辛うじて生きている物理的労働時間規制
日本では物理的労働時間規制はほとんど空洞化している、と繰り返し申し上げてきているところですが、元々の労働基準法が厳然たる物理的労働時間規制であり、36協定もあくまでもその例外措置に過ぎないという法律構造自体は何ら変わりはないので、やる気になればこういうこともできますという実例です。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20140612/666510/(月102時間の残業で営業停止、鹿島道路に異例の処分)
別に月100時間を超える残業で自動的に違法となる法規定があるわけではありませんが、この会社が結んでいた36協定の上限を超えていたのです。
国土交通省関東地方整備局は6月9日、鹿島道路(東京都文京区)を労働基準法違反による営業停止処分とした。
鹿島道路の広島営業所(広島県廿日市市)の元所長が2013年5月に営業所の社員に対して労使間で定めた協定の限度時間を超える時間外労働を行わせたとして、同社と元所長がそれぞれ同年12月24日に広島簡易裁判所から労基法違反による罰金20万円の略式命令を受け、14年1月11日に刑が確定している。
関東地整はこの問題が他法令違反による処分を規定した建設業法28条に該当すると判断。鹿島道路に対して、6月24日から26日までの3日間、中国地方(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)での営業停止を命じた。
関東地整が広島県内での問題に対して監督処分を行ったのは、鹿島道路が国土交通大臣許可を受けており、同社の本社所在地が同地整の管内にあるためだ。「時間外労働での労基法違反による営業停止は、関東地整では先例がない」(建設産業第一課)という。
具体的な36協定とその違反状況は、
廿日市労働基準監督署によると、問題が発覚したきっかけは鹿島道路が提出した「労働者死傷病報告書」。同報告書は、重大な労働災害などが起こった際に、労働安全衛生規則97条に基づいて事業者が提出するものだ。
鹿島道路では、13年5月22日に広島営業所の事務職の社員が勤務中に所内で倒れ、6月1日に死亡した。これを受け、同社が労基署に報告書を提出した。
廿日市労基署が死亡した社員の勤務状況などを調べたところ、労使協定で定めた時間外労働の限度時間を超えていたことが判明した。1日6時間の限度時間に対して、13年5月は1日当たり3分から2時間25分超過。1カ月の時間外労働が月100時間の上限に対して2時間1分超えていた。
そこで、同労基署は13年11月7日に、「労働者に対して違法な時間外労働を行わせた労基法違反の疑い」で鹿島道路と元所長を広島地方検察庁に書類送検した。
36協定にどういう上限を定めるかについては強行的な規定があるわけではありませんが、この会社は自分で1日6時間、1か月100時間という上限を設定していたので、それを超えると36条による免罰効果が消滅し、もとの32条が息を吹き返して、労基が送検し、営業停止処分に至ったと言うことです。
ということは、ここからあまり長い残業はさせないようにしようというまともな教訓を得る企業もあるでしょうが、こういう羽目にならないように1か月100時間などという短すぎる上限設定はやめてもっと長めにしておこうという教訓を得る企業もあるかも知れません。
いずれにせよ、これが現時点における日本国の物理的労働時間規制の状況です。
ちなみに、この記事に一番最初に付いたコメントが、
時間外労働手当は、きちんと支払われていたのでしょうか?
であるというところに、残業代ゼロしか問題にされない現代日本の姿が一番浮き彫りになっているという見方もありましょう。
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