本田由紀『社会を結びなおす』
本田由紀さんの『社会を結びなおす 教育・仕事・家族の連携へ』(岩波ブックレット)をお送りいただきました。
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2708990/top.html
50ページほどの小冊子なので、さらりと読めます。
版元HPに載っている本田さんのメッセージ(「はじめに」の一部ですが)に曰く:
私が本書を読者に提示したいと考えたのは,現在の日本において,過去への分析に基づいた将来の社会展望ではなく,粗雑な,しばしば事態をもっと悪化させるだけのように見える「改革」が,数多く進められているように見えるからです.たとえば,規制が機能していないところにさらに「規制緩和」と「自由化」を持ち込む,資源や手段が枯渇しているところにいっそうの締めつけや精神論を持ち込む,といった具合にです.あるいは,相互に矛盾するような「改革」が,思いつきのようにばらばらと実施されたりもしています.そうして必然的にうまくいかない状況をごまかすために,社会の内外にわかりやすい「原因」や「敵」を無理矢理見つけ出して叩くことでうっぷんを晴らそうとするようなふるまいが,「強い人」の中にも「弱い人」の中にも広がっているように見えます.
これでは何も良い方向に進みません.それどころか,混迷や窮状は深まるばかりです.もっと社会を広々とよく見渡して,もつれや凝り固まりをもみほぐし,破れ目につぎをあてる,冷静で地道な営みがどうしても必要です.そのための見取り図を描きたくて,私は本書を書きました.
この一節は、今日の「改革」を巡る議論の状況を見事に捉えていると思いました。
まさに「過去への分析に基づいた将来の社会展望」が欠落した「粗雑な」「改革」が「しばしば事態をもっと悪化させ」ているからです。
確かに「改革」は必要です。しかし、それが「過去への分析」なき盲目のまま、「社会の内外にわかりやすい「原因」や「敵」を無理矢理見つけ出して叩くことでうっぷんを晴らそうとするような」デマゴーグに引っ張られる形で行われるならば、事態を悪化させるだけ、ということこそ認識しなければなりません。
そういうデマゴーグの実例は、私のまわりで私への罵倒のみを生きがいにしているような人々の哀れな姿を見るとよくわかるでしょう。
何にせよ、さらりと読める良書ですので、書店で気軽に手に取ってください。
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