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2014年9月 7日 (日)

マタハラ概念の法的意義は・・・

マタハラnetというところが、「「女性活躍推進新法にマタハラ防止のための一文を!」 ※9月9日までに署名のご協力をお願い致します。」というキャンペーンを張っているようです。

マタハラnet

「女性が輝く日本」。政府が掲げる、女性活躍推進のキャッチフレーズです。でも、女性の置かれている環境は、そんなに輝いていると言えるでしょうか?

国の平成20年の調査では、妊娠出産前後に退職した女性正社員は、その理由について、およそ1割が「解雇された、退職勧奨されたから」と回答しています。

妊娠、出産、育児を理由にした差別は、法律で禁止されているにも関わらず、実際には違法行為が横行しているのです。

政府は今、「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という目標を掲げ、女性の管理職登用などを促す法案をこの秋の臨時国会に提出するため、労使が参加する審議会で議論を進めています。

しかし、管理職になれるような女性は一部。女性労働者の半数以上は非正規雇用で働いています。一部のエリート女性だけに対する支援がなされても、本当に女性が輝く日本になるとは思いません。

私たち「マタハラNetのメンバーには、妊娠中に無理な勤務を続けて2度の流産を経験し、会社に勤務状況の改善を訴えたところ、退職を促された女性もいます。

やっとの思いで子どもを保育園に預け、復帰しようとしたら、「社長の気が変わった」と解雇された女性もいます。妊娠や出産のさなかに会社と争うことは非常に難しく、ほとんどの女性が泣き寝入りせざるを得ない実態があります。

子育て中の女性は、働き方に制約があり、対応が難しい企業もあるとは思います。

しかし、政府が本当に「女性が輝く日本」を目指すのであれば、女性管理職を増やす以前に、こうしたボトムの問題こそ直視し、女性が安心して出産し、働き続けられる環境を整えることが不可欠であるはずです。

ですから私たちは、こう求めます。

新しい法案では、女性の登用を進める企業には、妊娠、出産、育児などを理由にした不利益取扱いを禁じた「労働基準法」「男女雇用機会均等法」、「育児介護休業法」の遵守を徹底することを明記してもらいたいのです。

法案の議論は、遅くとも10月はじめまでに結論が出る見通しです。

ですので、9月11日の審議会の場に、この提案を届けたいと思います。

私たちの、すべての働く女性の声を届けるため、皆様の賛同をお願いします。

ここで言われていることの実体面については、全面的に賛成です。そして、同じ思いを持っている方から見れば以下で述べることは、細かな法律談義で大事なことをおとしめようとする法匪の議論に見えるかもしれません。

でも、先日のたかの友梨事件のパワハラ談義と同じ話なのですが、現行法ですでに立派な違法行為であるような行為を、いまさら新法でマタハラという新たな概念で規定しようという話には、やはり尤もという話にはならないのです。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

(昭和四十七年七月一日法律第百十三号)

(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)

第九条  事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。

2  事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。

3  事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 の規定による休業を請求し、又は同項 若しくは同条第二項 の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

4  妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年五月十五日法律第七十六号)

(不利益取扱いの禁止)

第十条  事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

第十六条の九  事業主は、労働者が前条第一項の規定による請求をし、又は同項の規定により当該事業主が当該請求をした労働者について所定労働時間を超えて労働させてはならない場合に当該労働者が所定労働時間を超えて労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

第十八条の二  事業主は、労働者が第十七条第一項(前条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による請求をし、又は第十七条第一項の規定により当該事業主が当該請求をした労働者について制限時間を超えて労働時間を延長してはならない場合に当該労働者が制限時間を超えて労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

第二十条の二  事業主は、労働者が第十九条第一項(前条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による請求をし、又は第十九条第一項の規定により当該事業主が当該請求をした労働者について深夜において労働させてはならない場合に当該労働者が深夜において労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

第二十三条の二  事業主は、労働者が前条の規定による申出をし、又は同条の規定により当該労働者に措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない

これらによって禁止されている行為に当てはまらないような、しかし労働者のマタニティに悪影響を与えるようなハラスメント行為をマタハラという概念でとらえて規制していこうという議論には法的な意味があります。

しかし、上で言われているマタハラ防止のための一文というのは、すでにれっきとした違法行為であることどもを「遵守を徹底することを明記してもら」うことなんですね。

すでに刑法で禁止され、罰則が用意されている暴行、傷害、恐喝等々といったことを、改めていじめ新法で「遵守を徹底することを明記してもら」うといわれれば、それはいかにもおかしいんじゃないかと思う人が多いのではないでしょうか。(実はそうじゃない可能性が結構高かったりするから怖いのですが)

もちろん、それは、世間の、とりわけ企業経営者たちの感覚が、これられっきとした違法行為を全然悪いことだなんて感じていないからであり、その現実の感覚を前提にしてのこのマタハラnetの訴えであるわけですが、にもかかわらず、こういう訴えは、現行法におけるれっきとした違法行為を、マタハラとかいう近頃ぽっと出の新しい概念に放り込んでしまう危険性を抱えていることも意識しておいた方がいいように思います。

まあ、こういうことを言うと、また「バカの見本」とか言われるわけですが。

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コメント

今回のお話から見えてくることは何かというと、以前書いた「草野球」と「プロ野球」の対比で言うと、やはり日本では「草野球」感覚で物事を認識している人が、多いということでしょうか?

今回のテーマである、マタハラ関係のものも、「ルールブック(労働関係の法律)」ですでに「違法」であると明記されているにも関わらず、それを改めて「マタハラ」と定義しようとすることは、「ルールブック」に何が書いてあるかを読もうとしないで、プロ野球をしようとしているようなものでしょう。

まあ、労働者の側に「ルールブック」に対する認識がないのは仕方がないのかもしれませんが、「ルールブック」に則って企業を経営すべき立場の人が、「ルールブック」を満足に読みもしない(遵守しない)で、それが通用してしまう。

ここにも、日本の企業風土の問題点があると思います。

あと、誰が「バカ」なのかというと、言うまでもなく「ルールブック」を読まず何が正しいルールなのかを認識しないで、プロ野球をしようとする(やらせようとする)人たちなのは、間違いないでしょう。

hamachanの言う通りではあるんですが、例えば学校教育法で体罰の禁止というのがありますが、これとて、傷害罪や暴行罪に該当しない体罰があるというのを予定はしているんですが、しかし、問題として取り上げられる行為の多くは、行為の結果としては、前掲のような刑法の保護法益を侵害しているわけですね。

もう一つは、労働行政の指導方針にも問題がある点です。これは実際に質問したときのことですが・・・
私が「同僚(既に退職した若い人のことですが)へのハラスメントを使用者がやっているので指導してほしい」と申告したところ、労働局から電話がかってきて
監督課「具体的に法令違反がなければ指導はできない」と回答。
そこで私が「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう、とあるから、晴らすベントの範疇だ」と切り返すと、
監督課は「例えば、 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)、 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)、 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)等は、線引きができないことから、指導はできない。従って、自治的に解決すべき問題だ」と。
私が「それではせめてそのような問題の指摘や助言だけでも労働行政は個別に行うべきではないか?」とすると、
監督課としては「個別にはできない」としています。

つまり、労働局としては、他の法令により違法の根拠があって、なお且つその根拠法が労働局所管の法律でなければならないということになるようです。
 マタハラもパワハラもやってはいけません。ただ、それ自体は行政権限発動の根拠法ではない。・・・と行政は言っているんですね。

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