「ワシの年金」バカが福祉を殺す
駒崎さんをめぐる騒ぎについて、一番本質を突いているのが、黒川滋さんのこのツイートの最後の言葉。
https://twitter.com/kurokawashigeru/status/531253562521550850
7日の駒崎弘樹さんのツィートにまとわりついていた連中、ひどいな。
https://twitter.com/kurokawashigeru/status/531253888825847808
この国ではどんな福祉サービスを整えることよりも、実質的な社会的弱者を救済することよりも、ただ消費税を上げないことに限り弱者のためになる、という消極的・見殺しの思想が蔓延しているのだろうか。
https://twitter.com/kurokawashigeru/status/531254316187672577
消費税を上げるべきではないという人たちの主張が、証明不可能な枝葉末節に振り回されすぎていて、帳尻、必要性、時期とタイミングという大事な話に行かない。
https://twitter.com/kurokawashigeru/status/531254759198441473
介護労働者の離職を避けるため、保育労働者を確保するため、看護師が早死にしないため、障がい者を持った家庭が東京都にしか住めない状態を改善するため、教育水準を上げるため、失業者を食べさせて再就職させるため、みんな公的なお金がいる。財源なくて何もしなくてよいというのがわからん。
https://twitter.com/kurokawashigeru/status/531255580313153536
消費税増税分を財務省が刈り込み過ぎて、社会保障に回す分が子育てと国民健康保険の若干の負担軽減だけに留まっている実態と、さらにそれとは全く別に介護保険の刈り込みと複雑化などが加わり、税金挙げても良くならないじゃないか、と推進派の国民の間にも消費税増税への信頼感が無くなっている。
https://twitter.com/kurokawashigeru/status/531256399930466305
刈り込まれた原因は、社会保障と言えば年金にばっかり関心を払う、多くの人の議論のやり方だったと思う。何度もここには書きましたが、年金は賦課方式なので、財政の入りと出のひもつけを長期に追跡できません。その中で年金のためと言えば、わけのわからないことになるのです。
この問題をめぐるミスコミュニケーションのひとつの大きな理由は、一方は社会保障という言葉で、税金を原資にまかなわなければならない様々な現場の福祉を考えているのに対し、他方は年金のような国民が拠出している社会保険を想定しているということもあるように思います。
いや、駒崎さんをクローニー呼ばわりする下司下郎は、まさに税金を原資にするしかない福祉を目の敵にしているわけですが、そういうのをおいといて、マスコミや政治家といった「世間」感覚の人々の場合、福祉といえばまずなにより年金という素朴な感覚と、しかし年金の金はワシが若い頃払った金じゃという私保険感覚が、(本来矛盾するはずなのに)頭の中でべたりとくっついて、増税は我々の福祉のためという北欧諸国ではごく当たり前の感覚が広まるのを阻害しているように思われます。
「ワシの年金」感覚の弊害については、かつて本ブログでも書きましたが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-f716.html (年金世代の大いなる勘違い)
先日スウェーデンで開かれた国際社会政策学会で報告してきた呉学殊さんと話していて、「たった5%の消費税を上げるのに猛反対するのが人気を博するような日本はもう終わりかも」という話から、その理由として考えた話ですが、ちょうど「dongfang99の日記」というブログで書かれていた「年長世代の「小さな政府」志向」ともつながる話なので、簡単に。
http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20100725
>近年支持が高い政治家や政党に共通しているのは、ラディカルな「小さな政府」路線であることである。
>そしてさらに気になるのは、どうも年金生活に入っているような、本質的にラディカルな改革を好まないはずの年長世代のほうが、こうした政治手法への支持がより高いらしいことである*1。年金・医療への関心の高さから言って、この世代が本当の意味での「小さな政府」を望んでいるとはとても思えないのだが、なぜそうなってしまうのか・・・
これは確かにわたしも感じていることです。ただ、理由付けは異論があります。官僚への期待値も政治的疎外感も、逆方向に向かう蓋然性の方が高いはずです。
では、お前の考える理由は何か?
彼らが「年金生活」に入っていることそれ自体が最大の理由ではないか、と思うのです。
ただし、これは社会保障がちゃんと分かっている人には理解しにくいでしょう。
公的年金とは今現在の現役世代が稼いだ金を国家権力を通じて高齢世代に再分配しているのだということがちゃんと分かっていれば、年金をもらっている側がそういう発想になることはあり得ないはずだと、普通思うわけです。
でも、年金世代はそう思っていないんです。この金は、俺たちが若い頃に預けた金じゃ、預けた金を返してもらっとるんじゃから、現役世代に感謝するいわれなんぞないわい、と、まあ、そういう風に思っているんです。
自分が今受け取っている年金を社会保障だと思っていないんです。
まるで民間銀行に預けた金を受け取っているかのように思っているんです。
だから、年金生活しながら、平然と「小さな政府」万歳とか言っていられるんでしょう。
自分の生計がもっぱら「大きな政府」のおかげで成り立っているなんて、これっぽっちも思っていないので、「近ごろの若い連中」にお金を渡すような「大きな政府」は無駄じゃ無駄じゃ、と思うわけですね。
社会保障学者たちは、始末に負えないインチキ経済学者の相手をする以上に、こういう国民の迷信をなんとかする必要がありますよ。
労働教育より先に年金教育が必要というのが、本日のオチでしたか。
その感覚が回り回って、現場の福祉を殺す逆機能を果たしているというアイロニーにも、もう少し多くの人が意識を持って欲しいところです。
« いわゆる左派と呼ばれる人達によく見られる感情的な意見を極力排し | トップページ | ステークホルダー民主主義とクローニー資本主義 »
コメント
« いわゆる左派と呼ばれる人達によく見られる感情的な意見を極力排し | トップページ | ステークホルダー民主主義とクローニー資本主義 »
僕には、この議論では、リフレ派の人々のほうが真剣に福祉を考えているように見えます(悪いことば使いで罵倒しているのは数人ですし、他のかたは丁寧な言葉で議論していてむしろ感心します)。
このかた↓のコメントに集約されています。
「消費税で一番ダメージを受けるのは子育て世代。そこに所得移転するから消費税を上げるというのは全くおかしな話なわけです。」
子育て支援に限らず、社会福祉政策というものは、困っている人びとを助けるために行うものです。だから低所得の人の負担が大きい消費税で、社会福祉政策をしようとすることが矛盾しているのです。
消費税に反対するために、「社会福祉なんて本当は真剣に考えていないのに」、社会福祉を口実にしているんじゃないんですよ(中にはそういう人もいるかもしれませんが)。それに小さな政府を目指しているために、社会福祉を敵視しているのでもありません。むしろ逆です。
そういうふうに相手の指摘を矮小化し、そのようにして批判しやすくし、遺伝子組み換えしたものを批判するのはやめましょう(私はそのような卑怯な論述をする人を非常に嫌います)。
日本の社会福祉全体が、奇妙な「公平感」にもとづいていて、本来の社会福祉からずれたものになってしまっているのが問題だと言っているのです。日本の社会福祉政策は、低所得の人もお金持ちの人も、「同じように」恩恵を与えるものになっているものが多いです。しかも、負担「率」も全員同じものが多い(国民健康保険の基本税率は全員同じ)、国民年金にいたっては、負担「額」も同じで、給付額も同じです(たぶん)。そして、同じ負担率のものが消費税です。
しかも、企業組合年金、厚生年金を考えれば、「正社員」のほうが有利になっている。
このような状況で、低所得者に負担が大きい消費税を増税すると、それが社会福祉のために使われたとしても(それも疑わしいですが)、かえって格差を増大させることになるのです(消費税の負担が少ないお金持ちにも、同じように社会福祉を配分しているのですから)。
どうして所得税の累進制を生かすという発想が出てこないのでしょうか。
「リフレ派はこいつらは」とくくって批判しているだけなら、濱口さん自身も批判しているリフレ派と同じですね。真剣に福祉のことを考えているというのなら、上の疑問に答えるべきでしょう。
それをせずに「リフレはは」はといっているだけなら、ああ、この人は正社員の側に立っているから、社会福祉にはあまり切り込みたくないんだな、と思われると思います(僕はそう思ってますが)。
ここで北欧の例を出すのは、まったくミスリーディングです。そもそも社会福祉の制度自体が全然ちがいます(だから、上で書いたように、日本の社会福祉の「弱いものいじめ」の構造にもっと切り込むべきです)。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月 9日 (日) 13時21分
沢さん
>だから低所得の人の負担が大きい消費税で、社会福祉政策をしようとすることが矛盾しているのです。
負担面だけからみると、確かに消費税は逆進的です。しかし、給付面と合わせると、消費税は累進的になるのです。ヨーロッパや北欧諸国が、高付加価値税で福祉を支えている理論的な背景もそこにあるのです。ですから、別に「矛盾」はないです。まして、日本の消費税法では使途が社会保障(と地方税)と決められているのですから。
実は私も昔は、沢さんと同じ考えだったので偉そうなことは言えませんが。私も左派を自認していますが、日本の左派政党、特に共産党にはこのことをよくよく理解して欲しいと思います。
例えば、権丈先生の「勿凝学問46 歳出削減はいつまでつづくのか?――この国には新自由主義とか市場原理主義の政治家などいない 」
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare46.pdf
の8ページを読んで下さい。
もちろん、税源が消費税(だけ)で無くてもよいです。所得税や相続税でも。ただし、消費税、付加価値税が税源としてものすごく強力であることも理解して下さい。1%上げるだけで2.5兆円の税収が見込める税金は他に考えにくい。
投稿: Ryo | 2014年11月 9日 (日) 14時06分
>国民年金にいたっては、負担「額」も同じで、給付額も同じです(たぶん)。
これも昔、私も同じことを思っていました。負担額が同じなら逆進的では無いかと。それはそうなんです。だから昔は、年金も税方式にしたほうがいいと思ってました。
ただ、税方式にすると社会保険料の労使折半の転嫁問題で労働者側が損をするというのと、もう一つ、税方式では給付額を削減されやすくなるという問題点があります。
保険料方式だと、「権利」の性格が強くなり、給付額の削減を財務省が口出ししにくくなります。保険料方式だと、これだけの保険料を払っているんだから、これだけよこせと言えますが、税方式だと負担と給付のリンクがあいまいになり、削減されやすくなるのです。それと、保険料だと厚生労働省の管轄だけど税方式だと財務省が口出ししやすくなる、ということもあると思います。
もっとも、年金には税も投入されているので純然たる保険料方式ではありませんが、全額税方式にするのはなかなか難しい。
この辺りは権丈先生がブログや著書で何度も触れているので、勉強になります。
投稿: Ryo | 2014年11月 9日 (日) 15時21分
>確かに消費税は逆進的です。しかし、給付面と合わせると、消費税は累進的になるのです。ヨーロッパや北欧諸国が、高付加価値税で福祉を支えている理論的な背景もそこにあるのです。
だから、それはヨーロッパのような社会福祉政策に転換しなければ無理でしょう、と言っているのです。
現在の状況で、消費税を上げても逆進的になるだけです。
そして、日本ではヨーロッパ型の社会福祉政策は無理です(アメリカ型でさえ無理です)。なぜなら、働かない者に税金をつかって補助することを心情的に嫌う傾向が伝統的に強いからです(怠けているやつを助ける必要はないというわけです)。
失業手当や生活保護の増額は、まず通りません。だったら、現在の負担を減らすということが社会福祉になるのです。
「給付面と合わせると」、どういう給付があるのです? 年収200万、独身、フリーターという場合、消費税の増税に見合う、どういう給付を受けることができますか? 所得税が減税されるとか? 健康保険料が下がるとか? 考えられませんね。
そもそも、財務省が35人学級を40人と戻すべきとか、生活保護を削減すべき、と提言しているのに、財務省が本気で社会福祉のことを考えていると信じることができる想像力が理解できません。
そもそも社会福祉とは、不公平なものなのです。全員が受け取るものなら、民間の保険会社と同じです(それだったら、民間にまかせればいいということになります)。実は、小さい政府を批判していながら、小さい政府を主張する人と同じ論理に陥っていることに気づいていますか?
ヨーロッパやアメリカを比較対象にしても意味ないです。「平均的な中央」からはずれる人(貧しい人でも金持ちでも)に対する日本人の蔑視は、西欧よりも強い、ということに気づいていますか。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月 9日 (日) 17時35分
>http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/korunakare46.pdf
>国民ひとりひとりの所得水準とは無関係に1人当たりGの額だけ社会保障の諸サービスが給付される場合には
結構前にhamachan先生が紹介したどこかの地方公務員さんのエントリでも登場していましたが、この前提、変では?貧乏人や病人ほど給付が多くなきゃ生きていけないでしょうし、給付を調整するために個人の資産や所得を把握してそれに応じて給付するなら、財源調達が消費税である必要がそもそもない気が。
投稿: MP | 2014年11月 9日 (日) 19時35分
皆さん、今晩は。
私は沢ひかるさんの御意見に全面的に賛同致します。
私は、社会保障財源を確保するために消費税の税率を上げなければならないという人は、善意に解しても認識が甘すぎると思います。
今の我が国の現状では、消費税の税率を引き上げても他の税収の減少で差し引き減収になるので、さしあたっての社会保障財源の確保は、所得税や相続税の最高税率を消費税導入以前に戻した上で、それでも足りなければ国債を発行し、日銀に買い取ってもらうしかありません(現時点では、日銀が買い取ろうとしても国債をなかなか売ってくれないという状況です。)。
少なくとも、「社会保障財源の確保のために消費税の税率引上げは必要だ」と言う認識を持っているのなら、労働者、特に非正規従業員から見放されることを覚悟して下さい。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年11月 9日 (日) 20時18分
以下は、厚生労働省 平成23年 所得再分配調査報告書 よりの抜粋です。原典は、厚生労働省のサイトで探してください(リンクしにくい。政府統計が使いにくくなっていますね)。社会保障給付は、年金が一番大きく、次が医療になっていますね。国民年金は半分が国庫負担で、この財源は消費税にする予定でしたね。
> 今回調査では当初所得のジニ係数 0.5536 に対して、再分配所得のジニ係数は 0.3791となり、所得再分配によって所得の均等化が進んでいる。所得再分配によるジニ係数の改善度は、31.5 %で過去最高になっている。
> 一世帯当たりの平均当初所得は 404.7 万円であり、この当初所得から税金(47.1 万円)、社会保険料(47.7 万円)を差し引き、社会保障給付(176.1 万円)を加えた再分配所得は 486.0 万円となっている。
> これを当初所得に対する比率でみると、社会保障給付(B)は 43.5 %、社会保険料(A)は 11.8 %であり、差し引き 31.7 %が一世帯当たり平均で社会保障によってプラスになっている。
> 所得再分配の状況を当初所得階級別に見ると、当初所得が低い階級ほど再分配係数が大きくなっている。
> 高齢者世帯の平均当初所得は 92.7 万円であるが、再分配所得は 348.0 万円、再分配係数は 275.4 %となっている。
> 再分配係数が大きくなっているのは、社会保障給付の受給によるものであるが、受給額の内訳は、年金・恩給 70.5 %、医療 23.6 %、介護 5.1 %、その他 0.8 %となっている。
> 母子世帯の平均当初所得は 195.7 万円であるが、再分配所得は 258.2 万円、再分配係数は 31.9 %となっている。
投稿: IG | 2014年11月 9日 (日) 21時34分
>現在の状況で、消費税を上げても逆進的になるだけです。
消費税法第一条の2で社会保障および地方税に使途が限定されています。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S63/S63HO108.html
今回の駒崎さんも書かれているように、増税分で7000億円の子育て支援がまかなわれるわけです。
「やっぱりこいつらは「りふれは」」コメント欄にhamachanが書かれているように、財務省は別に社会保障が重要とかそうでないを判断していると言うより、個別利害の上から、それを調整して財源を振り分けていると判断するのが自然です。
沢さんの
>ヨーロッパやアメリカを比較対象にしても意味ないです。
は乱暴に思います。それは、どうせ日本には社会保障は無理だから、税金を安くしろ、と言っているに等しい。そういう社会こそ、リバータリアンが理想とする社会では。
投稿: Ryo | 2014年11月 9日 (日) 21時57分
MPさん
あくまで簡素な説明のための理論モデルですから。もちろん、弱者により多く給付すればより累進制が高まります。重要なのは、たとえ一律給付であったとしても、負担と給付を合算すると累進的になる、という点です。
財源調達が消費税で無くてもよい、というのは同意します。ただし、すでに一部実施されています。http://president.jp/articles/-/11987
重要なのは、財源が逆進性があると言われる消費税でさえ、給付と併せると累進的になる、ということであって、もちろん所得税・相続税でも構わない。
ただ消費税だと、年金生活者にも負担してもらえるが、所得税だと勤労世代のみの負担になるということ、税収が消費税ほど見込めないだろうなということ、税収が消費税ほど安定的でないということに留意は必要です。
投稿: Ryo | 2014年11月 9日 (日) 22時06分
>ただ消費税だと、年金生活者にも負担してもらえるが、所得税だと勤労世代のみの負担になるということ、税収が消費税ほど見込めないだろうなということ、税収が消費税ほど安定的でないということに留意は必要です。
よく所得税は老人から取れないと勘違いしている人がいますが、年金にも所得税は課されています。老人からもっと取りたいなら年金の所得控除を小さくすればいいだけの事です。
それと税収が安定的でないのは好況なら増税不況なら減税と景気を安定化させる効果がありデメリットとは言えません。
投稿: 飯馬太郎 | 2014年11月 9日 (日) 23時37分
IGさん
現在の再配分率が、低所得者のほうが大きいか、少ないかという問題ではありません(そりゃ低所得者のほうが大きくなるでしょう。そうでなければ、いったいどんな搾取国家なんだということになるでしょう。
大事なのは、「そこからの」変化です。この状態で、税率一定の消費税が増税されると、格差を広げるのか、縮めるのかという問題です(給付側に変化がなければ、確実に広げるでしょう)。
Ryoさん
>弱者により多く給付すればより累進制が高まります。
今の社会保障政策がそうなっていないと思いますが。社会保障費の大半をしめる、医療保険、年金の給付は同額です。所得に対する比率では、たしかに低所得者ほうが高くなりますが、
とすると、累進的にするためには、低所得者に別の給付を大幅にしなければいけなくなる。それは具体的に何ですか?
公的な健康保険料はどのくらいでしょうか。国民健康保険で、だいたい年収の10%ぐらいだと思います(年収そのものです。経費とか控除していません)。だから、年収200万円台の人で、20万円前後、あるいはそれ以上とられています(たしか、ある程度の年収になると一定額になると思うので、高額所得者に有利になっていると思います)。ここから消費税、そして所得税(所得税はかなり低くなると思う(5万以下? 正確にはわかりません)。そして、市県民税(これが結構高い。そして市県民税がこれまた税率一定)。
所得が低い人はかなり苦しくなっているとと思います。それで消費税ですか? 社会福祉費用を含めると、年収2000万円の人でも、年収200万円の人でも税率はそれほど変わらないのです。30%ぐらいと20%ぐらいじゃないでしょうか。
だいじなのは「限界」での変化なのです。この状態で、負担率一定の消費税が増税されれば、低所得者の負担が増えるだけだと思います。
どうして、何でもかんでも負担率一定、負担額一定にしなければいけないんですか? おまけに消費税。税率が違うのは所得税だけです。額面的な数字が同じじゃないと「不公平」だと言う人が出てくるからでしょうね。日本人はそれで平等が達成されているようなふりをし、それが格差を生み出していても知らん顔しているような気がします。負担額や負担率を同じ(あるいは給付額を同じ)にしなければいけない、という呪縛を解かない限り、まともな社会福祉政策なんてできません。
低所得者に多く給付すればいい、と言いますが、このように同じ数字こだわる傾向が強いとそういう政策を実現するのは難しい。
だから、税と給付の「両面で」累進的にする必要があるのです。
国道134号鎌倉さん
僕も所得税の税率を、所得がある額より上(例えば課税所得が400万円。中央値より少し上。サラリーマンでも必要経費は控除されるので、所得はもっと上です)の人から徐々に税率を上げ、1990年代の水準(最高税率で50%)に戻すべきだと思っています。それで足りなければ、次に消費税を考えればいい。
この程度の税制改革ができない政治が、本当に低所得者のための社会福祉政策を実行できるとは思いません。
欧米との比較、最後のところで僕が言いたかったことはまったく逆です。
アメリカでさえ、低所得者には給付し、所得税を取り始める所得が日本よりも高いのに(しかも、州によっては消費税なし)、日本は103万円という低所得者の人から取り始め、しかも消費税まで増税しようとするのか、という意味です(たしかに他の社会保障費が低いという問題がありますが)。
どうしてこうなるのか。日本人は、全員に負担させなければならない、という考えが強いのです(日本人の精神構造に社会保障と逆行するところがあると言いたかったわけです)。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月10日 (月) 00時39分
クルーグマンですら将来的な消費税の増税は肯定してるよ。そもそも消費税自体がいかんとか言ってる経済学者はかなりレアだと思うぞ。
クルーグマン氏は「最終的にはみんなが(消費増税率引き上げが)必要だと信じているし、実は私も同感だ。問題はそのタイミングだ」と述べた。
http://realtime.wsj.com/japan/2014/11/06/円安は時間をかけて輸出を押し上げる=クルーグ/
投稿: nameless | 2014年11月10日 (月) 01時08分
MPさん
>給付を調整するために個人の資産や所得を把握して
>それに応じて給付するなら
「国民ひとりひとりの所得水準とは無関係に」なので
資産や所得を把握しないという話だと思いますが
投稿: bn2islander | 2014年11月10日 (月) 03時40分
日本の財政悪化の最大の原因は高齢者福祉であり
資産や所得に乏しく生活に困窮する高齢者も多いが
日本の金融資産の大半を保有しているのも高齢者なのに
識者は増税に関しては相続税よりも消費税が対象にする謎
投稿: 森 | 2014年11月10日 (月) 10時07分
Ryoさん
消費税の税収の大きさは地引き網式に貧乏人からも取ってるがゆえで、安定しているというのは財政当局が景気に配慮する動機を失わせるとともに景気が良くなっても税収が増えない状況になるということで、いい事だとは思えないんですよね。そして消費税自体が累進的なわけではないですよね。「貧乏人から取っても利子つけて後から返せば問題ない」という発想だと思いますけど、消費税増税反対派にとっては「返ってくる保障はないし返ってくるまで苦しいし、だったら最初からそういう取り方をするな」ということだと思うんですよ。所得税、相続税を挙げられていますけど、それだけじゃなく社会保険料の上限撤廃、年金課税、金融総合課税、固定資産税とかさまざまな方法を組み合わせる知恵を絞るべきだと思うんです。
bn2islanderさん
権丈先生の前提はその通りです。その「消費税で調達して一律給付するベーシックインカム」的な前提が変だと思ったということです。hamachan先生もこう言い換えると、もやもやするのでは。
投稿: MP | 2014年11月10日 (月) 15時18分
沢ひかる殿
>失業手当や生活保護の増額は、まず通りません。だったら、現在の負担を減らすということが社会福祉になるのです。
消費税が実現しなくても(それ以外の)福祉サービスは現状のまま維持される という前提があれば仰る通りですがそれは違うと思います。
後で申し上げるように財務省が本気で考えている事は国家予算の収入と支出の均衡(支出を収入の範囲に抑える)だけだと思うので、消費税が延期になって収入が減ればその分、現状の福祉サービスは削減されると思います(防衛や学術等の予算も削減されるでしょうが、福祉予算が国の支出の最大項目なので削減も最大になると思います)
我々は下りのエスカレータに乗っているようなもので、何もしないと現状維持ではなく事態は悪化すると思います。しかも下りになる原因は、どこかにいる諸悪の根源が甘い汁を吸っているからではなく、医療の進歩で国民が長生きして年金や医療や介護等の費用が増加した事、つまり国民みんなが原因なので国民みんなで対応しなければならないと思います。
>財務省が本気で社会福祉のことを考えていると信じることができる想像力が理解できません。
財務省が本気で考えている事は国家予算の収支均衡だけだと思うので、”本気で社会福祉のことを考えていない”というのは仰る通りだと思います。
しかしその意味では財務省は、社会福祉だけでなく国家の防衛やインフラ整備や学術の振興も本気で考えていないと思います。
財務省が(収支均衡だけでなく国家防衛やインフラ整備や学術振興よりも)社会福祉の事を考えてくれるようになる事は(少なくとも)短期的には期待できず、何もしないと福祉の状況は(現状維持どころか)事態は悪化すると思うので、財務省の同意する方針(消費税増税)で福祉予算を増やす(削減を小幅にする程度かもしれませんが)事は(悪化を防ぐという意味で)仕方がないと思います。
>そもそも社会福祉とは、不公平なものなのです。全員が受け取るものなら、民間の保険会社と同じです
民間の保険会社の保険は公正(同じ掛け金で同じ給付)でなければなりません。異なる掛け金でも給付額は同じという保険を民間の保険会社が販売しても高い掛け金を払う人は(損になるので)加入しないと思います。
国(国家権力)だから高い掛け金を払う人(損になる人)にも加入を強制できるのだと思います。
>>弱者により多く給付すればより累進制が高まります。
>今の社会保障政策がそうなっていないと思いますが。社会保障費の大半をしめる、医療保険、年金の給付は同額です。
掛け金が同率で給付が同額であれば累進的だと思います。国民年金は掛け金も定額ですが、あれは半分は国が負担しているので、その意味では累進的だと思います。
>公的な健康保険料はどのくらいでしょうか。国民健康保険で、だいたい年収の10%ぐらいだと思います(年収そのものです。経費とか控除していません)。
うろ覚えなので間違っていたらお詫びしますが、東京23区では国民健康保険料は住民税の額に基づき、住民税額は所得税額に基づいていたと思うので、国民健康保険料は(収入ではなく、それから諸々の控除を引いた)所得に依存していたと思います。
>だいじなのは「限界」での変化なのです。この状態で、負担率一定の消費税が増税されれば、低所得者の負担が増えるだけだと思います。
負担率一定の消費税が増税されれば低所得者の負担が増えるのは仰る通りですが、(低所得者だけでなく)高所得者の負担した消費税も福祉に充てれば、高齢者や病気や扶養家族のいる方等の福祉が必要な方の負担は(消費税が増税されなかった場合よりも)減ると思います。
>この程度の税制改革ができない政治が、本当に低所得者のための社会福祉政策を実行できるとは思いません。
仰る通り、所得税や配当等の課税を増税した方が消費税の増税よりも低所得者に対する負担は少ないと思います。しかし所得税や配当課税を消費税と同程度の規模で増税することは現状では困難だと思います。
しかも現状維持では状況は悪化する一方なので、悪化を少しでも食い止められるのであれば、最善や次善ではなく百善、千善の(この程度の税制改革ができない政治でも実現できる)案であっても実現すべきだと思います。
全くの素人なので教えて頂きたいのですが(hamachan先生のおっしゃる”りふれは”でない真当の)”リフレ派”の方は、(低所得者への影響の大きい)消費税だから増税に反対しているのでしょうか?所得税や配当や売却益への課税等の沢殿が推奨されるような(低所得者への影響の少ない)税金に対する増税であれば容認されるのでしょうか?
投稿: Alberich | 2014年11月10日 (月) 23時43分
Alberichさん
>低所得者への影響の大きい)消費税だから増税に反対しているのでしょうか?所得税や配当や売却益への課税等の沢殿が推奨されるような(低所得者への影響の少ない)税金に対する増税であれば容認されるのでしょうか?
そのとおりです(僕は、自分がリフレ派かどうかはどうでもいいです。金融緩和には賛成ですが)
逆に消費税は、投資に有利になります。消費にしか課税されないからです。いっぽう、所得税は、入口のところで課税しているので、すでに最初にとっているのです。さらに投資で得た利益にも課税されるので2重に課税することになります(これは本来欠点なのですが・・・)。
現在、年金、健康保険を中心として全員に「公平に」給付する社会保障政策が、現状としても、目標としても、中心になっている状態なので、本当に必要な人への社会保障政策は置き去りにされている、ということを認識してください(いい例がないので、生活保護を例にとりますが、生活保護の補足率が10%なので、本当はもっと必要なのです)。
全員に「公平に」分配する社会保障政策をしている限り、本当の弱者には届きません。
これが可能だと思われているのは、きっと、どのくらいの人が負担可能かを勘違いされているのではないかと思います。
人口1億2千万人で、就業者数6600万人です。実際に、所得をつくりだすこととができているのは、50%強しかいないのです。その所得に(所得税でも消費税でもいい)課税し、全員に均等に分配したら、本当に支援が必要な人には全然足りません。
そして、どうして消費税が安定的財源になるかと言えば、上の人口比からわかるように、本来取ってはいけない人から取っているからなのです。
本当に必要な人に重点的に配分するためには、社会政策を大きく変えなければいけません(「不公平」にするわけです)。
ところが、消費税は累進性が(所得税に比べて!)低いので、そこで大きな所得移転を行おうとすると、給付のところで非常に大きな差をつけなければいけなくなります(たぶん、不公平だ、という声が出ると思います)。
だから、取るところでも累進性にし、そこで所得移転を行う必要があるのです。
本当に社会福祉を考えているなら、まず所得税の累進税率をできるだけ上げて、その後で消費税を考えると思います。今の政策は、「とりやすさ」だけで消費税にしがみついているように見えます。
>国民健康保険
控除された所得に課税されるのはその通りです。上の例はそれにもとづいています(つまり、年収200万円台の人で、そのような計算にもとづくと、それぐらいということです)。課税所得の15%ぐらいじゃないでしょうか。言いたかったことは、その税率が所得にかかわらす一定で、上限がある(100万以下)ということです。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月11日 (火) 19時42分
国民負担率についても抜粋を。日本はよく「中負担、中福祉」といわれるわけですが、確かに、国民負担率はヨーロッパ諸国とアメリカの間に位置しているものの、かなりアメリカ寄りですね。租税負担率が、小数点ですが、アメリカよりも低いというのが目を引きます。日本から年金と医療保険を除くと、アメリカ並みの「小さな政府」になりますね。
OECD諸国の国民負担率(対国民所得比)
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/238.htm
> デンマーク 67.8% (社会保障負担率 2.7%, 租税負担率 65.1%)
> フランス 60.0% (社会保障負担率 24.8%, 租税負担率 35.2%)
> スウェーデン 58.9% (社会保障負担率 12.0%, 租税負担率 46.9%)
> ドイツ 50.5% (社会保障負担率 21.9%, 租税負担率 28.6%)
> イギリス 47.3% (社会保障負担率 10.8%, 租税負担率 36.4%)
> 日本 38.5% (社会保障負担率 16.4%, 租税負担率 22.1%)
> アメリカ 30.9% (社会保障負担率 8.4%, 租税負担率 22.6%)
投稿: IG | 2014年11月11日 (火) 21時30分
皆さん、今晩は。沢ひかるさん、御返事有難うございます。
社会保障給付の財源をめぐって論争になっていますが、私はここで以下の問題提起したいと思っています。
消費税の増税は社会保障給付の増額に追いつけるのか、消費税はそもそも安定財源と言えるのか。
我が国において、消費税の税率引上げは全体の税収増加につながるのか、消費税の税率引上げと経済成長は両立しうるのか。
財政赤字の拡大に伴う弊害とは何か、我が国において財政赤字の拡大に伴う弊害は起きているのか、国の財政と政府の財政の問題を混同していないか、そもそも我が国において財政問題は存在しているのか。
国家の財政を語る上では通貨を無視することはできないと思われるが、我が国における通貨と財政の問題はどうなっているのか…。
以上を考えると、私はやはり沢ひかるさんの立場に賛同致します。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年11月13日 (木) 00時19分
1. なぜ消費税でなければならないのか云々
プログ記事中にある、黒川滋さんのこのツイートにつきるかと。
> 消費税を上げるべきではないという人たちの主張が、証明不可能な枝葉末節に振り回されすぎていて、帳尻、必要性、時期とタイミングという大事な話に行かない。
今から消費税以外の財源を考えるとして、実際に財源が手当てできるまでには 20 年、30 年の時間がかかるでしょう。消費税を社会保障財源にする、という話もそうして長年議論され、ようやく実現にたどり着いたわけです。そもそも、消費税以外の財源を考える、などという話は、現状、政府・国会では全く出ていない話ですしね。
たとえるなら、目の前の仕事をどうやるかを話しているときに、「いやこの仕事というのはそもそも…」などと遠大な話を始める類の人々ですね。「そういうのは後で暇なときにしてくれ」となります。
2. 日本の財政状況について
財務省の以下の資料のとおりと思いますけどね。「財務省は信用できない」とおっしゃる方々は、アナーキストになるしかないと思います。政府が信用できないのなら、政府に頼ろうとすること自体が間違いでしょう。消費税増税についても同様ですが。
日本の財政関係資料(平成26年10月)
http://www.mof.go.jp/budget/index.html
> 歳入の半分近くを借金に依存し、将来世代に負担をつけ回しているという我が国予算の異常な構造は未だ解消されておらず、政府債務が累増し続ける深刻な状態が続いています。
> 既に国及び地方の長期債務残高の対GDP比が200%を超える中で、このように債務残高の累増に歯止めがきかない現状のままでは、日本の財政は持続不可能と言わざるを得ません
> 政府の財政運営に対する市場の信認が失われ、国債金利が急上昇する事態になれば、国債の主な保有主体である金融機関のバランスシートを毀損し、さらには、企業や家計の資金調達(借入)にも悪影響を及ぼすなど、国民生活に多大な悪影響を与える可能性があります。
「国債の主な保有主体である金融機関のバランスシートを毀損」というのは、つまり、日本国民の預貯金がなくなる、ということですね。公債で運用されてますので。
投稿: IG | 2014年11月14日 (金) 02時23分
皆さん、今晩は。
>財務省の以下の資料のとおりと思いますけどね。
財務省の資料、私も拝読しました。
しかし、財務省の資料には、国内の官民合わせた金融資産と負債のバランスシートと言うべき日本銀行の資金循環統計によれば我が国の金融純資産が約300兆円にのぼる(故に長期金利が10年以上に渡って1%代以下であること)、及び我が国は管理通貨を採用しており、兌換通貨(金本位制)、ドル・ペッグ制や単一通貨(例えばユーロ等)を採用している国とは通貨事情が異なる(もっとはっきり言えば、自国通貨を発行することで国債を完済できる)ことを無視しています。
今の我が国に必要なのは、国債発行残高の削減ではなく、貿易赤字~黒字への転換と経済成長です。少なくとも経済成長を阻害するだけの消費税増税には、やはり反対せざるを得ません。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年11月15日 (土) 00時09分
私は経済・財政を専門的に勉強したわけではない門前の小僧にすぎませんが、これまでの議論をつらつら読んで思ったことを書きます。
①なぜ消費税か
所得税は欠陥の多い税制です。まず所得捕捉率の問題があります。いわゆる「クロヨン」と呼ばれるもので、給与所得者は源泉徴収により9割が捕捉できますが、自営業者は4~6割しか捕捉できないとされています。同じ1000万円の所得が現実にあったとしても、税額の算定の根拠となる課税所得は給与所得者が900万円に対し、自営業者は400~600万円なのです。同じ所得なのに税額には大きな不公平が生じますし、累進課税を強化すればその不公平はさらに大きくなります。納税者番号制度の導入によって所得捕捉率を高めることができると考えられていますが、完全に同率にすることはできないと考えられています。また所得税には法人制度を濫用するなどして合法的な節税や租税回避の余地が大きく、高所得者ほどその恩恵を受けやすいのです。(法人税が二重課税とされながら存続しているのは、法人制度を利用した租税逃れを抑制しようとする目的もあります。しかし抑制にも限界がありますし、日本は所得標準を中心としているため、抑制の効果がかなり低くなっています。)税理士やタックスロイヤーの仕事の一定部分がこのような節税・租税回避スキームの提供であり(正当な業務活動ですが)、租税当局も手をこまねいているわけではありませんが、イタチゴッコです。結局所得税に財源を求めると、むしろ不公平を強め、高所得者を利する結果になりかねません。また累進性を強化しても増える税収は数百億程度と考えられており、数兆、数十兆規模の財源を必要とする社会保障、社会福祉の充実には焼け石に水です。所得税の課税強化や累進性の強化自体は重要課題ですが、財源調達という問題とは次元を異にしています。
固定資産税も多くの減免措置があり、まともに課税できていません。減免措置を見直せば、数兆円規模の税収となりますが、減免措置の対象は小規模住宅や自営業者の事業用不動産、農地などで多くの場合高所得者ではありません。現在の状況で課税強化すれば不動産を手放さざるをえなくなり、その生活基盤を破壊することになりかねません。所有者本人と配偶者が死去するまで徴収を猶予して、相続税と同時に徴収することなどが考えられますが、いずれにしても今すぐどうにかできる財源ではないのです。
相続税も固定資産税と同じ問題を抱えており、多くの人が払っていません。課税強化すれば相続人の生活基盤を破壊することになりかねません。社会保障や社会福祉を先に充実させて、相続不動産がなくても生活に困らなくなる状況を作り出す必要があるのです。
日本では不動産などの資産が小規模な形で分散しているため、資産課税の強化も容易ではないのです。この点は一部の富裕層に資産が集中している欧米とは事情がかなり異なります。
法人税も多くの租税特別措置があり、所得標準を中心とする現在の制度のもとでは多くの企業が払っていない状況です。租税特別措置を整理し、外形標準中心に転換して課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げていけば、全体の法人税収は増加することが期待できます(経済成長による自然増収とは異なる話です)。しかし課税ベースの拡大は生産性の低い中小零細企業を淘汰する結果を招きますので、急速に進めることはできません。
結局(1)直ちに数兆円規模の財源を調達できる(2)課税の公平性が高く、節税や租税回避の余地が少ない(3)特定の層の生活基盤を破壊したり甚大な影響をもたらさない、という観点から消費税をまず引き上げることに専門家の間では意見が一致していると考えられます(低所得者への配慮や益税対策は必要です)。なお理論経済学者はこのような問題の専門家ではかならずしもありません。税制や財政の制度的側面や具体的事情に疎い場合が多いのです(鈴木亘氏は社会保障について多く発言していますが、制度への理解が浅く、かなりトンデモになっています)。経済学者といえども守備範囲は限られているので、専攻を確認する必要があります。
②選別主義か普遍主義か
社会政策において、給付に当たりミーンズテストを課すなどして一部の弱者のみを対象とする選別主義と、すべての人々を対象にする普遍主義という考え方の対立があります。選別主義であれば消費増税のような大規模な財源調達は不要ではないかという意見が出るでしょうが、実は現在選別主義から普遍主義へという大きな流れがあるのです。これは広範な中間層の受益を高めなければ、そもそも一部の弱者への給付すら政治的合意を得られないという現実があるからです。たくさん税金をとって広範囲にばらまかなければ、一部の弱者にも届かないのです。以下の井出氏の著作が参考になるでしょう。ただし、井出氏が解決策として提案する地方分権には私は懐疑的です。
井手英策『財政赤字の淵源』
以下の講演録は上記著書の要約的内容となっています。財務省(大蔵省)の予算統制や公共事業に対する考え方など、今般の消費増税を考える上で参考になる話題が出てきますので、一読をお勧めします。
大蔵省統制の財政社会学 - 東京大学社会科学研究所
web.iss.u-tokyo.ac.jp/gov/research/dp_ide.pdf
なお社会保障、社会福祉の増大は経済成長に対する桎梏ではありません。むしろその必要条件です。日本が長期停滞に陥った真因は高度成長が終焉し、慢性的な需要不足に陥ったためと考えます(主流経済学は認めないでしょうが)。これに対応するには(一時的な財政出動ではなく)政府の財政規模を恒常的に拡大させる必要があり、無駄を削減するといった構造改革はむしろ逆効果なのです。そもそも日本の財政規模は先進国中際立って小さく、「小さな政府」であることが成長への阻害要因となっています。増税によって財政規模を拡大し、本格的な福祉国家を建設して医療、介護、保育、教育などの対人社会サービスを供給し、失業者や生産性の低い仕事についている労働者によりよい雇用機会を提供し、需要不足を解消していくことこそが経済成長そのものなのです。ここでは富とは何かということが重要です。アダム・スミスが偉大であったのは、貿易による貴金属(外貨)の流入を富とする重商主義を批判し、国民の消費水準(生活水準)の豊かさこそ富の実体であることを喝破したことにあります。福祉国家の建設による対人社会サービスの供給増は、国民の生活水準を高めますが、それがイコール富の成長、経済成長なのです。消費増税と経済成長が両立するかという問いは無意味です。消費増税を含めた増税による財政規模の拡大と社会保障、社会福祉の充実こそが経済成長そのものだからです。
このような議論を理解するには、盛山和夫『経済成長は不可能なのか』が丁寧な議論をしていて参考になるでしょう。ただ、盛山氏が日本の長期停滞の原因を円高に求める点など、この著作の内容にすべて賛成しているわけではありません。
ちなみに貿易黒字はアダム・スミス的観点から言えば富の流出であり、それ自体は国民の厚生を高めるものではありません(黒字の分国民が消費できる財・サービスが海外の流出します)。発展途上国であれば先進国から高価な機械を輸入するなど、その経済規模からすると多くの外貨を必要とするでしょうが、日本はそのような段階をすぎました。かつてのブレトン・ウッズ体制においては貿易赤字の増大によるドルの流出が通貨発行量を減少させるため(いわゆる国債収支の天井)、貿易赤字は問題となりました。ブレトン・ウッズ体制が崩壊して久しい現在、このようなことは問題となりません。新聞などで貿易赤字を騒ぎ立てる記事が載ることがありますが、ブレトン・ウッズ体制時代の記憶に縛られているゆえか、貿易産業などの一部利害を反映しているかのどちらかでしょうから、相手にする必要はありません。貿易収支の問題はマクロ経済の問題とは別次元の話と考えるべきです(そもそも国際資本移動が活発となった現在では、資本収支の方が重要です)。
投稿: 通りすがり | 2014年11月15日 (土) 21時17分
上記コメントの続きを書きます。
①の補足
消費税の財源としての安定性が言われますが、あまり本質的な事柄ではないように思います。おそらく財務省のマスコミ向けの説明が流布したのでしょうが、この手の財務省の説明はアドホックなものが多く、真剣にとらえても仕方ない場合があります。もっとも、マスコミ側のリテラシーの低さという問題もあるでしょう。役所の言うことをそのまま垂れ流すだけでは、ジャーナリズムの責任を果たしているとは言えません。
②の補足
現役世代が財政規模の拡大による福祉国家の充実によって受ける恩恵の最大のものはより良い雇用機会の増大です。ただ、現役世代にも広範な給付が欲しいというのであれ、家賃補助、住宅給付を求めるべきしょう。そもそも日本の住宅政策は中間層の持ち家取得への支援に集中しており、これこそ逆進的なものであり、その住宅政策が景気対策に使われてきた経緯もあって、不動産市場を歪めるものであったと思います。欧米では家賃補助が住宅政策の中心です。以下の著作が参考になるでしょう。
平山洋介『住宅政策のどこが問題か』
著者のインタビュー記事
http://bigissue-online.jp/2013/06/05/hirayama-san-1/
生活保護制度の適正運営は重要ですが、同時に仕事を作り出す必要があります。そうでなければ、福祉給付に依存し、労働意欲を持たないアンダークラスが英米におけるように固定化しかねません。一度固定化すれば対応は困難であり、社会的コストは莫大です。以下のHPが参考になります。
イギリスにおける「アンダークラス」の形成
ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/52204.pdf
イギリスのアンダークラスとは何か、その形成過程について
http://kousyou.cc/archives/8844
サッチャー政権が日本のように中間層の持ち家取得支援に住宅政策を転換したというのは興味深いところです。
投稿: 通りすがり | 2014年11月15日 (土) 22時02分
上記コメントのさらなる続きを書きます。
③リフレ政策について
リフレ政策(金融緩和+財政出動)の効果自体はあくまで短期的なものと考えます。リフレ自体に需要不足を根本的に解消する力はなく、過剰流動性は資産市場に流入し、いずれ資産バブルを引き起こして崩壊するでしょう(小野理論を前提とする)。だからといってリフレ政策が無意味とは思いません。一時的であれ景気を回復しなければ、増税の実行は政治的に不可能でしょう。経済を一息つかせてから、おもむろに増税を実行して財政を拡大させ、社会保障、社会福祉を充実して需要不足を解消し、日本経済を成長軌道にのせる必要があるのです。リフレはそのための環境整備の役割を担っています。金融緩和によってインフレ期待が変化したかは分かりませんが、国債発行分と消費増税で物価上昇した分をファイナンスできていれば十分意義があったと評価してよいでしょう(この点、小野善康氏がリフレに短期的効果しかないため批判しているのだとしたら、いささか潔癖にすぎるかもしれません)。ただ、この短期間で5%上げるのは経済への負荷が大きいでしょうから、一時延期するというのは一つの合理的な判断だとは思います。その場合は足りない財源を国債発行で調達すべきでしょう。
なお景気回復があったとしても全ての産業、企業の状況が好転するわけではありません。経済成長は産業構造の転換を伴うものであり、淘汰される産業や企業もでてくることでしょう。高度成長期においても、かつて日本の近代化を支えた繊維産業が衰退し、鉄鋼業に主役の座を奪われたことがありました。その鉄鋼業もやがて機械産業にとって代わられました。経済には栄枯盛衰がつきものなのです。そして守るべきは個々人の生活であり、企業や産業ではありません(国益、公益の観点から特定の産業を保護することはありえます)。今般の景気回復でも、増加した手持ち資金を原資としてリストラを敢行する企業がでてくるでしょう。いわゆる「働かないおじさん」が一掃されるやもしれません。しかし、そもそも終身雇用を前提とする日本型雇用システムが抱え込める人員にはかぎりがあり、多くの労働者はその外で働かざるをえないのです。そのため、企業に生活保障を求めることは合理性を欠き、福祉国家の充実によって対処するほかありません。
④財政再建について
長期金利が傾向的に上がっていないことからしても、現在の財政赤字が経済に与えている影響はほとんどないでしょう。ただ将来は分かりません。国債価格が暴落し、ハイパーインフレーションが起こって国債が紙くずになって事態が収束するという経路をたどる可能性はゼロではありません。その社会的コストは甚大なものです。ただこの点について専門家の歯切れが悪いのは、結局はっきりしたことが分からないからでしょう。どんな領域でも長期予測というのは難しいものです。長期の天気予報も精度は低いものです。ましてや人間世界を対象とした予測には限界があります。ただ、分からないということも一つのリスク、ケインズの用語系でいえば「不確実性」です。このような不確実性に対処するために財政再建を進めるのは十分合理的なことなのです。ただ、財政再建は長期的なスパンで考えればよいことです。私個人としては増税分を使って福祉国家を充実させることを優先させ、経済が成長軌道に乗ってから財政再建を進めてもよかったのではないかと思います。ただ、財政再建を重視する政治勢力が存在するなかで、増税のかなりの部分を財政再建に充てることになったのは、個人的には不満が残りますが、民主的政治過程においてはやむを得なかったことと思います。あくまで政策はパワーゲームの中で決まるものであり、唯一正しい解が存在するというたぐいのものではないからです。現実に可能な範囲で政策というものは決定されざるをえません。それでも一歩前進したといえるのであれば、評価すべきなのです。
⑤財務省を信用できるか
あまり意味のない問いです。財源を負担するのは国民であり、その使い道を決めるのは政治の責任です。財務省は極端なことを言えば会計係にすぎません。官僚はあくまで与えられた権限の中で、政治の意向に従って仕事をするというのが民主制法治国家の原理です。財務省(というか主計局)の任務は財政の維持管理であり、政治の意向を無視してまで福祉を充実させる権限もなければ義務もありません。やろうとしてもできません。確かに政治の意向に反しない範囲で一定のフリーハンドはあるでしょうし、事実上の影響力もあるでしょう。だからと言ってその行使を期待するのは筋違いです。ある特定の利害のために裁量権を行使することは行政の中立性の観点からいえば問題のあることなのです。政治に責任がある以上、文句は政治に言うべきです。
⑥政治を信用できるか
政治は信じたり信じなかったりする対象ではなく、どうすれば動かせるか頭を悩ませるべき対象です。自らの利益を実現するために政治に働きかけるべきしょう。ただ次のような程度のことは言えます。需要不足を解消するために年間数十兆円もの財源を調達したとして、その使い道には何があるのか。もはや公共事業での使い道は限られてきています。軍事費を増大するとしても、周辺の国際情勢を鑑みれば年間数十兆円も費やして軍備を増強することは緊張を高めるだけであり、現実的ではありません。結局社会保障、社会福祉ぐらいしか使い道がないというのが合理的な答えなのです。しかし政治が常に合理的に動くとは限りません。民主主義においては、究極的には日本国民を信じれるかということになるでしょう。
⑦日本人を信用できるか
貧しい人々に対する蔑視はどこの国にもあるものです。日本人において特に強いとは思えません。むしろ歴史的に見れば欧米の方が根が深いものがあります。西欧ではかつて失業者や浮浪者が罰せられたり、強制労働させられたり、魔女狩りの対象となった歴史があります。貧困対策も労働力を確保するという観点から行われていました。
朴光駿『社会福祉の思想と歴史―魔女裁判から福祉国家の選択まで』
以下のHPに上記著書の一部まとめがあります。
http://kousyou.cc/archives/8834
http://kousyou.cc/archives/9027
西欧はこのように労働者蔑視の強い状況から、長い時間をかけて福祉国家を建設していきました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%91%E8%B2%A7%E6%B3%95
日本人が特段西欧人に優れているとは思いませんが、逆に劣っているともいえません。西欧人にできて日本人にできない理由はないでしょう。日本にはすでに年金のほかに医療保険、介護保険、雇用保険といった制度面は整備されているのです。あとは財源だけなのです。
リフレによる景気回復か、財政再建かという対立に意味はありません。リフレは短期的政策であり、財政再建は長期的問題です。現在日本は、リフレによって短期的に景気を回復させ、増税をすすめることによって中期的には財政基盤を拡大して本格的な福祉国家を実現して経済成長を成し遂げ、長期的に財政再建を果たしていくという長い長い道のりのスタート地点に立っていることを認識しなければなりません。後退は破滅を意味します。少しづつでも前に向かって進まなければならないのです。
投稿: 通りすがり | 2014年11月16日 (日) 07時05分
消費税に絶対反対とは書いてません。所得税を先に増税するべき(高額所得者に対して)、所得税も増税し、その分消費税の増税を抑えるべき、と言ってるだけ。
クロヨン問題なんて百も承知で語っているのです。ついでに、所得税が高額所得者のインセンティブを殺ぐという話も頭に入れて書いています。
所得税が取りにくいからといっても、それは増税しない理由にはならない。それならそういう制度改革を進めるべき。
またマイナンバー制が導入されるので少しは改善されるはずです。
所得税の増税はそれほど難しくない(今年4月に税率45%の課税所得4000万以上の区分がつくられている)。政治家や官僚にその気がないだけ。
消費税は社会福祉に向いていない。
低所得、無所得の人からも取っている。そういう人には結局返さなければいけない。これを行う方法がないわけではない。所得税の非課税枠を増やせばいい(ただし、これではもともと所得税を取られていない人には届かない)。なぜこれをやらない? 全員に負担させなければいけない、と思っているからじゃないですか?(それ以外の理由が思い浮かばない。低所得者への蔑視が強い、というのは「感情」のことを言っているのではありません。制度のことです)
今年、生活保護支給額は消費増税に合わせて2.9%増加した。年金の支給も増やさなければいけない。消費税率が20%になったらどうなるか? 消費税は給付にも課税してしまうため、その分多く給付しなければいけなくなる(多く給付しても社会保障が充実するわけじゃない)。
消費税は総需要に対してマイナスの影響を与える。だから、社会保障の対象となる人を増やしてしまう。
消費税に大きくシフトしてるのは「取りやすい」という理由だけ。消費税自体が社会福祉に向いているわけじゃない(そんなことは明らか)。
消費税は富裕層と投資に有利な税制だということもお忘れなく。(消費税というのはこういうもの。それを短絡的に社会福祉と結びつけている人が多すぎる。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月16日 (日) 19時41分
沢さん
>消費税に絶対反対とは書いてません
それでしたら沢さんと私は基本的立場に違いがないことになります。ただ私の申し上げた通り、財源調達という観点からは消費増税と所得税の課税強化は次元の異なる問題なので、どちらが先かということは問題になりません。なおマイナンバー制に抵抗があるとしたら、それは政治家や官僚というよりも自営業者層の政治的意思が働いていると考えるべきです。所得捕捉率が高まって困るのはこのような人達だからです。そして政治がパワーゲームである以上、自営業者層が自らの政治力を使って利益を追求するのはまことに正当なことというべきです。それが民主政治というものです。沢さんも政治家や官僚の悪口をいう暇があったら、マイナンバー制を導入するために政治的力を結集するにはどうすればよいか知恵を絞るべきです。
>(高額所得者に対して)、所得税も増税し、その分消費税の増税を抑えるべき、と言ってるだけ。
沢さんの立場からはむしろ所得税の増税分は低所得者への給付(家賃補助など)に振り向けることを主張すべきでしょう。消費税の増税を抑えたら、その恩恵は高所得者にも及ぶのですから。
>消費税は社会福祉に向いていない
消費税が社会福祉に適合的だという理由から消費増税を考えている専門家はあまりいないでしょう。まさに沢さんのおっしゃるように「取りやすい」から、財源調達の観点から消去法的に選ばれたのでしょう。この点は私のコメントの①で申し上げたとおりです。問題は財政規模を拡大して社会福祉や社会保障を充実させることの合理性です。
>消費税は総需要に対してマイナスの影響を与える。
かどうかは自明ではありません。消費増税で得た財源によって医療や介護、保育などの対人社会サービスの供給が増えれば、当然そこで働く労働需要が増えることになります。労働市場がタイトになるわけですから、賃金上昇効果があります。失業者が職を得れば所得が増えて当然消費も増えるでしょうし、これまで低賃金の単純労働についていた人がより生産性の高い対人社会サービスの仕事につけば、消費も増えるでしょう。そのためにも介護報酬の引き上げなど対人社会サービスの賃上げが重要ですし、増税による財源確保はその前提条件となります(主流派経済学は需要不足を認めないため、差し引きゼロとするか、あるいは資源分配を歪めるため経済が縮小すると考えるのでしょう)。ただ、今回の消費増税ではかなりの部分が財政再建に回され、対人社会サービスの充実に向かう部分が少ないため、上記のような需要増幅効果が限定的です。といっても、財政再建に回された分も消えてなくなるわけではなく、結局民間に戻るわけですから、消費増税分そのまま消費が減るということにはなりません。沢さんの立場からはむしろこのような増税分の使い道を批判すべきです。いずれにしても、消費増税が消費に与える純粋な効果だけを議論するのは無意味です。
>所得税の非課税枠を増やせばいい
課税最低限の適切な水準がどれくらいかは自明ではありません。所得の分布や社会福祉、社会保障の給付の程度によって変わってくることです。ただ沢さんがおっしゃる「蔑視」というのは理解できません。幅広く負担を求めるというのは、むしろ多くの人々を社会、国家を支える対等なメンバーとして扱っているということです。能力に応じて社会、国家を支えている対等なメンバーなのだからこそ、必要に応じて給付せよということが主張できるのではないですか。一定数のマスの人々が負担をしないという状態では、そのような人々は二級市民として扱われ、給付から排除される危険があります。むしろできるだけ多くの人がわずかでも所得税を負担する体裁をとることが、社会統合の観点からは望ましいと思います。
一つ伺いたいのは、沢さんはどのような国家が望ましいとお考えなのかということです。外交、安保、警察、司法などの最低限の業務しか行わない夜警国家なのか、政府が様々な公的サービスを給付する福祉国家なのか。これは価値観の問題であって、唯一正しい答えがあるというたぐいのものではありません。ただ一つ言っておかなくてはならないのは、日本が長期停滞に陥っている原因が慢性的な需要不足にあるということです(主流派経済学は認めないでしょうが)。先のコメントでも申しあげたように、先進国の中でも小さな政府である日本は財政規模を恒常的に拡大させていかなくては、そもそも経済が悪くなるばかりだということです。経済が悪くなって一番被害を受けるのは低所得者だということは90年代以来の長期不況でいやというほどわかったことと思います。これを避けるには財源調達のための増税が不可避であり、所得税などは現在の政治状況では全く役者不足なのです(だからといって所得税の課税強化が不要だといっているわけではありません)。
消費増税によって生活保護支給額や年金額が増えるのはインフレ調整と同じです。問題は実物経済がどれだけ拡大しているかです。増税による財政規模拡大によって、対人社会サービスなど社会保障、社会福祉が充実すればそれだけ実物経済は成長しているわけですから、何の問題もありません。国民の経済厚生は高まることになるからです。
>社会保障の対象となる人を増やしてしまう
まさにそれが目指すべき方向なのです。私のコメント②で申し上げたように普遍主義への転換です。そもそも日本は社会保障や社会福祉の対象になっている人が少ないのが問題です。日本型雇用システムが縮小を余議なくされる情勢下では、企業に生活保障を求めることができません。国家が代わりにそれを行うしかないのです。また高齢化の進展は当然社会保障や社会福祉の受給者を増やします。そして社会保障や社会福祉の充実こそ経済成長そのものであり、マクロ経済上効率的で望ましいということは先のコメントで申し上げたとおりです。
>消費税は富裕層と投資に有利な税制
消費税が所得税に比べて富裕層に有利かは自明ではありません。所得税は合法的な節税や租税回避の余地が大きいのです。最近ではタックスヘイブンを利用した租税回避が問題となっています。一方消費税はそのようなモラルハザードの余地が少ない税です。また富裕層の方が消費額も当然大きいでしょうから、消費税の負担も大きくなります。
消費税が投資に有利だとしたら素晴らしいことです。投資が促進されれば経済成長にプラスですし、労働需要も生まれて賃金が上昇します。しかし先ほど沢さんがおっしゃった「消費税は総需要に対してマイナスの影響を与える」という話とは矛盾するようにも思えます。新古典派理論では所得税と消費税は等価だったと思いますが、沢さんの理論的根拠を教えていただけますか?興味深いところです。
どうも沢さんの言い分を聞くと、自分がずっと低所得者であるということを前提にして、いかに不利にならないようにするかばかり考えているようです。しかしそれではじり貧です。一方で、財政規模を拡大して需要不足を解消し、経済成長を実現すれば、現在低所得の人もよりよい雇用機会を得て豊かになることができるのです。そのためには消費増税をはじめ、資産課税の強化、法人税の課税ベースの拡大などをすすめていかなくてはなりません。これができなかったために日本は長期不況に陥ったのです。
もしかしたら沢さんは所得税で富裕層をこらしめたいのかもしれません。しかし、所得税にはそんな力はありません。先ほど申し上げたとおり、富裕層ほど所得税から逃れやすいのです。むしろ沢さんの言っていることは富裕層を利しているようにすら思われます。
富裕層でも二種類に分けるべきでしょう。自分の才覚と努力と運でその地位をつかんだ人と、相続でその地位を得た人がいます。前者については、社会に対する貢献の報酬としてそのような地位を得るのは当然のことと言えます。ブラック企業の経営者はどうなのかとう意見が出るでしょうが、合法的であるかぎり、経済への貢献として認められるべきというのが市場経済の原則だと思います。もちろん違法であれば裁判で損害賠償などが請求されるでしょうし、社会的制裁もあるでしょう。なお、所得税は運の部分を均等化するためのものと解釈できるかもしれませんが、そのような議論は公共哲学に委ねます。
一方、後者については貢献原理は適用できないでしょう。相続税をきちんと取るべきです。沢さんの立場からはむしろ相続税の課税強化をとなえるべきでしょう。
投稿: 通りすがり | 2014年11月17日 (月) 03時58分
>自分が低所得者だということを前提として
あほらし。どうしてネットの議論ってこんなに低級なんだろうか。すぐ個人の話にいく。
そういうふうに思えるのは、あなたが経済学の基本中の基本もわかってないからでしょうね。
それに個人的には消費税のほうが楽なんですけど。あまり消費しないので。
>社会保障の対象となる人を増やしてしまう
まさにそれが目指すべき方向なのです。
言ってる意味がわかってないようですね。「対象を増やす」という意味は、社会福祉の「対象となるべき人」が増えるというだけ。
消費税率を50%に上げれば、社会保障を行わなければいけない人が「かえって」増えます(自然増)。その「自然増」を上回る社会保障をしなければいけなくなります。社会保障政策自体を変えなければいけなくなる。それをやらなければ、社会的弱者の負担が増えるだけ。
これは「非効率的」です。取る量が増えて、与える量が増える。でもそれだけでは、社会保障は充実していない。
>先ほど申し上げたとおり、富裕層ほど所得税から逃れやすいのです。
実証的なデータを出せますか? データが出せないなら理論でもかまいません。逃れやすいから取らない、というほうがよっぽど富裕層の味方をしているように見えますが。
相続税に反対してませんが。むしろ、所得税増税よりも相続税増税のほうがいいと思いますよ(なぜかわかりますか?)。でもだからと言って、消費税だけ上げて、所得税は上げない、ということにはならないでしょう。
「こらしめたい」からではありません。社会にとって最適だからです(よく言われる、消費税が景気に対してマイナスの影響を与えるという需要面だけではありません。供給面でもそうです)。
つまり僕が言っているのは、特殊な意見なんかじゃないのです。
http://synodos.jp/economy/11735
若田部昌澄氏
「消費税そのものが悪いか、といわれると、ものの使いようによっては、悪くないと思います。ただ、何を目的にするのかですよね。社会保障の目的税として消費税を使うのは、あまり適していないですね。
消費税は薄く広くとる性質があります。負担は広範に薄くなっているのに、社会保障は限られた人たちに行くわけです。負担と給付のバランスが崩れています。
実際に、他国で消費税だけを社会保障の目的税にしているところはありません。社会保険料のような形でやっていて、足りない分を他の税金で補充するのはまれです。やろうとしていることが出来なくなったから、税金で補おうとしている。そこにねじれがあります。本来ならば税制の改正や社会保障改革をやってからやるべきですよね。
日本の政策全体に言えるんですが、海外で成功していることはあまりやらないで、海外でやっていないことをあえてやる。変な独創性があるんですよね。たいがいそれは裏目に出ています。」
1970年代、1980年代の社会保障政策をそのままやろうとして、財源が足りなくなったと言って、消費税だけにたよろうとしている。
「本来ならば税制の改正や社会保障改革をやってからやるべきですよね。」
投稿: 沢ひかる | 2014年11月17日 (月) 23時23分
>どうも沢さんの言い分を聞くと、自分がずっと低所得者であるということを前提にして、いかに不利にならないようにするかばかり考えているようです。
「低所得者」の立場から見ればどうなるかという話をしているのではないでしょうか。沢さん個人の状態がどうのこうのということは関係ないのでは。
それを言い出したら「通りすがり」さんは中流安定層?(赤城氏から言えば立派な富裕層)の立場で説明しているように読めます。
>、経済成長を実現すれば、現在低所得の人もよりよい雇用機会を得て豊かになることができるのです。
すでに富裕な人は経済成長によりさらに富裕になっているので格差はより大きくなるのでは?
投稿: Executor | 2014年11月17日 (月) 23時36分
沢ひかる殿
>所得税を先に増税するべき(高額所得者に対して)、所得税も増税し、その分消費税の増税を抑えるべき、と言ってるだけ。
(高額所得者に対する)所得税の増税では必要な税収が得られないのではないでしょうか?
沢殿のおっしゃるように、 人口1億2千万人で就業者数6600万人です。その中には 年収200万のフリーター(派遣等の非正規労働者) も含まれていると思うので、高額所得者はごく少数でしかも減少傾向です(国税庁によると年収1000万~1500万の給与所得者は2008年の166万人から2012年には130万人に減少したそうです)
所得税の増税も行われないわけではなく、2015年 1月からは4000万円を超える所得に対する税率が40%から45%に上がるそうです。しかし財務省によると、この増税の対象は約5万人で税収増は年約600億円だそうです。増税対象を広げ(2000万円を超える所得等)税率をもっと上げれば(40%→60%等)、税収はもっと増えますが、税収増が20倍になるように広げても1.2兆円で消費税0.5%分です。
つまり高額所得者に対してかなり大規模に所得税を増税しても10%の消費税を9.5%に抑える程度だと思います。
>所得税の非課税枠を増やせばいい(ただし、これではもともと所得税を取られていない人には届かない)。なぜこれをやらない?
所得税の非課税枠拡大は高額所得者に有利だからだと思います。
例えば所得税の非課税枠を10万円拡大すると税率50%の高額所得者は5万円の減税になりますが、税率5%の低額所得者は5千円の減税です。
このため民主党政権では”控除から給付へ”という方針で、例えば子供に対する(高額所得者に有利な)控除を廃止して、その分(全員一律の)子供手当の増額に充てました。
以前に申しましたように、負担が定率で給付が定額であれば低額所得者に有利ですから、そのような範囲を広げるために所得に対する控除はなるべく廃止し、その分を給付に充てるべきだと思います。
>今年、生活保護支給額は消費増税に合わせて2.9%増加した。年金の支給も増やさなければいけない。消費税率が20%になったらどうなるか? 消費税は給付にも課税してしまうため、その分多く給付しなければいけなくなる
生活保護や年金等の給付を消費増税に合わせて増加させたとしても、それはそれらの給付の受給者(主に低額所得者)に対して消費増税を免除するという事であり、それらの給付を受けていない人(主に高額所得者)からは増税分を徴収できるので、その分を福祉予算に充てれば、福祉サービスを向上する(減少に歯止めをかける)事ができると思います。
投稿: Alberich | 2014年11月18日 (火) 00時06分
>増税対象を広げ(2000万円を超える所得等)税率をもっと上げれば(40%→60%等)、税収はもっと増えますが、税収増が20倍になるように広げても1.2兆円で消費税0.5%分です。
どうして2000万円で区切るのです。消費税なら全員が増税されます。どうして、所得税の場合は、そんな少しのひとだけしか増税対象にならないのでしょうか。私は中央値(400万超)の収入の人から徐々に税率を上げていくべきだと考えています。
それが連合モードですか? (高額の所得を得ている人もいるでしょうから。その人は増税対象にしてはいけないんでしょうね)
格差が広がっているのなら、より多く所得移転しなければいけません。しかし、民主党や連合の社会福祉案では(おそらく組合員にかなり高所得者のかたがいるからでしょうが)、かなり所得の高い人まで含めるものになっています(これは子供手当にも現れていますし、年金改革案にも現れています)。そうやって多くの人に一律に給付するやりかたでは、本当に必要な人に手厚く給付するのが難しくなってしまうのです。
また、消費税という一定税率の税金(社会保険という一定税率の保険、プラス全員一定額負担と給付の年金)という方法で徴収すると、低所得者の人の負担が増えます。だから、一層所得移転を大きくする必要が出てきます。しかし、やはり給付は幅広い人に薄められわけですから、低所得者や所得がない人には、十分な給付が届かないのです。子供手当では、十分でないことはわかっているでしょう?
上の原田氏のレポートに的確に指摘されています。一定率(あるいは一定額)負担の財源で、社会福祉をやろうとすることに無理があるのです。
最初の消費税導入はバブルの真っただ中で成長率も高かった時代です。そこ頃は、消費税でもよかったのでしょう。しかし、時代が変わって、そういうシステムが通用しなくなっているのに、あいかわらず同じ方法でやろうとしているわけです。
税制改革と社会保障改革の両方が必要です。消費税率だけ上げていけば社会福祉が可能になるなんてことはありません。
>生活保護や年金等の給付を消費増税に合わせて増加させたとしても、それはそれらの給付の受給者(主に低額所得者)に対して消費増税を免除するという事であり、それらの給付を受けていない人(主に高額所得者)からは増税分を徴収できるので、その分を福祉予算に充てれば、福祉サービスを向上する(減少に歯止めをかける)事ができると思います。
給付で消費税分を相殺しても、社会福祉のレベルは同じままです(というか、取った分を返しているだけだからゼロ)。さらに低所得者の福祉を充実させるためには(これが本当に必要)、「
それらの給付を受けていない人(主に高額所得者)からは増税分」の大部分を再び低所得者に給付する必要があります。しかし、社会保障プログラムが中高額所得者まで含むものになっているなら(現在の社会福祉はそう)、それはできないわけです。
それと、もう一点重要なのは、現在は「長期停滞 secular stagnation」と呼ばれる低成長の時代です。消費税のように需要を直撃する税金の悪影響はより大きくなります(ものすごく長期化するわけではありませんが)。当然税収は減ります。この点でも、消費税だけにたよる税制は変更される必要があります(昔の高成長の時代とは違うのです)。
今回の増税騒ぎで、消費税増税のハードルが上がったことは認識しておいたほうがいいでしょう。それを受けて消費税に反対するひとを悪者と考えるのではなく、税制と社会保障の方法を変えなければいけない、と発想転換することが必要だと思います。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月18日 (火) 20時09分
沢さん
低所得者云々は沢さんの属性を問題にしたのではなく、沢さんの論法について言っていることです。ただ私の表現が悪かったようです。謝ります。
私が言いたいのは、消費増税によって対人社会サービスが供給されれば、当然労働市場では需要増となって賃金上昇圧力となり、低所得者も恩恵を受けるということです。この部分を無視して消費増税の消費への悪影響ばかり言い立てるのは不毛なことです。マクロ経済への影響をトータルで考えねばなりません。若田部氏のいう「使い道」が重要で、財政再建に充てるだけでは消費増税の悪影響の方が強くなります。ただ、これは以下の論点に関わってきます。
>経済学の基本中の基本もわかってない
ここでいう「経済学」の中身が問題です。経済学は、物理学のようにほとんどの研究者に共有される理論が存在する状況ではありません。すべての理論経済学の教科書は、特定の経済学者の経済に対する解釈の一つにすぎません。唯一絶対に正しい理論がない状況なのです。
マルクス経済学は置いておくとしても、主要なものとして、古典的なケインズ経済学、新古典派、ニューケインジアンなどがあり(他に北欧学派やオーストリア学派、レギュラシオンなどもありますが)、その内容には多くの相違があります(さすがにアダム・スミスの富の概念を否定する立場は現在ではほとんどないでしょうが)。どのような理論的バックボーンで議論しているのか明らかにしなければ、相手は経済学を理解していないという罵り合いになるだけで建設的な議論は望めません。
私は小野善康氏の理論をベースにすることにしましょう。氏の理論は新古典派やニューケインジアンをベースに流動性選好のアイデアを取り入れて、今のところ不況を説明することに最も成功している理論だと私は思います。(ただ、氏の政策論は政策の政治的側面に無頓着すぎるきらいがあり、そこが多くの人々の理解を妨げているように感じます。)小野理論では消費税と所得税のマクロ経済に対する効果自体は新古典派同様変わらないということになると思います。(この点小野氏は最初消費税の方が悪影響があるという議論を展開していましたが、モデルの組み方の間違いに気付き、改説したようです。http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__100914.htmlの後ろの方に話があります。)
沢さんの理論的バックボーンは何ですか?また、沢さんが供給面で消費税が悪影響を与えるというのと、消費税が投資に有利というのとはやはり矛盾しているように思います。この点の解説もお願いします。
>社会福祉の「対象となるべき人」が増えるというだけ
かどうかは自明ではありません。小野理論では消費増税を介護、医療、保育といった対人社会サービスなどの社会福祉の増大に充てることで、雇用が増大する点を重視します。失業者が減ったり、低所得者の賃金が増えることが期待できるわけですから、沢さんの考える社会福祉の「対象となるべき人」は減る可能性が十分にあります。(私の考える「対象となる人」は少子高齢化を前提とすれば増えざるをえません。)また現金給付でも、消費性向の低い高所得者から消費性向の高い低所得者に所得移転が起これば、マクロ経済全体では消費は増えますので、総需要を増やします。取った分だけ使えば供給が増えて、それに応じて雇用も増え、賃金が上がれば消費も増えて、マクロ経済全体では成長するわけですから、「効率的」です。新古典派は需要不足の存在を認めませんので、トータルで何も変わらない、あるいは資源配分を歪めて経済を悪化させるという答えになると思います。
沢さんの理論的立場ではどのようになるのでしょうか。お教えください。また「社会保障政策自体を変えなければいけなくなる」としたら、沢さんはどのような方向性をお考えなのでしょうか。大雑把でかまいませんから、イメージをお教えください。
富裕層が法人制度やタックスヘイブンを利用して所得税を逃れることができるというのは経験的にはよく知られたことですが、具体的な数値を出すのは困難でしょう。ちなみに経済理論はこのようなケースを無視して議論している場合が多いと思います。現状の理論水準では十分扱うことがむずかしいのかもしれません。
タックスヘイブンについては以下の著作が基本的でしょう。
志賀櫻『タックスヘイブン 逃げていく税金』
書評
http://blogs.yahoo.co.jp/jrfs20040729/25089540.html
著者によるタックスヘイブンの解説
www.grantthornton.jp/pdf/newsletter/ex/ex_201312.pdf
「逃れやすいから取らない」などとは一言も言っていません。対策は重要です。ただそれは目下の財源をどう調達するかという問題とは別次元だということです。
以下前掲書から引用
「現実的には,所得税を基幹税とすることはなかなか難しい。累進的な所得税制が敷かれれば,個人またはその所得の源泉は国外に移動して,日本国の課税権の枠の外に逃れてしまうからである。経済がグローバル化して資金は国境を越えて簡易・迅速に動けるにもかかわらず,課税権は国境をこえると有効には及ばない。そして,海外にはタックス・ヘイブンが口を開けて待っている。これでは,所得税を基幹税として選択することはできない。」(以下のHPよりコピペしました。
http://d.hatena.ne.jp/takanawa2009/20130418/1366275025)
著者は財務省で税制を仕事とした人であり、これが実務家の実感なのでしょう。
相続税については、小野理論を前提とすれば、消費性向の低い層から高い層への所得移転となるため、消費にプラスになるでしょう。ただ、私の最初のコメント①で述べた通り、すぐに財源となるものではなく、長期的に課税強化を考えていかねばなりません。
>消費税だけ上げて、所得税は上げない
などとは言っていません。人の議論を曲解してはいけません。どちらも上げなければいけませんが、すぐに財源となるのは消費税だから、先にこちらを増税するというだけの話です。消費税の方が社会福祉に適しているから増税するなどど私はいっていませんし、多くの社会保障の専門家もそのようなことは考えてはいないでしょう。
少子高齢化が今後進む過程で、社会保障、社会福祉の増大は避けられません(その効率化自体は否定していませんが)。また小野理論を前提とすれば、それはマクロ経済上「効率的」でもあるわけです。そして、長期的には数十兆円規模で必要となるわけですから、消費税だけでなく、所得税の課税強化も、資産課税の強化も、法人税の課税ベースの拡大も進めていかざるを得ません。消費税だけに頼ろうなどちゃんとした専門家は考えていないでしょう。そのような議論は批判すべき対象です。個人的には、消費税を20%程度まで上げ、残りの財源は他の財源を可能なかぎりとることで賄うという方向性になると思います。
このような長期的な見取り図の中で、消費増税を先行させるのはコメント①で述べた通り、財源調達力と取りやすさにすぎません。別に消費税の方が所得税より優れているからではありません。どうせ、消費税も所得税も上げなければならないが、政治的、税務技術的合理性から消費増税が先行しているだけにすぎないのです。沢さんが主張する消費税の経済的不合理性が仮にあるとしても、それはそもそも問題になっていない。その可能性も考慮したうえでの政策決定なのです。ただ、短期的に経済への負荷がかかりすぎるのを避けるために引き上げペースを緩やかにするというのはありえますが。
政策というものは経済的合理性だけでなく、政治的合理性や技術的合理性といった観点も総合考慮したうえで決まるものです。沢さんの言っていることはすでに考慮済みのことなのです。それを蒸し返しても不毛なだけです。まさに枝葉末節の議論です。
もし沢さんが批判をしたいのなら、今後日本の社会保障、社会福祉、財政をどうすべきかというトータルなプランを提示したうえで行うべきです。夜警国家で、少子高齢化への国家的対策など不要だというのか。対策するとしてもよりよいプランがあるのか、それを明らかにしなければいけません。(この点で若田部氏がそのようなトータルプランを提示しているのかが問題です。)
投稿: 通りすがり | 2014年11月18日 (火) 21時21分
Executorさん
低所得者云々は上のコメントのとおり私の舌足らずです。
>すでに富裕な人は経済成長によりさらに富裕になっているので格差はより大きくなるのでは?
その可能性はありますが、経済成長率次第でしょう。高度成長期には賃金の二重構造がかなり解消されたはずです。ただ格差が広がったとしても、全体の生活水準が上がり、現在貧困状態にある人の経済厚生が好転するのなら私はかまわないと思います。資本主義である以上、格差は常に存在します。長期的には資産課税や所得税の累進性の強化などで対応すべきことです。
ただこの点は公共哲学的な論点と関わります。「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」というような立場からは経済成長せずにいた方がよいという議論も可能かもしれません。これはもはや価値観の問題で、ここでの議論の範疇を超えるでしょう。ただ貧困問題に対応するには経済成長が大前提だと思いますが。
Executorさんは反成長論者だったりするのでしょうか。そうすると議論の前提が全く違ってしまいますが。
投稿: 通りすがり | 2014年11月18日 (火) 21時32分
高額所得者が逃げるという話は聞き飽きたのでいいです。別に逃げてもいいのです。個別のデメリットではなくて、トータルでどれほどのデメリットになるのか、ということです。
こういう考えかたになるのは、低所得者の税負担を軽減することがどれだけの厚生の改善をもたらすのかわかっていないからです。年収2000万の人の限界の所得10%(つまり200万円)を奪うのと、年収200万円の人の限界の所得10%を奪うのでは、どちらの効用の低下のほうが大きいのでしょうか?
前者の200万円よりも、後者の20万円のほうが大きいのです。だから、社会全体の厚生を高めるためには、所得移転が非常に重要になるわけです。
いっぽう、高額所得者の所得税を上げるデメリットは、高額所得者の労働意欲(インセンティブ)を失わせることだ、とよく言われます。これがどのような理論にもとづいているかわかりますか?
労働供給曲線が右上がり、という高校生レベルの仮定だけです(もちろんそれだけではそれがまちがっているということにはなりません)。
理論的に考えても、高額所得者の税金を増やしても、労働供給の変化は少ないということは説明できます(長くなるのでここでは説明しません)。逆に103万円付近のほうが大きい。
だから実証的なデータを出せ、と言っているのです。具体的に考えるなら、会社の社長や重役やプロ野球選手が税金が上がったから仕事を減らすのか、ということを考えてみるといいです。
こういうことは起きません。人間の行動の選択は利益で決まるんじゃないんですよ。それに日本で労働のインセンティブを減らす要因といして大きいのは、税金ではありません。もっと他の要因がたくさんあります。中村修二氏は所得税が高くてアメリカに行ったのではありません。
とすれば、所得税率は上げることができることになります。(そうでないなら、実証的なデータをください。これは皮肉ではないしに、私も知りたいと思っているので)。
もちろん、累進性を高めるのに、所得税だけに頼る必要はありません。社会保険の税制を変える、というのでもいいでしょう。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月19日 (水) 20時00分
>消費税が投資に有利というのとはやはり矛盾しているように思います。
そんなことは前に書いていますが。所得=消費+貯蓄(投資)です。投資には課税されないから。
>社会福祉の「対象となるべき人」が増えるというだけ
条件をぬかして論じないでください。消費税でも、ちゃんと給付すれば、充実した社会保障が可能です(ただし、とっておいて返さなければならない、という非効率性は残ります)。
しかし、そのためには給付に差をつけなければいけない、と何度も言ってるじゃないですか。現状の社会保障政策でそれが実行できていますか?
例えば、生活保護の資格があるのに受けていない人がそれを受けるようになったらどうなるでしょうか? あと27兆円必要です。それを消費税でまかなうとしますか? そうすると消費税率を倍にする必要があります。でも、消費税率を倍にすると、消費税は貧困層、低所得者に負担が大きいですから、社会保障の対象が金額的にも人数的にも増えるのです。
しかし、これが可能なのは、27兆円を、他の人にはいっさい与えずに(つまり、一般の人の医療や子供手当などにはいっさい回さずに)、すべて貧困層に注ぎこんで始めて可能になるのです。、しかも、消費税の負担増で新たに生活保障しなければいけない人が増えるので(また、さらに景気悪化で人が流れこんでくる)、さらに財源が必要になる。中間層以上は無視して、徹底的に貧困層重視でいけばできます。こんな社会保障ができますか?
前に引用した原田氏のエッセイで「均衡解」がない、というのは消費税のような(消費税だけではありません)、一定税率、一定額負担の所得移転機能に乏しい税金だけを財源にして、社会保障しようとするのは無理がある、ということなのです。
税率一定の税金(消費税や市県民税、社会保険)を多くし、累進税率の所得税の割合を減らすのは、所得移転機能(再配分機能)の低下を意味します。格差が広がっているのに、こういうことをしているのだから矛盾しているわけです。
それを解消するためには、給付に差をつけるべきですが、そういう社会保障政策もできない。
また原田泰氏の文章を引用します。日本の社会保障の問題はこれにつきています。
「ただし、日本の社会保障政策には、それによって格差を縮小していないという問題がある。日本の社会保障政策は、貧困層に重い負担と低い給付、非貧困層に軽い負担と手厚い給付を行っているという。これは、必ずしも貧しい訳ではない高齢層に、多額の年金が給付されているからである(阿部彩「第1章 日本の貧困の実態と貧困政策」、阿部彩他編『生活保護の経済分析』東京大学出版会、2008年)。社会保障政策の本来の機能を取り戻すことはリベラルの課題となるのではないか。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4266
年金を例に出していますが、年金だけではないでしょう(社会保険だってそうです)。それに生活保護を含めた低所得者対策だってぜんぜんできていない。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月19日 (水) 20時30分
沢ひかる殿
>どうして2000万円で区切るのです。消費税なら全員が増税されます。どうして、所得税の場合は、そんな少しのひとだけしか増税対象にならないのでしょうか。
沢殿の
”所得税を先に増税するべき(高額所得者に対して)、所得税も増税し、その分消費税の増税を抑えるべき、と言ってるだけ。”
という御意見に対して、
”高額所得者に対する所得税増税では消費税の増税はそれほど抑えられない”
という意見での中で高額所得の例として申し上げました。
また年収1000万クラスは消費税増税以外にも、給与所得控除の縮小、児童手当の減額、高校無償化の適用除外等で負担が増え、
”財務省に狙い撃ちにされている”と話題になっているそうです(日経ビジネスやダイヤモンド等のビジネス誌で特集が組まれました)
このため、それより上のクラスとして2000万円を例にしました。
>私は中央値(400万超)の収入の人から徐々に税率を上げていくべきだと考えています。
中央値(450万)は所得ではなく収入(給与所得者の場合は税込収入)であり、その所得税率は最低(5%)だと思うので、(人によって評価は異なるとは思いますが)それほど高額所得者とは言えないと思います。
沢殿は その付近の人の負担増は(今回の消費税負担増に比べて)少なくして、大部分は累進性により高額所得者から徴収する というお考えかもしれませんが、前に申しあげたように高額所得者の数が減少している事や中央値未満の人の消費税負担増も負担する事を考えると、沢殿案では中央値付近の人の負担増も消費税の場合とそれほど変わらないのではないかと思います。
また児童のいる世帯の7割以上は収入が中央値以上(沢殿案で負担増の側)ですが、高齢者世帯の8割以上は収入が中央値未満(沢殿案で負担減の側)です。しかし一人あたりの収入では高齢者世帯の方が児童のいる世帯より高いです。
つまり沢殿案では(一人あたりの収入が高い)高齢者世帯の大部分の世帯の増税分を(一人あたりの収入が低い)児童のいる世帯の大部分の世帯が負担する という事になり、これはこれで反対する人も多いと思います。
>それが連合モードですか? (高額の所得を得ている人もいるでしょうから。その人は増税対象にしてはいけないんでしょうね)
なぜ、ここで私に突然”連合”についてお尋ねなのか理解できません。
もし私が連合の関係者(組合員)だとお考えなら、御自身が仰ったように”すぐ個人の話にいく。”事はお控えになるのがよろしいかと存じます。
また連合の加入者は組合員(非管理職)なのでそれほど高額所得者はいないと思います。もちろん業種によっては非管理職でも高額な所得を得られる事もあるので加入者にも高額所得者は存在するとは思いますが、加入者のほとんどは(高額所得者の定義にもよりますが)高額所得者ではないと思います。
>さらに低所得者の福祉を充実させるためには(これが本当に必要)、「それらの給付を受けていない人(主に高額所得者)からは増税分」の大部分を再び低所得者に給付する必要があります。
>しかし、社会保障プログラムが中高額所得者まで含むものになっているなら(現在の社会福祉はそう)、それはできないわけです。
給付は全員同額ですから高額所得者からの増収分のうち高額所得者に給付される割合は、全体の人数に対する高額所得者の人数の割合と同じです。
高額所得者は少数なので高額所得者からの増収分の大部分は高額所得者以外に給付されていると思います。
また所得援助や医療費などの給付は低所得者や高齢者が中心であり高額所得者に給付される額は比較的少ないと思うので、実際に高額所得者に給付される割合は人数の割合よりもさらに少ないと思います。
>それと、もう一点重要なのは、現在は「長期停滞 secular stagnation」と呼ばれる低成長の時代です。
低成長の時代だというのは同意します。そして低成長により高額所得者の数は減り所得全体も減少しています。つまり低成長により所得税の累進性が低下していると思います。
このため所得税を消費税の代替にしようとしても(累進性が低下しているため)消費税の負担とそれほど違わないと思います。
>消費税のように需要を直撃する税金の悪影響はより大きくなります
消費税でなく所得税を増税したとしても、(増税規模が同じであれば)需要に対する悪影響は所得税の場合とそれほど違わないと思います。
>今回の増税騒ぎで、消費税増税のハードルが上がったことは認識しておいたほうがいいでしょう。
この点は同意しますが、それが良い事だとは思えません。消費税増税の延期を聞いた厚生省の幹部が
”これは、(給付を担当する)各局の間で(延期に伴う減収をどう負担するかで)戦争になる”
と言ったそうです。
”増税を1年半延期するだけだから(1年半後には必ず実施するから)”と首相に言われれば、財務省はその間は赤字国債で減収分を補填するかもしれません。しかし延期後もまた延期や中止となったら財務省は本気で(増税できなかった分だけ)現在の給付をカットすると思います。
>それを受けて消費税に反対するひとを悪者と考えるのではなく、税制と社会保障の方法を変えなければいけない、と発想転換することが必要だと思います。
沢殿は税制や社会保障をどのように変えるべきだとお考えですか?
私は例えば所得税を消費税の代わりに増税するのは(累進性が低下しているので)消費税の増税とそれほど変わらないと思います。
また高額所得者を社会保障の給付対象から外すのは(給付は同額なので)少数の高額所得者を対象から除外しても社会保障の額はあまり変わらないと思います。
投稿: Alberich | 2014年11月19日 (水) 23時33分
沢さん
あなたとの議論がすれ違う原因が見えてきました。
低所得者の所得増は効用の増加が大きく、高所得者の所得減の効用の低下が小さいというのは経済学の基本です。そして所得減による高所得者の労働意欲を失わせる効果が小さいというのもそのとおりでしょう。そもそも私は高所得者へのインセンティブの低下など全く問題にしていません。無視してよいと思っています。しかし、沢さんの主張を日常語に翻訳すると次のようになります。
「貧乏人が金持ちのところに行って、次のように言いました。『あなたが100万円を失って減る効用は私が100万円を得て増える効用よりも少なく、あなたから私に100万円移転すれば社会全体でみれば厚生は増加します。また、それであなたが働く意欲を失っても、その程度はわずかなもので社会的に無視しうるものです。だから私に100万円下さい。』」
>所得税率は上げることができることになります。
できるわけないでしょッ!!(沢さん、あなたまさか釣りじゃないよね?びっくりしました。)そもそも、パレート最適や効用の個人間比較の不可能性という厚生経済学の基本定理を無視しています。「経済学の基本中の基本」を知らないのは沢さんの方です。
市場メカニズムでは無理として、政治的に通るか?高所得者から移転するとして、所得税により調達可能な財源は限られていますから、低所得者しか恩恵は受けられないでしょう。そうすると、高所得者はもちろん反対するし、中間層にはメリットがなく、もし自分が高所得者になった場合に税金が増える危険があるので賛成しません。結局、低所得者しか賛成せず、実現しません。
所得税に財源を頼って低所得者のみに集中して再分配する政策が政治的に実現しにくいというのは、もう先進各国で十分経験済みのことなのです。所得税に固執することは、結局所得税が上がらず、消費税も上がらず、高所得者の税負担は増えないままで低所得者は放置されるという結果をもたらすことが歴史的に分かっているのです(日本がまさにその実例です)。所得税にこだわることは高所得者を利するだけなのです。
であるからこそ、低所得者への所得移転を実現するには中間層の幅広い支持が必要であり、そのためには低所得者だけでなく中間層も広く利益を受けるような政策が選択されるのです。中間層まで受益の対象にするとすれば、膨大な財源が必要ですから、消費税にまずは頼らざるをえないのです。これは弱いいじめなどではなく、低所得者を救うための合理的な判断なのです。この点が最初のコメント②で言及した選別主義から普遍主義への転換という話です。沢さんには是非前掲の井手氏の著者や講演録をお読みいただきたい。
なお、消費税でも十分累進的な分配が可能であることを数値例によって確認しておきましょう。
低所得者が100、中所得者200、高所得者が300を消費しているとして、消費税10%なら低所得者から10、中所得者から20、高所得者から30、合計60とることになります。これを平等にそれぞれ20ずつ分配しても、低所得者は20-10=10の所得増を受け、高所得者はその分10の所得減となります。つまり消費税でも累進的な給付となります。もちろん、低所得者への給付を増加すれば、さらに累進性は高まりますが、中間層の受益があまりに減ると、そもそも消費税による所得移転すら支持されず、実現できなくなります。低所得者を救うには中間層にある程度の恩恵をもたらして支持を獲得する必要があるのです。
ついでに言っておくと、所得税でも消費税でもマクロ経済に対する影響は原則変わりません。同じくらい消費を減らします。それに応じて供給も減らし、経済への負荷となるのは同様です。しかし、調達した財源をつかって雇用を生めば、トータルでみて経済を発展させることが可能です。数値例でみてみましょう。
供給能力が1100で、需要が1000しかない需要不足が存在する経済を考えます。所得税でも消費税でもおなじですが、仮に消費税を10%いきなりかけるとします。そうすると需要が減って、たとえば950になると税収は95です。しかし、政府が95を医療、介護などの対人社会サービスや公共事業に使うと、それだけ消費が増えるわけですから、全体の需要は1045となります。経済は拡大するわけです。また、雇用が増えれば賃金が上がるので、その分消費が増え、さらに完全雇用に近づく可能性があります。
以上の数値例はたとえばの話で、どれくらい増税によって消費が減るか、どれくらい政府は税収を使って雇用を生むかで話は変わってきます。今回の消費増税では税収のかなりの部分を財政再建に使うので、雇用を生む部分は限られています。ですから短期的には全体の消費が減る可能性はあります。(この点は財政再建派の戦略ミスではないかと私は思います。まず増税の恩恵を国民に実感させなければ、さらなる増税の理解が得られないからです。短期的な成果を優先して、結果的に長期的な財政再建をむしろ遅らせたのではないかと思います。)
ここで閑話休題。沢さんが主張する消費税が投資に有利という話ですが、
>所得=消費+貯蓄(投資)です。投資には課税されないから
という理由しかないとしたら、残念ながら沢さんの勘違いです。消費税は所得税同様、貯蓄(投資)にも課税されるものであると考えるのが主流経済学(小野理論も同様)の考え方だからです。
以下松尾匡氏のHPのコメントを引用します。
「簡単化のために、「現在」と「将来」の二期だけ考え、現在の所得からの貯蓄を将来に持ち越して、将来その元利合計を消費するとしましょう。所得に課税すると、現在の消費、貯蓄双方に課税され、将来は利子分に課税されます。消費に課税すると、現在の消費と将来の消費に課税されますが、将来の消費というのは、現在の貯蓄プラス将来の利子分と等しいのですから、結局、どちらも同じことになります。」
(http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__100914.html後半部分)
しかし、消費税が投資に有利なはずがないことはちょっと考えれば分かることです。もし消費税が投資に有利と仮定すれば、消費税を上げれば投資が促進され、投資の増加は供給を増やし(この時点で消費税によって供給が減るという沢さんの主張と矛盾しますが)、経済が拡大することになる。つまり、消費税を上げれば上げるほど経済は拡大することになるので、消費税は高ければ高いほどよいことになる。しかしこれは明らかにおかしい、よって消費税が投資に有利という仮定そのものが間違っているといえる。
あまり言いたくありませんが、沢さんは十分に経済学的思考に習熟しているとはいえません。正直、人前で経済を語るレベルではありません(私もえらそうなことは言えませんが)。沢さんはどのような教科書を使って経済を勉強しているんでしょうか。独学だと危険です。経済学にはいろいろな考え方があるので、一つの本にばかり影響されると偏った見方をしてしまうことになります。いろいろな立場の本を読み比べてください。
本題に戻ります。
さて、選別主義から普遍主義へという話にみたように、沢さんが主張するような低所得者に給付を集中するという社会保障政策は無理であることが明らかです。多数を占める中間層の支持が得られませんから。しかし、中間層に給付しても、対人社会サービスなどの雇用を生む給付であれば、労働需要が増え、賃金が上がるので、低所得者も恩恵を受けるという点を見逃してはいけません。
なので、
>消費税率を倍にすると、消費税は貧困層、低所得者に負担が大きいですから、社会保障の対象が金額的にも人数的にも増えるのです
ということには必ずしもなりません。雇用を生む使い方をすれば、経済が拡大し、貧困層への給付ではなくても新たな仕事が生まれ、賃金が上がって貧困層は減っていくからです。この点が以前私が低所得者云々ということで言いたかったことです。沢さんの経済状態は知りませんが、沢さんは、現在低所得である人々がずっと低所得であることを前提に議論を組み立ててしまっています。しかし、そうではないのです。消費増税によって調達された財源で雇用を生めば、現在低所得であるひとはそこから抜け出せるチャンスが出てくるのです。
つまり
>消費税の負担増で新たに生活保障しなければいけない人が増える
わけではありません。消費増税によって景気がよくなる可能性が十分あり、どこかで必要な財源に上限がきます。つまり、原田氏のいう「均衡解」は存在するのです。この点は小野理論でクリアに説明されます。氏の著書を是非読んでください。この点はこれまでのコメントでも再三説明しています。よく読みなおしてください。
格差が拡大したのは経済が悪いためですが、それは日本が恒常的な需要不足に陥ったのが原因です。これに対処するには、恒常的に財政を拡大させざるをえず、財源調達力からいってまずは消費税に頼らざるをえないのは再三指摘してきました。そして消費増税によっても雇用を生む使い方をすれば、長期的に経済を良くして、低所得者、貧困層を減らしていくことができることも述べました。
もし消費増税をしなければどうでしょう。経済は悪いままで格差は拡大し、貧困層は増えるばかりです。そのような状況で得をするのは原田氏のような富裕な高齢世代です。消費増税の負担もなく、貧しい若年層を低賃金で思うままにこき使えるからです。だまされてはいけません。原田氏のような人物こそ若者や貧困層の敵なのです。
正直びっくりしています。原田氏のような経済学的基礎づけもあやしい愚論を真に受ける人がいるとは思ってもいませんでした。
世にエコノミストという人には経済学的にみていい加減なことを言っている人がたくさんいます。彼らのいうことを鵜呑みにしてはいけません。最初のコメント②で紹介した盛山和夫『経済成長は不可能なのか』ではそのようなエコノミストが一人一人取り上げられて批判されています。氏の主張に賛成するかしないかはともかく、多様な考え方に触れる点でも一読の価値があります。沢さんは是非ともお読みください。(ただ、氏の小野善康氏に対する批判はあまりフェアではないと思いますが)
投稿: 通りすがり | 2014年11月20日 (木) 06時07分
Alberichさん
所得税の累進が低下している。それはその通りです。だから、累進性を強化するべきだと思っているのです。具体的には、90年代の税率まで戻すことです(そんなに大きな増税ではありません)。
もちろんこれで大きな財源が確保できるわけではない。でもプラスになるのは確か。
今だって同じ状況です。消費増税が先送りされ財源が足りないなら、所得税を上げればいいじゃないですか(今は景気が一時低迷しているのでいい時期じゃないですけど)? どうしてそれをしない?
通りすがりさん
>それは日本が恒常的な需要不足に陥ったのが原因です。これに対処するには、恒常的に財政を拡大させざるをえず、
これでは需要は増えませんが。これこそ愚論の真骨頂。そんなことしたって対処にならないってわからない?小学生でもわかるけど。(こういう人が薦める参考文献って全然読む気になりません。すみません。)
100万円を持っている社会から税金で10万円取ってきて、10万円の財政政策を行った。需要が増えますか?
だから、こういう理由で消費税でなければならないという理由はまったくない。むしろ逆。どうして景気が悪いといって、消費税を延期するのか?消費税のほうが需要に対するマイナスの影響が大きいから。需要拡大のためには、財政を恒常的に拡大させなければならないから、消費税じゃないといけない? 矛盾してます。
経済は政府の財政政策で成長するのではありません。
ところが、政府が税金の取り方を変えれば社会全体の厚生を高めることができる。100万円を持っている社会で、金持ちから5万円取ってきて、貧乏人に5万円を与えれば、総資産は同じですが、社会の厚生は高まります。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月20日 (木) 20時14分
貯蓄にも課税される、というのは、「貯蓄が最終的に消費される」と仮定しているから。こんなことは、松尾氏とか小野氏なんて人の言っていることを読まなくてもわかっていることなんです(恒常所得仮説)。
だから、投資には課税されないことになりますね。所得から株や国債や社債などの金融商品を買えば課税されません(実際、金融商品は消費税非課税ですと説明されています)。
それに、貯蓄も最終的に消費されるから、最終的に消費税で取ることができる、というのはあまり説得力がないのです。
それは20年後かもしれませんし、30年後かもしれません。相続されれば相続税の関所を通りますが少額なら相続税は取られません。そうなると、消費税で課税できるのは、100年後かもしれません。
現在の20万円と20年後の20万円は同じですか?割引現在価値を考えてください。
そうすると、課税が遅れるとそれだけ税収は減るのです。だったら、最初の所得のところでとったほうがいいということになる。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月20日 (木) 20時28分
>なお、消費税でも十分累進的な分配が可能であることを数値例によって確認しておきましょう。
>低所得者が100、中所得者200、高所得者が300を消費しているとして、消費税10%なら低所得者から10、中所得者から20、高所得者から30、合計60とることになります。
こんな小学生みたいな計算例ださないでくださいよ。もっと一般的な例は、上のコメントで紹介されていた権丈氏のエッセイの中にあります(それも問題がある。以下と同じ)。
これの問題点は、全員が所得を得ていること。実際にはかなりの人の割合が無所得。
また、所得分布がこんな一様分布でないこと。中央値400万超以下にかなり偏っている。
そして、所得がない人の給付は、累進的になるかどうかが重要なのではない。その給付によって、最低レベルに届くかどうか。
そこで、そのような状態で、一定税率の消費税で財源を得て、全員に均一に配って、無所得、低所得の人に最低レベルの給付になるかどうか、ということです。かなり難しいです。ほとんど無理。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月20日 (木) 20時58分
上のコメントで侮辱するような表現があったこと、あやまります。すみません。
2点頭に来てしまったので・・・
(1)また関係ない個人的な話になっている(私が読んだ本をここに書き連ねるんですか?)
(2)原田氏の議論を「愚論」と呼んでいるところ。
「愚論」と呼ぶのはかまいません(あまりよくないかもしれませんが)。それなら、どこがまちがっているのかを示すべきです。それをやらずに愚論と呼ぶのは、いい議論の仕方ではありません。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月21日 (金) 00時03分
沢さん
>100万円を持っている社会から税金で10万円取ってきて、10万円の財政政策を行った。需要が増えますか?
増えます。100万円ある社会で90万円しか使われていない需要不足の状態の場合、税金で10万円とって仮に需要が5万円減っても税収10万円を使えば、90-5+10=95で最初の90万円から5万円だけ需要は増えています。(この点は小野善康氏の『金融』という本で簡潔なモデルでより一般的に議論されています。)
消費税がまず選択されるのは単に税収の大きさゆえです。消費税と所得税の同じ税額での需要への影響は同じです(個人の効用に対する影響とは別の問題です)。ただ消費税の税収が大きいゆえに需要への影響も大きく、ゆっくりしたペースでやる必要があるというだけです。
>経済は政府の財政政策で成長するのではありません。
という点についてそもそも経済学者で争いがあるのです。小野氏は政府の財政政策でも成長しうることを一般的なモデルで立証しています。
>100万円を持っている社会で、金持ちから5万円取ってきて、貧乏人に5万円を与えれば、総資産は同じですが、社会の厚生は高まります。
とは言えません。厚生経済学の基本的な考え方として、そもそも個人間の効用は比較できません。金持ちが5万円取られて失う効用と、貧乏人が5万円もらって得る効用は比較できないとされています。個人ごとに価値観が違う以上、個人ごとに効用を図るものさしが違うわけですから、比較できません。厚生経済学の教科書を勉強してください。
恒常所得仮説においては、投資にも課税されることになります。そもそも消費税が投資に有利なら、政府の政策ではなく民間による経済の成長を重視する沢さんの立場からは消費税の方が望ましいということになります。
何度も言っていますが、単に消費増税が先行するのは財源調達力と租税技術的合理性です。所得税より優れているとはいっていません。最初のところでとる所得税は公平性の点で問題があるということを何度もいっています。(だからといって所得税の課税強化をしなくてよいともいっていません。)
>所得がない人の給付は、累進的になるかどうかが重要なのではない。その給付によって、最低レベルに届くかどうか。
ではありません。増税による税収を使うことで雇用が生まれ、所得のない人が新たに所得を得て最低レベルに届くかどうかが問題なのです。そして、所得のない人が大量に存在するのなら、その人々を雇用するためには多額の財源が必要となり、消費税に頼らざるを得なくなります。
沢さんの間違いのポイントは二つあります。
まず第一に、無意識に需要不足がない状態を前提に議論してしまっています。しかし需要不足がないのなら、そもそも所得がない人が大量にいるという状態にはならないはずです。
第二に、沢さんは給付をすべて現金給付と考えています。そうではなく、医療、介護、保育などの対人社会サービスを現物給付すれば雇用が生まれて、失業者が雇用されれば所得を得て貧困状態から脱することが可能になります。(現金給付でも消費性向の低い層から高い層へ移転すればある程度消費が増えますが)
投稿: 通りすがり | 2014年11月21日 (金) 01時09分
松尾氏のHPに小野モデルを簡潔にしたものの解説が載っていたので、紹介しておきましょう。
小野モデル超簡単バージョン
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/academic.html
投稿: 通りすがり | 2014年11月21日 (金) 01時25分
前のところで、将来の「税収」が減る、と書きましたが、正確な説明でなかったので追加しておきます。
所得のうち消費されずに、投資や貯蓄に回った分もいずれ消費されたときに課税されるから消費税でも結局、所得全部に課税されることになり、所得税と同じ(実は、同じではない。そうなっても消費税は税率一定の「所得税」になるだけで、いっぽう所得税は累進税率なので税率の違いが残る)という議論。前のコメントに書きましたように、将来の金額は現在と同じではありません。
金利が1%なら、20年後の100万円の現在の価値(現在価値)は82万円です。これは、税収が遅れれば、その間、政府は国債の利子を払わなければいけないので、結局税収が減ることになる、というところにあらわれていると考えてもいいと思います。
たしかに、100万円をそのまま寝かせておくわけではなく、それは投資に使われます。したがって投資のリターンがあるので、それが消費に回った場合、その分税収は増えます。だからそれによって、価値の減少分が相殺されると考えてもいいのですが、個人の時間割引率を考えると、やはり将来の価値のほうが下がると思います。
これは直感的に考えてもわかります。「今税金を払う」のと、「将来税金を払う」のでは、どちらがいいですか? と聞かれた場合、もし、「将来課税されるのだから同じ」だったら、どちらでもいいことになります。しかし、ほとんど人が「将来払う」ほうがいいと答えます。
これは、同じ額、同じ税率の税金でも、将来より現在支払うほうが「重い」ということを意味しています。したがって、消費税の場合、投資や貯蓄に回すことで、税金の支払いを遅らせることができるので、「投資や貯蓄に有利」ということになります。
そして、前に書きましたが、投資や貯蓄に回っても最終的に消費に回る、ということが起こっても、その場合、消費ではなくて全所得に課税されることになりますが、それでも一定税率の消費税なら、一定税率の所得税になるだけです。累進税率の所得税とはまだ差があるわけです。
この点で(累進税率、低所得者の負担という点)、消費税と所得税をひっくり返そうと思っても無理です。一定税率の消費税(しかも低所得でも、所得が無くてもとられる)は低所得者の負担が大きい、というのは当たり前です。消費税のメリットは他のところにあるのだから、それを強調すればいいと思います。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月21日 (金) 22時33分
通りすがりさん
>厚生経済学の基本的な考え方として、そもそも個人間の効用は比較できません。金持ちが5万円取られて失う効用と、貧乏人が5万円もらって得る効用は比較できないとされています。個人ごとに価値観が違う以上、個人ごとに効用を図るものさしが違うわけですから、比較できません。
比較できます。基数的と序数的の違い。序数的には比較できます(順序はつけられる)。
確かに、個人の効用は違いますが、だからといって、まったく比較できないのなら、すべての経済学モデルは無効になります。あなたが支持している小野モデルも無効です。
なぜなら、多くの経済がモデルは代表的個人モデルで、異なる個々人を一人の代表的人間で表しているからです。
個々人で違うといっても、大きな傾向では比較できるのです。
私の議論は、限界効用が逓減することから明らかなのです。もし限界効用逓減がまちがっているというのなら(もちろん、部分的には限界効用逓増のところもあります)、世界は破綻します。どこまでも消費しようとするからです。
これは実感から考えても明らかです。所得200万円の人から50万円を奪えば、生活の中で重要なことを放棄しなければなりません。しかし、2000万円の人から50万円を奪っても、ほとんど影響を与えません。限界効用の低下の割合が違うから(所得が低いところのほうが減少が大きい)。
ちなみに、あなたが紹介してくれた松尾氏解説の小野モデルの効用関数も限界効用逓減の効用関数です。)
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/KantanOno.pdf
だから、その小野モデルの効用関数でも、お金持ちの人から低所得の人に所得移転をすると、平均の効用は高まります。(あらまあ、批判するつもりで提示したモデルが、私の主張を支持しているじゃないですか。)
>しかし需要不足がないのなら、そもそも所得がない人が大量にいるという状態にはならないはずです。
身体障害者や高齢者や子供はどうなんですか? 生活保護の多くはそういう人たちですが。需要不足がなくなると、高齢者や子供が減るんですか? たしかに、需要不足が減れば、所得が低い人が減りますが。それがなにか? そもそも、すべての人が所得を稼いでいる前提のモデルがまったく現実にあわなくて説得力がない、というだけなんですが(これは権丈氏のモデルにも言える。全員が基礎消費以上の所得を稼いでいることになっている。それなら誰も本当に困っていない。)
「小野モデル」?
http://matsuo-tadasu.ptu.jp/KantanOno.pdf
中身わかって引用しています? ここの議論とまったく関係ありません。関係があるというのならその部分を示してください(流動性の罠でのインフレ期待の話なんですが・・・ 代表的個人モデルなので、所得格差も想定されていませんし。)
あなたは(1)、(2)式から(4)式まで導くことさえできないですよね?(わからなかったら、沢ひかるさんという人を検索して聞いてみれば?)。
自分がわかっていないものを引用しないでほしいです。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月21日 (金) 22時46分
沢ひかる殿
>消費増税が先送りされ財源が足りないなら、所得税を上げればいいじゃないですか(今は景気が一時低迷しているのでいい時期じゃないですけど)? どうしてそれをしない?
所得税は増税されています。
4000万円以上の税率アップだけでなく、1000万円以上の高額所得者に対しては給与所得控除の削減(累進性の強化)や子ども手当の支給制限や高校無償化の適用除外(給付の制限)による負担増が行われています。負担増の規模は人によって評価が異なると思いますが、少なくとも対象者が”財務省に狙い撃ちにされている”
と感じ、複数のビジネス誌が特集を組む程度の規模ではあります。
>所得税の累進が低下している。それはその通りです。だから、累進性を強化するべきだと思っているのです。具体的には、90年代の税率まで戻すことです
低成長で高額所得者の数が減りそれ以外の人の所得も低下しているので、沢殿の仰るように所得税の税率を90年代の税率まで戻しても、得られる所得税の額は90年代よりも減少すると思います。
>もちろんこれで大きな財源が確保できるわけではない。でもプラスになるのは確か。
以前に申しましたように、高額所得者”だけ”を増税の対象にすると、かなり増税しても消費税0.5%程度です。10%への増税が9.5%になった場合に、”少しでも増税幅が減ってよかった”と考えるか、”ほとんど変わらない”と考えるかは人によって異なると思います。もちろん増税対象を拡大すれば所得税の増税幅は減少できますが、あまり対象を広げると子育て世帯の負担が大きくなると思います。高齢者世帯の収入の中央値は約250万円、子育て世帯の収入の中央値は約600万円ですが、世帯一人あたりの平均収入は高齢者世帯の方が高いです。
沢殿が増税の対象と考えておられた収入の中央値(450万円)ですが、独身で450万円の収入があればそれほど苦しくないかもしれませんが、(複数の)子どもがいる世帯で収入が450万円ではかなり苦しいと思います。
子育て世帯では収入450万円は下位25%(下半分の中央値)に相当し、全世帯での下位25%は収入250万円程度です(これは子育て世帯も含めた値なので、子育て世帯を除いた中央値はもっと低くなると思います)つまり収入450万円の子育て世帯に対する増税は収入250万円の一般世帯に対する増税に相当すると思います。
もちろんこのような子育て世帯の負担は(高額所得者に有利な)控除ではなく給付によって補い、その上で広い範囲で所得税の増税を行うという考え方もありますが、その場合は子育て給付をそれ以外の世帯が負担するため、子育て世帯以外はかなり低い収入の世帯まで増税の対象になるため、(特に子育て以外の世帯では)消費税増税の場合とそれほど変わらなくなると思います。
昔、野坂昭如(五木寛之だったかな?)が
”若くて健康で扶養家族がいない奴が金がないのは貧乏とは言わない。それは青春の特権というのだ”
と言ったそうですが、私は特権をお持ちの方には(特権を失って貧乏になった時に福祉サービスが受けられるために)福祉サービスの維持のために応分の負担をお願いしたいと思っています。
特権をお持ちの方がお金のない原因が職がない事であれば、お金ではなく職(そのための教育なども含めて)を給付すべきだと思います。また職があってもお金がないのであれば、制度の変更(最低賃金の上昇、派遣社員と正社員の賃金の同一化、派遣社員に対する社会保険の加入範囲の拡大等)を行うべきだと思います。
投稿: Alberich | 2014年11月22日 (土) 00時05分
Alberich さん
中間層の負担を減らすために、低所得者層の負担が大きい消費税のほうが望ましい、と言っているように聞こえます。
>子育て世帯では収入450万円は下位25%(下半分の中央値)に相当し、全世帯での下位25%は収入250万円程度です(これは子育て世帯も含めた値なので、子育て世帯を除いた中央値はもっと低くなると思います)つまり収入450万円の子育て世帯に対する増税は収入250万円の一般世帯に対する増税に相当すると思います。
と言われますが、この階層では、消費税の影響だって十分大きいはずですよ(家族の人数が多ければ、消費税の影響のほうが大きくなるでしょう。
だから、この階層の負担を考慮して、消費税のほうがいい、ということにはならないと思います。
日本の社会保障の問題は前に引用した原田泰の言葉につきています。
「日本の社会保障政策には、それによって格差を縮小していないという問題がある。」
ただし、これは原田氏が自分で調査して立証したのではなくて、他の人の研究を踏まえて言っているのだと思いますが。阿部彩氏かな?(『子供の貧困』はいい本です)。
それと前にシノドスの記事を引用したときに、著者をまちがって原田氏と書いてしまったかもしれません(若田部昌澄氏)。
こうやって長々とコメントを書き続けるのは本当はいやなので、もう止めようと思っています。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月22日 (土) 17時33分
沢さん
>序数的には比較できます(順序はつけられる)。
序数的に比較できるというのもあくまで同一個人の中での話です。異なる個人間では比較できません。厚生経済学の基本を無視してしまっています。
以下wikipediaの記述を引用します。
「序数的効用では効用は主観的なもので、異なる個人間で比較すること(たとえば、ある人にとってリンゴ一個を貰えることによる満足度の増加と、別の人にとってリンゴ一個を貰えることによる満足度の増加を比較して、どちらの満足度の増え分が大きいかを判断すること)も、単純に各個人の効用を足し合わせて社会全体の効用を測定することもできないとされる。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B9%E7%94%A8
>まったく比較できないのなら、すべての経済学モデルは無効になります
そうではありません。サミュエルソンの顕示選好理論によって、そもそも観察できない個人の主観的効用を問題とすることなく価格理論は組み立てられるようになっています。逆にいえば、現在では効用の話と経済モデルは直接には関係なくなっているのです。(私も社会全体の効用が高まるか否かという議論はしていません。それは厚生経済学の基本前提として議論できないことです。効用ではなく所得の大小を問題としています。マクロ経済学者一般がそうです。)
>需要不足がなくなると、高齢者や子供が減るんですか? たしかに、需要不足が減れば、所得が低い人が減りますが。それがなにか?
需要不足が減って所得の低い人が減れば、生活保護など所得移転を必要とする人が減ってくるのです。子供はともかく高齢者雇用も増えて、生活保護を必要とする高齢者も減るわけです。つまり必要な財源に歯止めがかかる。原田氏のいう均衡解が存在することになります。
小野モデルは金融緩和でも需要不足を解消できないことを示しているモデルです。一方で政府の財政規模拡大によって(恒常所得仮説を前提としても)需要不足を解消できることを示してもいます。(この点は氏の『金融』なりでお確かめください)
沢さんがローマーの教科書などで勉強していることは分かりました。しかしそのわりに個人間の効用比較不可能性や顕示選好理論を無視するなど、基本的な部分を疎かにしてしまっているのも気になります。またクルーグマンの議論を御存じなら、財政政策の効果が無でないこともご理解のはずです。
恒常所得仮説を厳格に適用すれば、所得税と消費税で同額でのマクロ経済への効果は同じです。沢さんは恒常所得仮説を緩めて考えようとしているように思えますが、だとしたら政府の財政政策によって経済が成長するはずがないという沢さんの主張も経済学的な根拠を失います。経済学のなかで、政府の財政政策に効果があるかないかで否定派と肯定派が分かれていますが、否定派の根拠が恒常所得仮説だからです。恒常所得仮説を緩めれば政府の財政政策の効果を認めることになります。
先ほど述べたように小野理論では恒常所得仮説を前提にしても政府の財政規模拡大が需要不足を解消し、経済を拡大させることを主張しています。需要不足を解消すれば労働者の所得が増え、所得移転を必要とする低所得者が減少していきます。とめどもなく財源がふえていくわけではないのです。問題はその財源がいくら必要かで、所得税ではその額を到底賄えないため、消費税に頼ることになるわけです。だからといって所得税の課税強化が不要だといっているわけではありません。
沢さんが経済学の知識をたくさんお持ちなのは分かります。しかしムラがありすぎます。恒常所得仮説を知っているのに、個人間の効用比較不可能性や顕示選好理論を知らないというのは、数学でいえば、イプシロン-デルタ論法は知っているのに、三平方の定理は知らないようなものです。もしかしたら中上級の教科書からいきなり勉強を始めたせいかもしれません。
なお消費税が投資に有利という議論は沢さんのオリジナルですか?それとも経済学者の議論を前提にしているのでしょうか。典拠があるならお教えください。
投稿: 通りすがり | 2014年11月22日 (土) 18時43分
沢ひかる殿
>中間層の負担を減らすために、低所得者層の負担が大きい消費税のほうが望ましい、と言っているように聞こえます。
私は実質的に(比較的)余裕のある所帯が余裕のない世帯の負担の一部を肩代わりする事には賛成です。しかし子育て世代とそうでない世帯を考慮すると収入の高い世代が単純に低い所帯よりも余裕があるとは言えないと思います。例えば年収300万円(低所得者層)の独身世帯と年収500万円(中間層)の子供が3人いる世帯では(自由に使えるお金という点では)独身世代の方が余裕がある場合もあると思います。そうであれば、この場合は低所得者層である独身世代が中間層である子育て世代の負担の一部を肩代わりするべきだと思います。
同じ形態の世帯間では生活の余裕度と収入はほぼ比例すると思うので、収入の少ない世帯の負担を収入の多い世帯が負担する(年収450万円以上の単身世帯は年収250万円未満の単身世帯の負担の一部を負担する、年収800万円以上で子供が3人いる世帯は年収500万円未満で子供が3人いる世帯世帯の負担の一部を負担する等)事は納得できますし私も賛成です。しかし異なる形態の世帯(単身世帯と子供が3人いる世帯)間での余裕度の比較は困難だと思います。
収入に対して異なる形態の世帯(子育て世帯と独身世帯等)の余裕度の差を補正したうえで収入の少ない世帯の負担を収入の多い世帯が負担するという方法もあると思います。しかしその場合は(控除は高額収入者ほど有利な逆累進性があるので採用すべきではないと思いますが、簡単のために子育て世帯と独身世帯の余裕度の差を収入に対する控除で実現する場合は)子育て世帯とそうでない世帯の収入の中央値や世帯一人当たりの収入をもとに判断すると子供一人当たりの収入控除は100万円以上になると思います。子育て世代に対して子供一人当たり100万円以上控除した後の収入で考慮すると、収入の中央値は250万円以下になると思います。つまり子育て世代の負担を考慮したうえで所得税増税により低所得者の負担を減少させることにすると、独身所帯では収入250万円以上の世帯はそれ以下の収入の世帯(控除前の収入が350万円以上の子育て世帯を含む)の負担を肩代わりするための増税の対象になります。こうなると特に独身所帯にとっては現状の消費税一率増税とあまり変わらないと思います。
>この階層では、消費税の影響だって十分大きいはずですよ(家族の人数が多ければ、消費税の影響のほうが大きくなるでしょう。
>だから、この階層の負担を考慮して、消費税のほうがいい、ということにはならないと思います。
仰る通り、(子供の数が多い)子育て世代にとっては消費税の影響は大きいです。しかし子育てに対する考慮が不十分な状況で所得税による肩代わりを実施すると、自分たちの消費に対する消費税だけでなく(収入は低いが実質的には自分たちより余裕がある)低所得の独身所帯の消費税も肩代わりして負担する可能性があります。それならば自分たちの消費税だけを負担すればよい現状(所得税による肩代わりがない状況)の方が良いという考え方もあると思います。
>日本の社会保障の問題は前に引用した原田泰の言葉につきています。
>「日本の社会保障政策には、それによって格差を縮小していないという問題がある。」
それは福祉サービスに充てる財源が十分でないため格差を縮小できないからではないでしょうか?
特に母子家庭は悲惨な状況ですし、そうでなくても子供のある世帯とない世帯の格差は大きいです。このため子育てを支援する政策の財源を(主に)子供のない世帯を中心に負担する必要があると思います。
また前回の投稿でも申しましたが、格差の縮小(低収入者に対する支援)としては、就職支援や労働制度変更(最低賃金の上昇や派遣労働者に対する(同一労働の)正社員との賃金格差の是正等)を行う必要があると思います。
投稿: Alberich | 2014年11月23日 (日) 00時42分
通りすがりさん
https://twitter.com/p_sowerberry/status/536121367490342912
経済学の話をするために、ここにコメントを書いているわけでははありません。他のところでやってくれませんか。
「サミュエルソンの顕示選好理論によって、そもそも観察できない個人の主観的効用を問題とすることなく価格理論は組み立てられるようになっています。」
自分で書いていて意味わかってないでしょ? じゃあ、Aという財とBという財で、Aを選ぶのはなぜ。価格が安いから。違うよ。
ウィキペディアの記事の意味もわかってないですね。
「単純に各個人の効用を足し合わせて社会全体の効用を測定することもできないとされる」
ここで重要なのは、「足し合わせて」ということ。これが基数的ではない、ということ。もし効用が比較できないのなら、恒常所得仮説も成り立たないし、異時点間の代替も成り立たない。
松尾氏紹介のかんたん小野モデルの「対数型効用関数」では、消費が低いところでは、効用がマイナスになる。「これっておかしくないですか? 効用がマイナスになるなら、消費しないほうがいいということになる」という疑問に対して、どのように説明する?
これも上の議論と関連があるんだけど。
知識がなくて、ネットで一生けん命集めているようでは、理解できていないので、そういう前提で批判するのはやめてもらえませんか?
投稿: 沢ひかる | 2014年11月23日 (日) 18時36分
Alberichさん
所得税の場合、所得が同じなら、基本的に課税額は同じです。さらに、子供がいれば課税額が控除されます。しかし、消費税の場合は、子供が多いなど家族が多いほど、逆に税額が多くなってしまいます。また、控除もありません。
家族が大きくなると、圧倒的に消費税のほうが負担が大きいのです。
今年の3%の増税で、400万円台の世帯で消費税の増額は8万円増ほどになります。
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp131003.pdf
ところが、児童手当が増えたわけではありません。負担しか増えていません。もちろんこの下の階層でも同じ。
では、もっと消費税率を上げよう、ということになったとします。すると、また負担が大幅に増えます。負担増を上回るだけの給付が可能でしょうか。平均年収以下の子供をもっている世帯に、10万円以上の増額をすることが可能でしょうか?
今の制度のままでは無理です。つまり、全員に一律に「広く薄く」給付するというやり方では、本当に必要な人に届かないのです。これは児童手当だけを見ても言えます。児童手当は所得制限がついていますが、その年収制限が800万ぐらいから1000万ぐらい(子供の人数による)とかなり高く、しかもその年収制限以上の世帯にも給付しています(制限は、給付の減額だけ)。
もっと所得制限を低くすれば、本当に必要な世帯の給付を増やせます。でも、そういう改革をする気配もない。
それに、子供がいない人でも、生活保障が必要な人はたくさんいます(そういう人は、所得税だったら負担しなくていいのに、消費税だと負担しなければいけなくなります)。
社会保障の方法を変えること、また税金のシステムを変えることが必要です。所得税の累進をきつくできないのなら(私はそう思っていません。もう少しきつくできるはずです。なぜなら過去にやっていたことだからです)、アメリカのような給付付税額控除を導入するべきです(前のコメントで、日本はアメリカが行っている程度の社会保障もできていない、というのはこういうことです)。
全員に一律に広く薄く給付するという社会保障をしている限り、消費税を上げていくと、低所得の人にとっては負担ばかり増えていきます。給付の面で差をつける必要がありますし、税金を取るところでも、低所得者の負担を減らす税制が必要です。
前のコメントでも同じことを書いていますが、今後議論していっても、同じことの繰り返しになるだけです。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月23日 (日) 18時41分
沢さん
>経済学の話をするために、ここにコメントを書いているわけでははありません。
全く同感です。経済学の知識で沢さんに対抗しようなどという気は毛頭ありません。(しかし、私が経済学の基本中の基本を分かっていないといって経済学の話をしかけてきたのは沢さんの方だったと思いますが。それからtwitterのコメントは沢さんの嫌いなネットの低俗な議論そのものでしょう。最終的に相手の誹謗中傷に陥るとは。まるで池田信夫のような物言いです。)
話の始まりは、金持ちから貧乏人にお金を移転して社会全体の効用があがるという沢さんの議論です。序数的効用を前提としても個人間の効用が比較不可能である以上(wikiにも書いてますよ)、このような議論の仕方は厚生経済学の基本的前提として出来ないと申し上げただけです。このような議論で所得税が消費税より優れているという沢さんの議論には無理があるということを言いたかっただけです。
小野モデルは沢さんが小野善康氏を御存じないようだったので、どのような議論をしている人か紹介しようと思ったまでです。
一つのポイントは高齢者をどのように見るかだったのかもしれません。沢さん(あるいは原田氏)は高齢者を単に社会保障や社会福祉の受給者としか見ていないようですが、たしかにそれを前提とすれば高齢化が進行する中で財源はとめどもなく増えていくでしょう。しかし元気な高齢者がいる以上、このように考える必然性はありません。彼らに社会保障の担い手として働いてもらえばよいのです。そうすれば高齢者の収入も増え、生活保護の受給者も減ります。しかし民間の需要では無理でしょうから、政府の財政を使ってやるしかない。現在の状況ではまずは消費税しか大規模な財源調達の手段がないということです(権丈氏の議論はこのような観点から解釈すべきでしょう)。高齢者に限らず、財政規模の拡大によって新たな雇用が生まれれば、そもそも社会福祉によって支える必要のある人間の数が減ると言っているだけです。遊休労働力である高齢者や家庭内の女性を労働力化することで経済を成長させるわけです。社会の在り方そのものが大きく変動するわけです。
Alberichさんのコメント
>福祉サービスに充てる財源が十分でないため格差を縮小できないからではないでしょうか?
まさにこれが本質をついていると思います。圧倒的に財源が足りないという状況では何もできません。そこでまずは消費税というだけの話です。いずれ所得税の課税強化も、資産課税の強化も、法人税の課税ベースの拡大も進めていかなければいけません。消費税だけに財源を求めようなどとは私は一言もいっていません。
>アメリカのような給付付税額控除を導入する
賛成ですが、消費税の導入の是非とは別の話でしょう。
よい勉強になりました。ありがとうございました。
投稿: 通りすがり | 2014年11月24日 (月) 00時33分
失礼。消費税の「導入」ではなく、「増税」の間違い。
給付付税額控除に賛成というのはあくまで理念の上での話。自営業者層の所得捕捉率は納税者番号制度によって上げるにも限界がある以上、導入される可能性は低い。実現可能性の低い政策に拘泥しても誰も救えない。
投稿: 通りすがり | 2014年11月24日 (月) 17時09分
沢ひかる殿
>所得税の場合、所得が同じなら、基本的に課税額は同じです。さらに、子供がいれば課税額が控除されます。
現在は15歳以下の扶養者に対する所得控除はなかったと思います。昔はありましたが、控除を廃止して廃止による増収分を児童手当の増額に充てたと思います。控除では所得税率の高い世帯ほど恩恵が大きくなる逆累進性があるので、私は控除を廃止して手当の増額に充てたのはよかったと思います。
>今年の3%の増税で、400万円台の世帯で消費税の増額は8万円増ほどになります。
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp131003.pdf
消費税を増税した場合と何も増税を行わない場合を比べると約8万円の負担増になりますが、消費税を増税した場合と同じ増税額を所得税増税で得る場合では負担の差はそれほどないと思います。
>ところが、児童手当が増えたわけではありません。負担しか増えていません。もちろんこの下の階層でも同じ。
仰るように今回の消費税増税で児童手当は増えていませんが子育てを支援する予算は増えています。例えば今回の増税(5%→8%)で”待機児童解消など子育て支援”に増税分の3000億円が充てられました。待機児童の対象は不明ですが、(仮に)10歳以下とすると10歳以下の児童はおよそ1100万人だと思うので1人当たり2.7万円の支援に相当します。
また8%→10%の増税による増収でさらに4000億円を充てる予定だったそうです。この増税による400万円台の世帯の増額は5.4万(=8×(10-8)÷(8-5))円増だと思いますが、10歳以下の児童1人当たりの支援増は3.6万円です。
つまり400万円台の世帯で子供が2人以上いる世帯は(全体としてみると)今回の増税延期で(負担増よりも大きな支援増を得られなくなったという意味で)損をしたといえると思います。
私は、待機児童が問題なのは都市部の勤め人だけで地方ではそのような問題はほとんどなく、また自営業では待機児童の問題は少ないと思うので、増収の子育て支援分は一部の人の問題の解消ではなく児童手当の増額に充てるべきだと思いますが、子育て世帯全体としてみると(特に10歳以下の子供が2人以上いる世帯では)負担増をかなり取り戻していると思います。
>これは児童手当だけを見ても言えます。児童手当は所得制限がついていますが、
>その年収制限が800万ぐらいから1000万ぐらい(子供の人数による)とかなり高く、しかもその年収制限以上の世帯にも給付しています(制限は、給付の減額だけ)。
児童手当の給付制限は年収が約900万以上が対象です。年収900万といえば高いように思いますが、子育て世帯の上位2割に相当します。給付を受ける人の上位2割は制限しその分を残りの層に回すというのは不十分でしょうか?
また給付の減額であって除外でないことを問題にされていますが、私は高額所得者であっても(子供のいる高額所得世帯は子供のいない高額所得世帯よりも優遇されるべきだと思うので)給付すべきだと思います。
もちろん子供の数が同じであれば、高額所得世帯よりもそうでない世帯を優先すべきだと思うので、(児童手当を課税対象にする等の手段で)子供一人当たりの給付額は収入の高い世帯ほど減額すべきだと思います。
しかし児童手当の給付対象を制限してその分を非制限層にまわすというのは子育て世帯内での再配分です。私は子育て世帯でない世帯から子育て世帯への給付をもっと行うべきだと思います。15歳以下の扶養者控除を廃止する際に、配偶者控除も廃止してその分も児童手当の増額に充てるという案もありましたが実現しませんでした。私は妻より母を優先すべきだと思うので、この案は実現した方が良かったと思います。
> 今の制度のままでは無理です。つまり、全員に一律に「広く薄く」給付するというやり方では、本当に必要な人に届かないのです。
児童手当を別にすれば、給付を受けている世帯は所得の低い世帯が大部分なので、収入の高い世帯の給付を制限しても効果は少ないと思います。
例えば沢殿が以前に引用された”日本の社会保障政策には、それによって格差を縮小していない”という問題の原因とされている(”これは、必ずしも貧しい訳ではない高齢層に、多額の年金が給付されているからである”)年金について考えてみます。上位2割に対する給付制限(沢殿が児童手当の場合に制限として不十分といわれた水準)では年収400万円以上の世帯は年金の給付を制限することになります。もっと制限を広げた上位4割に対する給付制限では年収300万円以上の世帯は年金の給付を制限することになります。
”年収300万円以上の世帯は年金の給付を制限する”という方針では、(制限した分をより所得の低い世帯に回すとしても)”低所得者に対する負担が大きい”として反対する人もいると思います。
沢殿はどの程度の制限が妥当と思われますか?
>それに、子供がいない人でも、生活保障が必要な人はたくさんいます
そのような方に対しては給付(支援)をすればよいと思います。
例えば今回(5%→8%)の増税の増収分の大部分(約6割)は”基礎年金の安定財源”に使われたそうです。これは基礎年金のうち国の負担を従来の3分の1から2分の1に上げるための財源だったと思います。これにより所得が少なくて国民年金の掛金を免除された場合でも半分はもらえます。これは今回の増税による低収入の世帯に対する支援の拡大の例だと思います。
>(そういう人は、所得税だったら負担しなくていいのに、消費税だと負担しなければいけなくなります)。
生活保障(支援)が必要な方でも所得税を払っていらっしゃる方も多いと思います。もし消費税増税の増収分と同じ額を所得税の増税により得るとすれば、そのような方でも負担増になる方が多いと思います。
>所得税の累進をきつくできないのなら(私はそう思っていません。もう少しきつくできるはずです。なぜなら過去にやっていたことだからです)
以前に申しましたように、高額所得者の数が減っている(最近4年間で2割減)状況では累進を(過去と同程度にきつくしても)高額所得者”だけ”からでは必要な増税額が得られないと思います。
>アメリカのような給付付税額控除を導入するべきです
所得税に累進がある(高額所得者は税率が高い)状況では逆累進性があるので、私は控除はなるべく減らして給付を行うべきだと思います。
所得税率を一律にすれば給付と控除は同等になりますが(給付付税額控除を主張する人は
給付と控除が同等になる一律税率を主張する人が多いように思います)、そうすると所得税の累進性はほとんど失われると思います。沢殿はそれでも給付付税額控除が良いと思われますか?
投稿: Alberich | 2014年11月25日 (火) 00時01分
誰かの給付を減らして、低所得者などの本当に必要な人に対する給付を増やすことが難しいという主張をされていますが、
そうすると、消費税率を上げていって財源を得ても、そういう人に対する給付は増えないということを証明してしまっています(つまり、だから消費税率をもっと上げなければいけないことを主張できていません)。なぜなら、消費税の場合、そういう人のほうが圧倒的に負担が大きいからです。給付の割合を変えなければ負担を減らせません。
それとこれまで議論してきていませんが、税金のかなりの割合が国債の償還と利払いに使われます。社会保障をどんどん増やせるわけではないのですから、現在と同じような「全員に一律」という方法では、低所得者層にとっては、「ネットの」負担が増えることになります。
給付付税額恒常は、控除だけではありません。所得よりも控除のほうが多くなったら給付するのです。
>給付と控除が同等になる一律税率を主張する人が多いように思います)、そうすると所得税の累進性はほとんど失われると思います。
まったく逆です。アメリカでは累進税率をとっていて、給付付税額控除を併用しています。日本のように控除だけしか行わない場合よりも、当然、累進性は高まります。
「日本の低所得者層は、所得に不相応な負担を強いられており、高所得者層は所得のシェアに比べると負担が少ない。このような所得と負担の分配の違いが、貧困率の逆転という現象を引き起こしているのである。」(阿部彩、『子供の貧困』、100ページ)
貧困率の逆転といのは、税や保険料を徴取し、配分した後の再配分後のほうが子供の貧困率が高くなっているということです(こんなことが起こっているのはOECD諸国の中で日本だけです)。
消費税率を上げるだけではこういう問題はまったく解消しません。
こうやって議論していっても、平行線をたどるだけです。
投稿: 沢ひかる | 2014年11月25日 (火) 20時32分
皆さん、今晩は。
沢ひかるさんのおっしゃるように、我が国は所得再分配後の貧困率が再分配前の貧困率より高い逆転現象を起こしていること、そして社会保障において受益者負担と言う考えが更に一層強まると考えられることから、消費税の税収を以て社会保障給付に充てたとしても貧困問題は解消されません。
そして、所得性向の問題、つまり収入に対する支出の比率を見れば、低所得者層ほど消費の比率が高く、消費税には収入の少ない人ほど税率が重くなる逆進性があることは明らかです。
橋本恭之関西大学経済学部教授の「消費税の逆進性とその緩和策」
http://www.jbaudit.go.jp/effort/study/mag/pdf/j41d03.pdf
消費税は決して公平な税金ではありませんし、社会保障給付の財源としてふさわしい税金でもありません。
そして、社会保障給付は全ての貧困層に回されるわけでもありません(子供を持てない非正規従業員は社会保障給付から漏れる危険性が大きいでしょう。)。社会保障給付が景気を活性あする保証もありません。
加えて、消費税の税収増加分が全て社会保障給付に回される保証はない上に、国債償還や法人税の税率引下げに使われることも十分に考えられます。
以上を考えれば、消費税の税率引上げは、社会保障給付の充実に繋がらず、むしろ、軽是法の疎外と全体の税収減少を招くことにより、社会保障給付の縮小を招く危険さえあると思わざるを得ません。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年11月26日 (水) 22時48分
税金払いたくない人が居てもいいじゃないですか?
極端に困っている人の例を出して、「小さな政府の連中は人非人だ!!」とか感情的な話をして、扇動しながら吊し上げるのは、健全な民主主義ではないと思う。
小さな政府は一切認めないと言わんばかりの論調。
僕はある程度格差があったほうが良いし社会保険料も税金も低くあるべきだと考える。
福祉労働者が可哀想だというが、じゃあマックやワタミの店員は可哀想じゃないのか?? 職業によって賃金に差があるのは当たり前。なんの問題もない
投稿: 山本 | 2014年11月27日 (木) 13時20分
ちょっと言い過ぎた
「弱者」を全面に出して恵まれた層の発言を封殺すべきではないと思う。
弱者ではない富裕層や中間層も自分の利益に基づく主張をしていくべきだ。国民の権利はなにも社会権だけではなく自由権・財産権もあるのだから、煽情的な「弱者見殺し」非難に屈するべきではない。
投稿: 山本 | 2014年11月27日 (木) 13時28分
沢ひかる殿
>誰かの給付を減らして、低所得者などの本当に必要な人に対する給付を増やすことが難しいという主張をされていますが、そうすると、消費税率を上げていって財源を得ても、そういう人に対する給付は増えないということを証明してしまっています(つまり、だから消費税率をもっと上げなければいけないことを主張できていません)。
>社会保障をどんどん増やせるわけではないのですから、現在と同じような「全員に一律」という方法では、低所得者層にとっては、「ネットの」負担が増えることになります。
私が申し上げたのは、福祉の給付は収入の低い人が対象なので、給付を受けている人の間で(全員一律ではなくその中で相対的に収入の多い人と低い人の間で給付の割合を変える等)の配分をしても”本当に必要な人”に対する給付を十分増やすのは難しいという事です。
”本当に必要な人”に対する給付を十分増やすためには、増税をして給付を受けていない人からの増収分によって給付全体を増やす必要があり、そうすれば低収入の世帯ほど給付増と負担増の差であるネットの負担を減らす事ができると思います。
>貧困率の逆転といのは、税や保険料を徴取し、配分した後の再配分後のほうが子供の貧困率が高くなっているということです
>消費税率を上げるだけではこういう問題はまったく解消しません。
仰る通り消費税率を上げるだけではこういう問題は解消しませんが、税率を上げたことによる増収分を子供の支援に充てれば(解消はできなくても)軽減できると思います。例えば、前に申しましたように今回の増税でも年収400万以下の(10歳以下の子供が複数いる)子育て世帯は負担増のほとんどを増税による給付増によって回収していると思います(8%→10%の増税だけに限ると負担増より給付増の方が多いと思います)
再配分後のほうが子供の貧困率が高くなっているという点に関しては、社会保険料に均等割りの部分があるという事も大きな原因だと思います。国民健康保険では所得が少なくても子供一人につき必ず約4万円は払わなければなりません。(消費税の増税分を充ててでも)子供に関する均等割りをなくせば再配分後の子供の貧困率は下がると思います。
投稿: Alberich | 2014年11月29日 (土) 00時28分
国道134号鎌倉殿
> そして、所得性向の問題、つまり収入に対する支出の比率を見れば、低所得者層ほど消費の比率が高く、消費税には収入の少ない人ほど税率が重くなる逆進性があることは明らかです。
私は生活の豊かさ(苦しさ)は世帯収入よりも世帯一人あたりの収入に依存するのではないかと思います。年収300万円の単身世帯と年収500万円の4人世帯では自由に使えるお金という意味ではそれほど違わない(単身世帯の方が多い?)と思います。しかし所得税では所得控除や累進性のために消費税以上に年収500万円の4人世帯の負担が重くなる(実質的な逆進性がある)のではないかと思います。
> 橋本恭之関西大学経済学部教授の「消費税の逆進性とその緩和策」
>http://www.jbaudit.go.jp/effort/study/mag/pdf/j41d03.pdf
これまでの研究は世帯当たりの収入で逆進性を比較しているものが多いと思いますが、世帯一人あたりの収入で比較する研究がないのは理由があるのでしょうか?
> そして、社会保障給付は全ての貧困層に回されるわけでもありません
>(子供を持てない非正規従業員は社会保障給付から漏れる危険性が大きいでしょう。)。
私はすべての貧困層に(税金による)給付という形で支援を行わなくてもよいと思います。
高齢者、病気の方や扶養家族がいる方のように働けない(働く意思があっても問題があって働けない)方には給付で支援する必要があると思いますが、そうでない(働くことができる、”青春の特権”をお持ちの)方は職がないのであればお金ではなく職を給付することにより支援すべきだと思いますし、職があるのであれば制度の変更(最低賃金の上昇、派遣社員と正社員の賃金の同一化等)により支援すべきだと思います。
> 加えて、消費税の税収増加分が全て社会保障給付に回される保証はない上に、国債償還や法人税の税率引下げに使われることも十分に考えられます。
仰る通り、財務省は増税分の一部を赤字国債の削減に充てると思います。法律では全額を社会保障に充てることになっていますが、今回の増税でも赤字国債を財源とした給付(国民年金の国家負担の1/3から1/2への増加分)を消費税を財源に変更したと思います(赤字国債が財源だったのを消費税を財源にしたので財務省は赤字国債の発行を削減できましたが、年金は社会保障ですから法律には違反していないと思います)
しかし増税をしなければ(財務省が本気で考えているのは赤字国債の削減だけだと思うので)増収できなかった分は既存の給付を削減すると思います。
また高齢化の進行により給付の対象者は増加します。このため財務省が削減しなかったとしても1人あたりの給付額は減少します。給付額を維持する為には増税をして給付対象者以外からの増収分を給付財源にして全体の給付額を多くするしかないと思います。
投稿: Alberich | 2014年11月29日 (土) 00時32分
皆さん、今晩は。Alberichさん、御返事愛がとうございます。
>年収300万円の単身世帯と年収500万円の4人世帯では自由に使えるお金という意味ではそれほど違わない(単身世帯の方が多い?)と思います。しかし所得税では所得控除や累進性のために消費税以上に年収500万円の4人世帯の負担が重くなる(実質的な逆進性がある)のではないかと思います。
所得税の課税最低限を見ると、単身世帯は年収11万4千円であるのに対し、夫婦2人+子供2人の世帯は夫婦どちらか一方のみの給与所得を得ている場合は261万6千円(子供が高校生又は大学生ならば325万円)になります。
「世帯構成に応じた所得税の課税最低限の状況」
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/235.htm
以上により、所得税の負担では、年収300万円の単身世帯と年収500万円の4人世帯ではほとんど同じと言えるでしょう。
>これまでの研究は世帯当たりの収入で逆進性を比較しているものが多いと思いますが、世帯一人あたりの収入で比較する研究がないのは理由があるのでしょうか?
これは難しい問題ですが、消費に目を向けると、住居費や光熱費等、世帯人員数に比例しない支出があるため、世帯の収入が異なれば、世帯一人当たりの収入が同じでも、世帯一人当たりの消費支出は世帯全体の収入の少ない方が多くなるからではないかと考えています。
>職がないのであればお金ではなく職を給付することにより支援すべきだと思いますし、職があるのであれば制度の変更(最低賃金の上昇、派遣社員と正社員の賃金の同一化等)により支援すべきだと思います。
職の給付自体に財政出動が必要な場合は多々あります。例えば公共事業のように。
また、制度の変更は確実性を書きますし、そもそも雇用が逼迫していないのに、経営側が労働者に有利な制度変更を受け容れるのか、政治的にも大いに疑わしいと言わざるを得ません。
>増税をしなければ(財務省が本気で考えているのは赤字国債の削減だけだと思うので)増収できなかった分は既存の給付を削減すると思います。
>給付額を維持する為には増税をして給付対象者以外からの増収分を給付財源にして全体の給付額を多くするしかないと思います。
消費税の税率を引き上げたら、最初の年は税収が増えても、2年目以降は所得税や法人税の税収減少が消費税の税収増加を上回り、消費税の税率引上げによって全体の税収が減ることは十分に考えられます。
また、我が国が現在採用している管理通貨(不換通貨)制度の下では、中央政府の収入は税収しかないわけではありません。通貨発行権(シニョリッジ)を行使することで中央政府の収入を確保する方法もあります。
消費税の税率引上げが中央政府の収入増加に必ずしもつながるわけではありませんし、増税が中央政府の収入増加の唯一の手段と言うわけでもありません。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年11月30日 (日) 20時39分
国道134号鎌倉殿
replyが遅くなってしまい申し訳ありません。
>>年収300万円の単身世帯と年収500万円の4人世帯では自由に使えるお金という意味ではそれほど違わない(単身世帯の方が多い?)と思います。しかし所得税では所得控除や累進性のために消費税以上に年収500万円の4人世帯の負担が重くなる(実質的な逆進性がある)のではないかと思います。
> 所得税の課税最低限を見ると、単身世帯は年収11万4千円であるのに対し、夫婦2人+子供2人の世帯は夫婦どちらか一方のみの給与所得を得ている場合は261万6千円(子供が高校生又は大学生ならば325万円)になります。
「世帯構成に応じた所得税の課税最低限の状況」
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/235.htm
> 以上により、所得税の負担では、年収300万円の単身世帯と年収500万円の4人世帯ではほとんど同じと言えるでしょう。
261万6千円は子供のうち1人が大学生の場合です。2人とも中学生以下の場合は扶養控除がない(その分、児童手当が増額された)ので、198万6千円です。子供が高校生以上でればアルバイトもできるし少なくとも両親がフルタイムで働くことができます。しかし小学生(低学年)以下だと両親とも働くためには子供を預ける必要があり支援が一番必要なのはこの年代の子供を持つ世帯だと思います。
また年収300万円の場合の給与所得控除は108万円(=300*0.3+18)なので課税最低限は157万4千円(=108+11.4+38)です。
つまり給与所得が年収300万円の単身世帯では142万6千円(=300-157.4)が課税対象ですが、給与所得が年収500万円の4人世帯(2人とも中学生以下)では302万4千円(=500-198.2)が課税対象です。
4人世帯では児童手当が24万円(2人とも3歳以上)~36万円(2人とも3歳以下)支給されますが、住民税を考えると4人世帯の方が課税額が多くなると思いますし、国保に加入していればもっと差が大きくなると思います。
> これは難しい問題ですが、消費に目を向けると、住居費や光熱費等、世帯人員数に比例しない支出があるため、世帯の収入が異なれば、世帯一人当たりの収入が同じでも、
世帯一人当たりの消費支出は世帯全体の収入の少ない方が多くなるからではないかと考えています。
仰るように世帯の消費支出は人員数には比例しないと思いますが、人員数が増えると必要な消費支出が増えると思います(人員数が増えると広い家が必要になりますし、そうなると住居費は増加します。また人数が増えると必要な食事や風呂も増えるので光熱費も増加します)
人員が1人増えると必要な消費支出がどの程度増えるかは実際に調査をしないと分からないと思いますが、例えば人員が1人増えると必要な消費支出が1/3人分増えるとすると、年収300万円の単身世帯の必要な消費支出と年収600万円の4人世帯の必要な消費支出が同じという事になります。
>>職がないのであればお金ではなく職を給付することにより支援すべきだと思いますし、職があるのであれば制度の変更(最低賃金の上昇、派遣社員と正社員の賃金の同一化等)により支援すべきだと思います。
> 職の給付自体に財政出動が必要な場合は多々あります。例えば公共事業のように。
仰るように雇用情勢が改善したのは、公共事業(第二の矢)による部分が大きいと思います。しかし(建前上は)公共事業は職の給付が目的ではありません。つまり公共事業は福祉の給付とは財布が別なので、このような(福祉とは別の予算を利用した)職の給付は福祉予算を使わずに支援ができるという利点があると思います。
> また、制度の変更は確実性を書きますし、そもそも雇用が逼迫していないのに、経営側が労働者に有利な制度変更を受け容れるのか、政治的にも大いに疑わしいと言わざるを得ません。
最近は、政府が(経営側の反対を押し切って)最低賃金を上昇させたりしているので、ささやかですが制度が有利に変更されているのではないでしょうか(これに関してはhamachan先生のご専門なので、非正規労働者でもちゃんと生活できる制度になるよう御尽力をお願いしたいと思います)
また仰るように経営側が労働者に有利な制度変更を受け容れるのかは疑わしいとしても、”経営側が制度変更を認めないから、その分は税金で給付してほしい”という要望を財務省(国民)が受け入れるのかも同じくらい疑わしいと思います。
> 消費税の税率を引き上げたら、最初の年は税収が増えても、2年目以降は所得税や法人税の税収減少が消費税の税収増加を上回り、消費税の税率引上げによって全体の税収が減ることは十分に考えられます。
昨年(消費税増税前)の国の税収は、所得税が約14兆円、消費税(5%)が約10兆円、法人税が約7兆円だそうです。
消費税の5%→8%の増税で6兆円、5%→10%の増税で10兆円の増収になりますが、所得税や法人税の税収が3割減とか半減という事は考えにくいので、全体の税収が減ることはないと思います。
> また、我が国が現在採用している管理通貨(不換通貨)制度の下では、中央政府の収入は税収しかないわけではありません。
通貨発行権(シニョリッジ)を行使することで中央政府の収入を確保する方法もあります。
通貨発行権(シニョリッジ)については有力な学識者で主張されている方はあまりいないと思いますが、私は経済学の知識はないので評価は控えます。
税収以外の中央政府の収入として(赤字)国債があると思います。
国道134号鎌倉殿は(増税せず)国債により社会福祉の給付を賄うことについてはどのようにお考えですか?
沢殿が引用された若田部氏は、
・社会福祉などの費用は経済成長による税収増で確保するべき
・(消費税に限らず所得税でも)増税は経済成長の妨げになるので反対
・成長による税収が確保できるまでは国債を発行する
という意見のように思われました。
投稿: Alberich | 2014年12月 9日 (火) 00時05分
皆さん、今晩は。Alberichさん、御返事ありがとうございます。
課税最低限についてはAlberichさんのおっしゃる通りでしょう。
世帯人員と消費支出の関係については資料が少なくて十分に論じることは困難でしょう。ただ、同じ世帯人員で比較すれば、消費税に逆進性があることを認めざるを得ないと思います。
雇用情勢については経済成長に大きく左右されるでしょう。
>所得税や法人税の税収が3割減とか半減という事は考えにくいので、全体の税収が減ることはないと思います。
それは、近年の所得税や法人税の税収が少ないことと無関係ではないでしょう。少なくとも、消費税の税率を引き上げれば、所得税や法人税の税収が減ることは避けられないと見るべきです。
>通貨発行権(シニョリッジ)については有力な学識者で主張されている方はあまりいないと思いますが、私は経済学の知識はないので評価は控えます。
その国の通貨の発行量が金(金本位制)や外貨(いわゆるドル・ペッグ制)に拘束されない管理通貨制(不換通貨)の場合、その通貨の発行権限を有する国は、税収の他に通貨の発行を収入に充てることができます。我が国の明治初期に発行された太政官札が通貨発行権(シニョリッジ)の行使による収入の一例といえるでしょう。
そして、現に我が国の通貨は管理通貨制であり、通貨発行権を行使することで中央政府の収入を確保することもできます。
>国道134号鎌倉殿は(増税せず)国債により社会福祉の給付を賄うことについてはどのようにお考えですか?
私は、発行権限を有する自国通貨建ての国債である限り、社会福祉の給付の財源を増税でなく国債の発行で賄うことに賛成いたします。
管理通貨制の下で、国債が全て自国通貨建てである場合は、通貨発行権を行使することで国債を償還することが可能だからです。
そして、長期金利が0%台である我が国においては、社会保障の財源を国債発行に求めることは、消費や経済成長を阻害する危険の大きい消費税の税率引上げよりも有益と考えられるからです。
なお、ここでいう通貨発行権とは、中央銀行が国債を買い取るために通貨を新たに発行し、新たに発行された通貨で国債を買い取ることも含めます。
皆さんはいかがお考えでしょうか。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年12月11日 (木) 00時47分
国道134号鎌倉殿
>ただ、同じ世帯人員で比較すれば、消費税に逆進性があることを認めざるを得ないと思います。
人員が同じ世帯間で比較すれば仰る通りです。私が問題にしているのは、人員が異なる世帯間での比較、つまり所得だけを考慮する所得税では控除や累進性があるために所得が多くても人員が多い世帯(子育て世帯)が所得が少なくても人員が少ない世帯(非子育て世帯)よりも負担が大きくなるのではないかという事です。
現在のように少子化への対応(子育て世帯への支援強化)が必要な状況では、これは考慮すべき点だと思います。
> ここでいう通貨発行権とは、中央銀行が国債を買い取るために通貨を新たに発行し、新たに発行された通貨で国債を買い取ることも含めます。
それは昔のドイツや最近のジンバブエで実行されたことではないでしょうか?
100兆円単位の国債を買い取るために新たに通貨を発行すると(物は増えずに通貨だけ100兆円単位で増えるので)ものすごいインフレになると思います。
投稿: Alberich | 2014年12月15日 (月) 00時20分
国道134号鎌倉さん
>同じ世帯人員で比較すれば、
>消費税に逆進性があることを認めざるを得ないと思います
給付を考えずに、消費税として負担した分が消えてなくなるものであれば、消費税に逆進性があることにはなりますね。
>社会福祉の給付の財源を増税でなく
>国債の発行で賄うことに賛成いたします。
どうして社会福祉に限るのでしょうか
社会保障の巨額さを考えれば、すべての財源を税ではなく国債の発行でまかなうことは不可能ではないと思いますが
投稿: bn2islander | 2014年12月17日 (水) 12時05分
皆さん、今晩は。Alberichさん、bn2islanderさん、御返事ありがとうございます。
先にbn2islanderさんにご返事いたします。Alberichさん、もうしばらくお待ち願います。
>給付を考えずに、消費税として負担した分が消えてなくなるものであれば、消費税に逆進性があることにはなりますね。
私は給付=再分配後の消費性向に関する資料を持ち合わせていませんが、給付を考えなければbn2islanderさんのおっしゃる通りです。
>どうして社会福祉に限るのでしょうか
国債発行で賄うというのは、社会福祉に限っているわけではありません。他の分野でもあり得ると思っています。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年12月18日 (木) 01時14分
皆さん、今晩は。
Alberichさん、御返事いたします。
>私が問題にしているのは、人員が異なる世帯間での比較、つまり所得だけを考慮する所得税では控除や累進性があるために所得が多くても人員が多い世帯(子育て世帯)が所得が少なくても人員が少ない世帯(非子育て世帯)よりも負担が大きくなるのではないかという事です。
私は、所得税では所得が多くても人員が多い世帯が所得が少なくても人員が少ない世帯よりも負担が大きくなるのではないかという問題については、子育て世代への控除の拡大等で対処できると考えています。
>>中央銀行が国債を買い取るために通貨を新たに発行し、新たに発行された通貨で国債を買い取ること
>昔のドイツや最近のジンバブエ
>100兆円単位の国債を買い取るために新たに通貨を発行すると(物は増えずに通貨だけ100兆円単位で増えるので)ものすごいインフレになると思います。
ドイツやジンバブエで起きたことは、いわゆるハイパー・インフレ、つまり中央銀行が通貨を新たに発行しても、外貨に対する通貨価値の下落故に通貨の需要に追い付かず、通貨を際限なく発行するために通貨価値が際限なく下落することであると考えられます。
ハイパー・インフレが起きる条件としては、輸入のための外貨を調達したり外貨建て債務を返済するための外貨を調達したりすることを目的として通貨を発行するも、通貨価値が下落して通貨を大量に発行するか、変動金利の国債を償還しようとして通貨を発行するも通貨の発行によって国債の金利が上昇したために通貨を大量に発行することを挙げることができると思います。
我が国の国債は全て自国通貨である円で賄われていますので、国債償還のために外貨を調達する必要はありません。
我が国の国債発行残高の内、変動金利の国債がどれだけあるかについては私は把握していません。しかし、個人向け変動金利国債の発行状況を見る限りでは、全体の発行残高の約5%、約50兆円程度ではないかと考えています。
官民全体の外貨建て資産・債務についても、平成25年度末における外貨建ての対外資産は607.1兆円であるのに対し、外貨建ての対外負債は138.1兆円であり、外貨建ての対外純資産は469兆円にも上ります。
「平成25年末 本邦対外資産負債残高 増減要因(試算)」
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2013_g1.pdf
つまり、我が国は外貨の調達のために通貨を発行する程外貨事情は悪くありませんし、国債償還のために通貨を発行することで返済額が際限なく増える状況にもありません。
私はかつてのドイツやジンバブエの外貨事情については存じませんが、現在の我が国の外貨事情及び国債金利の状況をみれば、我が国の中央銀行が国債引き受けのために通貨を発行しても、ハイパー・インフレにはならないと考えています。
長くなりましたが、皆さんはいかがお考えでしょうか。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年12月18日 (木) 23時31分
私は、経済とか経済学とかはさっぱりですが、「財政」の表層を眺めていて思うにはです。
国債の「60年償還ルール」の下で、毎年かなりの借換をしてるから、低利のときの固定金利で国債を発行してても、借換の度に金利は変動するですよ。借換期の後は借換時の利率になる。
ですので固定金利の国債も、60年という償還スパンの下では、事実上変動金利ですよ。
で、いかに低利であっても(仮に固定金利だとしても)、国債発行総額が増えるほどに、それだけで毎年の元利払いの金額は(利率が毎年固定であっても)増えますから、税収あるいは歳入にしめる”元利払いのために使途が決まっている金額の割合”も増えてきます。
とういか、この間のこの割合の伸び方は結構スゴいのです。国債を発行しただけ伸びてきますので。
それでも最近までは、60年償還ルールの下で、高利で発行した国債を低利で借り換えていたこともあって、あまり伸びては来なかったのですが、今は低利借換は一巡しているので、今後は利率と発行残高の動向がよりダイレクトに響いてくるはずです。
それはともかく、国債費が国債費以外の支出項目への支出を圧迫する方向を指向するので、国債発行残高の累積それ自体が、社会保障の切り下げ圧力にはなるかと。
毎年度の一般会計の支出の第1位が国債の元利償還費、第2位が社会保障費ですので、おそらく社会保障費は元利償還費の動静と無関係には居られないでしょうから。
今般の消費増税は、”借金でまかなっている(将来世代の財布に手を入れている)現状を、少しでも税収を原資に支出する・今の社会保障費は今の世代が負担するという原則に近づける”というのが主眼ですので、「社会保障には間違いなく増収分を全部使っている、ただしその使い方として社会保障費の借金依存率をさげるために使うのだから、外形的に制度の充実は無いか僅か」ってコトのハズですし。
投稿: 秘匿希望。 | 2014年12月22日 (月) 19時21分
秘匿希望。( 2014年12月22日 (月) 19時21分)の訂正です。m(__)m
*間違い=コメント欄の記述*
一般会計の支出の
第1位が国債の元利償還費、
第2位が社会保障費
*正しい*
一般会計の支出の
第1位が社会保障費、
第2位が国債の元利償還費
でした。
恥ずかしながら、コメント投稿時の念頭にあった数字が古すぎました。以上、訂正を投稿させてもらいます。ぺこり。
投稿: 秘匿希望。 | 2014年12月25日 (木) 13時09分
皆さん、今晩は。
秘匿希望。さん、遅れましたが返事いたします。
>国債の「60年償還ルール」の下で、毎年かなりの借換をしてるから、低利のときの固定金利で国債を発行してても、借換の度に金利は変動するですよ。借換期の後は借換時の利率になる。
>固定金利の国債も、60年という償還スパンの下では、事実上変動金利ですよ。
秘匿希望。さん、本当の変動金利は、インフレなどで金利が随時変動し、金利が高騰し続ければ返済額も増えるものであり、金利を含めた総返済額は予め確定したものではありません。いわゆるハイパー・インフレになって金利が上昇すれば、返済額が際限なく増えることもあり得ます。
これに対し、「60年償還ルール」は、借り換えの度に金利は変わりますが、借り換えた国債の金利が固定金利である限り、償還期間中の金利は変動しません。つまり、各国債の総返済額は確定しています。
つまり、借り換えの際に金利が変動する「60年償還ルール」においても、管理通貨制の下では、発行権を有する自国通貨で発行される固定金利の国債は確実に償還できることになります。
>いかに低利であっても(仮に固定金利だとしても)、国債発行総額が増えるほどに、それだけで毎年の元利払いの金額は(利率が毎年固定であっても)増えますから、税収あるいは歳入にしめる”元利払いのために使途が決まっている金額の割合”も増えてきます。
>国債費が国債費以外の支出項目への支出を圧迫する方向を指向するので
これは、通貨発行に厳しい物理的制約のある金本位制やドル・ペッグ制には確かに当てはまります。
しかし、通貨発行に物理的制約のない管理通貨制の下では通貨発行益を歳入にすることができるので、通貨発行益を利用することで、国債費以外の支出項目が国債費に圧迫されることを防ぐことができます。
>”借金でまかなっている(将来世代の財布に手を入れている)
市場から国債を買い入れるなどして中央銀行が国債を保有している場合は、国債が発行権を有する自国通貨建てであれば、国の返済義務は事実上ありません。
つまり、国債の内、中央銀行が保有している分については、将来世代が負担することも事実上ありません。
もちろん管理通貨制の下では、国債の償還も、将来世代が負担するのが唯一の手段ではなく、通貨発行益を活用することで償還することもできます。
私は、我が国が管理通貨制を採用していることを念頭に置いて、財政を論じてほしいと思っています。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年12月28日 (日) 00時01分
国道134号鎌倉殿
> 私は、所得税では所得が多くても人員が多い世帯が所得が少なくても人員が少ない世帯よりも負担が大きくなるのではないかという問題については、子育て世代への控除の拡大等で対処できると考えています。
仰るように子育てに関する支出を控除(私は控除では高所得者ほど有利になるので手当の方が良いと思いますが)でカバーできるのであれば累進性のある所得税でもよいと思います。しかしそれらがカバーされるまでは(収入が800万円未満の子育て世帯(子育て世帯の約7割)に対する)所得税の増税には反対です。
> ハイパー・インフレが起きる条件としては、輸入のための外貨を調達したり外貨建て債務を返済するための外貨を調達したりすることを目的として通貨を発行するも、通貨価値が下落して通貨を大量に発行するか、変動金利の国債を償還しようとして通貨を発行するも通貨の発行によって国債の金利が上昇したために通貨を大量に発行することを挙げることができると思います。
外貨を調達する必要がなく変動金利の国債を発行していなくても、物を増やさずに通貨だけ大量に増やせばひどいインフレになると思います。例えば徳川綱吉の時代は鎖国をしていたので外貨とは関係なく(幕府の借金はあったかもしれませんが)変動金利ではなかったと思いますが、幕府財政の赤字を解消するために(従来の小判より金の含有量を減らして)大量の小判を発行してインフレになりました。また終戦直後の日本も(占領下のため)外貨とは関係なく、変動金利の国債も発行していなかったと思いますが、戦時中に発行した大量の国債を償還するために通貨を大量に発行したためひどいインフレになりました。
投稿: Alberich | 2014年12月29日 (月) 01時00分
皆さん、今晩は。Alberichさん、御返事ありがとうございます。
>外貨を調達する必要がなく変動金利の国債を発行していなくても、物を増やさずに通貨だけ大量に増やせばひどいインフレになると思います。
インフレは、間接税の増税を別にすれば、需要が増加して需要と供給の均衡が崩れた場合に生じます。
変動金利の上昇や外貨に対する通貨価値の下落によって通貨をいくら増やしても追いつかないいわゆるハイパー・インフレにならない限り、通貨を新規に発行しただけではインフレにならないと思います。新規かつ大量に供給された通貨が家計に流れるとは限らない(機関投資家など国債の大口保有者にとどまることもあり得る)~です。
もちろん、通貨の大量発行でだぶついた資金が投機に回ることで物価高騰につながることはあり得ますが、ハイパー・インフレにならない限り、規制や税制で対処することは可能です。
また、 私は、江戸時代も終戦直後も、現在の我が国とは条件が異なりすぎると思っています。
>例えば徳川綱吉の時代は鎖国をしていたので外貨とは関係なく(幕府の借金はあったかもしれませんが)変動金利ではなかったと思いますが、幕府財政の赤字を解消するために(従来の小判より金の含有量を減らして)大量の小判を発行してインフレになりました。
江戸時代は、鎖国(正式には海禁政策)していましたが、長崎を通じて、オランダ及び中国と貿易をしていました。いわゆる長崎貿易です。
長崎貿易では金銀の流出が問題になり、綱吉時代の貞享2年(1685年)に定高貿易法を制定して貿易額を制限する等しています。つまり、公儀(幕府)は貿易赤字の問題を抱え続けていました。
>終戦直後の日本も(占領下のため)外貨とは関係なく、変動金利の国債も発行していなかったと思いますが、戦時中に発行した大量の国債を償還するために通貨を大量に発行したためひどいインフレになりました。
日本がアメリカに占領されていた時代でも日本本土における通貨はアメリカドルではなく日本円であり、外貨の問題を抱えていました。外貨建ての公的債務も抱えていました。
しかも戦争によって生産基盤が破壊されており、物資の多くは輸入で賄わなければなりませんでした。私は当時の我が国の国際収支についてよく存じませんが、おそらく大幅な赤字だったと思われます。また外貨準備高もほとんどなかったのではないかと思われます。
私は、江戸時代も終戦直後も、単に通貨を発行しただけでインフレになったのではなく、国際収支の赤字や外貨準備高の減少も絡んでいた為にインフレになったのではないかと考えています。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2014年12月30日 (火) 01時48分
皆さん、今晩は。
かなり時間が経ってしまいましたが、あらためて書き込みます。
あのトマ・ピケティ氏が、現在発売中の日経ビジネス誌(2015.02.16、No.1779)における吉川洋氏との対談で、我が国の消費税税率引上げを、経済成長を妨げるとして批判しています。
ネットでは日経ビジネスオンライン2015年2月6日「ニュースを斬る」の「富の集中? もっと重要な問題がある!」で読む庫田ができます。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150204/277158/
ピケティ氏は母国フランスでは社会党に近い人物といわれています。
我が国のいわゆる社会民主主義者には社会保障の財源を確保するために消費税の税率引き上げを求める声があるようです。しかし、彼らと政治的に近いはずのピケティ氏が我が国の消費税の税率引上げに否定的な見解を示したことは、消費税の税率引き上げを求める我が国の社会民主主義者にとって大きな打撃になったのではないかと思われます。
投稿: 国道134号鎌倉 | 2015年2月18日 (水) 00時30分