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2014年7月 4日 (金)

今度はEU競争法と労働法が衝突?

過去10年間、ラヴァル判決やヴァイキング判決など、EU市場統合をめざす事業設立の自由、サービス提供の自由と集団的労使関係法に基づく労働基本権とりわけスト権との衝突がEU労働法のホットなテーマとなってきましたが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roujun1204.htmlEUにおける経済的自由と労働基本権の相克への一解決案@『労働法律旬報』2012年4月下旬号

また少し別の場所でやはり労働基本権それも今度は団体交渉権労働協約締結権と衝突するネタが出てきそうな雰囲気です。今度の敵役はEU統合のヒーロー役である競争法。

http://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf?text=&docid=143248&pageIndex=0&doclang=EN&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=35406FNV Kunsten Informatie en Media v Staat der Nederlanden

これは判決が出たとか法務官意見が出たという段階ではなく、昨年7月22日に欧州司法裁判所に事案がかけられたというものなのですが、

Must the competition rules of European Union law be interpreted as meaning that a provision in a collective labour agreement concluded between associations of employers and associations of employees, which provides that self-employed persons who, on the basis of a contract for professional services, perform the same work for an employer as the workers who come within the scope of that collective labour agreement must receive a specific minimum fee, falls outside the scope of Article 101 TFEU, specifically on the ground that that provision occurs in a collective labour agreement?

If the answer to the first question is in the negative, does that provision then fall outside the scope of Article 101 TFEU in the case where that provision is (also) intended to improve the working conditions of the employees who come within the scope of the collective labour agreement, and is it also relevant in that regard whether those working conditions are thereby improved directly or only indirectly?

EU競争法は、使用者団体と労働者団体との間で締結された労働協約が、その適用対象たる労働者と同じ労務を、プロフェッショナルサービス契約に基づき提供する自営業者にも、協約に定める最低賃金(料金)を支払わなければならないと規定するのは、それが労働協約だからと言う理由で、EU運営条約第101条の適用対象外であるのか?

もしそうじゃないとすれば、その規定は労働協約の適用範囲の労働者の労働条件を改善しようと意図したものである場合にはEU運営条約第101条の適用対象外なのか?そして、そうした労働条件を直接改善しようとするものか間接的なものかに関わりがあるのか?

このEU運営条約第101条というのは、EU競争法の神聖なる規定で、

Article 101

(ex Article 81 TEC)

1. The following shall be prohibited as incompatible with the internal market: all agreements between undertakings, decisions by associations of undertakings and concerted practices which may affect trade between Member States and which have as their object or effect the prevention, restriction or distortion of competition within the internal market, and in particular those which:

(a) directly or indirectly fix purchase or selling prices or any other trading conditions;

(b) limit or control production, markets, technical development, or investment;

(c) share markets or sources of supply;

(d) apply dissimilar conditions to equivalent transactions with other trading parties, thereby placing them at a competitive disadvantage;

(e) make the conclusion of contracts subject to acceptance by the other parties of supplementary obligations which, by their nature or according to commercial usage, have no connection with the subject of such contracts.

2. Any agreements or decisions prohibited pursuant to this Article shall be automatically void.

3. The provisions of paragraph 1 may, however, be declared inapplicable in the case of:

- any agreement or category of agreements between undertakings,

- any decision or category of decisions by associations of undertakings,

- any concerted practice or category of concerted practices,

which contributes to improving the production or distribution of goods or to promoting technical or economic progress, while allowing consumers a fair share of the resulting benefit, and which does not:

(a) impose on the undertakings concerned restrictions which are not indispensable to the attainment of these objectives;

(b) afford such undertakings the possibility of eliminating competition in respect of a substantial part of the products in question.

一〇一条

(八一条) 〔修正〕

一.加盟国間の貿易に影響を及ぼし、域内市場内における競争の妨害、制限または歪曲を目標とするか、または結果として起こす企業間の協約、企業の連合による決定および協調的行為は、 すべて、域内市場とは両立しえないものとして禁止される。特に以下のものを含む。

(a)買取価格、販売価格またはその他のあらゆる売買条件を直接的あるいは間接的に固定するもの  

生産、市場、技術開発または投資を制限あるいは統制するもの  

市場または供給源を分配するもの

等価の取引とは異なる条件を売買相手に請求した結果、競争に不利益をもたらすもの

本来的にまたは商慣習上において契約の主旨とは関連しない補足的義務を売買相手に受諾させることにより契約を結ぶもの

二.本条によって禁止された協約または決定は、すべて自動的に無効となる。

三.しかしながら以下の場合には、一項の規定が適用されない旨を表明することができる。

―協調的行為あるいはこれに類するもの

―企業の連合においてなされた決定あるいはこれに類するもの

―企業間の協約あるいはこれに類するもの

であり、 かつ、 商品の生産または流通の改善もしくは技術的、経済的向上の促進に貢献するとともに、その結果生じた利益を消費者が適正に享受できるもの 

ただし、以下はこれにあたらない。  

これらの目標を達成するための必要以上の制限を関係企業に課すもの

当該産品の主要な部分について、競争を排除する可能性を関係企業に与えるもの

というものです。自営業者であれば自身が企業ですから当然競争法の適用対象になるわけですが、とはいえ労働者と同じ労務を個人請負という契約形式で提供しているような場合、そういう「自営業者」も労働協約による規制に含めなければ尻抜けになってしまいます。

そう、これは、日本では労組法上の労働者性という形で論じられているのと通じる話が、労働協約を素材にして問題になっているわけですね。

これもまた、競争法はEU法制の根幹をなす大きな柱であるのに対して、労働協約法制は禁じられてはいないものの、EUレベルでの立法化が抑制されてきた分野であることは確かなので、素直にいけばまたぞろEU市場主義が集団的労使関係をつぶしに来たか、みたいな話になるかもしれません。

来る7月18日に第1回口頭弁論が開かれることになったということなので、話はこれからですが、いろんな意味で注目に値する裁判だと思います。

 

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