『新しい労働社会』第9刷
という間にも、岩波書店から『新しい労働社会』の第9刷目を出すことになったという連絡をいただきました。
5年前に始めてこの新書本を出してから、この間に4冊の新書を各社から出させていただきましたが、やはり最初に出したこの本が内容的にも一番凝縮して書いた記憶があります。
ロングセラーとして読み継がれていることについて、読み続けてきていただいた読者の皆様に心から感謝申し上げます。
なお、岩波書店の「男女共同参画週間」というホームページ上のフェアでも、この本が取り上げられていました。
http://www.iwanami.co.jp/keyword/gender.html
訪欧中にも、読書メーターにこの本の感想がアップされていました。「DSCH」さんです。
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/39164516
日本の雇用システムと労働政策について国際比較と歴史的考察によりさまざまな問題点が整理されている本書は、非正規雇用やワークライフバランス等について考える際のよりどころとして最適だと思う。企業別労働組合が従業員代表として全社員の利益を集約できていない点については、最近、大企業で非正規労働者を組合員とする動きが拡大しつつある中で、鋭い指摘であると感じた。また、労働政策審議会の三者協議による政策形成過程と経済財政諮問会議による政治との関係等、考えさせられる内容も豊富である。
また、「ブクログ」にも新たな感想がアップされています。「板橋区民」さんです。
http://booklog.jp/users/okm04635/archives/1/4004311942
日本型雇用慣行の成り立ちと、労働法からみた現代の雇用にまつわる諸課題を丁寧に解説してあり、非常に分かりやすい。
終身雇用、年功的職能給制度、企業別組合、ホワイトカラーの長時間サービス労働などはすべて’日本型雇用システム’を支える重要なパーツであり、すべてつながっている。従ってどれか一つだけ変えようとしてもうまく行かないことがよく理解できた。これらはある意味日本文化の本質とでも言うものであり、一朝一夕には変わらないだろうが、いずれグローバルスタンダードに収れんしていくように思われる。
いまは非正規労働者というカースト外の身分を作ってそこにしわ寄せすることで何とか外国勢と戦っているが、今後若年労働者が減少し、多くの老人を支えるべき高生産性を実現していくにはサステナブルなシステムではない。
なお、最新の『日本の雇用と中高年』に対しても、amazonでレビューが付いていましたが、こちらは旧著への書評もまとめてやっていただいているお徳用版です。「izagon」さんによる「著者の他の新書2冊とあわせて読めば、日本の雇用の現代史がわかる」という書評です。
この本で、日本の雇用の(現場での)あり方と、労働法制の現代史が分かります。戦中の総動員体制や、戦後の経済の発展と労働法制の変遷など、幅広く経済の現代史にも触れながら、現在の日本の雇用のスタイル(新卒採用からはじまり、ジョブローテーションや広域にわたる転勤、定年退職まで)の成立を説明しています。また、本書で、著者の主要な主張である「メンバーシップ型からジョブ型へ」という改善の方向が語られています。
若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす (中公新書ラクレ)
この本では、『日本の雇用と労働法』と同様に、日本経済と雇用、労働法制の関係について概要を確認しつつ、若者の雇用に焦点を当てています。さらに、本書では、若者を労働市場に送り込む側、つまり教育システムのあり方についても言及があります。子を持つ親、教育に関わっている人、企業の採用担当者、人材育成担当者には、ぜひおすすめしたい素晴らしい本です。
そしてこの『中高年』では、日本の雇用と社会保障の関係について述べられています。相変わらず著者の視野が広く、とても勉強になりました。著者が本書で繰り返しているのは、「無駄な世代間闘争をやめましょう」ということです。誰かが一方的に損をしていると考えて、誰かを罰すればよい、という考えではダメだ、というのです。どうしても「自分たちの世代は損をしているのではないか」と思ってしまいがちですが、本書は冷静に考えさせてくれました。ただ、これ(「メンバーシップ型からジョブ型へ」という提言)の実現には、なかなか時間がかかるだろうと思いました。その方向はとても納得がいくものですが、教育システム・社会保障システムとの関係まで考えるとなると、かなり大変そうです。だからこそ、多くの人に読んでもらい、考えてもらいたい。そう思いました。
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