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2014年6月16日 (月)

解雇正当事由説の役割

Tm_mjq1x5vcmupqrwようやく『季刊労働法』がとどきました。

http://www.roudou-kk.co.jp/quarterly/archives/006213.html

特集の「アベノミクスの労働政策を点検する」が注目であることはいうまでもありませんが、今号で是非目を通していただきたいのが、

■文献研究労働法学 第12回■
解雇規制をめぐる法理論
    労働政策研究・研修機構研究員 山本陽大

JILPT研究員の山本陽大さんの研究史の整理ですが、1990年代後半から現在までの解雇をめぐるさまざまな議論を上手くまとめています。

その中で、わたしの「解雇規制の法政策」について、的確な位置づけをしているので、紹介しておきます。この文章は、基本的には日本の解雇に関わる法制の歴史を淡々とたどったものですが、最後のところで若干の立法提言もしていまして、そこを取り上げているのですが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/kaikokisei.html(「解雇規制の法政策」『季刊労働法』217号)

・・・また、35濱口桂一郎「解雇規制の法政策」季刊労働法217号(2007年)173頁は、「権利濫用法理というのは・・・本来であれば通常に行使しうる権利の行使を例外的な状況に対応するために制限する法理」であるところ、解雇できるのが原則で解雇できないのが例外という我が国の解雇権濫用法理は、「権利濫用法理としては極めてアクロバティック」であることを指摘した上で、解雇規制立法にとって重要であるのは、「解雇権濫用法理によって保護しようとしてきた不当に解雇されないという労働者の利益を守ることであって、そのために使ってきた(本来必ずしもふさわしくない)道具立てを維持することではない」として、「使用者は、正当な理由がなければ労働者を解雇してはならない」とのルールを端的に規定すべきことを主張する。

もっとも、かかる35濱口の見解は、解雇の金銭解決の問題とも結びついており、その点では、34浜村とはやや異なる角度から正当事由構成を主張するものなのであるが、詳細については後述する。

・・・ところで、必ずしも在り方研報告書において構想された制度を念頭に置いているわけではないが、金銭解決を一律に認めないことに対して否定的な見方を示しているのが、35濱口である。濱口は「アクロバティックな権利濫用法理に立脚した解雇規制において、金銭解決の道を閉ざし続けることは、逆に金銭解決ならば許せるが復職させることはいかにも適当でないようなケースを、権利濫用に当たらず解雇有効と判断させる動因になる可能性すらある」ことを指摘した上で、「(正当事由構成を採用すれば)使用者はそもそも正当な理由がなければ解雇してはならないのであるから、正当な理由なく解雇すれば当然違法となるが、だからといって必ずしも解雇を無効にする必要はないわけで、違法な解雇に対して、あくまでも復職を求めるか金銭解決で決着させるかは、具体的な個々の事案によって個別的に判断させることがもっとも適切」であるとする。正当事由構成と金銭解決による解雇紛争処理とをリンクさせた議論を展開している点で、注目されよう。

と、あまり誰も注目しなかったポイントを取り上げて論評しています。

実を言うと、その後あっせん事案の分析などをやって、現実社会における金銭解決の姿を目の当たりに見たことで、私の議論の仕方も若干変わってきたりしていますが、話の筋そのものは7年前のこのときから変わっておらず、昨年産業競争力会議雇用人材分科会で提示した解雇規制の案も、その延長線上にあります。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/bunka/koyou_hearing/dai1/siryou2.pdf

第○条 使用者は次の各号の場合を除き労働者を解雇してはならない。
一 労働者が重大な非行を行った場合。
二 労働者が労働契約に定める職務を遂行する能力に欠ける場合。
三 企業経営上の理由により労働契約に定める職務が消滅または縮小する場合。ただし職務が縮小する場合には、解雇対象者は公正に選定しなければならない。
2  前項第三号の場合、過半数労働組合または従業員を代表する者に誠実に協議をしなければならない。

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