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2014年12月29日 (月)

女性活躍推進法で女性は活躍できるか?@損保労連『GENKI』12月号

113損保労連『GENKI』12月号に「女性活躍推進法で女性は活躍できるか?」を寄稿しました。

http://www.fniu.or.jp/kikanshi/index.html

 最近「女性の活躍」という言葉が政治の場で氾濫するようになりました。先月まで開催されていた臨時国会で「女性活躍推進法案」が提出(審議未了で廃案)されてからは、とくに耳にします。これまでも1986年に男女雇用機会均等法、1999年に男女共同参画社会基本法が施行されるなど、「女性がもっと社会や職場で活躍できるようにしよう」という目標は過去30年にわたって繰り返し唱えられてきたことです。しかし、諸外国に比べてもその歩みが遅々として進まないことから、政府は法律を作ることで、改めて推進することを企図していると考えられます。確かに昨年12月に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数2013(※)」で日本は136カ国中105位でした。健康分野などは高く評価されているなかで低い順位となった理由は、政治分野における女性の割合や会社における女性管理職の割合の低さにあります。今回の法案提出は、この状況を変える必要があるとの認識が、ようやく政権中枢に及んできたことが背景にあると考えられます。

 (※)ジェンダーギャップ指数

   世界情勢の改善に取り組む国際組織である「世界経済フォーラム(1971年設立/本部ジュネーブ/通称「ダボス会議」と呼ばれる年次総会を開催)」が毎年発表する各国における男女格差を測る指数。本指数は、経済分野、教育分野、教育分野、政治分野、保健分野のデータから作成されている。(内閣府男女共同参画局HP参照)

 今回の動きの出発点は、政府が6月に発表した「『日本再興戦略』改訂2014」に、今年3月の産業競争力会議雇用・人材分科会で示された「成長戦略としての女性の活躍推進について」という「長谷川(閑史 産業競争力会議 雇用・人材分科会主査)ペーパー」の内容が盛り込まれたことです。再興戦略では、数値目標として「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」(2013年女性管理職比率:7.5%、2012年:6.9%)が掲げられるとともに、国・地方公共団体、民間事業者における女性の登用の現状把握、目標設定、目標達成に向けた自主行動計画の策定及びこれらの情報開示を含め、各主体がとるべき対応等について検討する。さらに、各主体の取組を促進するため、認定などの仕組みやインセンティブの付与など実効性を確保するための措置を検討し、国会への法案提出を目指すことが明言されています。 

 これを受け、直後の8月から民間部門の対応は厚生労働省の労働政策審議会雇用均等分科会で、公的部門の対応は内閣府の男女共同参画局で検討され、10月の臨時国会に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」が提出されました(注)。同政府法案では、国、地方公共団体及び従業員300名超の民間企業は、国が策定する基本方針に基づき、女性の活躍に関する状況を分析し、それを踏まえて計画期間、女性活躍推進の取り組みによる達成目標、取り組み内容や実施時期に関して「事業主行動計画」を策定・公表することが義務付けられます。従業員300名未満の民間企業は努力義務です。この分析すべき事項の中に、「採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女の継続勤務年数の差異、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合等」が含まれています。国は優れた取組を行う企業を認定するとともに、さまざまな支援措置を講ずるとされていますが、裾野を広げることも含めて間接的な形で女性管理職比率を引き上げることを目的とする法律と言えます。

 また、この政府法案の基本原則には「家族を構成する男女が、相互の協力の下に、育児、介護等について家族の一員としての役割を円滑に果たしつつ職業生活における活動を行うために必要な環境を整備することにより、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として」と規定されていますが、公表される「事業主行動計画」の必須項目にはワークライフバランスが含まれていません。この政府法案では、女性の活躍を阻害している最大の要因を、必ずしも明確に認識していないようです。

 この点に関しては、6月に与党の自民・公明両党から議員立法として提出された「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案」の方が目配りがされています。基本理念は政府法案と同様ですが、事業主の責務に「その雇用する労働者に係る多様な労働条件の整備その他の労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備を行うことにより女性が活躍できる社会環境の整備に資するよう努める」ことが明記されている点は政府法案と異なります。特に政府が法施行後2年以内を目途に講ずるべき法制上の措置として、指導的地位への女性の登用の促進と並んで、時間外労働等の慣行の是正も明記されています。

 日本の女性活躍指数が先進国のなかで最低クラスになる大きな要因は、高度成長期に確立された日本型雇用システムにおける男性正社員の働き方が、職務、時間、空間のいずれも無限定であることが前提になっていることにあります。とりわけ、労働時間や勤務場所が無限定である前提で、女性が結婚し、出産や子育てと仕事を両立させることは困難です。そのため、女性たちは、正社員であっても職務内容が補助的な一般職にとどまるか、雇用形態が不安定な非正規労働を余儀なくされてきたわけです。また、未婚のうちは男性と同様に働いていた総合職の女性たちも、出産や子育てとの両立が困難になり挫折することが多いのです。

 日本の女性管理職数を本気で増やすために必要な対策は、なによりもまず長時間労働を当然と考える職場慣行の是正であり、そのうえで短時間で成果を挙げる労働者を男女の差なく、適切に評価し、昇進させていく仕組み・風土・慣行を作り上げていくことでしょう。子供を保育所に預けてから朝遅く出社し、子供を保育所に引き取りに行くために夕方早く退社する管理職が、電子機器を活用して部下に指示することを当然と考える社会になってこそ、女性の活躍は根付くことになります。さもなければ、9月に女性大臣が大量に就任したときも、大臣になれなかった当選回数の多い男性議員からねたみの声が漏れていたことが話題になりましたが、「俺はこんなに夜遅くまで頑張っているのに、女性という理由で、さっさと帰るあいつが出世して」などの新たな課題が充満する危険性があります。


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