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細波水波さんの拙著書評

26184472_1私の本を丁寧に読み書評していただいてきている細波水波さんが、『日本の雇用と中高年』についても、まさに読んで欲しいと思っていたところを的確に読んでいただいており、とてもありがたい思いです。

http://yaplog.jp/mizunami/archive/638

はじめは、

濱口桂一郎先生の新書4冊目。大内先生のと一緒に買ったんだけど、なんとなく後回しになってました。基本スタンスは(当たり前だけど)これまでの本と大きく変わるわけではないところですが、中高年に焦点を置いた歴史はやっぱり知らないことがいっぱい。昔の中高年は35歳からだった!とかね。

と、やや枝葉みたいなことから書かれていますが、

これまでの(ブログも含めて)言説にたぶんなくて(少なくとも私は気づいてなくて)ううむ、と考えさせられたのは、小池和男の知的熟練論に対する批判の部分。もちろんこの本だけで自分として小池和男を否定しようとまでは思わないんだけど、理論は実態を後から説明するものだという大前提で、すべてを説明しきれない理論の穴を示される。何もかもを説明するのは難しい、だけど、現実が絶対に先にあるから修正すべきは理論の方で。もちろんそれで説明できる部分もたくさんあるから、すべてを否定するということではなくて、さてそこで。まあもちろん、(仮に現実がある理論に基づこうという意思によっていたとしても)現実がすべて理論通りに行くわけじゃないけれども。目から鱗だったので、考えるきっかけを貰えたのはありがたいことでありました。

と、本書の一番買いたかったところを見事に指摘していただいています。

正直言いますと、本書は読者のレベルに応じて二層構造になっていまして、表層部分は、まさに40歳定年制だの、中高年の既得権のせいで若者がひどい目に遭っているだのといった俗論を批判している部分ですが、批判相手の議論が表層的なだけに、その批判も所詮は相手のレベルの低さをからかうだけの表層的なものになっています。もちろんそれはそれで楽しめるように書いてるつもりですが、所詮はそれだけ。

そのも一つ奥の方にプロ仕様で用意してあるのが、まさにこの細波水波さんが指摘している小池和男理論に対する批判です。これは、それ自体がよくできた理論であるだけでなく、日本の雇用のかなりの部分を見事に説明できてしまっている理論であり、さらに小池さんが労働社会関係の多くの研究者が大変尊敬している権威でもあるだけに、表層部分のような適当なやり方ではいきません。しかし、日本の中高年問題の根幹に位置するのは、本書でも述べたようにまさにこの小池理論のある側面における正しさへの信頼が、その正しさが適用しきれないところまで及びすぎている点にあるとすれば、そこを批判しないで日本の中高年問題を語ることはできないと思い定めたわけです。その意味で、この部分を読み解いていただいているのは、だいたい労働関係者ですね。

そのため、批判の仕方はやや入り組んでいまして、小池さん自身の著書における、日本の企業の高齢者の扱い方への批判をそのまま引用して、それが日本の雇用のあり方の良さを高く評価する小池理論自体過度の拡大適用を内在的に否定するものになっていることを示そうとする形になっています。

ちなみに、最後で、

・・・・・・・ところで、この手の本にあとがきというか締めがないのって、すごく落ち着かないんですけど~!

あとがきもなければまえがきもありません。まあ、まえがきの代わりに長めの序章がありますが。

これは、正直に告白しますと、原稿が紙数オーバーで、本文も数枚削って、あとがきはあきらめたという経緯です。

(参考)

細波水波さんの拙著書評を改めて紹介しておきますと、

http://yaplog.jp/mizunami/archive/441 (2011.01.22)

131039145988913400963 濱口桂一郎、官僚にして教授でブロガー、いつもブログに説得されてて「本」くらい説得されずに読んでみよう!・・・と思いつつさくっと読んだ後、そんな感想も書けずにはやもう1年と半分近くが経ちました。

しかしこの読書記は、読んだ本は全部残すんだって決意からなるのに喉に小骨みたいなもので、読み直して何度目かの再チャレンジです(笑)。

ってことで説得されないところを探して第4章、オビにもある(産業)民主主義の本分。

・・・対策は、現実的でなきゃならない。おっしゃるとおりでだから簡単じゃない。

とりあえず、こういう本や学生時代の労働法の授業やなんやかやが、いまの現実の組合活動じゃなくてそれらが、そりゃ不満もなくはないけど私に組合費をそれなりに納得して払わせ続けている、貴重な動機付けであるのでした。

(どーでもいーけど結局説得されてばかりだなぁ・・・。)
112483 ・・・知っている話だけでそれなりのストーリーは描けてしまって、しかし蓋を開けると全然違うリアルなストーリーがそこにある。勉強しなくちゃなあ、と思わされると同時に、これがすんなり読めるお買い得な新書だからありがたい。歴史に知識に謙虚でなくてはと思う以前に単純に面白いのです。
・・・ちなみに、語られる授業レジュメと思って読むのが吉です。現状を皮肉に描写する表現が、著者の主張と受け取られないか、老婆心ながら心配です。

Chuko ・・・ブログを読み1・2冊目を読んでいればすごく新しい話はなく、読む前に(hamachan先生ご案内の)いくつかのブログで「若者に薦めたい/薦めて大丈夫か」なんて書評を読んでいたのでどんな過激な(?)と思っていたのですが特段過激な話でもなく。就職活動をする学生が、この本を読んで自分を客観化できるならば、ぜひお勧め。少なくとも面接の場で若者が基準法を語り出すようなものにはなってないはず(それをするのが就職にマイナスとなるだろう現状の是非はともかく。)。

と、いずれも深く突っ込んだ書評です。

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