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本日の朝日社説on派遣がまともすぎる

派遣法の審議が始まりましたが、世間の認識はあまりにもレベルが低すぎて話になりません。昨晩もNHKラジオの「私も一言!夕方ニュース」に生出演してきましたが、冒頭から「通訳、秘書などの専門業務は云々」と、インチキな議論を前提にした説明から入るので、それがいかに法律制定当時から現実と違うものだったかを説明しなければなりませんでした。

一方で、3法則氏やそのまわりをうろつくイナゴ諸氏のように、労働条件をひたすら引き下げ、雇用を不安定にすれば解決になるかの如き暴論があたりをうろつき、まことに情けない状況であるなあ、と思っていたところ、今朝の朝日新聞の社説があまりにもまともすぎる議論を展開していて、思わず、「あれ?これって、オレが書いたんだっけ?」と思ってしまいましたがな。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html

労働者派遣法改正案の国会審議が始まった。

 派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んで、派遣先企業で働いている。派遣先で仕事がなくなると派遣会社から解雇されたり、賃金を安くされたりする問題がある。このため、派遣労働が広がらないよう、派遣先が派遣社員を受け入れる期間は上限3年に規制されている。ただし、専門的だとされる26業務では期間の制限はない。

 この「業務」による規制がわかりにくいという主張が、派遣業界や経済界に強かった。派遣労働者にとっても、上限を業務で決めると、例えば前任者が2年をこなすと、後任の派遣社員が1年しか働けない事態が起きてしまう。

 改正案は、業務による規制を見直し、派遣会社と派遣社員の間の契約期間によって区別することにした。期間を決められている有期雇用派遣と、定年まで働ける無期雇用派遣だ。同じ派遣先で働ける期間は、前者が上限3年、後者は無制限となる。

 派遣会社が無期雇用派遣を増やせば、派遣社員から見ると、解雇の不安は緩和される一方で、働き方が派遣というスタイルに固定される恐れもある。有期雇用派遣の場合は、3年ごとに派遣社員を代えれば良く、業務自体が派遣に固定化されてしまう可能性が残る。国会での論議も、この見方を巡って賛否が割れている。

 しかし、目指すべき方向ははっきりしている。同じ価値のある仕事をしている人には同じ待遇を義務づける「均等待遇原則」を導入することだ。

 この原則があれば、派遣会社に支払うマージンが必要な派遣労働は直接雇用よりも割高になり、コスト目的で派遣労働を使うことへの歯止めにもなる。

 改正案のとりまとめ過程で均等待遇原則の導入が提案されたが、経営者側の反対で見送られた経緯がある。確かに、いきなり賃金の均等待遇を実現させるには、無理もあるだろう。しかし、交通費などの手当や福利厚生面で待遇に違いがある。まず、そんな扱いをやめて、原則の実現を目標にするべきだ。

 改正案には、これまで一部の派遣会社に認められていた届け出制をやめ、全てを許可制にすることも盛り込まれた。条件を満たせば届け出だけですんだことが、不適切な業者がはびこる一因になっていたからだ。

 改正案に盛り込まれた改善の流れを太くするためにも、派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること。その責任が、この国会にはある。

そう、国会にはありますし、国会議員が判ってない馬鹿な議論をしないように、ちゃんと物事の筋道を示す責任が、朝日新聞に限らず、マスコミにはあるのです。

(参考)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/genki1402.html(「世界標準に近づく派遣労働規制」)

 2014年1月29日の労働政策審議会(※1)において、労働者派遣法改正に向けた報告書が取りまとめられました。今回の見直しの出発点は、2012年(民主党政権時代)の改正の際に、いわゆる「専門業務」に該当するか否かによって、派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度のあり方について、「今後、検討・議論を開始すべき」とした国会附帯決議にさかのぼります。この付帯決議を受けて、改正法が施行された2012年10月に学識経験者からなる「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が設置され、この研究会において派遣法のあり方に関する論議が進められてきました(筆者も有識者としてヒアリングを受け、欧州の現状などを説明しています)。この研究会での論議は、2013年8月に研究会報告書としてとりまとめられ、これを受けて、直ちに労働政策審議会での審議が開始され、今日に至っています。
 この研究会の論議過程においては、これまで筆者が繰り返し主張してきた法制度の根本を左右するような論点が打ち出されています。それは、派遣法について、世界各国では、派遣労働者保護を主目的としているのに対し、日本では、日本的雇用慣行の中にいる常用労働者(いわゆる正規社員)を代替しないこと、すわわち「常用代替の防止」を主目的としている点についてです。
 このため、最初に派遣法が制定された当時(1985年)のロジックは、新規学卒から定年退職までの終身雇用慣行の中に入らないような労働者だけに派遣という働き方を認めるというものでした。それを法律上の論理としては、「専門的業務は、専門性が高いがゆえに常用代替しない」「特別な雇用管理だから常用代替しない」と言ったわけです。しかし、その専門性が高いとされた「専門的業務」の中身は、主に結婚・妊娠・出産などを契機に退職した元女性社員たちの「事務的書記的労働」でした。そして、「ファイリング」という職業分類表にも登場しない「業務」が最大の派遣専門業務となったのは、その間の論理的隙間を埋めるものであり、後には事務職なら最低限のスキルである「事務用機器操作」が専門業務としてその隙間を埋めました。このようなごまかしが世間で通用したのは、女性社員は新規学卒から結婚退職までの短期雇用という社会風潮のもと、女性社員の代替は常用代替にはならないと認識されていたからでしょう。
その後、ILO181号条約の制定を受けて行われた1999年の派遣法改正でも、常用代替防止の思想は維持されています。この時の改正において、専門業務だから常用代替しないというフィクションを維持したまま付け加えられたのは、専門業務ではなく、それゆえ常用代替する危険性のある一般業務について、派遣期間を限定するから常用代替の危険性が少なくなるという新たなロジックです。この期間制限は、欧州などで見られる「雇用契約は無期契約が原則であるから、有期契約の期間を限定して無期雇用への転換を図るべき」という発想によるものではまったくありません。これは単に、派遣労働者本人とは関係のない派遣会社による派遣先に対する派遣サービスの上限を定めているにすぎないのです。そして、こうした歪みが露呈したのが有名な「いよぎん事件(※2)」です。裁判所は、派遣法は常用代替防止が目的だからといって雇止め法理の適用を認めませんでした。つまりは、日本の派遣法は、派遣労働者を法の保護の対象外とすることを要求しているのです。
先の研究会報告では、この問題についても斬り込んではいるものの、常用代替防止という考え方を全面的に転換するのではなく、その中身を部分的に入れ替えることで対応しようとしています。それを研究会報告では、「再構成した常用代替防止」と呼んでいますが、常用代替の防止と派遣労働者の保護という異なる考え方のものを無理に同じ言葉の下に入れ込もうとしたきらいがあり、かえって混乱を招いているようにも見えます。
 具体的には、まず、無期雇用派遣については「派遣労働の中でも雇用の安定やキャリアアップの点で優位であること」から「常用代替防止の対象外」としたこと、くわえて有期雇用派遣については「個人が特定の仕事に有期雇用派遣として固定されないこと」を目的とするとともに、従来通り「派遣先の常用労働者が有期雇用派遣に代替されないことという派遣先レベルの常用代替防止」も維持するとした点です。少なくとも、前2者については、日本の派遣法が制定された当初に考えられていた「常用代替防止」ではなく、むしろヨーロッパで一般的な無期雇用原則の考え方であると言えます。それをなお「常用代替防止」という名で呼び、旧来型のものと一緒にしてしまうことが、議論の構図をすっきりさせない原因となっているのではと思います。
 その一方で筆者は、研究会報告や労働政策審議会での審議において、欧州諸国で派遣を論じるときには当然の前提がなおざりにされているようにも見え、物足りなさを感じています。それは、世界の派遣事業者団体であるCIETT(国際人材派遣事業団体連合)が繰り返し強調している「ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」と「労使パートナーシップ(協調型労使関係)」という前提です。残念ながら日本では、労使いずれの側からも派遣に関してディーセントワークと労使パートナーシップという言葉が語られることはありません。これは、派遣法において「常用代替防止」が議論の中心を占めてきたがゆえの帰結です。
 ここで、筆者はむしろ、労使パートナーシップを通じたディーセントワークの実現に向けて、近年非正規労働法制に関して繰り返し論じられてきている集団的労使関係システムの活用について、派遣業界が先鞭をつけることができないかと考えています。厚生労働省の「非正規雇用のビジョンに関する懇談会」や「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」の報告書でも強調されている集団的労使関係システムを通じた均等待遇という新たな枠組みの設定にむけた試みです。それは、産別労働組合主導の形で派遣労働者を組織化していくという形でもあり得るでしょうし、派遣会社主導で派遣労働者代表制を構築するという形でもあり得るのではと思います。
 また、今回の論議の中で派遣業界にとって、大きな影響を及ぼす可能性があるのが、すべての派遣事業を許可制(※3)にするという方針です。ここに踏み込んだことは日本の派遣業界を先進諸国並みに透明かつ健全なものにしていくうえで極めて重要ではないかと思われます。くわえて、無期雇用の派遣労働者について個人単位及び派遣先単位の期間制限の例外とするという方針とが合わさることで、定期的な許可更新や無期雇用への対応などによる負担から、多くの零細派遣会社の経営が立ちゆかなくなることが想定されます。
 しかしながら、派遣法はそもそも派遣会社が使用者としての責任を負うことを前提として作られており、これは本来的には、相当程度の派遣先顧客企業を有することによって、個々の派遣の発生消滅をつなぎながら全体として派遣就労がおおむね継続されていけるような企業体力を企業に求めるものです。その意味では、過度に零細派遣会社が多い日本の派遣労働市場は、さらなる透明化、健全化が必要な状態にあるとも言えますし、もっと大手や中堅の派遣会社に集約されていくことが望ましいとも言えるのではないでしょうか。そして、そのような形で派遣会社が集約されていくことが、集団的労使関係システムの確立を通じた均等待遇をはじめとしたディーセントワークの実現をもたらす大前提ともなるはずです。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/supportcenter14main.html(「特殊日本型派遣法を正道に戻す時期」)

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コメント

hamachan、お疲れ様でした。私はラジオ聴きませんでしたが、出演者を改心させることは出来ましたか?
昨日もコメントさせていただきましたが、何故このような誤解が当の派遣労働者にまで蔓延してしまったのか。真因を突き止めて根絶しないといけないと思います。思い当たる節はありますか?

投稿: NAO | 2014年10月30日 (木) 13時24分

濱口先生、こんにちは。
(上の文章を全部読んでいないでコメントしています。これから読みます。)
 
 
賛成・反対の前に、まずは事実を知ることが必要だと思っています。

なぜ、メディアが、事実をそのまま伝えないのか。「番組のストーリーがあらかじめ決まっている」という点がおかしいと私は思います。
 
  
なぜ専門家の意見(≒事実の一部分/一側面)をそのまま、視聴者に伝えようとしないのか。
番組側が努力すべきは、専門家の意見を視聴者にわかりやすく伝えることだと私は思う。
 
「視聴者」を想定して独自にストーリーを作った後で、それに専門家を組み込むというスタイルは、事実を歪める可能性があるし、今回は実際に歪めている。



NHK News web 10/28放送分(10分間)
で、教授を呼んで派遣法改正の説明をしていました。この報道に腹が立ったので、コメントさせてください。

投稿: :) | 2014年10月30日 (木) 23時18分

例えば、
一番最初に、この数字を見てください!と、「派遣労働者数 127万人」というフリップをキャスターが出しました。
多いとも少ないとも、現在働いている人の総数も、言及しませんでした。これは、悪意があったかはわからないけれど、誤解を生む演出だと思います。
 
(私も誤解した一人で、「多っ!」と思いました。
実際には、総数は5253万人で、そのうち、いわゆる非正規雇用は1948万人なんですね)
 
 
 
また、使用されたVTRは必要ないと私は思います。
10分番組の後半(6’35~7'24)に流されたのですが、
派遣から正社員を目指したが出来ない、九州に住む50代女性が出てきました。「”派遣でこれをやった”ということが面接を受けたとき評価してもらえない。派遣の場合は将来を見通すのが一番難しい」と語っています。
 
制度・政策の一部分として派遣法や改正が存在するのであり、現実の問題すべてを、労働法の分野のみで解決できることではない。と、私は考えています。つまり、その質問は政治家にしろ!という質問ばかりをキャスターはしていたと思います。派遣法そのものを伝えることを疎かにする一方で。 
 

「専門家が流されず発言しなければならない」という意見もあるかもしれません。が、もっとも問題があるのは、専門家をダシにしようとする番組側だと私は思います。「メディアがこんなもんだ(だからしょうがない)」という常識に私は反対します。

NHK news web に苦情と改善要求をします!
濱口先生も、もしこの報道の仕方に違和感があれば、苦情やシェアをお願いします!
失礼します。

(※
ちなみに私は派遣法や改正、労働法をほとんど理解していません。今はまだ改正に賛成・反対どちらか決められません。)


NHK news web 9/28放送分
http://www3.nhk.or.jp/news/newsweb/index.html

投稿: :) | 2014年10月30日 (木) 23時21分

「メンバーシップ型雇用」に基づくジョブローテーションで派遣社員と同じ現場に入った時に給与体系との抵触が生じた場合はどうするのですか?

投稿: aiueo | 2014年10月31日 (金) 00時04分

濱口先生、↑のコメントでごちゃごちゃ書き、ご迷惑をおかけしました。
意見がまとまったので、再度書き込みました!

濱口先生にとりあえず読んでほしかったので、コメント承認はどちらでもいいです!
それでは・・! :)
(長文で投稿できなかったので、途中で分けます)


=======
討論ではなく解説のために専門家が番組に呼ばれたのなら、番組の影響を受けないで、専門家の意見そのままを私は知りたいです。

NHK news web 派遣法改正についての番組で、本庄先生がゲストで呼ばれました。この放送に私は違和感を持ったので、改善の意見を出そうと思います。
(ちなみに、私は派遣法や労働法を十分に理解できていないので、今のところ派遣法改正は賛成でも反対でもないです。)

1、番組の構成
2、数字の提示


1、まず、番組がむやみに、改正に賛成派(=本庄先生)・反対派(=ツイート、VTR)の対立構造を作りあげようとした点に、私は賛成できません。

わたしは、賛成・反対の議論をする前に、事実に基づいた議論の土台を持つことが必要だと考えています。
例えば、憲法9条改正に賛成の人と反対の人が議論しています。「9条=実際は違憲状態、自衛権を禁じている」という認識で賛成、「9条=日本が戦争しないためのもの」という認識で反対の場合、議論が全くかみ合いませんよね。特にお互いが「なぜその意見なのか」を知ろうとしないで賛成だ反対だばかり言っていると・・。それなら、一度その感情や意見を横に置いて、優秀な専門家に9条について解説してもらいましょう、、。優秀な専門家の意見が事実のすべてとは言いませんが、事実の一側面ではあると思うんです。

投稿: :) | 2014年11月 2日 (日) 00時11分

 
 
つまり、「そもそも派遣法は何?改正はどういうこと?」という解説をするために、専門家として本庄先生が番組に呼ばれたのならば、視聴者にわかりやすく解説をするために、むやみに賛成派・反対派を作る必要は無かったと私は思います。必要が無かっただけではなく、厳しい言い方をすれば、今回の改正について誤解を与えかねないと、私は考えます。
 
本庄先生が派遣法の変遷をふつうに解説する。それを、視聴者にわかりやすく伝えるために、番組側はサポートする。というスタイルの方が、今回の場合は適していたと私は考えます。
  
 ※対立構造を作るのがやむをえない場合でも、反対派の質は上げたほうが良かった。少なくとも、派遣法や改正の理解につながるレベルの意見や質問がほぼ出ていなかったように思う。
 


 
 
2、本庄先生が登場する前、番組の一番最初にキャスターが、「こちらの数字をご覧ください。」と、「派遣労働者数 127万人」というフリップを出しました。
多いとも少ないとも、現在働いている人の総数も、言及しませんでした。これは、悪意が無かったとしても、誤解を生む演出だと思います。
  
(私も誤解した一人で、「多っ!」と思いました。なんとなく。
実際には、総数は5253万人で、そのうち、いわゆる非正規雇用は1948万人なんですね。これは言及しておいた方がベターだと思いました。)
-------------------------------
NHK news web 10/28日放送分
http://www3.nhk.or.jp/news/newsweb/index.html

投稿: :) | 2014年11月 2日 (日) 00時12分

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