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2014年7月28日 (月)

『月刊連合』8月号に登場

201408_cover_l_2 『月刊連合』8月号に登場しております。

http://www.jtuc-rengo.or.jp/shuppan/teiki/gekkanrengo/backnumber/new.html

ワークルール読本2014夏

「過労死ゼロ」へ 労働時間規制を考える

■日本の労働時間規制 3つの大誤解を解く

濱口桂一郎 JILPT主席統括研究員

■安倍「雇用改革」3つの大矛盾を解く

毛塚勝利 中央大学法学部教授

■労政審における論点と連合の対応

新谷信幸 連合総合労働局長

中身は、本日も都内某所でお話ししてきたことと同じです。

そこでも申し上げたように、私は全く同じことを、経団連に呼ばれても連合に呼ばれても、どこに呼ばれてもお話ししてきております。

●目的は労働者の健康と安全の保護
 
 「新しい労働時間制度」創設の具体的な検討の場は、三者構成の労働政策審議会。審議に臨むにあたっては、労働時間規制の基本となる考え方をもう1度押さえておくことが重要だ。
 私が、労働時間規制を考える上でベースにしているのは、EUの労働時間指令だ。その目的は「労働者の健康と安全の保護」におかれ、「実労働時間規制であること」「安全衛生規制であること」「賃金規制ではないこと」という3つの特徴がある。
 実労働時間規制には、「最長週労働時間」「週休」「毎日の休息期間」があるが、いずれも物理的に働く時間を規制するもので、賃金に関する規定は一切ない。第6条「最長週労働時間」には、「時間外労働を含め、48時間を超えないこと」と書いてある。つまり、週48時間が上限で、そこで時間外労働はストップとなる。「週休」も働いてはいけない「絶対休日」だ。「毎日の休息時間」は「継続した11時間の休息期間(rest period)を得る権利を確保する」というもの。それが不可能な職務であっても、「同等の代償休息期間」が与えられなければならないとされている。
 「最長週労働時間」については適用除外(オプトアウト)が可能で、イギリスなどでは雇用契約締結時にオプトアプトが組み込まれていることも多い。しかし、それでも、週休と毎日の休息期間は適用されるから、24時間×7日から11時間×6+24時間を引いた78時間が週労働時間の絶対上限として機能する。また、「全面適用除外」の条項もあるが、対象となる「経営管理者その他の自律的な意思決定権限を有する者」は厳格に判断されていて、「一部自律的な働き方をしている」という程度では対象外だ。
 このEU指令とまったく異る性格を持っているのが、アメリカの公正労働基準法だ。物理的労働時間規制はなく、あるのは「週40時間を超えたら50%の時間外手当を支払え」という賃金規制だけであり、その適用除外制度がホワイトカラー・エグゼンプションだ。これに対し、EU指令のオプトアウトは、物理的労働時間規制の適用除外であって、手当の支払いは一切関係ない。ここを混同してしまうと、議論が混乱するので注意が必要だ。
 
●安全衛生規制であった工場法
 
 さて、基本的な頭の整理ができたところで、日本の労働時間規制をめぐる3つの大誤解を解きほぐしていこう。よく言われてきたのが、「日本の労働時間規制は厳しい」「労働時間の規制緩和はワーク・ライフ・バランスに役立つ」「残業代ゼロ法案はけしからん」。しかし、この3つはいずれも間違いだ。
 第1に、日本の労働時間規制は本当に厳しいのか? 
 最初に日本の労働基準法は、EU労働時間指令とアメリカ公正労働基準法、どちらのタイプなのか確認しておこう。その前身である工場法は、1911年に制定され、女子と年少者の深夜業を禁止するとともに、就業時間を1日12時間に制限した。製糸工場などで働く女性たちに、長時間労働による慢性疲労や結核などの病気が広がっていたからだ。つまり、日本でも、労働時間規制は安全衛生問題であり、手当を払うか払わないかという賃金規制とはまったく別問題だったのだ。1919年に採択されたILO第1号条約も、その観点から「1日8時間、1週48時間」という上限を定めた。
 戦後1947年に制定された労働基準法には、32条で「1日8時間、1週48時間」の法定労働時間が定められた。しかし、36条で労使協定を締結すれば、青天井で時間外労働を認める仕組みが入った。そのため工場法がもっていた安全衛生規制という性格が薄れ、法定労働時間は「ここから時間外労働が始まる」という賃金計算上の「区切り」になっているのが実情だ。逆にいえば、物理的な規制が緩められたために割増賃金が意味を持つという構図になっている。さらに1990年代以降は、労働時間の弾力化が労働時間法制の中心課題となり、「いかに割増賃金を払わなくていい部分を増やすか」という観点から様々な制度が検討されてきた。
 つまり、日本は、労働時間規制が厳しいどころか、アメリカと並んで世界で最も規制の緩い国の1つであり、約百年前に採択されたILO第1号条約さえ、いまだ批准できずにいるのだ。その事実をまず認める必要がある。
 
●賃金規制か、安全衛生規制か
 
 第2に、労働時間規制を緩めるとワーク・ライフ・バランスが推進されるのか?
 産業競争力会議が提出したペーパーは『「子育て・親介護といった家庭の事情等に応じて、時間や場所といったパフォーマンス制約から解き放たれて、これらを自由に選べる柔軟な働き方を実現したいとするニーズ、特に女性における、いわゆる『マミー・トラック』問題の解消」に役立つと説く。この大誤解も、労働基準法の法的性格に対する根本的な誤解に由来している。言うまでもなく、法の名宛人は使用者だ。「使用者は1日8時間、週40時間以上働かせてはならない」と書いてあるが、労働者に対して「1日8時間、週40時間働きなさい」とはどこにも書いてない。法定労働時間より短く働くことも、働かせることも、現行法で十分可能だ。労働時間規制の適用除外は、労働時間を長くすることに対してのみ意味を持つ。女性の活躍促進はいいことだが、それを大義名分に適用除外を拡大する必要性はまったくない。
 第3に、「残業代ゼロ法案」という批判はなぜいけないのか? 現状において、残業に対する間接的な規制として唯一機能しているのが、37条の割増賃金だ。しかし、日本における労働時間規制の適用除外を「残業代ゼロ」と表現するのは正しくない。アメリカの公正労働基準法は、賃金規定しか持たないから、ホワイトカラー・エグゼンプションは「割増賃金の支払いを免除する制度」と考えていい。しかし、日本の労基法は、あくまで安全衛生規制であり、物理的労働時間規制としての性格を有している。だから、労働時間規制の適用除外とは、37条の割増賃金の支払いだけでなく、安全衛生規制である32条の適用除外でもあるのだ。しかし、適用除外の拡大を「残業代ゼロ」という視点だけで批判すると、安全衛生規制の問題がむしろ押し隠されてしまう。働く人の健康と安全を守るために長時間労働を規制するという一番重要なことがむしろできなくなってしまう。これは「名ばかり管理職」問題を考えればわかりやすいだろう。本当は過労死寸前の長時間労働を強いられていることが問題なのに、いつのまにか残業代が払われないという問題にすり替わってしまう。2つの問題が一緒くたに議論されているために様々な矛盾が生じている。
 今回の「新しい労働時間制度」創設の真の目的が「割増賃金規制の合理化」なのであれば、経営側はそれをはっきり言うべきだろう。賃金の問題なら、基本的に労使が交渉して決めていけばいい話だ。
 しかし、健康と安全に関わる安全衛生規則は、労使合意があっても緩めてはいけないものだ。例えば建設作業において、労使が合意すれば安全靴やヘルメットを装備しなくていいということには決してならない。労働時間規制も同じだ。労使協定を結べば、割増賃金さえ払えば、何時間働かせてもいいという話ではないはずだ。労働政策審議会においては、賃金規制なのか、安全衛生規制なのか、その線引きを明確にした上で議論を進めていってほしい。
(連合第4回労働法研究会における講演より構成)

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