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2014年9月21日 (日)

若者育成のための長時間労働はホワエグなしに可能

Ebi 海老原嗣生さんの新著『いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる 残業代ゼロとセットで考える本物のエグゼンプション』(PHP新書)の紹介記事に、アランさんのトラックバックが付きましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-4e5a.html

http://d.hatena.ne.jp/dokushonikki/20140921

いささか誤解があるように見えるので、少し腑分けしておきます。

まず、アランさんの議論ですが、

企業がホワイトカラーエグゼンプションを導入しようとする背景について。「管理職になれない熟年ヒラ社員でも高給になるのを何とかしたい」のが本音と理解しているようだ。しかし違うのではないか。日本型雇用のメリットの一つである、若者の育成をするためではないか。・・・要するに、全員がストレッチした業務が与えられ、やり遂げる経験をすることで、育っていくということだ。一方、自分の能力を上回るので、簡単にこなせるはずもなく、試行錯誤・失敗を繰り返しながら、何とかやっていくことになるので、長時間労働になる。こういうやり方を続けていけるように、ホワイトカラーエグゼンプションを導入したいと考えているのではないか。ということで、私は、ホワイトカラーエグゼンプションは、若手育成のためという意味で、究極の日本型雇用維持・延命策と考える。

ここで言われていることは、ホワエグ導入という肝心要の話を抜けばその通りです。

言い換えれば、ホワエグなんかなくっても、今までまさにそういうやり方をやってきているのであり、これからも断固としてそういうやり方をしようとしているのであり、それゆえに、私などが主張している労働時間の物理的上限規制に対しては断固として反対しているのです。財界中枢の企業経営者たちは。

アランさんがここで言っているのは、労働基準法の本来想定する物理的労働時間規制なんかに煩わせられることなく、無制限に長時間労働を可能にしたいということであって、それはまさに現行法で可能であり、現に広範囲に実施されていることです。

そして、そういう『若手育成』のための長時間労働については、使い捨て型のブラック企業ではない伝統的日本型企業は、別段ホワエグにしたいなどと言っているわけではありません。そういう部分については、ある意味育成費として残業代を払うことを嫌がっていないのですよ。まあ、年功賃金制の下でもともと基本給が低いからというのもありますが、長時間労働を嫌がらせないためのインセンティブ効果を期待しているという面もあるでしょう。

なんにせよ、企業が実現したいホワエグというのは、若手育成局面の話ではありません。ここを誤解すると、話がことごとくひっくり返った理解に陥っていきます。

もはや育成局面を過ぎてしまった中高年であるにもかかわらず、管理監督者でないが故に「無駄な!!!」残業代を払わなければならないことに対する嫌悪感がホワエグ話の根っこなのであって、そういう人々を念頭に置いているが故に、(若手であれば嫌がるのを無理矢理にでもやらせたい)残業が、やらせたくないのに勝手にこいつら残業しやがって・・・という全く逆のコンテクストになるわけです。

このあたりの消息を、海老原さんのこの本に収録されたわたしのインタビュー記事で、簡単に喋っていますので、ぜひその部分を読み返していただければと思います。

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コメント

hamachan先生、先日は、小生トラックバックにコメント頂き、ありがとうございました。ここでお尋ねしたいのは、「長時間労働が現法制でも可能か」ということです。小生は現法制は以下のとおりと理解しており、長時間労働は相当制約を受けていると思うのですが、いかがでしょうか?法令を無視する企業はともかくとして、真面目に法令を守る企業では、長時間労働は無理ですよね。
 ・36協定が締結されていないと残業はできない。
 ・厚生労働大臣告示によって、36協定に定める残業の上限が定められている。
 ・特別な事情があれば、その残業上限を超えることができるが、その「特別な事情」も厚生労働大臣告示で厳しく制限されている。

なお、先生のコメントを受け、小生HP9月21日付けエントリを追記しました。

36協定は、過半数組合がなければ「過半数を代表する者」という一個人とで協定できます。省令上手続きに関する規定はありますが、実態は指名などが多く、それを理由に不受理というようなことは現実には不可能です。36協定に選挙で選んだとか投票で決めたというところに丸が付いているのを、ほんとうにそうだったのかを、組合もない会社の労働者一人一人に確認するだけで大変な手間ですし、それをしてからでなければ受理できないなどということをやったら役所の横暴とか何とか大騒ぎになるでしょうね。
この問題は、労働者代表制の不備にかかる問題なので、36協定だけではありません。

大臣告示による上限は目安に過ぎず、それを超える協定は法律上有効です。なまじまじめに告示に従う会社はそれを超えてしまって違反することがありますが、はじめからそうならないように月100時間とか150時間とか協定しておけば、その心配はありません。監督官は受理時に「指導」はできますが、それ以上の権限はありません。

さっそくお教え頂き、どうもありがとうございました。大変明確になりました。
それにしても、法令に加えて指導にも従っている真面目な会社と、法律すら守らない会社との間には、相当の落差があるのでしょうね。

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