実践的な職業教育を行う高等教育機関@教育再生実行会議
昨日の教育再生実行会議で、「今後の学制等の在り方について」という第5次提言が出されたようです。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai5_1.pdf
そのうち、本ブログにとって大変強い関心をもっているのは、「実践的な職業教育を行う高等教育機関」に関する部分です。
(3)実践的な職業教育を行う高等教育機関を制度化する。また、高等教育機関における編入学等の柔軟化を図る。
職業教育は、若者が自らの夢や志を考え、目的意識を持って実践的な職業能力を身に付けられるようにするとともに、産業構造の変化や技術革新等に対応して一層充実を図ることが必要です。特に、高等教育段階では、社会的需要に応じた質の高い職業人の養成が望まれますが、ⅰ)大学や短期大学は、学術研究を基にした教育を基本とし、企業等と連携した実践的な職業教育を行うことに特化した仕組みにはなっていない、ⅱ)高等専門学校は、中学校卒業後からの5年一貫教育を行うことを特色とするものであり、高等学校卒業段階の若者や社会人に対する職業教育には十分に対応していない、ⅲ)専修学校専門課程(専門学校)は、教育の質が制度上担保されていないこともあり、必ずしも適切な社会的評価を得られていない、などの課題が指摘されています。こうした課題を踏まえ、大学、高等専門学校、専門学校4、高等学校等における職業教育を充実するとともに、質の高い実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化が求められます。
また、学習者が、目的意識に応じて、自らの学びを柔軟に発展させるとともに、様々な分野に挑戦していくことができるよう、高等教育機関の間での進路変更の柔軟化を図ることが必要です。
2011年に中教審が提言しながら、その後専修学校の枠内に押し込められた職業高等教育機関が再度打ち出されているのです。
具体的には、
(職業教育の充実、強化)
○ 高等学校段階における職業教育の充実のため、国及び地方公共団体は、卓越した職業教育を行う高等学校(専門高校)への支援を充実し、更なるレベルアップを図る。学習や学校生活に課題を抱える生徒に対しても、社会に貢献し責任を果たしながら自己実現を図る社会人となることができるよう、学力向上や就職支援のための指導員の配置充実等を図る。また、地方公共団体と学校、関係機関が連携し、中途退学者も含め、新たな挑戦に臨む進路変更希望者に対する転学、再修学や就職のための相談・支援を行う体制を構築する。
○ 高等学校段階から5年間かけて行われる職業教育の効果は高いことから、国及び高等専門学校は、産業構造の変化やグローバル化等に対応した実践的・創造的技術者を養成することができるよう、教育内容の改善に取り組むことと併せ、新分野への展開に向けて現在の学科構成5を見直す。また、国、地方公共団体等は、高等学校や専修学校高等課程と専門学校や短期大学との連携、高等学校専攻科の活用を推進する。
○ 社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人を育成するとともに、専門高校卒業者の進学機会や社会人の学び直しの機会の拡大に資するため、国は、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を制度化する。これにより、学校教育において多様なキャリア形成を図ることができるようにし、高等教育における職業教育の体系を確立する。具体化に当たっては、社会人の学び直しの需要や産業界の人材需要、所要の財源の確保等を勘案して検討する。
(高等教育機関における編入学等の柔軟化)
○ 能力や意欲に応じた学びの発展やその後の進路変更に対応できるよう、国は、大学への飛び入学制度の活用実態等も踏まえて高等学校の早期卒業を制度化するとともに、学制の異なる国からの留学生受入れなど、国際化に対応できるよう、大学及び大学院入学資格において課している12年又は16年の課程の修了要件を緩和する。
○ 高等学校卒業後の進路をより柔軟にするため、大学は、短期大学、専門学校からの編入学や学部間の転学、社会人の学び直し等の機会の拡大を図る。国は、高等学校専攻科修了者について、高等教育としての質保証の仕組みを確保した上で大学への編入学の途を開く。
○ 国は、厳格な成績評価・卒業認定の下、大学学部・大学院の早期卒業制度及び飛び入学制度が一層活用されるようにするとともに、学士課程及び修士課程の修業年限の在り方について検討し、大学における学士・修士の一貫した教育課程を導入しやすくする。早期卒業及び飛び入学の推進、編入学や転学、社会人の学び直し等の機会の拡大に際しては、国立大学法人運営費交付金や私学助成における運用の見直しや支援を行う。
○ 国は、省庁の枠を越え、意欲ある学生が更なる学びの機会が得られるよう、職業能力開発大学校・短期大学校における学修を大学の単位認定の対象とするとともに、これらの職業能力開発施設から大学への編入学についても途を開くよう検討する。
一つ一つを論評しませんが、こういう高等教育段階での職業教育への方向性は先進世界共通のものであり、OECDでも繰り返し提起されているだけではなく、とりわけ日本のようなジョブなきメンバーシップへの適応性ばかりが強調される社会においてこそ、その重要性が確認されるべきでしょう。
先週、政学労使の4者構成で日EUシンポジウムに出席するとともに、その前段階としてフィンランドを訪問し、ノキアの労使の話を聞いてきたということは、ちらと書きましたが、その時にまた、ヘルシンキの隣のエスポー市のオムニアという職業専門学校、「科学と芸術と技術がビジネスにであう場所」アールト大学、起業活動を支援するアーバンミルなどを訪れています。
その時に聞いた話などからしても、職業教育を毛嫌いする日本のアカデミアの偏屈さを痛感しましたし、あれほどフィンランドフィンランドと大騒ぎしている日本の教育関係者から、彼らにとって一番大事で外国人に見せたい職業教育の部分がすっぽり抜け落ちている不可思議さも感じたところです。
何なんですかね。
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