山本陽大「ドイツにおける新たな法定最低賃金制度」@『労旬』
『労働法律旬報』1822号(8月下旬号)に、JILPTの山本陽大さんが「ドイツにおける新たな法定最低賃金制度」を書いて、その法律の全訳を載せています。
http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/934
[紹介]ドイツにおける新たな法定最低賃金制度=山本陽大・・・36
資料/協約自治強化法案(ドイツ)〔訳 山本陽大〕・・・38
なんとこの最低賃金法案、名前が「協約自治強化法案」というんですね。この皮肉さに対して、山本さんもさりげに触れています。
・・・ドイツにおいては長らく、全国一律の法定最賃制度は存在してこなかった。これは、ドイツの伝統的システムである、二元的労使関係が安定的に機能してきたためである。周知の通り、かかるシステムの下では、産業レベルで組織された労働組合と使用者団体との間で締結される産業別労働協約が、当該産業における最低労働条件を定立する機能を果たしてきた。それゆえ、産別協約が広く労働者をカバーしていた時代にあっては、法定最賃制度は必要とされてこなかったと言える。
しかし、東西ドイツが統一された1990年以降・・・・・
・・・ところで、法理論的に見て興味深いのは、本法案の内容はいずれも「協約自治の強化」という統一テーマの下に提案されている点であろう。・・・法定最賃制度の導入と協約自治の強化とは、果たしてどのように整合するのであろうか。・・・・・
なお、ドイツの産別協約体制については、山本さんの現地調査に基づく丁寧な報告書がありますし、
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2013/documents/0157-1.pdf(現代先進諸国の労働協約システム―ドイツ・フランスの産業別協約 ドイツ編)
この最賃法も含めたその後の動きも入れた概要は、JILPTの『ビジネス・レーバー・トレンド』10月号(9月末刊行)に載る予定ですので、ご覧ください。
(参考)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-6527.html (ドイツ最低賃金導入は組合の恥)
ドイツの最低賃金導入を、脳天気にただもう良いことみたいに言うのはいかがなものかと。そもそも、なぜ今までドイツには最低賃金がなかったのかというと、日本やアメリカよりもひどい市場原理主義だから・・・じゃないですよね、もちろん。
実を言うと、現在でも最低賃金制度がない国はあります。スウェーデンとかデンマークとか、労働組合の組織率がすごく高くて、国家権力に最低賃金なんてやってもらう必要がない国々です。
ドイツも最近まではそういう国みたいな顔をして、最低賃金なんていらない、労働組合が自力でやるぜ、といってたのですが、組合の力がどんどん弱まって、今では組織率2割台。一般的拘束力すら使えない業種が出てきて、どうしようもなくて、恥を忍んで、最低賃金の導入に舵を切ったわけですよ。
本当に組合が強ければ、国家権力による最低賃金なんか要らないわけです。ドイツの最低賃金の導入は、本当は組合の恥なんですね。
そのあたりの感覚が、もう少しあってもいいんじゃないかと。
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