インチキ議論の見分け方
下の「残業代ゼロという本音を隠すな」のエントリに、次のような連続ツイートをしていただいています。「william yamin (仮)」さんです。
https://twitter.com/liam_y23/status/510984578589147136
濱口桂一郎氏のブログより。昨今の【時間ではなく成果で評価される制度を導入せよ云々という議論】の正体を解説してくれています。
https://twitter.com/liam_y23/status/510989071917658113
『現行法制上いかなる賃金制度を採ろうが基本的に企業の自由である。日本国のいかなる法律も成果主義賃金を禁止していない。』というのであれば、同じように正社員に年功賃金の支払いを義務付ける法律も存在しない。非管理職で高給な壮年・中高年社員の給料を引き下げれば良いだけでは?
https://twitter.com/liam_y23/status/510990743150673922
よく「正社員は固定費」と言われるけど、雇用保障の面はともかく、賃金に関しては正社員だからと言って法律的に何ら優遇はされてないと思うんだけど。
https://twitter.com/liam_y23/status/510991435210838016
正社員の給料を一度上げたらなかなか下げられないというが、そもそも上げないといけないという法律はないし、非正規雇用の給料を上げてはいけないという法律もない。じゃあその正社員は昇給するのが当たり前というのは何的に?という話になる。
まさにその通りで、何もわかってない経済評論家や人材コンサルタントが労働法規制が厳しすぎるだの何だのと言ってるのは、ほとんどすべて実定法上の労働法のこの規定が厳しいからこう変えろなどと具体的に提起することが不可能なたぐいのことどもです。要するに、実定労働法は何ら規制なんかしていないのに、企業の人事政策が勝手に、そう法が求めていないのだから言葉の正確な意味で企業の自発的意思により、(無制限な人事権の行使と引き替えに))終身雇用慣行やら年功序列慣行にコミットしてきて、そういう期待を従業員に抱かせてきたことの反射的効果として、いざ問題が裁判所に持ち込まれたら、現に企業がやってきたことのルールに従って判断されてしまうというだけのことです。
「雇用保障の面はともかく」と言われていますが、本質的にはこれも同じことです。ピンポイント的に特定のジョブに採用(就職)した人については、メンバーシップ型で無制限に働かせてきた人と同じ判断はされていません。
賃金ともなれば、まさに企業自身が(一切法によって規制されていない)最低賃金以上のいかなる賃金をどういう人に払うかという判断を、自分で都合が良いように年功的にやってきていることのツケを、あたかも労働時間にかかる法規制の責任であるかのようにフレームアップして、偉そうなことを口走るのですから、ほんとに始末に負えません。
ただ、一番始末に負えないのは、わかってないくせに知った風な記事を書く一部マスコミと、それをさらにどや顔で増幅してみせる一部経済評論家や人材コンサルといった連中でしょう。
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この辺の議論、数年前に自分がまとめた野川忍・明大大学院教授の連続ツイート http://togetter.com/li/90284 の繰り返しって気がしますね。何と言うのか、日本人特有の「忖度」が何故か実定法のように誤解されて、イザ法律上で判断すると話が違う!って感じに・・・・・
投稿: 杉山真大 | 2014年9月17日 (水) 08時59分
上の方のコメントから「忖度」を検索してみたら、「恐るべき忖度政治」というブログ記事が出てきました。
これによると、「忖度」とは「他者の気持ちを推し量ること」とか「慮る(おもんぱかる)」ことであり、進んでは「(相手の)空気を読む」ことのようです。
この記事では、「忖度」の例として福一の原発事故を取り上げ、当時の管首相の意思を「忖度」した結果(官邸の空気を読んだ結果)「海水注入を中止せよ」という判断を東電が下したようです。
この東電の判断は、現場の吉田所長の独断で覆され、海水注入は継続されましたが。
ここで、もしその吉田所長の独断がなければ、とっくの昔に東日本全域が「無人の荒野」になっていた危険性があるわけです。
また、第二次大戦も「忖度」の結果、泥沼化し最悪の事態を迎えました。
この辺りも、「日本人の頭の中身が「江戸時代」で止まっていること」の悪影響でしょう。
とはいえ、これは両刃の剣で、同時に日本人特有の「おもてなし」や、お互いを思いやる道徳観もこの「忖度」から生まれているので、難しい問題があると思います。
投稿: 我無駄無 | 2014年9月17日 (水) 11時57分