道幸哲也『労働委員会の役割と不当労働行為法理』
道幸哲也『労働委員会の役割と不当労働行為法理』(日本評論社)をお送りいただきました。
http://www.nippyo.co.jp/book/6601.html
労働法研究と労働委員会実務の双方で活躍する著者が、その経験と多くの判例・命令を踏まえ、労働委員会における不当労働行為認定の法理を徹底分析。
というわけで、道幸先生のライフワークである労働委員会と不当労働行為についての専門研究書です。目次も次の通り、玄人向けの本ですが、
序文
第1部 労働委員会制度論
第1章 労使紛争処理制度としての労働委員会
1 権利実現からみた労働組合の役割
2 労働紛争の処理システム
3 調整権限からみた労働委員会
4 直面する課題
第2章 労組法の成立と展開
1 労組法の立法過程
2 2004年の労組法改正
第3章 労働委員会の機構と権限
1 労働委員会の権限・役割
2 労働委員会の機構
第4章 労働委員会手続き
1 申立
2 調査
3 審問
4 合議
5 再審査申立
8 命令強制システム
第5章 救済命令のあり方
1 事案に応じた救済命令の型
2 救済命令の法理
3 個別の救済命令をめぐる論点
4 救済利益
第6章 司法救済と行政救済
1 司法救済法理
2 不法行為事案の特徴
3 両法理が未分化な理由
4 両法理の相違点
5 行政救済法理の独自性
第7章 命令の司法審査
1 並列的な審査システム
2 労働委員会による判断の特徴
3 命令の司法審査
第8章 岐路に立つ労働委員会
1 直面する課題
2 活性化委員会の提起したもの
3 今後の課題
第2部 不当労働行為の法理論
第9章 不当労働行為法理の全体像
1 法理形成の特徴
2 判例法理の基本的特徴
3 組合活動と不当労働行為
4 7条の構造
第10章 不当労働行為の共通問題
1 労働組合
2 使用者概念 命令の名宛人
3 使用者への帰責
4 併存組合に対する中立保持義務
第11章 不利益取扱い
1 不利益性の判断視角
2 不利益取扱いの態様
3 報復的不利益取扱い
4 団交を媒介とする賃金差別
第12章 いわゆる不当労働行為意思
1 判例法理の全般的特徴
2 不当労働行為意思をどう考えるか
第13章 組合結成・加入・運営への妨害
1 組合結成・加入妨害、脱退工作
2 反組合的発言
3 組合対策
第14章 便宜供与の中止等
1 チェックオフ
2 組合休暇・組合専従
3 組合集会
4 組合掲示板
5 組合事務所
6 協約の解約
第15章 団交拒否
1 団交権の保障
2 団交拒否事件をめぐる判例法理
3 不誠実交渉をめぐる判例法理
第16章 組合活動・争議行為に対する抑制的行為
1 組合活動の正当性
2 ビラ貼り闘争等
3 リボン闘争等
4 街宣活動等
5 争議行為
しかし、その淡々としていかにも学者的な記述のすぐ裏側に、日本の集団的労使関係制度に対するいろいろな想いが、じわりとにじみ出してくるようなところもあります。
本書で指摘されている日本の不当労働行為制度の変なところは、私が思うに、1949年改正がGHQ主導でアメリカ型システムを全面的に導入しようとして始まりながら、途中でそれが引っ込められてしまい、すごく中途半端な形でできてしまったところにあるのではないかと思っています。
もう10年くらい前に『季刊労働法』に寄稿した「不当労働行為審査制度をさかのぼる」では、そのあたりをかなり詳しく論じています。ご関心のある方はどうぞ。
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