G型・L型大学@『東洋経済』
本日発売の『東洋経済』1月31日号は、左の表紙のようにピケティ特集ですが、そちらはそちら系の方々に委ねておいて、こちらはもう一つのミニ特集記事です。
G(グローバル)型・L(ローカル)型
大学論争の深層大学が職業訓練校になる!? 文部科学省の有識者会議で仰天構想が飛び出し、大論争が巻き起こっている。
INTERVIEW│下村博文/文部科学相
「教育や学校はツールとして存在すべき」職業学校創設は専門学校の「悲願」
G型・L型、そして職業教育 私はこう考える
城 繁幸、本田由紀、工藤 啓、片山善博INTERVIEW│冨山和彦/経営共創基盤CEO
「反論の核心にあるのは大学教員の選民意識だ」
この記事(杉本りうこ記者が書いたところ)の最後近くに、私のコメントがちょびっと載っています。
・・・労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎・統括研究員は、「国際的に比較すると、日本にアカデミックな大学ばかりあるのがむしろ異例。ドイツのように実学を学ぶ大学があり、学生からも進学先として指示されているのが普通の形」と指摘する。・・・
このあとには、城繁幸、本田由紀、工藤啓、片山善博の4氏の意見が、さらには冨山和彦氏自身がどどーーーんと見開きで載っています。
この冨山和彦氏の言葉は、東洋経済オンラインに全文載ってますので、是非ご覧ください。
http://toyokeizai.net/articles/-/58760(冨山和彦氏、大学教員の「選民意識」にモノ申す 日本の大学教育は大多数者の役に立たない)
・・・反論の中で一番多かったのは、「教員に実学を教えさせるのは、アカデミズムに対する冒涜だ」という大学教員の意見です。でも逆にこの意見こそが、実学の世界で生きていく市井の人たちに対する冒涜ですよ。
なお、たまたまですが本日発行の『生産性新聞』1月25日号に、わたくしの「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関のイメージ」が載っていますので、参考までに、
昨年末、ネット上で「G型大学、L型大学」をめぐる話題が飛び交ったことをご記憶でしょうか。その元になったのは、文部科学省で10月から開催されている「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」の第1回会議に提出された冨山和彦氏の資料だったのですが、表現がいささか過激であったこともあり、とりわけ伝統的な大学モデルを重視する人々から激しい攻撃を受けることになったようです。しかし、表現の過激さは別として、そこで提起されている問題意識は、既に2011年1月に中央教育審議会が文部科学大臣に答申した『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』の中で提起されていた「職業実践的な教育に特化した枠組み」の延長線上にあります。そこでは学校教育法上の位置づけの問題、実践的な知識・技能を有する人材の育成ニーズなどを踏まえ、卓越した、または熟達した実務経験を主な基盤として実践的な知識・技術等を教授するための教員資格、教員組織、教育内容、教育方法等やその質を担保する仕組みを具備した新たな枠組みを制度化し、その振興を図ることを求めています。また、修業年限2~4年、職業実践的な演習型授業が4~5割、教員資格は実務卓越性を重視など、具体的な構想を示していました。
ところが、その後これは文部科学省の「専修学校の質保証・向上に関する調査協力者会議」で検討され、2013年7月の報告では、専修学校の枠内に「職業実践専門課程」を設けるということに矮小化されてしまいました。専修学校はもともと職業教育も目的とするものですから、これでは何のための議論だったのかよく分かりません。この職業実践専門課程が、「学び直し」という看板を掲げた専門実践教育訓練として、今年10月から手厚い教育訓練給付の対象となっています。専門職大学院と専修学校は対象になるのに、大学は対象ではないのです。なぜなら、「大学」とは学校教育法上「学術の中心」であって、職業教育機関ではないからです。
ようやく昨年7月になって、官邸に設置された教育再生実行会議が「今後の学制等の在り方について」という第5次提言を出し、その中で「実践的な職業教育を行う高等教育機関を制度化する」とされ、再び政策課題として提起されました。そしてそれを受けて、文部科学省で本格的に、「大学」という枠組みの中で実践的な職業教育機関をどう作っていくかという議論が始まったというわけです。
世間では冨山氏の炎上騒ぎが終わるともう余り関心を向けなくなったようですが、文部科学省の有識者会議はその後も着実に回を重ねていて、その資料も順次公開されています。そのうち、12月24日の第7回会合に示された「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関のイメージ(案)」は、その制度設計をかなり詳しく描き出していて、もう少し多くの人々が関心を向ける値打ちがあります。
そこでは、産業界のニーズへの対応を重視することから、「企業等の参画を得ながら教育の質を確保できる体制やプロセス」の確立が提起され、具体的には、教育内容については教育課程編成へ企業等が参画し、指導者については実務家教員を一定割合で配置し、事後評価については企業等が参画すると共に専門分野別の第三者評価を行うとしています。
位置づけとしては、大学の一類型として位置づける場合と、学校教育法1条校として全く新たな学校種を創設する場合を想定しています。それによって例えば教養教育の必要性、研究の取扱い、教員資格等々について違いがでてくるようですが、いずれにしても共通の要件として、実務家教員の配置を義務化するという点は変わりません。また、産業界が参画して分野別に教育の質を保証する仕組みも求められます。産業界として強い関心を持って見ていく必要があると思われます。
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