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2014年9月 4日 (木)

八代尚宏「なぜ女性管理職は増えないか」@ダイヤモンドオンライン

ダイヤモンドオンラインで、八代尚宏さんが「なぜ女性管理職は増えないか 「30%目標」を遠ざける“日本的雇用慣行の疾患”」という文章を書かれています。全体としてほぼわたくしが言っている趣旨と同じで、しかも用語も共通のものが使われてています。

http://diamond.jp/articles/-/58617

・・・しかし、これは日本的雇用慣行における内部昇進を前提とした論理である。現行の仕組みのままで、あと6年間のうちに女性管理職比率を3倍にすることは、きわめて困難である。むしろ、企業内部に管理職に相応しい人材がいなければ、外部から登用すれば良い。そうなれば、企業経営に重要な役割を果す管理職を、男女、年齢、国籍にかかわらずオープンにすることにも結びつく。これは、もっぱら内部昇進で管理職になる、従来の人事管理のあり方自体の改革となり、それが実現してこそ、成長戦略に貢献するものといえる。

メンバーシップ型の人事管理を堅持して女性管理職を急に3倍にするということは、つまりメンバーシップ型の「正義」をそれとして維持しながら敢えてそれに反するごり押しを「女性活躍」という錦の御旗を振りかざしてしなければならないと言うことであるわけです。

問題はそのメンバーシップ型の「正義」自体が、マクロ的にみれは「女性の活躍」を阻害するという機能を果たしているということであって、そこから八代さんは明確に国家権力による介入を要求していきます。

・・・女性の管理職が少ないことの主因は、①長期継続雇用前提の年功的な内部昇進、②配偶者が専業主婦の世帯主を暗黙の前提とした長時間労働や頻繁な転勤等の働き方、③専業主婦世帯を優遇する税制や社会保険制度、等がある。これらが夫婦共働きと子育ての両立を困難にしており、管理職年齢に達する前に、多くの女性が脱落する要因となっている。

今後、人口の減少と高齢化が進むなかで、貴重な女性の労働力の量的な増加だけでなく、その質的な向上をも妨げている社会制度・慣行の改善は、政府の基本的な責任といえる。これに対し、日本の雇用慣行に対して、政府が介入すべきではないという「労使自治の原則」の考え方がある。しかし、市場主義の米国でも、「差別禁止」という大原則に使用者が反した場合には、政府が断固介入する。

ホワイトカラーの職種について、男女間で基本的な能力差がない以上、女性の管理職が1割に過ぎない日本の現状は、社会制度面での「女性に対する差別」の結果と考えられる。この「差別」という「社会的公害」の是正のために、政府の介入が必要なことは、経済学の入門書にも明記されている。

「社会的公害」とまで言っていますね。

正社員の雇用安定と、年齢に比例した生活給を保障する日本の雇用慣行は、その代償として、長時間労働や頻繁な転勤等の無定限の働き方とパッケージの雇用契約を労働者に強いている。企業にとって慢性的な長時間労働は、雇用保障のコストが高い正社員数を最小限にとどめるとともに、不況時に削減できる労働時間の余地を高め、雇用を守るための安全弁である。また、労働者にとっても残業代は追加収入の意味を持っている。頻繁な転勤は、事業の再構築や不況時に企業グループ内の雇用流動性を確保する手段であり、幹部候補生にとっては、地方支社や工場等での「管理職研修」としての意味もある。

こうした正社員の無定限の働き方を支えるために不可欠な存在が、世帯主を支え、家事・子育てに専念する専業主婦である。この意味で「男性は仕事、女性は家事」の性別役割分担は、日本的雇用慣行を支える根幹ともいうべき前提である。また、世帯主の生活給には、「家族ぐるみの雇用」という意味もある。

この辺は、拙著で繰り返し論じてきたところですし、

ワーク・ライフ・バランスの必要性が、長年、主張されているにもかかわらず、一向に実現しないのは、それが「男性の長時間労働と女性の就業率の低さ」という形で、「家族単位」ではすでに実現しているためだ。これを個人単位に改革するためには、女性ではなく男性の働き方を抜本的に変える必要がある。

これはわたくしの言う日本的フレクシキュリティですね。

さらに、こういう用語も使われます。

長期雇用保障を重視し、仕事能力に応じた正社員の入れ替えの可能性が小さいことが、日本の大企業の大きな特徴である。とくに低成長期には、どのような業務にも原則対応できるメンバーシップ型正社員の採用は新卒採用時に限定されており、ジョブ型の業務を行う派遣・パートタイム社員との雇用や賃金面の格差が大きいことが、労働市場の効率性と公平性を損なう要因となっている。

そして、この指摘は、まさに近著『日本の雇用と中高年』でかなり力を入れて述べたところでした。

日本企業にとっての管理職とは、長年、企業のために働いた中高年者を処遇する役職であり、「メンバーシップ型」正社員のゴールとしての位置づけであった。しかし、部下の業務の効率化を図り、適切な人事評価を行うためには、財務や企画等、特定の分野で、部下よりも優れた業務能力をもたなければならない。そもそも部下よりも高い仕事能力がなければ、部下にできる筈の仕事をできないといわれたり、短時間でできる仕事に長い時間をかけ、残業代を稼がれてもチェックできない。また、管理職の判断の誤りでムダな仕事をさせられたり、やり直しが増えれば、部下の負担は大きくなり、組織全体の効率性は低くなる。

欧米の管理職の日本との大きな違いは、管理のプロというだけでなく、「他に属せざる業務は管理職の仕事」という点である。これは、個々の社員が機械の部品のように、自らの職務しか果たさないジョブ型社員ばかりの組織では、急な欠員や、飛び込みの仕事に対応できないからだ。日本なら、管理職がだれかに追加の仕事として命じれば良いが、職務の範囲が明確に定められている欧米の平社員は、「自分の仕事ではない」と拒否するのが普通である。結局、追加の仕事は、管理職が自ら果たすしかない。その意味で、管理職とは、本来、どんな仕事にも対応できる能力が求められる「万能職種」といえる。

従って、欧米の組織では、ワーカホリック・タイプでない限り、「管理職お断り」の社員が多くなる。日本でも、管理職ポストが増えないなかで、社員の高年齢化が進む今後の社会で、社員の不満を抑えるためには、管理職の仕事をより厳しいものとして、それでも役職に就きたい者の中から選抜すれば良い。これは市場での需要と供給の原理を企業内部に持ち込むことと同じである。

なんだか、「女性活躍」大臣というのもできたようですが、本当に女性の活躍を目指すのであれば、

「社会の指導的地位にある女性比率の30%目標」を、単に女性管理職比率の名目的な引き上げという目標に矮小化してはならない。社会の指導的地位の人材の内で、女性の比率が1割に過ぎないことは、日本の社会制度の歪みの結果である。病気の際にでる熱を無理やり下げても、病気自体が治るわけではない。

という言葉にも耳を傾けるべきでしょう。

ただし、最後のこの一節は、いささか拳を振り上げる先を間違えており、メンバーシップ型人事管理を堅持しながら労働規制を緩和したいといういいとこ取りの議論に力を貸す結果になりかねないことも銘記しておくべきでしょう。

それにもかかわらず、8月29日の労働政策審議会に示された、今秋以降の「労働政策の重点課題」では、解雇の金銭補償ルールの制定は無視されており、女性の活用も企業の自主的な行動への支援のみにとどまっている。日本の成長戦略の大きな柱である労働市場改革に、担当省庁が熱意を示さないなら、社会保障制度改革と同様な専門家会議を官邸に設置して、総理のトップダウンでの改革を目指す必要があろう。

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