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2014年12月25日 (木)

改正労働契約法への対応を考える――JILPT 労働政策フォーラムin 大阪から@『BLT』2015年1月号

201501『ビジネス・レーバー・トレンド』2015年1月号が刊行されました。

http://www.jil.go.jp/kokunai/blt/index.html

特集は「正規雇用化への新たな動向――始まる「第2ラウンド」」です。

この中に、去る11月20日に大阪で開かれた労働政策フォーラムのパネルディスカッションの模様が載っています。

パネリスト
北本 修二北本法律事務所弁護士/連合大阪法曹団代表幹事
上原 康夫井上・上原法律事務所弁護士/連合大阪法曹団事務局長
松下 守男松下法律事務所弁護士/経営法曹会議常任幹事
竹林 竜太郎竹林・畑・中川・福島法律事務所弁護士
濱口 桂一郎労働政策研究・研修機構主席統括研究員
コーディネーター
菅野 和夫労働政策研究・研修機構理事長

ここでは、わたくしの発言部分だけをアップしておきます。大阪の労使双方側の弁護士の方々の発言については、ぜひ本誌をお読みください。

Osaka


法改正の意義をどう理解し評価するか

濱口 私は、社会的あるいは政策的な観点からお話します。今回の改正の柱は第一八条と第二〇条の大きく二つあるわけですが、実はどちらもヨーロッパ型の有期法制をそのまま導入したものと言えます。そのままというのは日本風でないという意味です。本来、有期の反対語は無期のはずですが、日本の非正規法制は決してそうしてきませんでした。例えば、パートタイム労働法です。パートタイムの反対語はフルタイムのはずですが、「通常の労働者」という概念との間で差別禁止だの、均衡処遇だのと言ってきた。外国人に説明する際は、この「通常の労働者」の定義に大変汗をかくことになります。
また、細かいことは申し上げませんが労働者派遣法にも常用代替防止という特殊な概念が設けられています。いずれも欧州とは一味も二味も異なる、特殊な非正規法制となってきたのです。
 しかし、改正労働契約法における有期契約の規定は、まさにヨーロッパ型法制そのものであり、それこそがいろいろな議論をもたらしている大きな原因になってきたのではないかと思うのです。つまり、何で五年経ったからと言って無理矢理、正社員にしなければならないのかと文句を言われる。いや、正社員にしろとはどこにも書いてありませんと言っても、無期契約になるのだからつまりは正社員だろうという思い込みが強い。パートタイム労働法や労働者派遣法も含めた今までの非正規労働法における物の考え方が、日本的な正社員とそれ以外という形でやってきたわけですが、そこへヨーロッパ型の有期と無期の図式をスポンと入れてしまった、そのためにいろいろな摩擦が起こっているというのが、この一~二年で生じていることだろうと考えています。

企業(労使)の対応にはどのような困難を伴うか

濱口 第二〇条に関連して問題になってくると思うのですが、これまでの日本的な正社員のあり方をどう見直していくかということと、密接不可分の話になると思っています。そうすると第二〇条だけの話には収まらず、第一〇条(就業規則による労働条件変更)に飛び火する可能性もある。そこで労働組合との交渉状況等が問われてくる、そこまでの射程がある話だろうと考えています。

転換後の労働条件はどうなるのか?

濱口 法律論としては恐らく、別段の定めがない限りは元通りと書いてあるのだから、それに尽きると思います。ただ、元の状態が果たして合理的だったかどうかは、第二〇条とかかわる話ではないでしょうか。第二〇条を裁判規範として考えると、そんなに軽々しいものではありません。一方で行為規範として考えるとき、有期契約労働者のこれまでの労働条件が不合理と認められるほどのものであったかどうかはともかく、ピカピカに合理的だったかという話と実はつながってくるのかも知れない。つまり、有期契約労働者にもいろいろあるわけで、仕事も補助的で責任もない、昔ながらのパート・アルバイトみたいな方もいれば、まさに九〇年代以降、正社員がやってきたことを代替する形でやってこられた方もいる。その方々を無期転換するとき、従前から無期で働いている人との比較で仕事の中身が中核的かどうか、それにふさわしい合理性はこうだろうという形で、裁判規範というよりむしろ職場で新たな労働条件を作っていく観点から、労使で議論する話ではないかと思っています。

無期転換申込権の不行使合意や、更新上限条項は有効か

濱口 私は、要するに今回改正された労働契約法はヨーロッパ型であり、反復更新して五年を超えるようなら、幾らなんでも濫用でしょうという話だと考えています。だとしたら、濫用だけれども文句は言わないでね、というのはやはり変だろうなと。ここでちょっと考えていただきたいのは、特定の期間だけ労働者を使いたいのなら反復更新などという姑息なことをせず、初めから五年や七年の一括契約で雇い入れれば済むのではないかという議論が、ゼロベースで考えれば当然、出てくるはずだということです。そうすると、恐らく労働基準法・第一四条(契約期間等の定めのあり方)との関係でも議論しなければならなかったはずが、これまではあんまりしないまま来てしまった。とくに一一年前の労働基準法改正の折りに附則第一三七条ができてしまい、しかも暫定的だったはずがもう一〇年以上そのままになっているということについて、法政策的にはもう少し議論があっても良いのではないかと思います。

雇止めの有効性は依然、不透明なのか

濱口 無期契約労働者の場合、単に解雇と言わずに整理解雇や能力不足解雇、あるいは非違行為などと分けて議論するのですが、有期契約労働者は全部まとめて雇止めと言ってきました。この点、本当はもう少し慎重に議論しなければならないのではないかと感じています。例えば、この人はちょっと出来が悪いという場合。正社員であれば他の部署に回してふさわしい仕事を探すけれど、有期契約労働者はこの仕事に対して雇ったのだから、これがダメなら仕方がないという話になるのかならないのか。斡旋や労働審判の事例を見ると、言うことを聞かないから雇止めだというケースも結構ありますので、有期契約労働者の雇止めについてももう少し腑分けした形で議論が進んでいけば良いなと思っています。

第二〇条はどのような法的効力を持つか

濱口 第二〇条は冒頭で申し上げた通り、まさにヨーロッパ型の法制そのものです。欧州では別にレギュラーだろうとノンレギュラーだろうと、基本的な賃金決定システムに違いがあるわけではありません。それを日本の場合は二〇年間、パートタイム労働法で均衡処遇などと言って、そもそも物差しがまったく異なって比べられないものをどうするかみたいな話をずっとしてきた。そうした中で第二〇条のような形にしたということは、物差しが違うからそもそも話にもなりませんよ、とはもう言えない状況にしてしまったのだろうと思います。とはいえ、物差しの中にはいろいろなものが入れられています。業務の内容だけでなく責任の程度、配置の変更の範囲やその他の事情など。物差しが違うから比べられませんとはもう言えないが、これまでは物差し自体が違っていたのだからそう簡単にはいきません。だから、不合理と認められるものであってはならないという何か持って回ったような言い方になっているのでしょう。そのために裁判規範として直接的に使うのは若干難しいというのが、多分正直なところだろうと思います。
 ただ、先ほど来申し上げていますように、これをむしろ行為規範と言いますか、今までの正社員の賃金システムそのもの――日本の企業で典型的だった職能資格制度などを、非正規あるいは無期転換した方々と共通の枠組みの中に入れていこうということが、法律の射程に入っているのだろうという感じがしています。これから現場で労使が話し合い、それをどう作っていくかという話ですので、今すぐ何が正義かという話に使おうとすると摩擦も起こると思うのですが、やはりそうしたものを今後は作っていかなければならないという課題を、広く労使に課した規定であると捉える必要があるのではないでしょうか。

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