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2014年10月25日 (土)

単なるマタハラ裁判じゃなくって・・・

一昨日の最高裁判決については、マスコミもそろってマタハラががががが、という感じですが、すでにアップされている判決文を読むと、なかなかディープな問題が孕まれているようです。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/577/084577_hanrei.pdf

現時点では踏み込んだ論評は労務屋さんのこれくらいのようですが、

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20141024#p1

「このあたりhamachan先生なら「メンバーシップ型雇用ががが」とおっしゃられそうな。」とけしかけられてますが(笑)、いやまさにそこが微妙なところだろうとわたしも感じました。

これは結局「降格」ってなあに?という問題なんですね。

純粋ジョブ型で、当該職務の難易度に基づいて値札がつけられているのであれば、妊娠中の軽易業務への転換によってジョブの値段が下がればもらう賃金も下がるのは当たり前。同一労働同一賃金とは異なる労働異なる賃金ということですから。

一方、ジョブではなく人そのものに値札が付いているのであれば、軽易業務に移ろうがハード業務に移ろうが(別途手当がでることはあっても)基本給は変わらない。これがメンバーシップ型の基本。

で、「降格」ってのは、一般的にはメンバーシップ型の基本構造である職能資格制における上の資格から下の資格へ下げることであって、仕事の中身とは直接関係があるとは限らない、というのが日本型システムにおける定義です。正確には、これは「昇格」の対義語としての「降格」ですね。ですから、仕事の中身ではなく、もらう賃金に直接関わる概念です。

ところが、「昇格」にはちょっと意味の違う類義語があります。「昇進」てことばです。実際にはほとんど同義語で使う人もいますが、正確に言うと、昇格と違ってこちらは仕事の中身に直接関わる。企業内の管理監督構造の中でより上のジョブに上がることであって、とりわけ日本ではだからといって昇格するとは限らず、つまり賃金が上がるとは限らないこともあります。

では、「昇進」の対義語はなあに?と聞くと、これが「降格」だったりするから話がややこしくなるのですね。

ううん、本当は「職位低下」とかそれ専用の言葉にした方が紛らわしくなくて良いのではないかと思うのですが、下げる方は一緒くたの言葉なんです。

そうすると、その「降格」って、実際の企業組織内における機能としてのジョブの位取りが下がるってことなの?それとも賃金決定基準である人の値札としての職能資格を下げることなの?という問題が出てきます。

この判決の事件って、そこがなんだか曖昧でごちゃごちゃしているんですね。要は「副主任」ていう資格から「降格」させられた、って話なんですが、軽易な業務に移るというのだから職位が低下するのはある意味当たり前。純粋ジョブ型ならそれに応じて賃金が下がるのも当たり前。

ところがメンバーシップ型を前提にすれば、仕事の中身と切り離されているはずの職能資格上の「降格を」させられる筋合いはないはずということになります。それなら仕事もろくにしてないのに高い給料もらっている「働かないオジサン」もさっさと「降格」しろよ、ってことになる。

この判決を読んでも、「副主任」という「資格」は、一方では実際のリハビリ科とかBとかの業務推進単位における機能的地位であるかのようにも見えるし、一方で管理職手当を出すためのまさに職能資格であるようにも見える、という大変曖昧な印象を受けます。

そこのところが、労務屋さんも気になったし、私も気になった、

一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ,上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば,女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが,当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。

という大変微妙な表現の背後にあるのではないでしょうか。「一般に」として言っているのは、まさに日本型雇用システムにおける職能資格制における典型的な「降格」で、だからそれは均等法違反だよ、でおおむね済むわけですが、「又は」以下で書かれているのは、「副主任」ってのがそんな仕事の中身と関係ないただのラベルじゃなくって、実際にその職場における機能的地位を示すものである場合、つまりなにがしかジョブ型における職位を示すものである場合は、そうは簡単に論じられないよ、ということをさりげに示しているように思われます。

一般的には病院というのは人の配置の仕方においてはわりとジョブ型の世界ですが、しかし処遇制度は職能資格制度をそのまま取り入れていることが多いので、こういうことになるのでしょう。

この判決を、ただのマタハラ事件判決として消費してしまうのは、ですからいささかもったいない面があるのです。

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» マタハラ降格訴訟 最高裁が変わってきたのか…それとも [シジフォス]
もっと早く取り上げたいと思ったが、多くの方が論評され、また逆転勝訴の「真意」が不明のためスルーしていた「マタハラ降格訴訟最高裁判決」に関して綴る。一、二審判決を読まないと、最高裁との相違が見えてこないのだが、実に興味深い最高裁判決文だった。かつて裁判所の判決文は読みにくかった。かなりの根性が無いと解読不可能だったが、実に短く読みやすい。さらには櫻井龍子主任裁判官が2800字も補足意見を付け加えている。解明すべき点が多々あるのではないか。... [続きを読む]

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