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2014年9月29日 (月)

「学び直しはどこでやる?」@『全国労保連』9月号

『全国労保連』9月号に「学び直しはどこでやる?」を寄稿しました。

 今年3月に改正された雇用保険法により、教育訓練給付に専門実践教育訓練というコースが設けられ、大変手厚い給付が受けられることになりました。これは、昨年6月に取りまとめられた「日本再興戦略」において、「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」の一環として、「若者等の学び直しのための雇用保険制度の見直し」が盛り込まれたことが直接の出発点です。そこでは、「非正規雇用労働者である若者等がキャリアアップ・キャリアチェンジできるよう、資格取得等につながる自発的な教育訓練の受講を始め、社会人の学び直しを促進するために雇用保険制度を見直す。労働政策審議会で検討を行い、次期通常国会への改正法案の提出を目指す。あわせて、従業員の学び直しプログラムの受講を支援する事業主への経費助成による支援策を講ずる。」と書かれていました。
 ただ、この考え方の発端は、それに先立つ4月に内閣府に設置された専門チーム(清家篤座長)が取りまとめた「成長のための人的資源の活用の今後の方向性について」で、「変化に対応するための学び直しの推進」という項目を立てて、「効果的な学び直しを行うための良質な教育訓練機会の確保とともに個人の意欲を喚起しつつ、意欲ある者に手厚い支援を行うた必要がある。ただし、その際には公的支援と自己負担を組み合わせるなどモラルハザードが生じない仕組みを工夫する必要がある」と述べていました。
 この動きを受けて、同年5月から労政審雇用保険部会と職業能力開発分科会で審議が開始され、同年12月にそれぞれの報告が出されました。翌2014年1月に法改正案を国会に提出し、同年3月に成立。その後指定基準の諮問答申を経て、今年10月から実施される予定です。
 この給付は、「受講者が支払った教育訓練経費のうち、40%を支給(年間上限32万円)。更に、受講修了日から一年以内に資格取得等し、被保険者として雇用された又は雇用されている等の場合には20%を追加支給(合計60%、年間上限48万円)。給付期間は原則2年(資格の取得につながる場合は最大3年)」と、大変手厚いので、対象となる講座がどのようなものであるかは極めて重大です。指定基準では「業務独占資格・名称独占資格の取得を訓練目標とする養成施設の課程」、「専門学校の職業実践専門課程」、「専門職大学院」の3つが挙げられています。
 最初のものは「○○師」「○○士」といった職業資格の取得を目指すコースなのでよくわかりますが、2番目と3番目は専門学校と大学院の授業料を雇用保険財政でまかなってあげるような制度になっています。これらが入っているのは、ここ数年来の政府の政策として、高等教育レベルでの職業教育機関を確立していこうという方向が打ち出されているからです。しかし、肝心の教育界自身がなかなかそれに踏み切れないために、専門学校と大学院というおかしなコンビになっているのです。
 実は、文部科学省の中央教育審議会は、2008年からキャリア教育・職業教育特別部会を設置し、審議を重ねて2011年1月に「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」を答申しています。ここでは、高等教育レベルで新たな「職業実践的な教育に特化した枠組」を設けることを提起しています。議論の過程では「職業大学」という言い方もされていて、日本の大学の位置づけを大きく変える可能性も秘めていました。しかし、その後文部科学省における検討では専修学校の枠内に職業実践課程を設けるということに矮小化されてしまいました。もともと職業実践的な教育機関である専修学校に改めて職業実践専門課程を置くというのはいかにも意味不明ですが、報道によると、これは大学・短大関係者の異論のせいだということです。
 ところが、皮肉なことに、その大学の上に位置する大学院の方は、既に2002年の学校教育法改正で、高度専門職業人養成のための修士課程を「専門職大学院」と称するようになっていました。大学院と専修学校は職業教育機関として位置づけられるようになっているのに、その間の膨大な(同世代人口の半数を超える)学生数を抱える大学は、いまだに「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」が目的で、職業教育機関ではないことになっています。
 昨年来の政策動向で、学校教育法上職業教育機関と位置づけられている専門学校の職業実践専門課程と、同じく職業教育機関と位置づけられている専門職大学院の二つが手厚い教育訓練給付の対象となったわけですが、職業教育機関なんかではないぞと虚勢を張り続けた大学は、その対象にはなれなかったということですね。しかし、大学を出てさらに大学院に進学するような社会的には相対的に恵まれた人々により手厚い給付を与えて、そんな余裕のない普通の大学進学者にはその機会がないというのは、社会の公平さという観点からするといささか疑問も湧きます。
 そんな中で、最近興味深い政策の動きがありました。官邸に設置された教育再生実行会議が、2014年7月に「今後の学制等の在り方について」という第5次提言を出し、その中で、「実践的な職業教育を行う高等教育機関を制度化する」とされているのです。曰く:「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人を育成するとともに、専門高校卒業者の進学機会や社会人の学び直しの機会の拡大に資するため、国は、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を制度化する。これにより、学校教育において多様なキャリア形成を図ることができるようにし、高等教育における職業教育の体系を確立する。具体化に当たっては、社会人の学び直しの需要や産業界の人材需要、所要の財源の確保等を勘案して検討する。」
 今後、この「職業大学」が現実化していくと、そこでの「学び直し」についても手厚い教育訓練給付の対象として盛り込まれていくことになる可能性があります。

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コメント

「労働法」などとの絡みで「学び直し」を行うことは大切なのでしょうが、根っこの問題として言うと、日本の社会構造や日本人のメンタリティが「中世」であることに、いろいろな物事の原因があるので、「脱中世」を行って本当の意味での「近代化」を行う必要があると思います。

以前書いた小室直樹さんの「危機の構造」を解説したブログにも書かれていますが、日本の会社は「共同体」になってしまった結果として、「各成員は全人格的な献身を要求されるのであった。
それ故、自分がどう思うとか、どういった価値観を持つとか、そうした内面的なことまで企業に合わせる必要がある。」などの現象が起き、それが結果的に、ブラック企業を生み出していく。ワタミを見れば、それ明らかでしょうね。

また、「日本でサービス残業が定着しているのは、労働力が商品になっておらず、会社という共同体に対しても全人格的な献身を必要とするから。」

その一方で「普通の資本主義経済では、そんなことは関係ない。
内面や人格はどうでもいいから、各社員の業績に対して、報酬が支払われる。それ以上を必要としない。」とあるので、全体的な考え方として言うと、初めに日本人の価値観やメンタリティ等を近代化していって、その上ではじめて「雇用をジョブ型」にする等の議論が出来るのだと思います。

ただ、問題なのはその「近代化」の結果として今の日本を支えている、「思いやり」や「絆」等が失われ極端な利己主義に走るものが、増加の一歩を辿る危険があるので、そのバランスの舵とりが難しいと思いますが。

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