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2014年7月27日 (日)

日経新聞で山田久さんが拙著書評

26184472_1本日の日本経済新聞の書評欄で、山田久さんが拙著『日本の雇用と中高年』(ちくま新書)を取り上げています。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO74786300W4A720C1MZC001/

日本の雇用システムは「就社型」の仕組みであり、「就職型」の欧米と対比される。著者は職務の定めのない雇用契約である「メンバーシップ型」という鮮やかなコンセプトを打ち出し、近年における雇用問題の論壇をリードしてきた。その著者が、日本の雇用問題が最も集約的に表れる「中高年雇用」に着目しつつ、戦後日本の雇用システムの構図を浮き彫りにし、処方箋の方向性を論じた。

著者は若年層の就労問題に関し、既得権を持つ中高年が若者の雇用を奪っているとする主張を批判する。日本型雇用システムとは本来、スキルの乏しい若者にとって有利である半面、スキルの蓄積が乏しい中高年は雇用調整の対象になりやすい、中高年にとって厳しい仕組みだと喝破し、戦後の日本型雇用に対する見方の変化と雇用政策の変遷を追う。1960年代にはそうした認識が一般的で、欧米流の就職型の仕組みである「ジョブ型社会」が目指されていたことが明らかにされる。

しかし、70年代以降、日本型雇用への評価の逆転が生じる。この関連の叙述で注目されるのは、その逆転を正当化したものが、今なお強い影響力を持ちつつも現実の説明力には疑問な面がある「内部労働市場論」であったとの指摘である。様々な仕事を経験した中高年ほど労働価値が高いとする理論だが、真っ先にリストラ対象となるのが価値の高いはずの中高年である現実と辻つまが合わないからだ。

中高年問題に対する著者の処方箋は、「ジョブ型労働社会」への接近であり、その前提としての社会保障改革である。評者も、雇用問題を雇用システム改革の問題としてとらえ、社会システム全体との関連から論じるべきだとする見解に共感し、突破口は「ジョブ型正社員」にあることに強く賛同する。だが、この議論は「多様な正社員」や「限定正社員」といった呼び方でも論じられ、論者の立場によってイメージが異なり、必ずしも共通認識が得られていない。この点については、一段と議論を深めていく必要があろう。

私見では、(1)現在、存在する地域や職種が限定されている正社員(2)(著者が主に想定していると思われる)欧州タイプの職種限定の熟練正社員(3)米国タイプのプロフェッショナルな正社員の少なくとも3タイプに分け、導入の条件や環境整備を議論すべきだと考える。読者は、本書から日本の雇用の行く末を考えるにあたって必要な、確かな歴史認識と拠(よ)るべき視座を得ることができるであろう。

私が強く主張したかったことを的確に摘示していただいている記述もあり、大変嬉しい書評です。

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