、制度創設に向けた工程を明らかにする必要がある。

あと、インターンシップとか何とか若者関連が長く書かれて、その後に中高年が出てきます。

○例えば、新たな出向先企業で働く(正確に言えば、「働きながら、能力・経験の発揮の仕方を補正・習得していくという意味での能力開発」)従業員の給与を、出向元企業が負担した場合(一定の資本関係のある企業への出向の場合は除く)に、一定の賃金助成を行うなど、育成型出向と試用就業の機能を併せ持った制度の創設を検討すべきである。

「育成型出向と試用就業の機能を併せ持った制度」というなかなかの癖球です。

最後は労働市場インフラの整備で、「キャリア・ドック」という大久保幸夫さんのアイディアをそのままもってきてますね。

引き続き産業競争力会議の本会議があったようで、

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai20/siryou.html

報告書案とか実行計画案とかいろいろアップされていますが、

ここでは、「成長戦略進化のための今後の検討方針(案)」というのを見ておきましょう。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai20/siryou3.pdf

いろいろなことが書いてありますが、おそらくは小室淑恵さんの影響もありこういう記述が入っているからには、

②長時間労働の是正や柔軟な勤務形態の導入等に向けた企業等の取組促進
女性の活躍をより一層推進するためには、育児や介護などライフステージに応じて男性も女性も仕事と生活を両立することができる働き方の実現が急がれる。職場全体の労働時間の削減に向けた職場環境の整備等を図ることを通じ、残業しない働き方の女性も男性と同じようにキャリアアップをしていくことができるようにすることが重要である。こうした問題意識の下、長時間労働の是正や柔軟な勤務形態の導入等に向けた企業等の取組を促進する支援策等について、関連する制度の活用・連携を含め、本年年央までに総合的に検討を行う。

それを口先ではなくどういう仕組みで実行していくのかという議論も必要になりますね。

L型の話もあります。

(3)企業外で能力開発を行うための高等教育機関等の改革
働き手が、企業内外を問わず必要なスキルや知識を身につけられるようにするとともに、就職前の若者のキャリアを意識した教育を充実させるなど、社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人を育成する観点から、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関制度の早期創設に向けた検討を進める。
さらに、高等学校普通科において、産業界や地域社会と連携した教育プログラムの開発や量的拡大等の取組を進める。また、大学・専門学校等の高等教育機関において、産業界と連携した中長期のインターンシップを制度化する等、「デュアル教育」としての観点を踏まえたインターンシップの位置づけの見直し、改善・充実等に向けた検討を進める。

ちなみに、日経新聞は「職業教育で人材力磨く 新成長戦略、政府が検討方針」という記事にしていますが、

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H4E_Z20C15A1EE8000/

政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は29日、今夏にまとめる新しい成長戦略の検討方針を決めた。若者が現場で役立つ知識や技術を学べる新しい教育制度や、中高年の能力開発につながる出向制度の創設が柱だ。

最後のところでこんなことを書いてます。

昨年の成長戦略には、時間でなく成果で賃金を決める新しい労働時間制度や農協改革など、構造改革に踏み込んだ施策を並べた。だが今回は「目玉になるものが少ない」(競争力会議関係者)のが実情。昨年も議論した解雇規制見直しは方針から外れ、農業も従来の方針を再び提示するだけにとどまっている。

いやだから、日本国の法律には、法改正で「緩和」できるような解雇規制なんてものは存在しないんだと、何回いったらわかるのか・・・。

一部委員を除き、産業競争力会議の方々にもそれが分かってきたから、そういうナンセンスな記述はなくなっているということが、自称評論家諸氏とともに、この記者氏にもよくわかっていないようです。

2015年1月29日 (木)

アベノ春闘?

昨日の規制改革会議の資料がアップされています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee3/150128/agenda.html

労働関係では、

  1. 多様な働き方を実現する規制改革について
  2. 雇用ワーキング・グループからの報告(雇用仲介)

2は、資料はこれですが、

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/publication/150128/item1.pdf(「雇用仲介事業の規制の再構築」に関する意見)

中身は前にWEB労政時報で紹介した動きがまとまったものですね。

http://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=334

1は、例によって元電機労連の小林良暢さんが面白い資料を上げています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee3/150128/item1-2.pdf(規制改革会議「多様な働き方を実現する規制改革」本当に必要なのは企業現場における「働き方(働かせ方)改革」)

いきなり冒頭こうですよ。

1.2015「働き方改革」
①2015年は“戦後70年”よりも「春闘60年」・「連合25年(四半世紀)」
②「太田春闘」→「宮田春闘」→「連合春闘」→「アベノ春闘」(合意形成型春闘)
【図表1】
③“ヨーロッパ並み賃金”→“豊かさを求めて”→“ゆとりある生活”→“働き方改革”
④連合結成「連合総合生活開発研究所」―働き方・働かせ方、賃金・雇用制度の改革を!
⑤それから四半世紀、労使はしなかった・出来なかった。
「連合は何をしてきのだ!!」
⑥今再び、働き方・働かせ方が共通認識になりつつある。問題はそれをどう実現するか。
⑦働き方・働かせ方を支える個別企業の労使協議の固い基盤を揺り動かすには・・・

いやいや、「アベノ春闘」ですか。連合としては一番いわれたくない言い方かも知れません。

2015年1月28日 (水)

「アルバイトの労働条件を確かめよう!」のキャラクターデザイン募集

厚生労働省がそろそろブラックバイト対策に乗り出すようです。

大学生や専門学校生などの学生に、アルバイトをする前に労働条件の確認を促そうというキャンペーンをやるようですが、そのためにまずそれに使うキャラクターを募集してますね。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072421.html

厚生労働省では、大学生や専門学校生などの学生に、アルバイトをする前に労働条件の確認を促すための、キャラクターのデザインを募集します。応募締切は平成27年3月2日(月)です。 

正社員・アルバイトなどの雇用形態に関わらず、労働者には、労働基準法や労働者災害補償保険法などの法令が適用されます。 

こうした事実を知らず、学生が、アルバイト先でトラブルに巻き込まれるのを防ぐため、学生自身に労働条件や労災保険などについて知ってもらうことを目的としています。 

今回募集するキャラクターは、アルバイトの労働条件の確認を促すために、学生向けに作成するリーフレットをはじめ、広報活動などに使用します。 

ということです。我と思わん人々はぜひどうぞ。

『法律時報』2月号も労働法特集

06745法律雑誌は『ジュリスト』だけでなく『法律時報』も労働法特集です。

http://www.nippyo.co.jp/magazine/maga_houjiho.html

■特集
労働規制の緩和と労働契約論の課題

規制緩和政策と労働契約論……野田 進 
有期労働契約の無期転換政策のゆくえ
――特例の創設と合意の「乱立」からみえるもの……きょう・びん 
労働契約法理と限定正社員
――「限定」性を形成する合意の労働契約法理上の意義……新屋敷恵美子 
雇用の安定性を確保する労働者派遣法制とは何か……高橋賢司 
労働時間規制「改革」の動向と課題……中窪裕也 
解雇法制をめぐる動向と課題……野川 忍 
雇用特区と労働契約……野田 進 

いくつかの論文には疑問のあるところもありますが、それより何より、今回の特集で一番びっくりしたのは、この伝統ある法律雑誌に、こういう注がついていたことです。

中窪裕也さんの「労働時間規制「改革」の動向と課題」の中で、

・・・しかし、現在の労働時間規制が「成果で評価」することを妨げているかのような言い方は、ミスリーディングと言わざるを得ない(8)。

という本文についた注(8)で、

8)濱口桂一郎氏が、ブログ「EU労働法政策雑記帳」でたびたび指摘されているところである。

と、拙ブログを参照していただいています。ま、たしかにこの趣旨のことはいやと言うくらい書いてきた感があります。


2015年1月27日 (火)

海老原嗣生『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか?』

01131126_54b482455ef44海老原嗣生さんから『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか?』(東洋経済)をお送りいただきました。いつもいつもありがとうございます。

http://store.toyokeizai.net/books/9784492223529/

人気企業が隠している就活の「裏側」を、バカ正直に明らかにする。採用の「手口」を知れば、就活の悩みは9割なくなる

最近はどちらかというと日本の雇用のあり方論にシフトしていた海老原さんが、就職活動というかつての土俵で、大変ストレートに「真実」を語っています。

こういう調子です。

はじめに  「面接で最高の自分を」って、あんたバカ言わんで

【Part1 募集から採用まで 人気企業の「手口」、ぜんぶ】
質問 インターンシップに行くと仕事や会社が見えてきますか?
カリスマの答え× いいえ。まったくわからないでしょう。

質問 20代でもトップになれる企業っていいですね。
カリスマの答え△ 30代になったらどうなるのでしょうか……。

質問 説明会の予約がとれません。大学名で差別はあるのですか?
カリスマの答え○ はい、もちろんあります。

質問 エントリーシートって、やっぱり重要ですか?
カリスマの答え△ 利用のされ方は3つに分かれます。

質問 委員長やNPO代表などの華々しい経験がないのですが……。
カリスマの答え× 「委員長? だから、何?」程度に見ています。

質問 英語ができると就活に有利ってホントですか?
カリスマの答え× 土産物屋さんや観光ガイドなら必要でしょうが……。

質問 大学名に自信がないので、資格をたくさんとろうかと……。
カリスマの答え× 弁護士や会計士くらいの難資格でなければ無意味です。

質問 アルバイトやサークルの話は意味がないってホントですか?
カリスマの答え× それで受かった人もいます。内容次第です。 他

【Part2 就活にまつわるニセ情報をメッタ斬り!】
質問 人気ランキングを操作してる企業があるって本当ですか?
カリスマの答え○ たしかに、無意味な努力をしている企業があります。

質問 人気順位の高い企業は、将来も安定しているでしょうか?
カリスマの答え△ それほど安定はしていません。

質問 新卒採用は年々減って、厳選化が進んでいるのですか?
カリスマの答え× 厳選化なんて起きていません。

質問 結局、企業ってあいまいな基準で選考をしているのでしょ?
カリスマの答え× 学歴以外にも、しっかり見ているポイントがあります。

質問 外国人採用が増え、日本人はますます苦しくなりますか?
カリスマの答え× 過熱感は減り、だいぶ冷静になっています。

質問 入社後に宴会芸をさせられますか。日本的で嫌です。
カリスマの答え○はい。でも欧米には欧米のつらさがあります。 他

言ってる話の筋道は、海老原さんの今までの本を読んできた方なら、ああ、あそこで言ってた話ね、というところが多いと思いますが、こうやってまとめられるとやはりこれは壮観です。

いろいろと書かれていますが、この本のメッセージをたった一言で言うとすると、

ごちゃごちゃ気にするな!企業が見ているのは「仕事がきちんとできるか」「仲間とうまくやれるか」の二点だけだ!

ってことでしょうね。それ以外はたいしたことでないか、かえって無駄なことかどっちかだ、と。


『ジュリスト』に黒の報告書・・・

L20150529302『ジュリスト』2月号は、左の表紙のように「パートタイム労働法改正――その評価と実務への影響」が特集です。

http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/019263

◇特集の趣旨●岩村正彦……12

◇改正パートタイム労働法のあらまし●厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課……14

◇公正な待遇の確保●櫻庭涼子……22

◇2014年改正パートタイム労働法が労働市場に与える影響●権丈英子……29

◇改正パートタイム労働法と企業の人材活用の課題●佐藤博樹……37

◇パートタイム労働法改正を受けて――働く者の立場から●日本労働組合総連合会……42

◇パートタイム労働法改正を受けて――使用者の立場から●日本経済団体連合会……45

なので、まず何よりもその内容をご紹介すべきは重々承知なれど、いやいや、天下の名門『ジュリスト』にこれが載りましたか、という黒の報告書さながらのアモーレミステリー(?)が載っていますので、これはやはりこれを一番に・・・。

それはいうまでもなく、「労働法なう」シリーズの

大学教授の辞めさせ方●大内伸哉……56

です。

頭が重い。昨日は飲み過ぎたようだ。最後はどこで呑んでいただろうか。4軒目までは覚えているが、、その途中から記憶が無い。日本酒とワインをちゃんぽんで飲むとこうなる。ところで、ここはどこだ。俺のベッドじゃ無いぞ。「おい、君は誰だ?」「あら、お忘れになったの。センセがしつこく誘ったのよ」自分の横にいた女が、けだるそうに言った。若い女だ。部屋を見渡すと、俺の服と女性用の服が絡み合うようにして落ちていた。背筋に冷たいものが走った。・・・

著名な経済学者西田が理事長として進める住吉学院大学の再建に不当労働行為を申し立てて抵抗する組合の中心はロースクールの田原教授。西田は田原をクビにするべく陰謀を練り始め・・・・・、

西田理事長は、小野専務から第3の方法を聞いてニヤッとした。

「君も相当ワルだね」

「そのお言葉は、心外です。すべては学院を思ってのことです」

「これだと、田原を懲戒解雇にできると云うことだね」

・・・・

「でも、この方法だと協力者がいるのではないか」

「ご心配なく。教員の中に、私と通じている者がいるので」

田原教授に視線を戻すと、

・・・田原の記憶が、少しずつ戻ってきた。4軒目は、同僚の橋本徹也教授に誘われていったキャバクラだった。このルミという子が、盛んにシャンパンをついでくれて、自分に寄りかかってきていた状況が断片的ながら蘇ってきた。確か、どこかの女子大の学生だと云っていたような気がする。橋本先生は、あの後、どこに行ったのだろうか。・・・

そして後日談は、

「今度、理事になるんだ」と、突然、橋本は妻の由紀恵に云った。・・・「あなたのような三流教授が、どうして理事になれたの」「大学のために貢献したからね」。もちろん、妻の姪を利用したなどとは口が裂けても言えない。「今度の日曜は、駅の近くにある、ミシュランで星を取ったフレンチにいこう。留美ちゃんも誘って」というと、妻はニコリとした。久しく見ていない笑顔だ。・・・・

労働法の研究の合間に精力的に読まれているさまざまなミステリ小説の香りがただよってきます。

え?労働法学的には何の話だって?

それを知りたければちゃんと『ジュリスト』を読んでください。

2015年1月26日 (月)

高橋賢司『労働者派遣法の研究』

9784502122514_240高橋賢司さんより近著『労働者派遣法の研究』(中央経済社)をお送りいただきました。ありがとうございます。413ページになんなんとする大著です。

http://www.biz-book.jp/%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%E6%B4%BE%E9%81%A3%E6%B3%95%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6/isbn/978-4-502-12251-4

議論が対立した労働者派遣法改正。EU法・ドイツ法を分析し、わが国のあり方を検討。特にドイツは規制緩和で先行しながらも再規制に踏み切っており、その最新情報を紹介。

目次は下の方にコピペしておきますが、前の方にEUの派遣法の解説、後ろに日本の派遣法制の考察をおいて、その間に200ページ近くでもって専門のドイツの派遣法の研究が細かく書かれています。

ドイツ法については、ドイツ語が読めない私は間接的にしか調べられないので、本庄淳志さんの論文などと読み比べていきたいと思いますが、冒頭のEU法のところについては、いささかドイツにおける議論に引っ張られて、EUレベルそれ自体の議論の土俵とは少しずれている感じも受けました。

それは、ドイツ法編で大変重視されている「一時的」という一句がEU派遣指令に盛り込まれていることの意味をどこまで重視するかなのですが、本書でも繰り返し引用されている昨年の欧州委員会の派遣指令実施状況報告書においては、少なくともドイツ国内で騒ぎになっているような意味で指令の「一時的」という言葉が国内法規制的には理解されていないことは明らかなんですね。つまり、この「一時的」という文言を各国の国内法がちゃんと遵守しているかという観点での記述は全くなく、逆に、フランス等の諸国における派遣期間制限について、指令第4条における派遣の制限や禁止を撤廃すべきという規定の例外として認められるものとして記述されています。現時点のドイツも含め、派遣期間に特段制限を設けていない多数派の諸国については何ら問題視せず、逆に期間制限している国の方を指令に違反しているかどうか議論の土俵に乗せているところからすると、ドイツの議論の文脈の方がEUレベルとはずれてきている感が否めません。

まあ、ドイツ法の最近の動きを前提とすると、どうしてもそちらのほうからもとのEU指令を解釈するようになるのはやむを得ないのかもしれませんが、EU法からものを見ている立場からすると、いささか違和感の残るところではあります。

最後に、これは出版社に言うべきことかもしれませんが、せっかくの本格的な専門研究書なのにいささか誤植が目立ちます。本書冒頭の「はしがき」の1ページ目の真ん中あたりに、

・・・小野善康『不況のメカニズム』第3版(中央新書、2009年)・・・・

いや、中央新書ってのはないですよ。中公新書はあるけれど。

第1章 日本の労働者派遣法で求められるものは何か
 第1節 法政策及び法理論の面で問われる新たな視点
  一 フレキシキュリティと一時的な労働
  二 いわゆる派遣切りをめぐる問題
  三 違法派遣の法律上の問題点
  四 派遣先企業への労働組合の参加
 第2節 研究のアプローチと本書の構成

第2章 EU法における労働者派遣
 第1節 指令の経緯と目的
  一 指令の経緯
  二 指令の目的
  三 本指令の正当性
  四 国内法への置換え
 第2節 労働者派遣の概念,指令の適用領域
  一 労働者派遣の概念,一時的な労働の概念
  二 コンツェルン内の労働者派遣
  三 適用領域
 第3節 平等取扱原則
  一 平等取扱原則の経緯と内容
  二 労働協約による除外・逸脱と「全体的な保護」
 第4節 集団的な参加と雇用へのアクセス等
  一 集団的な参加に関する規制
  二 雇用と教育訓練に関する規定
 第5節 労働者派遣の制限と禁止
 第6節 終わりに

第3章 ドイツ法における労働者派遣
 第1節 労働者派遣の概念と労働契約上の規制
  一 ドイツ労働者派遣法の概観
  二 「一時的な労働」の概念
  三 期間設定法上の規制
  四 労働者派遣と派遣労働契約の実務
  五 小括
 第2節 許可関連の規定
  一 許可関連の規定および労働者派遣法3条の経緯
  二 違法な労働職業紹介の推定
  三 コンツェルン労働者派遣
  四 労働者派遣契約の無効事由と擬制的な労働関係
 第3節 同一賃金原則
  一 はじめに
  二 同一賃金原則
  三 協約による適用除外・逸脱
  四 同一賃金原則関連のその他の規定
  五 小括
 第4節 労働者派遣の対象業務の限定
  一 建設業での労働者派遣の禁止の内容と経緯
  二 建設分野の労働者派遣禁止に対する批判と法改正
  三 禁止違反の効果と実態
  四 小括
 第5節 ドイツにおける偽装請負をめぐる法規制
  一 ドイツにおける請負契約・偽装請負の現状
  二 ドイツにおける請負契約・偽装請負の実態と問題点
  三 請負と派遣の法的な区別についての基準
  四 事業所委員会の参加権と情報提供権
  五 日本法と比較した場合のドイツ法の特徴
 第6節 派遣労働者の事業所委員会を通じた企業の決定への参加
  一 はじめに
  二 労働者派遣の状況と参加の可能性
  三 参加に関するドイツ法的な観点
  四 事業所委員会の参加権とその実態
  五 被選挙権者と事業所の構成員性の問題
  六 小括

第4章 日本法をめぐる状況と将来像
 第1節 雇用の安定性をもたらす労働者派遣政策とは
  一 労働者派遣の規制と状況
  二 平成26年改正案の経緯と内容
  三 労働者派遣の将来像(ヨーロッパの標準)
  四 補論 派遣労働者の保護の必要性
 第2節 いわゆる違法派遣をめぐる法理
  一 法律上の規定
  二 職業安定法44条と違法派遣
  三 労働者派遣法の各規定の取締規定の性格の有無
  四 黙示の労働契約の成否
  五 違法派遣の場合の労働契約の申込みみなしの規定
  六 労働者派遣と請負契約の区別の基準をめぐる問題
  七 直接雇用をめぐる派遣先の団交応諾義務
 第3節 いわゆる派遣切りの法的問題
  一  派遣元による派遣労働契約の解約(解雇)法理
  二 派遣元による雇止めの制約法理
  三 直接雇用後の派遣先での問題

       結びに代えて

 初出一覧


G型・L型大学@『東洋経済』

01221137_54c062533dd81本日発売の『東洋経済』1月31日号は、左の表紙のようにピケティ特集ですが、そちらはそちら系の方々に委ねておいて、こちらはもう一つのミニ特集記事です。

G(グローバル)型L(ローカル)型
大学論争の深層

大学が職業訓練校になる!? 文部科学省の有識者会議で仰天構想が飛び出し、大論争が巻き起こっている。

INTERVIEW│下村博文/文部科学相
「教育や学校はツールとして存在すべき」

職業学校創設は専門学校の「悲願」

G型・L型、そして職業教育 私はこう考える
城 繁幸、本田由紀、工藤 啓、片山善博

INTERVIEW│冨山和彦/経営共創基盤CEO
「反論の核心にあるのは大学教員の選民意識だ」

この記事(杉本りうこ記者が書いたところ)の最後近くに、私のコメントがちょびっと載っています。

・・・労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎・統括研究員は、「国際的に比較すると、日本にアカデミックな大学ばかりあるのがむしろ異例。ドイツのように実学を学ぶ大学があり、学生からも進学先として指示されているのが普通の形」と指摘する。・・・

このあとには、城繁幸、本田由紀、工藤啓、片山善博の4氏の意見が、さらには冨山和彦氏自身がどどーーーんと見開きで載っています。

この冨山和彦氏の言葉は、東洋経済オンラインに全文載ってますので、是非ご覧ください。

http://toyokeizai.net/articles/-/58760(冨山和彦氏、大学教員の「選民意識」にモノ申す 日本の大学教育は大多数者の役に立たない)

・・・反論の中で一番多かったのは、「教員に実学を教えさせるのは、アカデミズムに対する冒涜だ」という大学教員の意見です。でも逆にこの意見こそが、実学の世界で生きていく市井の人たちに対する冒涜ですよ。

なお、たまたまですが本日発行の『生産性新聞』1月25日号に、わたくしの「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関のイメージ」が載っていますので、参考までに、

 昨年末、ネット上で「G型大学、L型大学」をめぐる話題が飛び交ったことをご記憶でしょうか。その元になったのは、文部科学省で10月から開催されている「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」の第1回会議に提出された冨山和彦氏の資料だったのですが、表現がいささか過激であったこともあり、とりわけ伝統的な大学モデルを重視する人々から激しい攻撃を受けることになったようです。

 しかし、表現の過激さは別として、そこで提起されている問題意識は、既に2011年1月に中央教育審議会が文部科学大臣に答申した『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』の中で提起されていた「職業実践的な教育に特化した枠組み」の延長線上にあります。そこでは学校教育法上の位置づけの問題、実践的な知識・技能を有する人材の育成ニーズなどを踏まえ、卓越した、または熟達した実務経験を主な基盤として実践的な知識・技術等を教授するための教員資格、教員組織、教育内容、教育方法等やその質を担保する仕組みを具備した新たな枠組みを制度化し、その振興を図ることを求めています。また、修業年限2~4年、職業実践的な演習型授業が4~5割、教員資格は実務卓越性を重視など、具体的な構想を示していました。

 ところが、その後これは文部科学省の「専修学校の質保証・向上に関する調査協力者会議」で検討され、2013年7月の報告では、専修学校の枠内に「職業実践専門課程」を設けるということに矮小化されてしまいました。専修学校はもともと職業教育も目的とするものですから、これでは何のための議論だったのかよく分かりません。この職業実践専門課程が、「学び直し」という看板を掲げた専門実践教育訓練として、今年10月から手厚い教育訓練給付の対象となっています。専門職大学院と専修学校は対象になるのに、大学は対象ではないのです。なぜなら、「大学」とは学校教育法上「学術の中心」であって、職業教育機関ではないからです。

 ようやく昨年7月になって、官邸に設置された教育再生実行会議が「今後の学制等の在り方について」という第5次提言を出し、その中で「実践的な職業教育を行う高等教育機関を制度化する」とされ、再び政策課題として提起されました。そしてそれを受けて、文部科学省で本格的に、「大学」という枠組みの中で実践的な職業教育機関をどう作っていくかという議論が始まったというわけです。

 世間では冨山氏の炎上騒ぎが終わるともう余り関心を向けなくなったようですが、文部科学省の有識者会議はその後も着実に回を重ねていて、その資料も順次公開されています。そのうち、12月24日の第7回会合に示された「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関のイメージ(案)」は、その制度設計をかなり詳しく描き出していて、もう少し多くの人々が関心を向ける値打ちがあります。

 そこでは、産業界のニーズへの対応を重視することから、「企業等の参画を得ながら教育の質を確保できる体制やプロセス」の確立が提起され、具体的には、教育内容については教育課程編成へ企業等が参画し、指導者については実務家教員を一定割合で配置し、事後評価については企業等が参画すると共に専門分野別の第三者評価を行うとしています。

 位置づけとしては、大学の一類型として位置づける場合と、学校教育法1条校として全く新たな学校種を創設する場合を想定しています。それによって例えば教養教育の必要性、研究の取扱い、教員資格等々について違いがでてくるようですが、いずれにしても共通の要件として、実務家教員の配置を義務化するという点は変わりません。また、産業界が参画して分野別に教育の質を保証する仕組みも求められます。産業界として強い関心を持って見ていく必要があると思われます。

労働時間法制の行方@WEB労政時報

本日、WEB労政時報に、わたくしの「労働時間法制の行方」がアップされました。

http://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=340

 去る1月16日に、労働政策審議会労働条件分科会に厚労省事務局から報告書骨子案が提示されました。新聞各紙の報道ぶりは、「労働時間の規制外す 残業代ゼロ法案化へ報告書案」(朝日)、「成果で賃金 5職種例示」(日経)、「残業代ゼロは年収1075万円超」(産経)、「残業代ゼロ厚労省骨子案 年収1075万円以上が対象」(東京)といったところです。

※労働政策審議会労働条件分科会「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)」⇒資料(PDF)はこちら
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000071224.pdf

 この問題については、本連載でも何回か取り上げてきたこともありますし(連載第16回「労働時間規制の認識水準」、第27回「労働基準法は短く事由に働くことを規制していない」等参照)、改めて基本から議論を展開する必要もないでしょうから、私の考え方は既にある程度理解いただいているという前提で、今回の骨子案をどう読むかについて述べておきましょう。・・・・・・・

2015年1月25日 (日)

多様な働き方@規制改革会議の資料が面白い

1月22日(木)に開かれた規制改革会議の資料がアップされていますが、これがなかなか面白いです。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee3/150122/agenda.html

登場しているのは、

EbiMado海老原嗣生氏((株)ニッチモ代表取締役)

中野円佳氏(新聞記者)

吉田典史氏(ジャーナリスト) Yoshi_4

高田英樹氏(財務省大臣官房文書課広報室長)


の4氏ですが、はじめの3氏については、本ブログでも紹介してきたそれぞれの近著の内容の要約になっています。

それにしても、こういう選び方はなかなか味がありますね。ふむ。

2015年1月24日 (土)

塩川太嘉朗さんの拙著書評

26184472_1今まで『新しい労働社会』『日本の雇用と労働法』『若者と労働』と書評していただいてきている塩川太嘉朗さんに、『日本の雇用と中高年』も書評していただきました。

http://shiokawatakao.blogspot.jp/2015/01/2014_24.html

冒頭、ご自身のキャリアを踏まえて、

とりわけ機能分化が進む外資系のスタッフ部門においては、HRの知識であっても、自身が日常的に接しない知識については疎くなる。しかし、顧客たる社員から見れば、どのチームの人間であろうとHRはHRである。社員の方々からの自部門の管掌範囲外の質問に対して、正確かつ網羅的に回答できる必要はないだろう。しかし、せめて相手の質問を的確に理解し、基本的な回答をしながら、適切な担当者を紹介するくらいはプロフェッショナルとして最低限行なえるべきだろう。こうした想いのもとに、本書のような、私にとってやや疎い領域に関しても随時知識を更新するようにしている。(今回もまた、自戒を込めて)

本書の読み方を述べられます。

本書では、戦前から現在に至るまでの、日本企業における人事制度を取り巻く流れが描かれている。そうした全体的な文脈の中において、「中高年」社員が企業の中でどのように扱われてきたかが論じられる。その際には、欧米諸国の企業における「中高年」の取り扱いとの対比を用いながら説明がなされているため、日本企業での「当たり前」が実は「当たり前」でないことが分かる。むろん、どちらの制度が優れているという類いの話ではない。そうではなく、相対化することによって見えてくる本質を理解すること、他国のプラクティスから学ぶべきものは学ぶこと、が重要ではないか。

以下、拙著から引用されつつ、職能パラダイムをどう考えるべきかを論じて行かれるのですが、最後近くで、拙著の小池和男理論批判を受けて、こう述べられます。

著者による小池氏への反論には概ね同意するが、私なりに補足するとしたらこうだ。知的熟練論は、本来は、現在および近い将来のビジネスに求められる職務に基づいた職務拡大と職務充実とを射程にしたものであり、単に仕事を幅広く経験すれば良いというものではない。若手社員は、学習カーブが右肩上がりであるために意識せずとも知的熟練が起きやすいが、一定の経験が過ぎた後は、個人が意識してキャリアやジョブをデザインしないと知的熟練は起きない。意識的なキャリアデザインやジョブデザインを試みることなく学習カーブが逓減傾向に陥った中高年社員は、変化の激しいビジネス環境下ではロー・パフォーマーになってしまう。

なお、今までの拙著に対する塩川さんの書評は

http://shiokawatakao.blogspot.jp/2011/07/2009.html(『新しい労働社会』(濱口桂一郎著、岩波書店、2009年))

http://shiokawatakao.blogspot.jp/2011/10/2011.html(『日本の雇用と労働法』(濱口桂一郎、日本経済新聞出版社、2011年))

http://shiokawatakao.blogspot.jp/2014/01/2013_18.html(『若者と労働』(濱口桂一郎、中央公論新社、2013年) )


2015年1月22日 (木)

「若者雇用対策法の概要」 @『労基旬報』1月25日号

『労基旬報』1月25日号に「若者雇用対策法の概要」を寄稿しました。

 去る1月9日、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会に、「若者の雇用対策の充実について」という報告書案が提示されました。昨年9月から審議されてきたトピックで、近々にもとりまとめられる予定です。

 このもとになったのは、与党の公明党が昨年5月に、「若者の雇用の促進に関する法律」(仮称)の制定を求めて政府に要請を行ったことです。これを受けて6月の「『日本再興戦略』改訂2014」に「未来を創る若者の雇用・育成のための総合的対策の推進」が盛り込まれ、就職準備段階から、就職活動段階、就職後のキャリア形成に至るまでの若者雇用対策が社会全体で推進されるよう、法的整備も含めた検討を行い、次期通常国会への法案提出を目指す、とされていました。今回の報告書を見ると、提出される若者雇用対策法案の内容がほぼ明らかになっていますので、法律事項以外のものも含めて一つ一つ見ていきましょう。

 まず、「マッチングの向上に資する情報提供」にかかる項目です。これは、近年いわゆるブラック企業問題が社会問題となり、劣悪な労働条件の企業をきちんと見分けて、そういうところに就職しないで済むようにすべきという問題意識が背景にあります。

 その第1は「労働条件の的確な表示の徹底」で、報告書案では法律事項ではなく、新法に基づき策定される指針(若者の募集・採用及び定着促進に当たって事業主等が講ずべき措置に関する指針)に盛り込むべきとしています。この点について、資料の中ではいくつか具体的な例が挙がっていて、例えばこういう記載があります。

・「固定残業代への対応として、求人票に欄を設け、しっかりと記載できるようにすべきではないか」という課題に対し、「ハローワークの求人票の特記事項欄に「固定残業代には○時間分の残業手当を含む。○時間を超えた場合は別途残業手当を払う」旨を記載するよう指導している。今後、現行の取り組みを徹底する。」

 この問題については、連合が昨年11月の中央執行委員会で「求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方」を確認しており、そこでは、具体的な法改正事項として

(1) 労働基準法第15条
①「労働条件の明示」の内容について、「事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。この規定により、明示された労働条件と実際の労働条件が異なる場合について、労働基準監督官の指導・監督を可能とする。
②「労働条件の明示」の方法について、パート労働法第6条を参考に「書面の交付」を明文化する。
③「労働条件の明示」の時期として、「原則として実際の就労開始前とする」旨を明らかにする。
④「労働条件の明示」がなされていない場合も、第2項・第3項が適用されることを明らかにする。
(2) 職業安定法第5条の3
上記(1)①と平仄を合わせて、「明示する労働条件は事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。

(1) 労働基準法施行規則第5条第1項を改正し、労働基準法第15条第1項後段で書面の交付で明示しなければならない労働条件に「法定労働時間を超える労働があるときの時間外割増賃金の計算及び支払の方法」を追加する。

といったことを求めています。今回の報告書は若者対策ということなのでここまで踏み込んでいませんが、こうした一般対策は今後労働条件分科会なりで検討されていく可能性があります。

 マッチングの第2は「職場情報の積極的な提供」です。ここは法律上の義務及び努力義務規定が設けられる予定です。具体的には、新規学卒者の募集に対する応募者や応募の検討を行っている新卒者が求めた場合には、次の項目について事業主が選択して情報提供を行うこととしています。応募者や応募検討者以外に対しては努力義務です。また、ハローワーク等に求人を出す場合には、ハローワーク等にこれら情報を提供することになります。

(ア)募集・採用に関する状況
   (過去3年間の採用者数及び離職者数、平均勤続年数、過去3年間の採用者数の男女別人数等)
(イ)企業における雇用管理に関する状況
(前年度の育児休業、有給休暇、所定外労働時間の実績、管理職の男女比等)
(ウ)職業能力の開発・向上に関する状況
(導入研修の有無、自己啓発補助制度の有無等)

 これについては、経営側がかなり抵抗した結果、やや限定的な仕組みとなりましたが、選考プロセスの中にいる応募者が「こんなことを敢えて尋ねたら選考からはずされるのではないか」と心配して自己規制してしまう可能性が高いようにも思われます。本質的には、これら情報が関係者以外には秘すべき機密情報なのか、それとも一般に公開すべきパブリックな性格の情報なのか、という問題がありそうです。

 マッチングの第3は、新聞等でも大きく報じられた「公共職業安定所での求人不受理」です。現行職業安定法では、求人の内容自体が違法な場合でなければ、すべての求人を受理しなければならないこととされていますが、残業代不払いなど労働法違反を繰り返す(具体的には1年間に2回以上是正指導を受けたなどの)悪質な求人者からの求人申し込みを、一定期間(法違反を重ねないことを確認する期間として、具体的には6ヶ月間)受理しないことができるという特例を設けることにしています。これは新規学卒者の求人に限った特例ですが、そもそも論からすれば一般求人の場合には悪質な求人者からの求人でも許されるのはなぜかという議論もあり得ましょう。また、ハローワークへの求人だけを規制し、それ以外の媒体であれば許されることへの疑問も提起されそうです。

 以上のような規制的な手法とともに、促進的な手法として「認定制度の創設」があります。これは現在既に行われている「若者応援宣言企業」事業を、法律上の認定制度に引き上げるものですが、現在の事業に対して「実際にはブラック企業も紛れ込んでいるではないか」という批判もされていることから、認定基準をかなり厳格なものにしようとしています。具体的には、単に実績を公表していることだけではなく、新卒者の定着状況については3年前就職者の離職率30%以下を満たしていること、年休については平均取得率70%以上又は平均取得日数10日以上、育休については男性取得者1名以上又は女性取得率75%以上、所定外労働時間については月平均20時間以下又は週労働時間60時間以上労働者割合が5%以下、といったものが示されています。認定を受けた企業に対しては助成金が支給されることになります。

 過去10年、若者雇用問題が労働論壇のホットトピックになり、近年はブラック企業問題が取りざたされてきましたが、若者を対象にした雇用法規は作られてきませんでした。今回、公明党の要請に基づく動きの結果としてこういう立法化が実現する方向になったことは、政治主導のよい事例と見ることができるかもしれません。

2015年1月21日 (水)

常見陽平『「就活」と日本社会』

0091227常見陽平さんから近著『「就活」と日本社会 平等幻想を超えて』(NHKブックス)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=00912272015

大学間の格差拡大、「就活うつ」、新卒無業者……毎年、様々な問題を生み出し続ける「就活」。その原因はいったいどこにあるのか。「就活」100年の歴史を踏まえながら、企業の選考モデル・大学の役割・学生の気質などの変化を分析、偽りの「平等幻想」に支配された「就活」の実態を描く力作。

常見さんの就活関係の本は今まで本ブログでも何回か紹介してきましたが、今回の本は常見さんの修士論文が元になっているそうです。この4月から千葉商大に行かれる常見さんの、一区切りという意味もあるのでしょう。

採用基準はなぜ不明確なのか、を冷静に分析した本であるとともに、副題にもなっている「平等幻想を超えて」を熱っぽく説いている熱い本でもあります。

・・・就活というものを研究して可視化されるのは、日本社会における「平等」という概念に対する「幻想」である。

皆、うすうす、平等でないと気づいているのに、それを期待してしまう。何か不平等なことがあると、それに対する怒りが露わになり、それこそネット炎上などを誘発するのだが、とはいえ、冷静に考えると、その平等幻想というものこそ、子供じみていることに気づく。

そこで常見さんは言います。

・・・しかし、むしろこの学歴差別・区別は可視化された方が、人を幸せにするのではないかとさえ感じてしまう。いや、幸せという曖昧な表現は良くない。少なくとも、入社する難易度が高い企業、入ることができる可能性がきわめて低い企業を受け続け、落ち続け、疲れるということは回避できる。・・・

ただし、こう言われて反発する人も多いことだろう。少なくとも感情的に、否定的になってしまう人も多いだろう。だが、平等であるという幻想、より高い地位を獲得できるのではないかという希望が人々を苦しめるのである。

この平等幻想のもとをたどっていくと、それこそ近代日本史を全部総ざらえするような大仕事になるのですが、なんにせよ、今日の雇用労働問題の矛盾の原因を探っていくと、他の諸国では差があって当たり前のところに差を認めたがらない平等主義と、それとバランスをとるかのように、他の諸国では許されない差別だと糾弾されるようなことが、当たり前じゃん!と平然とまかり通ったりするところにあることがわかります。

スキルもないのに採用してもらえる新卒の就活の異常なまでの平等主義の裏側にあるものこそ、きちんと見つめていく必要があるのでしょう。

ピケティの時事評論

H_p50720有名なベストセラーの方は、変な人の妙な便乗本まで出てきて、あんまりコメントする気が出ませんが、こちらは、大げさめいた邦題とは異なり、さらりと読める時事評論集です。

http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P50720.html

タイトルも、このオビも、露骨に『21世紀の資本』に便乗しようとしてますが、いやあんまり出てきませんよ。そのr>gは。

原題の「Peut-on sauver l'Europe ?」(ヨーロッパを救えるか?)のとおりで、まさにこの10年のヨーロッパ、フランスの経済、社会、労働政策の動きに対するぴりりと鋭いコラム(もともと『リベラシオン』紙のコラム)であり、労働関係でも、

ボルケシュタインはフランケンシュタインに非ず

無期労働契約を再考する

最低賃金をめぐる意地の張り合い

週35時間制の呪い

等興味深いエッセイがありますし、なにより、ここ数年の欧州危機に対して、

・・・根本的な間違いは、国家のない通貨、政府のない中央銀行、共通予算政策のない共通財政目標が可能だと考えたことにある。・・・

と、ずばり直言しています。

意外に、教育問題にも結構コメントしており、興味深い視点があります。


2015年1月20日 (火)

女子大願書不受理は職業訓練差別か?

女子大に願書を出したが受理して貰えなかった男性が性差別だと訴えた件、日本的感覚で、男が嫁入修行をしてどうする、という話だと思ってはいけません。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20150120-OYT1T50018.html?from=y10

訴状によると、男性は昨年11月、栄養士を目指して同大の食・健康学科の2015年度入試の社会人枠を受験するため願書を提出したが、女性の入学しか認めていないとして受理されなかった。県内で栄養士の資格を取得できる国公立大は同大だけで、男性側は「県外の大学や私学への受験を強いられ、憲法が禁止した性差別だ」と訴えている。

圧倒的多数の人々の感覚に反するかも知れませんが、この公立福岡女子大の食・健康学科ってのは、栄養士の資格を取得できるのが売りのまさしく「L型大学」であって、その本質はよりよい職業につくためのスキルを身につけるための職業訓練機関です。

残念ながら、大学をそういう目で見ること自体を忌避する感覚が強い日本ですから、なかなか話が通じにくいのでしょうけど。

(追記)

労務屋さんも同じネタに食いついていますが、

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150120#p4(公立女子大が違憲という訴訟)

ただ記事を読む限りでは多分にためにする議論という感はあり、なぜかというと「公立に進めないと経済的な理由で資格取得を断念せざるを得ない」というわけですが栄養士資格は専門学校2年で取得可能だからです。

これにはコメント欄で反論もありますが、も少し原理的にいうと、この議論では、戦前の日本みたいに、大学の医学部に女性は入学できないけれども、医専で学んで女医になることはできるんだからいいじゃん、というのと同じになってしまうような・・・。

『Back to Work: Japan』

Backtoworkjapan_9789264227200enというわけで、OECDの『Back to Work: Japan』がアップされました。

http://www.oecd.org/els/back-to-work-japan-9789264227200-en.htm

リンク先で全文読めます。

とはいえ、200ページ近い英文を読んでる暇のない方が大勢だと思いますので、とりあえずこの和文プレスリリースと、

http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/japan-can-do-more-to-encourage-smooth-transition-of-displaced-workers-back-into-jobs-says-oecd-japanese-version.htm(日本は、失職者がよりスムーズに再就職を果たせるよう一層の努力をする余地がある)

最新のOECD報告書によると、日本は、再就職調整支援において公共と民間との調整を改善すれば失職者がより早期に次の職を見つけることが可能となり、全ての被雇用者が適切な雇用保険の恩恵を受けることができるよう保障されることも重要です。

「OECD日本の失職者レビュー:失職者の早期再就職に向けて(Back to Work: Japan)」によると、日本では毎年多くの労働者が解雇されており、その後の再就職までには長期間の失職状態が続き、再就職できても給与は前職と比べて格段に下がります。日本は、他のOECD諸国と比較すると極めて低い失職率ですが、それでも2000年以降1.4%という数字に留まっています。

失職のリスクは、特に学歴の低い者、非正規雇用者、小企業の被雇用者にとって大きく見られます。2002年から2013年の間で、失職後1年以内に再就職先を見つけることができたのは失職者の半分以下でした。再就職をするのが最も困難であり給与も大きく減少するのは、女性、高齢者、学歴の低い労働者です。

本レポートによると、日本では雇用調整助成金などの解雇防止や早期再就職調整支援は十分に確立されており、これにより失職者数を減らすことにも、失職者の負担を軽減させることにも貢献できています。解雇を避けられない場合でも、雇用主が労働者を他社へ直接移動させる等の措置で影響を緩和できるが、これも非正規雇用者はこれら措置の恩恵を受けることが出来ません。

特に女性や若年層は雇用主から失業手当などの支援を受けることは極めて稀であり、雇用保険受給日数も短いことが示されています。OECDは、政策決定者に対して、公共の雇用保険の給付で、(女性、若年者、非正規雇用者を含めた失職者のサブグループとそれ以外の間に)対処すべきギャップが生じていないか評価するよう求めています。

英文と和文のエグゼキュティブサマリをどうぞ。

http://www.oecd.org/els/emp/Back%20to%20work%20-%20Japan%20-%20Bilingual%20AR%20with%20cover.pdf

2015年1月19日 (月)

『バック・トゥ・ワーク』日本編本日公表

Backtoworkjapan_9789264227200enバック・トゥ・ザ・フューチャー、じゃありません。バック・トゥ・ワーク。

OECD(経済協力開発機構)の失職労働者レビューシリーズの日本編です。本日6時公表予定ですが、時差の関係で日本では今朝の段階ではまだです。

http://www.oecd.org/publications/back-to-work-japan-9789264227200-en.htm

Job displacement (involuntary job loss due to firm closure or downsizing) affects many workers over the course of their working lives. Displaced workers may face long periods of unemployment and, even when they find new jobs, tend to be paid less and have fewer benefits than in the jobs they held prior to displacement. Helping displaced workers get back into good jobs quickly should be a key goal of labour market policy.This report is the second in a series of reports looking at how this challenge is being tackled in a number of OECD countries. It shows that Japanese employers and the government go to considerable lengths to avoid the displacement of regular workers while also providing considerable income and re-employment support to many of the workers whose jobs cannot be preserved. Challenges for labour market programmes include expanding labour market mobility between regular jobs, improving co-ordination between private and public re-employment assistance for displaced workers, and avoiding that job displacement pushes older workers to the margins of the labour market.

このレビュー、9カ国(Australia, Canada, Denmark, Finland, Japan, Korea, New Zealand, Sweden and the United States)が参加していますが、既に公表されているのは韓国編だけで、

http://www.oecd.org/els/back-to-work-korea-2013-9789264189225-en.htm

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-3839.html(OECD『バック・トゥ・ワーク』韓国編)

本日、第2弾として日本編が公表されるというわけです。

なお、これにあわせて厚生労働省でイベントをやるそうです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000070216.html

2015年1月17日 (土)

働き方改革の基本線@『ManpowerGroup Journal』2015.01

マンパワーグループの広報誌『ManpowerGroup Journal』2015年1月号に、わたくしのインタビュー記事「働き方改革の基本線」が載っています。わりと短いものですが、何かの参考になれば、と。

http://www.manpowergroup.jp/client/journal/201501.html

政府の成長戦略の重要軸に「人材の活用強化」が据えられ、女性の活躍推進、働き方の改革、外国人材の活用に関する検討が進められています。そこで、広く労働の研究に携わる濱口桂一郎先生に、企業として様々な変化に対応するため、2015年に留意すべきポイントを伺いました。

昨年6月に閣議決定された『「日本再興戦略」改訂2014』は、女性の活躍促進と働き方改革を旗印に、雇用制度改革に向けた様々な方針を打ち出している。しかし、その後の政治家やマスコミの動向を見ていると、それを支持する側も反対する側も働き方改革とはどういうことなのかを的確に理解していないのではなかろうかと思われる状況が続いている。

ここで提起されているのは、戦後70年にわたって日本の労働社会の基軸となってきた働き方のスタイルを見直すということである。それを一言でいえば、女房子供を扶養する男性正社員を前提として、仕事の中身も、働く時間も、働く場所すらも無限定に、会社の指示のままにモーレツ社員として働く代わりに、新卒一括採用から定年退職までの終身雇用と、毎年定期昇給で上がっていく年功賃金制を保障された働き方の枠組を、もっと多様で一人一人の生き方に合った形に手直ししていくということになる。
無限定な働き方と生涯雇用保障の二つは密接不可分であり、お互いに相手を前提として精妙に組み立てられている。一方だけのいいとこ取りができるような生やさしい仕組みではない。ところが、雇用改革の議論はいつも、労働者を無限定に働かせることができる企業の強大な人事権限はそのまま維持しながら雇用保障を目の敵にしてもっと自由に解雇できるようにすべきだと主唱する一派と、雇用保障を当然の前提としながら企業の人事権限を批判する一派との、不毛なポジショントークに覆われてしまい、なかなかまともな議論が進まない傾向にある。

目下大きな議論の焦点となっているいわゆるホワイトカラーエグゼンプションについても、野党や労働側がとかくこれまでの長時間残業でたくさん残業代を稼ぐという生き方から「残業代ゼロ」ばかりを批判する一方で、経営側が時間無制限な働かせ方に頼り切ったまま労働時間の物理的上限設定に頑強に抵抗している姿には、これまでの働き方の惰性からなかなか抜けきれない労使双方の姿が浮かび上がっていると言えよう。
こういう惰性の議論がいつまでも続くことによる最大の被害者は、無制限な働き方を前提とされたのではその能力を十分に発揮できない女性たちである。成長戦略で大いに活躍を促進することになっているはずの女性たちが、労使双方の抵抗で働き方改革が進まないことによって、いつまでも世界最下位近くの活躍度合いで低迷し続けていては、「日本再興」などいつまで待っても実現することはないだろう。女性の活躍促進とは、表面を取り繕うために名ばかり女性管理職をでっち上げることではなく、全国の企業で働く多くの女性たちが真に働きやすい労働社会を構築していくことである。

江口匡太『大人になって読む経済学の教科書』

184827江口匡太さんより『大人になって読む経済学の教科書』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b184827.html

規制緩和って本当にいいこと? 市場原理主義って本当にわるいこと?
市場にまかせてばかりでは解決しない問題がある一方、市場を否定すると、よりひどい事態に陥ってしまうことがあります。それは一体どういうことなのでしょうか。本書では、数式や図を使わずに、身近なトピックから、市場経済のしくみを分かりやすく解説。ルールの重要性を理解し、市場の有効性を学びながら、分かったつもりの経済学をもう一度学びます。

江口さんといえば、かつて『キャリア・リスクの経済学』をかかれた労働経済学者ですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-4efe.html(江口匡太『キャリア・リスクの経済学』)

今回の本は題名通り、一般向けに経済学の考え方の基礎をわかりやすく解説した本です。

ヤフオクから始まって、身近なネタを次々と繰り出しながら、数式の一つも出さずに、一気に読ませる手際は見事です。

なぜか扉が上下反転していたのは、製本やさんも読んで思わず踊り出してしまったからでしょうか。

さて、こういう中身のうち

はじめに——経済学を学ぶ意味

 第Ⅰ部 市場経済のしくみ
第1章 いつでも買える安心感——市場を通した分業
 1 山奥でいつでもガソリンが買える理由
 2 市場経済を否定すると……
 3 欲しいモノしか市場に現れない
 4 日本経済の大きさ
 5 ネット・オークションから考える市場のしくみ
 6 ヤフオクの魅力
 7 市場取引のコスト
 8 信用の価値
 コラム1

第2章 1万円札は20円で作られる——貨幣と信用
 1 魔法の紙切れ
 2 貨幣が機能する条件
 3 貨幣の役割
 4 貨幣発行益という麻薬
 5 金の呪縛
 6 お金を持っていると損をするとき
 7 お金は永遠に流通しなければならない
 8 信用創造——銀行のしくみ
 コラム2

第3章 利益はどこから生まれるか——裁定取引とブラック・マーケット
 1 利益の源泉
 2 現代の金融取引にみる裁定取引
 3 チケットの転売は是か非か
 4 自由な経済取引の効率性
 5 ブラック・マーケットはなぜ発生するのか
 6 すべてを表の市場取引へ?
 7 価値の測り方
 コラム3

第4章 安心安全な取引——情報の非対称性
 1 市場の成立を脅かす問題
 2 情報の非対称性
 3 品質を保証するしくみ
 4 「はずれ」の代償は誰が負うべき?
 5 経済学で考える消費者保護
 6 長期的関係から得られる利益
 コラム4

 第Ⅱ部 市場経済における政府の役割
第5章 来ない救急車——相対価格と税制
 1 シルバーパスから考える現物支給と現金支給
 2 相対価格と消費行動
 3 食糧品と旅行,どちらの税率を高くする?
 4 来ない救急車
 5 医療や教育の分野で,現物支給が広く採用される理由 
 コラム5

第6章 困っている人を救うには——市場経済と格差
 1 市場原理主義が格差社会を作る?
 2 グローバル化と市場競争
 3 格差の固定化という問題
 4 市場の不完全性と所得分配
 5 日本の生活保護制度
 6 不平等を測る尺度
 コラム6

第7章 市場がない!——環境問題と外部性
 1 経済学の視点から環境保全を考える
 2 環境汚染の費用と利益
 3 排出権取引をめぐって
 4 市場がない……
 5 共有地の悲劇
 コラム7

 第Ⅲ部 企業とビジネス
第8章 会社は誰のものか——不完備性と労働者
 1 市場経済VS計画経済——再論
 2 企業の存在理由
 3 取引の不完備性
 4 人を雇うということ
 5 見えにくい仕事
 6 会社は誰のものか?
 コラム8

第9章 日本限定発売のブランド品——ビジネスの戦略
 1 あちこちで存在する価格差
 2 価格をめぐる戦略
 3 さまざまな価格設定
 4 価格支配力はどのように発生するのか
 5 価格支配力と独占
 6 垂直統合
 7 流通の系列化のメリット・デメリット
 8 知的財産権
 コラム9

 第Ⅳ部 市場と国家
第10章 日本の食が危ない?——貿易と国際関係
 1 貿易のしくみ
 2 日本の貿易の概況
 3 保護主義
 4 戦略的貿易理論
 5 市場開放と経済成長
 6 食糧とエネルギー
 7 貿易と国家
 8 貿易黒字と貿易赤字
 9 お金は国境を越えて
 コラム10

第11章 豊かな国と貧しい国——経済が成長するために
 1 他のことが考えられなくなる大切な問題
 2 経済成長に必要なこと
 3 TFP
 4 幸せとは何か
 5 豊かな国になるには
 コラム11

 おわりに——経済学の考え方

労働問題に関わるのは「第8章 会社は誰のものか——不完備性と労働者」ですが、その中に、一点誤解を招きかねない表現がありましたので、指摘しておきます。244ページですが、

・・・経済学では労働者=働く人ですが、法律上は違います。労働基準法では、使用者の指揮・命令に従い、仕事をする上で裁量の範囲が小さく、また、その仕事を自由に拒否できない場合に労働者と見なされます。このような環境で働いている場合、労働者性があるといいます。逆に、裁量労働制や在宅勤務に見られるように、仕事をする上で使用者の指揮をあまり受けず、自由な裁量が与えられている場合は、たとえ形式上は雇われていても労働基準法上の労働者としては扱われず、個人事業者と見なされることもあります。・・・

もちろん、裁量性は労働者性の判断基準の一つではありますが、それこそここで挙げられている裁量労働制も在宅勤務も、個人事業者ではなく労働者であること自体には何の疑いもありません。労働者ではあるけれども裁量性が高いので労働基準法の労働時間規制がそのまま適用されないということですから。この前後は、労働者内部の扱いの違いの議論と、労働者かそうでないかの議論とがやや混線しているようです。

後半のロジックは、むしろよく出てくるのは、たとえ形式上は個人事業主であっても労働法上の労働者と見なされることがあるという文脈であって、それが問題になるのは多くの場合、労災の関係であるわけです。

2015年1月15日 (木)

規制改革会議雇用WG山本陽大議事録

昨年12月4日に開かれた規制改革会議雇用ワーキンググループの議事録がアップされています。前半は「労使双方が納得する雇用終了の在り方について」の有識者ヒアリングで、JILPTの山本陽大さんが喋っています。後半は「雇用仲介事業の規制の見直しについて」厚生労働省のヒアリング。

ここでは山本さんの喋りをいくつか:

本日はこのような場で、私のような若輩の者にお話をさせていただく機会を与えていただき、誠にありがとうございます。

ドイツとフランスの比較から、こういういささか皮肉な観察をしています。

なお、後の視点3とも関連しますが、諸外国を見ていると、これら裁判外紛争解決のルートに今後重要な役割を期待するならば、解雇の法的なルールとしては、解雇無効原則を維持した方が良いということが指摘できるかもしれません。ドイツで、なぜ極めて高い解決率が得られるかというと、現地で弁護士や裁判官にインタビューしてみると、一つの要因としては、和解で決着せずに訴訟の手続に移行した場合には、リスクが大きいと。すなわち、労働者にとっては、別に職場に戻りたいとは思っていないけれども、救済は原則として解雇無効しかないし、使用者にとっても訴訟を続けていくこと自体コストがかかるし、万一負けた日には、それまでの未払賃金を支払わされるということになるので、付き合っていられないということがあります。ですから、訴訟手続までいってしまうと双方大変なので、だから和解で落とすのだということが、実は高解決率の背景にはあります。

おそらく、これの逆がフランスで、先ほど申し上げたようにフランスでは調停前置でありますが、調停での解決率は10パーセントと低いようです。これは、フランスでは解雇ルールの原則が金銭解決なので、労働者は調停で決着を付けずに判決手続の中でより高い金額を得ようとするのでそういうことになるということのようです。

ですので、これらのことからすると、裁判外紛争解決が機能するためには、解雇ルールは当事者のニーズにあっていない方がよいと。変な話かもしれませんが、そういうこともあるということであります。

解雇ルールは当事者のニーズに合っていない方がいい、というのはアイロニーに満ちた観察です。

あとの方の、委員諸氏とのやりとりもなかなか深くて面白いです。

2015年1月14日 (水)

その労政審は16日ですよ

マスコミがてんでにフライング報道してますが、その労政審は16日ですからね。

「派遣法改正 3度目の正直?」@『生産性新聞』1月15日号

『生産性新聞』1月15日号に「派遣法改正 3度目の正直?」 を寄稿しました。

今まで繰り返し論じてきたことの繰り返しではありますが、一向にこの理が分からない人々が多いようなので、新年早々ではありますが、こちらにアップしておきます。

 昨年3月に国会に提出された労働者派遣法改正案は、法案に誤記があったことから通常国会では廃案、9月の臨時国会に再提出された法案も、政局の余波と国会解散のために再度廃案という数奇な運命をたどってきました。昨年末の総選挙で自公政権が信任を得たため、来たる通常国会にみたび法案を提出する予定ですが、残念ながらこの間、マスコミ報道はあまりにも表層的な議論に終始し、派遣労働問題の本質に触れることはほとんどなかったように思われます。

 年が改まったことを機に、ここで改めて今時改正案のもっとも重要な論点を示しておきたいと思います。それは、派遣労働をどういう哲学に立って規制するかという基本原則の次元で、これまで30年近く維持されてきた「常用代替防止」の思想をかなり根本的に造りかえようとしている点にあります。そして、それは私がここ数年来、さまざまなメディアを通じて訴えてきたことでもあります。

 派遣労働者の保護よりも派遣先の常用労働者の保護を重視する「常用代替防止」思想は、まず何よりも日本独特の「政令26業務」に現れています。26業務だけは常用代替の恐れがないから(本気か!?)無期限に派遣を認めても良いという虚構の論理に対して、今回初めてメスが入れられ、規制の基準が(実際にはいかなる意味でも「専門的」とは言いがたい)26業務か否かではなく、雇用契約が期間の定めのないもの(無期)か否(有期)かに転換されることになったのです。

 これを安易に批判する人々は、私も繰り返してきた「登録型派遣の派遣契約終了に伴う雇止めの効果が争われた裁判例においては、常用代替防止という派遣の趣旨に照らし、労働者の雇用継続の期待は合理性を有さず、保護すべきものとはいえないとの判決がなされており、常用代替防止という派遣法の趣旨と派遣労働者の保護が両立しない場合があることが明らかになった」(今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書)という指摘に対して、是非的確な反論をしていただきたいと思います。法案を批判する人々は、いよぎん事件判決の「同一労働者の同一事業所への派遣を長期間継続することによって派遣労働者の雇用の安定を図ることは、常用代替防止の観点から同法の予定するところではない」、「Xの雇用継続に対する期待は、派遣法の趣旨に照らして、合理性を有さず、保護すべきものとはいえない」という言葉をどう受け止めているのでしょうか。

 多くの人が「常用代替防止」という言葉で想像している派遣労働者自身の雇用保護についても、私は繰り返し、現行法の常用派遣が有期雇用の反復更新でも良く、何ら雇用の安定になっていないことを指摘してきました。いよぎん事件の原告も、届出制の特定派遣の下で有期契約を反復更新して13年勤続していたのです。今回の改正案はこれを明確に無期雇用と有期雇用で区別し、無期雇用派遣については期間制限を行わないこととし、有期雇用派遣について現行の「役務」ではなく「人」に着目した期間制限を行うという簡明な制度に転換しています。これも私が強く主張してきたことです。

 過去30年近く、世界の議論とはかけ離れた(ほとんど外国人には理解しがたいレベルの)空虚な派遣法論議を繰り返してきた日本で、ようやくまともな派遣労働者保護を第一に考える法政策が産み出されようとしていることを、是非きちんと理解して欲しいと思います。虚構の「常用代替防止」論と労働者保護自体への敵視論の不毛なぶつかり合いには、そろそろお引き取りを願うべき時期がやってきているのです。

2015年1月13日 (火)

雇用仲介事業の規制改革

WEB労政時報のHRWatcherに、「雇用仲介事業の規制改革」を寄稿しました。

http://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=334

 昨年3月に国会に提出された労働者派遣法改正案は、法案に誤記があったことから通常国会では廃案、9月の臨時国会に再提出された法案も、政局の余波と国会解散のために再度廃案――という数奇な運命をたどってきました。しかし、昨年末の総選挙で自公政権が信任を得たため、来る通常国会にみたび法案を提出し、微修正を加えて成立を図る予定と伝えられています。

 こうして派遣法の成立が当初の予定より1年近く遅れる中で、その後に控えている労働力需給システム関係の法政策は、ずっと楽屋での待機状態のままにあります。政府の規制改革会議においてどういう政策が考えられつつあるのかについて、そろそろ紹介する時期が来ているようです。

 もともと一昨年初めに同会議が始まった頃は、「労働者派遣制度の合理化」と並んで「職業紹介制度の合理化」が挙げられ、「有料職業紹介事業の見直し」という項目がありました。しかし、ヒアリングで小嶌典明氏(大阪大学法学研究科教授)が旧来の意見を述べただけで、重きは置かれていない印象でした。その後、ジョブ型正社員、派遣法の見直し、労働時間制度の見直しと順次議論が進み、昨年初めからは労使双方が納得する雇用終了の在り方が議論されてきています。一方で、それと並んで3月以降、やや断続的に雇用仲介事業の法規制の在り方が論じられてきているのです。おそらく前通常国会で派遣法が改正されることを前提に、その次の論点として議論し始めたけれども、そちらが進まないのでずっと楽屋で待機し続けているのでしょう。・・・

派遣に比べて、世間的に余り関心を呼ばないテーマのようですが、これはこれで注目していく必要があります。

「若者」は法令に使えないか?

朝日新聞の澤路さんが、

https://twitter.com/sawaji1965/status/554060780023209984

正式名称には「若者」とは書き込まれないようですが、略称は「若者雇用対策法」がわかりやすいですね。

https://twitter.com/sawaji1965/status/554821016241729537

法制局がいやがるのかどうか知りませんが、「若者」は法律名には使えないと聞きました。略称はどうにでもなるでしょうけれど。

へええええええええええ・・・・。

http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8e%71%82%c7%82%e0%81%45%8e%e1%8e%d2%88%e7%90%ac%8e%78%89%87%90%84%90%69%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H21HO071&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年七月八日法律第七十一号)

ちゃんと法律のタイトルに入っておりますが。

いやこれは「子ども・若者」というひとつながりの言葉であって、「若者」だけを取り出した法律はないだろうって?

いやいや、

http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8e%9d%91%b1%89%c2%94%5c%82%c8%8e%d0%89%ef%95%db%8f%e1%90%a7%93%78%82%cc%8a%6d%97%a7%82%f0%90%7d%82%e9%82%bd%82%df%82%cc%89%fc%8a%76%82%cc%90%84%90%69%82%c9%8a%d6%82%b7%82%e9%96%40%97%a5&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H25HO112&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(平成二十五年十二月十三日法律第百十二号)

第二条  政府は、人口の高齢化が急速に進展する中で、活力ある社会を実現するためにも、健康寿命の延伸により長寿を実現することが重要であることに鑑み、社会保障制度改革を推進するとともに、個人がその自助努力を喚起される仕組み及び個人が多様なサービスを選択することができる仕組みの導入その他の高齢者も若者も、健康で年齢等にかかわりなく働くことができ、持てる力を最大限に発揮して生きることができる環境の整備等(次項において「自助・自立のための環境整備等」という。)に努めるものとする。

2015年1月 9日 (金)

若者雇用法の概要

本日、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会が開かれ、その資料が既に厚労省のサイトにアップされています。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000067623_4.pdf

既にいろんな新聞等でその中身が断片的に報じられていますが、これでだいたいどんな法案になるかが浮かび上がってきます。

このうち、法規制として重要なものは、「職場情報の積極的な提供」と「公共職業安定所での求人不受理」です。

それぞれ、参考資料に載っているパワポ資料がわかりやすいので、それを載せておきます。

Jouhou
Hello

また、規制ではありませんが、若者版マル適マークともいうべき認定制度についても、

Nintei
と、かなり厳しめの基準を示しています。この認定基準が本当に適用されれば、いわゆるブラック企業が入り込むのはそんなに簡単ではなさそうです。


卒論が残っている職業訓練大学校

田中萬年さんが、金子良事さんのエントリに触発されて、

http://d.hatena.ne.jp/t1mannen/20150109/1420789574(卒論が残っている職業訓練大学校はすごい!!)

山見 豊『昭和33年職業訓練法の成立過程』、職業訓練大学校調査研究資料第2号、昭和46年度。

貴村 正『徒弟教育の研究』、職業訓練大学校調査研究資料第3号、昭和47年度。

村上有慶『技能連携制度の研究』、職業訓練大学校調査研究資料第7号、昭和47年度。

実はこの3つの卒業論文はいずれも拙著『労働法政策』で使わせて貰っています。196-197ページの注をご覧ください。

『先見労務管理』1月10日号

労働調査会の『先見労務管理』1月10日号が、毎年恒例の「5つのキーワード」を特集して庵まして、そこにわたくしも一編寄稿しております。

キーワード1 多様な正社員 今野浩一郎

キーワード2 ワーク・ライフ・バランス 佐藤博樹

キーワード3 新たな労働時間制度 濱口桂一郎

キーワード4 女性の活躍推進 田代英治

キーワード5 採用難時代 岸健二

私のは、いつもいってることの繰り返しですが、この中で読んで面白かったのは岸健二さんのエッセイです。

企業は実現不可能な「麒麟求人」からの脱皮を

さて、麒麟求人とはなんでしょうか?知りたい方はこの雑誌をお読みください。

2015年1月 8日 (木)

労働法学研究会報 第2588号(2015年1月1日号)

Rrk労働法学研究会報 第2588号(2015年1月1日号)が出ました。昨年8月27日に行ったわたくしの講演録「アベノミクスの労働政策をどう 捉えるか」が載っております。

1・労働政策を考える枠組
2・3つの会議体の議論の品質の差
3・個別論点
4・政策形成過程と三者構成原則

本定例会のポイント

1. 求められるのは「規制改革」ではなく、「システム改革」
 日本の労働社会の問題は、雇用内容規制の極小化と雇用保障の極大化のパッケージ(正社員)と労働条件及び雇用保障の極小化のパッケージ(非正規)の事実上の二者択一になっている点である。しかしそれは何ら法規制によるものではなく、法規制それ自体は極小化している。その代り、戦後、労使が作ってきた労使慣行が判例法理に影響を与え、それが事実上、企業の人事労務管理を拘束しているともいえ、これは「システム」改革を論ずべきで「規制」改革として論ずると、話が歪められてしまう。

2. 解雇の金銭解決は現在も可能
 日本では、解雇を金銭解決してはいけない、という規定はどこにもない。
 裁判だけを見ていると、解雇が有効か無効かという話になるが、労働審判を見ると、大部分が金銭解決をしている。全国の労働局のあっせんでも、ほとんどが金銭解決である。
 金銭解決は是か非かという議論は確かに盛んだが、もうすでにやっているという事実がある。やっているけども今の状態でいいのかが問題。また金銭未解決件数の多さも問題である。

3. 日本の労働時間規制は極めて緩い
 労災保険の過労死認定基準では、月100時間を超える時間外労働は業務と発症との関連性が強いと評価されるが、それでも労基法上は違法ではない。日本に労働時間規制があるかといわれれば、それは無いに等しい、としか言いようがない。長時間労働は違法でないけども、それで労働者が倒れたら労災認定されるし、医師の面接指導をしろ、という変な構造になっている。日本の労働時間規制を一言でいえば、極めて緩い、ということになる。これを規制改革という視点で議論するのであれば、空洞化している労働時間規制をもう少し厳しくする、という話をしなければ意味がない。しかし、そうした議論はつい最近まで出てこなかった。

  • 確信犯には効きません

    みた しょうさんのツイートから:

    https://twitter.com/sun_der_bird/status/553165359201529857

    とりあえず「日本の解雇規制は厳しい」と思っている人はJILPITの濱口桂一郎ことhamachan先生の「日本の雇用と労働法」「新しい労働社会」あたりを読めばいいんじゃないですかね(丸投げ)

    いやまあ、丸投げされてもねえ・・・。

    現実をちゃんと見ようと思っている人には読んで役に立つかもしれないけれど、何を言われても脳内妄想に固着する確信犯には効きそうにありませんね。

    日本の人事の『働き易さ』『働き甲斐』を再検討する@『Jshrm Insight』2015年1月号

    日本人材マネジメント協会の機関誌『Jshrm Insight』2015年1月号に、2014年度コンファレンス報告が載っていて、その中に私の基調講演もあります。

    いろんなトピックを端的にまとめて喋った記録ですので、何かのお役に立つかも知れません。

     現在の日本の労働市場で、若者、女性、中高年がそれぞれに抱えている問題と、それに対する処方箋について、お話をしていきたいと思います。その中で「働き易さ」と「働き甲斐」について、何かイメージを持っていただければと考えています。
     
    ◆若者の雇用問題が存在しなかった日本
     90年代半ばぐらいまでの日本社会では、若者の雇用状況というのは、大変素晴らしいものでした。新卒採用において、「今すぐは何もできないけれども、やがていろいろなことができるようになるはずだ」という見込みの上で、若者は採用されていました。まさしく会社に入る、入社するということです。新卒採用から定年までの雇用を保障するという日本型雇用システムが機能していました。私はそれを「メンバーシップ型」と表現しています。
     それに対して欧米では、雇用問題の中心は常に若者でした。それは雇用の在り方が、日本と欧米では全く違うからです。そのジョブに対して、「私はこれができます」と応募して入っていく、まさに職に就くという「ジョブ型」が、欧米の雇用ということになります。
     そうなると今までいろいろな経験を積んできた中高年の人のほうが、採用では圧倒的に有利であり、結果的に職に就けない若者が多く出るという事態になります。
     
    ◆効果が出ない、若者雇用対策
     しかし日本では90年代のバブル崩壊後に、それまで若い労働力をどんどん採用していた企業の入り口が、ぎゅっと閉まってしまいました。今までは何の苦労もせずに就職できていた若者たちが、正社員として就職できない、非正規として労働市場に叩き出されるということが起こりました。ただ世間からは、自分の意志でフリーターをしているというふうに見られていました。そのため90年代には、若者の問題はそれほど大きく議論されませんでした。
     これが社会問題、労働問題として大きく議論されるようになったのは、2000年代に入ってからです。それは正社員のルートに乗れず、ずっと非正規のままでいるために、正規と非正規の間の格差が顕在化してきたからです。そろそろ「とうの立ってきた若者」、若い中高年をどうするかということで、日本の若者雇用対策は始まりました。
     そこで日本版デュアルシステム、ジョブカード、日本版NVQ(キャリア段位)等のいろいろな若者雇用対策が講じられました。日本にはそれまで若者の雇用問題が存在しなかったため、問題のないところに対策はなく、これらは全て欧米直輸入でした。しかし思ったような効果は上がらず、社会から批判され、前政権では仕分けの対象にもなりました。
     それはそもそも社会の仕組みが違うからです。ジョブ型の欧米の対策をメンバーシップ型の日本に持ってきても、効果が上がらないのは当然のことです。ただ効果が上がらないからという理由だけで、なぜ雇用対策が必要になったのかという問題の原因を考えずにバサバサと仕分けをするのは、非常に考えの足りないことだという感じがします。
     
    ◆もう一つの正社員、OL型女性労働モデル
     日本の労働市場における女性正社員の位置付けは、無限定正社員とは違う、別のカテゴリーでした。入り方は新卒採用と同じでも、結婚退職するというのが前提にあり、従って短期的なメンバーシップでした。30年、40年同じところで働いていくことを前提とした人事管理ではありませんでした。
     そういう女性正社員に求められた役割は、無限定正社員である男性の補助的業務を担当すること、すなわち会社における女房役です。それからもう一つは、若い男性正社員の本当の奥さんになること、つまりお嫁さん候補という面がありました。
     結婚退職を前提とすると2年間の年齢差は大きく、学歴は短大卒が好まれ、四大卒は忌避されていました。社内結婚という恋愛結婚をして、会社の女房役から、家庭の女房役に移行するという仕組みで、それが非常にうまく回っていました。
     
    ◆辞めなくなった女性たち
     世界的な男女平等の流れの中で、日本においても「男女雇用機会均等法」ができ、雇用モデルがコース別雇用管理というものに変わっていきました。それまでの男性正社員型のモデルを総合職という言葉で表し、女性正社員型のモデルを一般職という言葉にしました。男性無限定正社員と同様に長時間労働ができて、どこにでも転勤できるのが総合職、それができないのが一般職という形でとりあえずやってきました。
     しかし90年代半ば以降、一般職と呼び換えた女性正社員たちが、以前は当然の前提であった結婚退職をしなくなり、ずっと働き続けるようになってきました。このような状況に対して企業側が取った対応は、これまで一般職として採用していた人たちを、主に派遣という、非正規で代替するということでした。
     そして最近になって突如として、「女性活躍」ということが盛んにいわれるようになりました。私は女性活躍というときに、どういう活躍をイメージするかということについて、危惧を持っています。
     かつての無限定正社員モデルと同じである総合職の働き方に、女性をそのまま当てはめて、女性活躍ということにしていく。これでは普通の女性は、働きにくくなるだけではないかというふうに感じています。エリートモデルの女性活躍論からの脱却が、求められていると思います。
     
    ◆企業人事最大の課題、中高年対策
     中高年の雇用問題は、この40年ほどの間、繰り返されてきました。70年代石油危機の後、あるいは80年代の円高不況、90年代にバブルが崩壊したときも、中高年をどうするかということが、常に問題の焦点にありました。とにかく人が余ってどうしようもないというときに目を付けるのは、年功制で給料が高い中高年ということになります。
     中高年の問題を考える上で一番大事なことは、その人のこのジョブについて、これだけのスキルがあるからという形で賃金を決定するという仕組みになっていないということです。日本の職能給というのは、潜在能力が高まってきているから、その潜在能力に応じた給料を支払うという理屈になっています。これは20代から30代のある時期ぐらいまでは、現実に非常に対応した賃金制度であると思います。しかし40代、50代になっても、潜在能力が定期昇給に見合うぐらい毎年高まるということには、疑問が生じます。
     建前上は潜在能力が上がっているはずだから、これだけ高い給料を支払っているんだということになっています。平時であれば、「みんながそういうことになっているんだよね」と言い合っていればいいかもしれません。しかし景気が悪化した時期には、どこかでその矛盾を解消しなければいけない。その矛盾を解消するのに一番いいのは、中高年に出て行っていただくことだ、ということになります。
     結局この10年間ぐらい、若者問題が大きな問題だといいながら、実は底流には常に中高年の問題がありました。日本の雇用問題の最重要の問題点であり、かつ現実にも、対策の上でも、一番重要であったことは間違いないだろうと思います。
     
    ◆ホワイトカラーエグゼンプションの本音
     日本の企業、職場は、中高年という形である種の矛盾を保持してきました。90年代以降は成果主義が打ち出されたりしましたが、今またホワイトカラーエグゼンプションということが検討されています。その大きな矛盾に真正面から向き合う代わりに、いろいろな仕組みをちょこちょこと変えることで、なんとかうまい具合に対応しようとしているという姿なのではないかと感じています。
     
    ◆若者、女性、中高年、それぞれが抱える矛盾
     今から20年ぐらい前までは、日本の雇用の仕組みは全体としてうまく回っていただろうと思います。若者はその潜在能力を見込んで採用してあげようという形で、どんどん入社できました。こんなに若者に素晴らしい社会はなかったと思います。
     ところが最近はブラック企業の話のように、白紙の状態の若者に即戦力を要求し、即戦力がないからお前は駄目だといじめつけるような、そんな企業が出てきています。これが今、若者が抱える矛盾です。
     あるいは、かつて女性は結婚退職するまでは会社の女房役、その後は家庭の女房役ということで、それなりに回っている仕組みだったものが、そうではなくなりました。女性にも活躍してもらうんだというのは、大変いいことです。
     しかし女性に活躍してもらう、その活躍のモデルが、基本的に以前からの男性の正社員モデルを前提として、同じように活躍しろという話では、ワーク・ライフ・バランスとの矛盾が生じてきます。これが女性に起こっている矛盾です。
     そして中高年には能力と賃金の間に、もともと矛盾があって、定期的にその矛盾が露呈していました。同じ矛盾がまた同じような形で、繰り返しているといえるかもしれません。
     昨年、追い出し部屋というやり方が結構話題になりました。なぜ追い出し部屋が可能になるのかと考えると、そもそも仕事で人が採用されていないからです。仕事が限定されていないがゆえに、そういう追い出し方が可能になってしまうのです。
     
    ◆一つの処方箋―ジョブ型正社員
     私がここ数年来考えているのは、「男女共通のジョブ型正社員」あるいは「限定正社員」という雇用モデルが、「働き易さ」や「働き甲斐」に対する一つの処方箋になるのではないかなということです。
     メインストリーム(主流派)としては、今までの日本的な仕組みをある程度維持して、学校から社会に、仕事の世界に入るということです。今までの日本のような、特定のジョブのスキルがなくても、会社に入れるという若者にとってのメリットを、そう簡単には捨てられない。そんなものは欧米と違うのだから捨てるべきだという人もいますが、それを捨ててしまうと、むしろ不満を持った若者が日本中に溢れて、大変なことになってしまいます。
     しかし日本の仕組みがだんだん収縮している中で、そこからこぼれ落ちる人が、どんどん出てきている現実があります。そういう人たちのために、「ジョブ型正社員」、「限定正社員」という枠を作ることが必要になります。女性でも、男性でも、そしてワーク・ライフ・バランスを大事に思う人たちにとっても、無限定ではない働き方をずっと続けるためのモデルとして、ジョブ型正社員、限定正社員というものを位置付けていくということです。
     非正規からそこに入っていくと共に、今まで不本意ながらかつての男性型正社員モデルを余儀なくされていた人たちに、こちらに移ったらどうですかと提案できるような仕組みを作っていく必要があると思います。
     そして一番重要なことはこれが、会社側が追い出し部屋に入れたくなるような人たちを、そこに入れることなく、60歳や65歳までも一気通貫で働いていただけるような仕組みであるということです。そこに限定正社員、ジョブ型正社員の意味があるのではないかなと思っています。
     
    ◆一生懸命ではない働き方
    「働き易さ」や「働き甲斐」を、今までとは少し違う角度から考えてみると、「一生懸命働く社会ではない社会」というところにも、処方箋があるように思います。
     エリートはずっと一生懸命働くかもしれませんが、そうでない人たちは一生懸命働かない。一生懸命は働かないけれども、それは全然働かないということとイコールではありません。
     今までの無限定正社員のような働き方ではないけれども、しかし「それなりにきちんと働く」ということです。そういう社会の在り方が、これからの多様化する働き易さと働き甲斐に対応するのではないかと考えます。
     管理職や企業の経営陣になれないからといって、落ちこぼれて、やる気をなくして、嫌々ながら働く、特には追い出し部屋に送られるというような形ではありません。長い人生を、ずっとその仕事に打ち込んで、きちんと責任を持って働き続けることができるようなモデルを作っていく必要があるのではないかなと感じています。

    日テレ内定取り消し:一転、女子アナ採用へ 

    世間はパリのイスラムテロで大騒ぎですが、今朝の毎日に標記記事が地味に出ています。

    http://mainichi.jp/select/news/20150108k0000m040069000c.html

    東京・銀座のクラブでのアルバイト経験を理由に日本テレビからアナウンサー採用の内定を取り消された大学4年の笹崎里菜さん(22)が、同社に地位確認を求めた訴訟の和解協議で、東京地裁は7日、採用を前提とした和解案を提示する考えを示した。既に日テレ側も応じる意向を示しているといい、一転して採用される公算が大きくなった。

    Toyoeiwajoshie7acb9e5b48ee9878ce5a5この件、日本テレビ側の弁護士に木下潮音さんの名前を見た時から、こういう労使利害対立型ではなく女性の人権型の事案では、「銀座のクラブで働くような女は清純じゃない」などと無駄な抵抗をして傷を広げるのではなく、うまく処理するのではないかと思っていました。

    実のところ、(少なくとも民放の)女子アナのジョブディスクリプションて、限りなくアイドルタレントに近いわけですし。

    金子良事さんのゴードン書評リプライ

    昨年末のJIL雑誌に載ったアンドルー・ゴードンさんの金子良事『日本の賃金を歴史から考える』書評へのリプライを、金子さんが書かれています。

    http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/jil20151-9c62.html(違法労働@『JIL雑誌』2015年1月号)

    http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-367.html(ゴードン先生の書評へのリプライ)

    労働史に関心のある方にとっては重要な論点がたくさん書かれていますので、リンク先の資料も含めて、是非じっくりとお読みください。

    私は金子さんとは対照的に、まず政府の政策から見ていった口ですので、ゴードンさんの批判はすとんと落ちる(落ちすぎる)ところがありました。

    民主党代表選挙推薦人から見る、連合系(労組系)議員の動向

    大関若三杉@しのぴー(戦隊副本部長)さんが、ツイッター上で標記についてまとめておられますので、労働政治学的関心からも興味深い資料ですので、引用しておきます。

    https://twitter.com/wakamisugi/status/552837755743375360

    民主党代表選挙推薦人から見る、連合系(労組系)議員の動向 (その1)長妻氏の推薦人となっている労組系議員。 相原氏(自治労)、田城氏(JR総連・JR東労組)、石橋氏(情報労連・NTT労組)、大畠氏(電機連合・日立労組)、神本氏(日教組)、那谷屋氏(日教組)

    https://twitter.com/wakamisugi/status/552839560242003968

    民主党代表選挙推薦人から見る、連合系(労組系)議員の動向 (その2)細野氏の推薦人となっている労組系議員。 加藤氏(電機連合・三菱電機労組)、津田氏(JAM・旧全金同盟)

    https://twitter.com/wakamisugi/status/552840176427233281

    民主党代表選挙推薦人から見る、連合系(労組系)議員の動向 (その3)岡田氏の推薦人となっている労組系議員。 平野氏(電機連合・パナソニック労組) 小林氏(電力総連・東電労組) 直嶋氏(自動車総連・トヨタ労組) 柳沢氏(UAゼンセン同盟)

    https://twitter.com/wakamisugi/status/552840763877249025

    (承前)民主党代表選挙の推薦人を労組系議員の動向からて見てみると、労組系議員の動向としては旧総評系労組出身の議員は長妻氏を支持。旧同盟系労組出身の議員は細野氏または岡田氏を支持といった具合。かつての労働運動の左派と右派の対立と言うか、歴史的経緯もあってパックリ割れた印象。

    https://twitter.com/wakamisugi/status/552841385741541376

    電機連合の組織内議員は三者三様の対応。特に日立製作所の社員時代に原子力部門のエンジニアだった大畠元幹事長が原子力反対を訴える長妻氏の推薦人に名を連ねている等、興味深い側面も。この辺は一つの政策では無く、総合的な判断や党内の力関係もあるのかな。

    確かに旧総評系と旧同盟系で分かれ、しかも旧中立労連系の電機連合が3者に分かれているというあたりは歴史を感じます。

    しかし、政治的色分けからするとそういうことになるのでしょうが、組合員の利益をどこまで守るか守らないかという労働組合本来のスタンスからすれば、これはyamachanも感じたようですが、

    https://twitter.com/yamachan_run/status/552837509734866944

    えっ!あの長妻氏に対して自治労系議員が推薦とは。。

    という反応があっても不思議ではなさそうな気がします。

    かつて自治労にいた方のこんなツイートも。

    https://twitter.com/kurokawashigeru/status/550141658080088064

    旧社会党系を含む民主党の「リベラル」派が、労働法的な思考のセンスを持ち合わせない長妻昭氏を担ぐことしかなくなっている状況というのは、旧社会党系の人材補給システムが機能不全に陥っている構造的な問題も含んでいるのではないかなぁ、と感じるところが多くあります。

    https://twitter.com/kurokawashigeru/status/550827465652715521

    通常訓告戒告程度で済む、必要以上に年金記録を見た程度の職員まで失業者に追い込み、自己批判もしない人物が、どうしてリベラルなのかさっぱりわからん。過日、中道左派の社会保障政策の理論的支柱を示している学者と車中一緒になりましたが、彼が珍しくこの人物を酷評していましたよ。

    「リベラル」という言葉が、(市場主義者というヨーロッパ的意味でないのはまあ仕方がないとして)アメリカとも違って、いかなる意味でも労働者の味方であることすらも意味しない日本の独特さなのでしょうか。

    2015年1月 6日 (火)

    連合2015新年交歓会

    20150105_202557_sさて、昨日は連合の2015新年交歓会でした。

    http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/rengonews/2015/20150105_1420456942.html

    わたしはコップ片手に人と喋るのに忙しくて、気がついたら刺身一切れも口にすることなく時間が過ぎましたが、いやそんな些事はどうでもよろしい、今年の新年交歓会は、昨年までとちょっと違うことがありました。それは今朝の新聞にも出ていますが、経団連の榊原会長が登壇して挨拶をし、さらに挨拶はされなかったものの、日銀の黒田総裁と岩田副総裁が揃って出席されていたということです。

    経団連については、今まで副会長が挨拶していたことの方がどうなの?感もありますが、榊原会長のご挨拶なかなか立派なものでした。それよりびっくりしたのが、日銀の総裁副総裁の出席で、司会が来られていますというと、会場がどよめいた感がありました。おそらく連合事務局側も、招待状は出したものの本人が来るとは思っていなかったのではないかと思われ、せっかくだから一言「デフレ脱却のために日銀も賃上げを期待しています」とか挨拶して貰えば良かったのに、という感もありましたね。

    鏡開きに参加された政治家の皆様方についてはいろいろ感想もなきにしもあらずですがコメントは省略。

    求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方

    連合のサイトに、本日の新年交歓会の様子もアップされていますが、まあそれはともかく、「求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方」という興味深い中央執行委員会確認文書が載っています。労働法的に興味深いのはこっちです。

    http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/jakunensha/data/20141120job_trouble.pdf

    求人票・求人広告等に記載された労働条件と実際の労働条件が異なっているとのトラブルが相次いでいる。・・・・・しかし、求人票・求人広告に記載された労働条件と実際の労働条件が異なる場合について、法的には未整備・未解決の部分が多い。そこで、このような課題の解決に向けて、以下の改善策をとりまとめることとした。今後は、この「考え方」に基づき、政府への要請や労働政策審議会の議論等を通じて、必要な施策の実現を求めることとする。

    この問題の実例については、POSSEの皆さんの活躍もあり、かなり知られるようになりましたが、法的課題を具体的に指摘したものはあまりないように思います。

    (1) 労働基準法第15条
    ①「労働条件の明示」の内容について、「事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。この規定により、明示された労働条件と実際の労働条件が異なる場合について、労働基準監督官の指導・監督を可能とする。
    ②「労働条件の明示」の方法について、パート労働法第6条を参考に「書面の交付」を明文化する。
    ③「労働条件の明示」の時期として、「原則として実際の就労開始前とする」旨を明らかにする。
    ④「労働条件の明示」がなされていない場合も、第2項・第3項が適用されることを明らかにする。

    (2) 職業安定法第5条の3
    上記(1)①と平仄を合わせて、「明示する労働条件は事実と相違するものであってはならない」旨を規定する。

    またいわゆる固定残業代については、

    (1) 労働基準法施行規則第5条第1項を改正し、労働基準法第15条第1項後段で書面の交付で明示しなければならない労働条件に「法定労働時間を超える労働があるときの時間外割増賃金の計算及び支払の方法」を追加する。
    (2) 求人票・求人広告に記載の労働条件のうち、賃金部分(手当部分)の記載内容を明確化する(再掲)。

    という提起をしています。

    こういった法制的な議論はもちろんきわめて必要ですが、そもそも労働法が想定している労働条件の明示原則が、現実の労働社会では二の次三の次的に見なされている現状の背後にあるものは何なのか、という雇用システム論的な議論も無用ではないように思います。

    ジョブ無限定ということは、つまるところ、労働条件の明示と言ったところで、所詮は入社した当座のことにすぎないわけですから。

    結局、会社というものを、そこに人を当てはめるべきジョブの束と考える立場からすれば、求人票や求人広告に書かれるそのジョブの中身や雇用労働条件というのはそこに当てはめるべき人との契約内容を形成する最も重要な情報ということになるのに対して、ジョブなんかどうでも良いのであって、要は会社の一員にさえなればそれでいいという発想からすれば、求人票や求人広告に何が書いてあっても、そんなもの大して意味はないという発想になりがちなのは無理からぬところがあります。

    そういう人から見れば、こんなことにギャアギャア騒ぐ連中は、結婚してしまってからだまされたと騒いでるようなものだと見えるのでしょう。ここには、雇用関係というものを、民法の規定通り債権債務契約と考えるのか、それとも結婚類似の身分設定契約と考えるのか、という違いが現れているとも言えます。

    より正確に言えば就職とは結婚みたいなものだから細かいことをごちゃごちゃ言わないものだ、というメンバーシップ型の『常識』をうまく利用して、実は細かいことをきちんとしとかないと損をさせられる馬の目を抜く市場取引関係をそうでないように偽装することでうまく搾取するという、ブラック企業型のさや取り作戦をする企業が増えてきたということなのかもしれません。

    2015年1月 5日 (月)

    中年限定正社員@佐藤留美

    「NEWSPICKS」というサイトに、佐藤留美さんの「定期昇給はなくなり、昇進は公募制になる」という記事が載っています。

    https://newspicks.com/news/767059/body/

    佐藤さんは、今まで何回か雑誌のインタビュー記事でお世話になってきましたが、今回は佐藤さん自身のコラム記事です。

    中身は、日立の人事制度の話から始まり、「「定期昇給」廃止企業、続々」、「昇進は全部公募制」と、ジョブ型雇用であれば当然の方向性を論じた次に、「中年限定正社員:の増加」という言葉が出てきます。

    安倍政権の雇用政策で優先課題の一つとされているのが「限定正社員」の普及・促進だ。現状すでに、「地域限定」「職種限定」「時間限定」など多様な限定正社員が見受けられるが、新卒入社時に「旧一般職的」な働き方としてチョイスするケースが多く、「女性限定の働き方」としか認識されていない。

    しかし、安倍内閣が限定正社員を本格に普及させたい目的は女性の雇用創出ではないだろう。ズバリ、本丸は「給料が高過ぎる、中年以上男性社員の限定正社員化」と睨む。ある一定の年齢に達した時、ある一定のランクにまで達していない社員は、全員限定正社員にし、給料の大幅見直しを行う。もちろん抵抗勢力の猛反発が予想されるが、そんな時代が、もうすぐそこに来ている気がしてならない。

    限定正社員といえば女性向けとしか感じられない無限定デフォルトの頭の持ち主に、いやいやそこの中高年男性こそ限定正社員になるんですよ、と言っているわけですが、この発想は、拙著『日本の雇用と中高年』の中で、「中高年救済策としての「ジョブ型正社員」 」として論じたことと、ある意味で繋がっているように思われます。

    第5章 ジョブ型労働社会へ
    1 中高年救済策としての「ジョブ型正社員」
    ・「追い出し部屋」の論理
    ・職務の定めのない雇用契約
    ・「ジョブ型正社員」は解雇自由の陰謀か?
    ・「ジョブ型正社員」とは実は中高年救済策である
    ・途中からノンエリートという第三の道
    ・継続雇用の矛盾を解消するジョブ型正社員

    ちなみに、中高年限定正社員のあとは、「新卒採用を『L型人材』『G型人材』で振り分け」で、最近の雇用の話題をしっかり組み入れていますね。

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