マタニティと「母性」の間
少し前に、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-99d2.html (マタハラ概念の法的意義は・・・)
というエントリを書きました。
・・・ここで言われていることの実体面については、全面的に賛成です。そして、同じ思いを持っている方から見れば以下で述べることは、細かな法律談義で大事なことをおとしめようとする法匪の議論に見えるかもしれません。
でも、先日のたかの友梨事件のパワハラ談義と同じ話なのですが、現行法ですでに立派な違法行為であるような行為を、いまさら新法でマタハラという新たな概念で規定しようという話には、やはり尤もという話にはならないのです。
・・・・・・
これらによって禁止されている行為に当てはまらないような、しかし労働者のマタニティに悪影響を与えるようなハラスメント行為をマタハラという概念でとらえて規制していこうという議論には法的な意味があります。
しかし、上で言われているマタハラ防止のための一文というのは、すでにれっきとした違法行為であることどもを「遵守を徹底することを明記してもら」うことなんですね。
論理的には、ここで書いたことに訂正すべき点はありません。しかし、その後よく考えてみたら、そもそも現行法ですでに規定されているマタニティ保護が、素直にマタニティ保護として世の中的に受け取られていないからかもしれないということに思い至りました。
いうまでもなく、マタニティとは妊娠・出産に関わる物事を指します。マタニティ・センターは助産院、マタニティ・リーブは産前産後休暇、マタニティ・ウェアは妊婦服、マタニティ・ベルトは岩田帯、マタニティ・ルームは分娩室。
ところがなぜか、マタニティ・プロテクションは「母性保護」と訳すんですな、これが。
いやまあ、おなかに子供を持つことを「母性」といって必ずしも悪いわけではないですが、それが保護しようとしている物事そのものとは、少なくともピンポイント的にはいささかずれたニュアンスを与えることは間違いないでしょう、
確かに労働基準法はしっかりと「母性」を保護しています。男女雇用機会均等法にも「母性」保護規定が含まれています。
でも、一般国民の感覚からすると、「母性」保護って、それこそ「3年間だっこし放題」みたいなイメージなのかもしれません。それがおなかに子供を持った妊婦の保護だという、マタニティの保護だということが、意外にきちんと伝わっていないのかもしれません。
これが言葉尻を捉えた戯言であってくれれば大変喜ばしいのですが、もし「母性」なる言葉がかえってマタニティ保護を引き下げるような効果を持っていたとしたら、このあたりの言葉遣いも再考した方が良いのかもしれません。
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コメント
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最近のposseについて言わせていただくと、“ブラックバイト”はいいと思うけど、波及効果で別のところの焦点までがぼやけるという意味で、“ブラック国家”はやめた方がいいような気がするんだけどなぁ。
投稿: 原口 | 2014年10月 5日 (日) 22時56分