昭和型正社員?-岩崎仁弥『よくわかる「多様な正社員制度」と就業規則見直しのポイント 』
特定社労士の岩崎仁弥さんより『よくわかる「多様な正社員制度」と就業規則見直しのポイント 』(日本法令)をお送りいただきました。
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厚生労働省では「いわゆる正社員」と「非正規雇用の従業員」の働き方の二極化を緩和し、ワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着の実現のため、職務、勤務地又は労働時間を限定した「多様な正社員」の普及・拡大を進めている。
本書はこの多様な正社員制度について、本制度ができるまでの経緯や仕組みの解説のほか、報告書の規程例、各企業の実規程例、本書のモデル規程を比較しつつ、就業規則見直しのポイントをまとめたもの。
ということなんですが、実用書的雰囲気にもかかわらず、この政策の考え方をきちんと本質に踏み入って解説している点が最大の特徴でしょう。下記目次を一瞥しても分かるように、第1章は日本の労働政策史を振り返るところまで踏み入っています。
第1章 多様な正社員制度の解説5
Ⅰ 「多様な正社員制度」が注目される理由6
1 多様な働き方の実現6
2 多様な正社員制度普及の必要性9
3 多様な呼称がある「多様な正社員」11
4 それぞれの用語に着目するポイント12
5 昭和型正社員と多様な正社員のベストミックス17
6 行政の動向等19
7 多様な正社員の活用29
Ⅱ 昭和型正社員から多様な正社員へ33
1 そもそも正社員とは何か33
2 昭和型正社員から多様な正社員へ37
3 これまでの人事管理制度にみられる社員区分39
4 無限定正社員と限定正社員42
5 限定正社員と多様な正社員の関係43
6 雇用ワーキング・グループにおけるジョブ型正社員44
7 ジョブ型正社員とメンバーシップ型正社員46
8 ワーク・ライフ・バランスと多様な正社員制度48
9 価値観の多様化と多様な正社員52
Ⅲ 労働者の区分について55
1 正規と非正規の問題55
2 各種統計調査による労働者の区分57
3 短時間正社員とは65
4 正社員以外の労働者の整理67
Ⅳ 非正規雇用問題を理解するために70
1 有期雇用と非正規雇用問題70
2 有期雇用と無期雇用73
3 昭和型正社員と無期雇用74
4 労働条件通知書の例76
5 非正規雇用問題の拡大83
6 非正規雇用問題の解決85
Ⅴ 我が国の労働政策史を振り返る87
1 積極的労働市場政策と消極的労働市場政策87
2 戦後70年の労働市場政策89
3 歴史から見た「限定正社員」「ジョブ型正社員」の評価94
4 シングルインカムからダブルインカムの社会へ95
5 ジョブ型雇用は今後主流となるのか97
Ⅵ 多様な正社員制度構築の視点100
1 留意すべき点100
2 新制度構築の視点103
3 無期転換制度について106
4 社員区分と就業規則107
5 パートタイム労働法と限定正社員108
6 1国2制度から1国1.5制度へ110
第2章 就業規則見直しのポイント123
Ⅰ モデル規定の検討124
1 就業規則見直しの必要性124
2 制度導入の有無の検討130
3 「職務」「勤務地」の限定133
4 「労働時間」の限定145
5 労働条件の明示150
6 いわゆる正社員と異なる労働条件158
7 試用期間160
8 賃 金161
9 社員区分の転換167
10 雇用の終了180
Ⅱ 運用上の留意点193
1 キャリア形成193
2 転換制度195
3 均衡処遇198
4 労使コミュニケーション200
5 労使紛争の防止202
6 いわゆる正社員の働き方の見直し203
7 これからの動向204
8 終わりに205
第3章 モデル就業規則207
第4章 資 料241
1 規制改革会議雇用ワーキング・グループ「ジョブ型正社員の雇用ルールの整備について(改訂版)」(2013.4.28)242
2 規制改革会議雇用ワーキング・グループ報告書「雇用改革報告書」(抜粋)(2013.6.5)251
3 「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」(抜粋)(2013.6.14閣議決定)262
4 ジョブ型正社員の雇用ルール整備に関する意見(2013.12.5)263
5 産業競争力会議「雇用・人材分科会」中間整理~世界でトップレベルの雇用環境・働き方」の実現を目指して~(抜粋)(2013.12.16)265
6 「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦-(抜粋)(2014.6.24)269
7 規制改革実施計画(抜粋)(2014.6.24)279
8 経済財政運営と改革の基本方針2014~デフレから好循環拡大へ~(抜粋)(2014.6.24)281
9 多様な正社員の普及・拡大のための有識者懇談会報告書(2014.7.30)283
10 多様な正社員に係る「雇用管理上の留意事項」等について(2014.7.30)333
おおむね、政府の各種会議体の議論やわたくしの著書などをもとに説明しているのですが、ある言葉だけは、そういう出所のない岩崎さん流の用語ですね。それは、無限定正社員、メンバーシップ型正社員という意味で使われている「昭和型正社員」ということばです。
ふむふむ、「昭和」という年号はそういう使い方をされるに至ったわけですね。
その昔は「昭和の子供だ、僕たちは」なんて歌もあったわけですが・・・。
ちなみに、この岩崎さんという方、こういう経歴の持ち主のようです。
大学卒業後、日本道路公団関連会社に入社し、人事、総務を幅広く担当。巨大で複雑な組織の中で現場の実務を10数年間体験する。持ち前の探究心の強さから、実務の本質を究めようと社会保険労務士の資格取得を目指す。多忙のなか合格を果たすが上司からは「余計な勉強をする暇があったら仕事をしろ!」と叱られてしまう。これをきっかけに我が国の職場の在り方に疑問を持ち、その日のうちに退職を決意、小さな社会保険労務士専門の受験指導校に転職する。
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