小林良暢「新成長戦略の新しい労働時間制と休息時間」@デジタル『現代の理論』
紙媒体では廃刊してしまった『現代の理論』がデジタル版でネット上に刊行されていますが、その第2号がこれです。
http://www.gendainoriron.jp/vol.02/index.html
紙媒体時と同じくらいの盛りだくさんの記事が載っていますが、ここでは小林良暢さんの「新成長戦略の新しい労働時間制と休息時間」を覗いておきましょう。
http://www.gendainoriron.jp/vol.02/column/col02.php
・・・・そればかりか、当初の規制改革会議の案では、成果型の新しい労働時間制と労働時間・休日・休暇取得促進がセットの「三位一体改革」が提起されていたが、今度の成長戦略では上限規制と休日・休暇取得の二つが消えてしまった。
だが、ここにきて、長谷川主査も上限規制や有給休暇の取得推進など「加重労働対策とセットで」と発言、また甘利大臣が成果型の新しい働き方は秋からの「政労使会議の場で議論を」と言いだした。政府は、厚労省の労働政策審議会よりも政労使のトップ会議の場で正面突破を図ろうとしている。ならば、労働側は逃げないでこの土俵に上って、連合の古賀さんには議論の前提として、消えた「上限規制と休日・休暇取得」を俎上に乗せる提起をしてもらいたい。
労働時間の上限規制が欠落する形で成長戦略になってしまったのを批判する点で、小林と私は共通ですが、これからの戦略論として、小林さんは労政審よりも政労使トップ会議でいけという考え方のようです。
ここは政治戦略としてなかなか難しいところですね。基本的に経済産業省サイドが事務局を固める中でその方向で正面突破ができるのかというと、私は懐疑的です。6月の成長戦略に向けた虚実の駆け引きを見る限り、そういう財界の本流が断固嫌がることをやれる枠組みとは思えない。アベノミクスのために賃上げさせるという方向で政労使会議をやってたときとは文脈が違う。
これは、労政審という三者構成の中で、経営側が上限規制で妥協しない限り、エグゼンプションはびた一文出さないぞ、という労働側の弱者の恫喝が機能する場でなければ、上限規制は形だけ「俎上に載せ」ただけで、何の料理にもならないまま、いいとこ取りされてしまう可能性が高いと思います。ていうか、なんで組合出身の小林さんに向けて、そうじゃない私がこんなこと言わなくちゃいけないの?って感じですが。
あとその上限規制の具体的な数値について、小林さんが機微に触れるような数字をさらりと言ってますが、
労働時間の上限規制については、労働時間の「上限規制」の「抜け道」になっている36協定の特別条項の見直しが不可欠である。現状は1か月70時間超~80時間、年間800時間で協定している事業所が多く、なかには年間900時間とか1000時間超すらある。連合は適合基準として「月45時間・年間360時間」を主張しているが、これは絵空ごと。工場や事業所の現場を回ると、過労死認定基準の1か月100時間・2~6か月80時間という縛りが効いていて、年間800時間で協定しているところまで進んでおり、これだと日に3時間の残業となり、職場ではよく見かける。このあたりの実情を踏まえて「月55時間・年間650時間」程度の相場観で主張し、過労死認定基準の引き下げを提案することである。
いまひとつ、休日・休暇取得促進ではなく「休息時間11時間」を主張して欲しい。但し、いま連合内で先行しているインターバル時間ではなく、EU並みの11時間の主張に徹してもらいたい。その際、個別オプトアウト(適用除外)条項が必要となろうが、これもEU並みに個別労使協定に委ね、 その対象者を成果型の新しい働き方の労働者にすればいい
いやその数字は最後の最後に出すもので・・・・・。
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