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ドイツは法律から残業代規制を削除したんですけど

もちろん、ドイツの政治の専門家だからといって労働法制の動向までいちいちフォローしているわけではないというのはよくわかりますが、それにしても、こういうのはいかにつぶやきでもいかがなものか、と。

https://twitter.com/ToruKumagai/status/478993807753904128

ドイツの知り合いに安倍政権が計画中の「残業代ゼロ」プロジェクトについて話したら、「そんなことを政府が勝手に決められるのか」と驚いていました。「ドイツだったら、国民が暴動を起こすだろう」とのこと。

もちろん、ドイツは1994年の労働時間法改正で、それまで法律上にあった時間外の割増賃金規制を削除しています。

http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2012/documents/0104_02.pdf

(11)時間外労働と割増賃金に関する規定

時間外労働は「特別な場合の例外」として認められている。具体的には、非常時11(「労働時間法(ArbZG)」14 条)と監督官庁の許可を受けた場合(「労働時間法(ArbZG)」15 条 1 項 1 号)、また、労働協約によって 1 年間に 60 日を限度として 1 日の労働時間を 10 時間まで延長する場合(「労働時間法(ArbZG)」7 条1項 c)に可能となっている。

1938 年労働時間令(AZO)では、時間外労働の割増賃金に関する規定が定められていたが、1994 年の労働時間改革の際に、労働時間規制の調整期間(弾力的労働時間)を認める代わりに時間外の割増賃金規制が法律上撤廃された。そのため現在の労働時間規制は、割増賃金ではなく、連続労働は最長 6 時間までとする「休憩時間」と 1 日(24 時間)に最低 11 時間の「休息時間(インターバル)」を設ける形で労働者の健康と安全に配慮している。なお、割増賃金について法令上の規定はないが、労働協約により所定労働時間を定め、これを超過して労働する可能性とそれに対する手当支給の有無を定めることができる。

つまり、ナチス時代に作られた労働時間令では、時間外労働に対しては25%の割増賃金を払えと規定されていたのが、1994年の新労働時間法では物理的時間の上限とインターバル規制のみに純化され、残業代というお金の話は労働協約に委ねています。

もし、上のつぶやきが残業代というお金の規制の問題で言っているのであれば、この人はドイツの20年前の改正を知らないの?という話になります。

もっとも、ドイツ人のことですから、そんなことではなく、労働法制に関わる話を、労働組合の入っていないところで「政府が勝手に決められるのか」という趣旨であれば、驚くのは当たり前ですし、「国民が暴動を起こす」というのもそれほどおかしなことではありません。

ことほどさように、ヨーロッパにおける文脈と日本における文脈は違うのです。

(追記)

まあそもそも、「特別な場合の例外」という趣旨に沿って、例外的に時間外労働を認めるような仕組みなっているという点が、彼我の法制の、というよりその実体的運用の最大の違いであるわけですが。

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コメント

追記に書かれている通り、残業というものが極めて例外的で、違反するとOrdnungsamtにチクられて経営者は禁錮刑も含む罪に問われるドイツです。
残業代ゼロという政策をドイツ人に投げかければ、熊谷さんのつぶやきのような反応が普通に帰ってくるはずです。

投稿: M_Igashi | 2014年6月21日 (土) 16時16分

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