拙著書評2つ
年末が近づいて、拙著『日本の雇用と中高年』への書評が続けて2つアップされています。
一つは特定社労士の和田泰明さんの「HUREC AFTERHOURS 人事コンサルタントの読書備忘録」です。かなりの分量を割いて拙著への注文なども書かれています。
http://hurec.bz/mt/archives/2014/12/2255_201405.html(日本的雇用の在り方に影響力を持ち得る視座を提起。第5編の提案部分の更なる深耕に期待。)
・・・著者は、中高年や若者を巡る雇用問題を「中高年vs.若者」という対立軸で捉えてどちらが損か得かで論じることは不毛であり、雇用問題は雇用システム改革の問題として捉えることが肝要だとしており、ここまでに書かれている歴史的変遷も、それ自体「人事の教養」として知っておいて無駄ではないかと思いますが、ここでは、日本型雇用システムの歴史を探ることでその本質や特徴を浮き彫りにするという意図のもとに、これだけの紙数を割いているようです。
そして、最終章である第5章において、前著『若者と労働』で若者雇用問題への処方箋として提示した「ジョブ型正社員」というコンセプトが、本書のテーマである中高年の救済策にもなるとしています。「ジョブ型正社員」の是非を巡る労使間の議論が、解雇規制緩和への期待や懸念が背景となってしまっている現状の議論の水準を超えて、労使双方にとって有意義な雇用システム改革という新展望の上に展開されているという点では、本書にも紹介されている1995年の日経連の『新時代の「日本的経営」』にも匹敵する、日本的雇用の在り方に影響力を持ち得る視座を提起しているように思われました。・・・
・・・しかし、終身雇用をベースにした長期決済型の年功制を維持している間も、生産性に見合わない高給取りの中高年が真っ先にリストラ対象となった折も、そうした本質の部分について議論されることが無かった(能力主義であるとか現状において生産性に比べて賃金が割高であるとかいう理屈の上に韜晦されてしまった)のは、「メンバーシップ型」という概念が概念として対象化されず、それでいて企業が、何よりも人事部を中心にその(メンバーシップ型という考え方の)中にどっぷり浸り切っていたためであり、こうして「メンバーシップ型」として概念化し対象化すること自体、意義のあることのように思います。
とくに、最後の第5章はあまりにも駆け足気味できちんと深掘りした議論をしていないと感じられたようで、
・・・その意味では、本書第5章を深耕した著者の次著を期待したいと思いますが、こうした期待は本来著者一人に委ねるものではなく、実務者も含めた様々な人々の議論の活性化を期待すべきものなのでしょう。そうした議論に加わる切っ掛けとして、企業内の人事パーソンを初め実務に携わる人が本書を手にするのもいいのではないでしょうか。
と次著を慫慂されています。いや、次著は現在準備中ですが、第5章の中のとりわけ「2 中高年女性の居場所」を深掘りしたものになる予定なので、和田さんの宿題にどれだけ答えられるものになるかはわかりません。
もう一つは、Faith(フェイス)経営労務事務所を運営される社会保険労務士のT&Dさんのブログ「Faith to Face」です。
http://facetofaithsrtd.blog76.fc2.com/blog-entry-1491.html
本日のお勧めの一冊は「日本の雇用と中高年」(濱口桂一郎 著)です。
・・・このような問題をどのようにとらえどう解決していくのか?について、労働の世界では第一人者の濱口さんがその解決の方向性を示しているのがこの一冊です。
その「方法」については本書を読んでいただければいいのですが、解決法を示すまでに延べられるの中高年の労務管理の諸問題に対する示唆は非常に興味深いものがあります。
また、中高年の対策は実は、日本が抱えている他の問題(非正規問題等)を解決する方向性にも相通ずるものがあると感じる部分があり、濱口氏の提言は今後の日本の人事労務管理の大きな方向性を示しているのですが、個人的には違和感(理屈では分かるのですが本当にそれでいいのかという部分)もあり、しかし納得する部分もあり、と、なかなかためになる一冊でした。
ご興味のある方は是非・・・
「理屈では分かるのですが本当にそれでいいのかという部分」というのは、中高年問題に限らず、雇用問題のいろんな場面にでてくるようです。
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