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2014年5月10日 (土)

大内伸哉『雇用改革の真実』

262483大内伸哉さんの新著『雇用改革の真実』(日経プレミアシリーズ)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.nikkeibook.com/book_detail/26248/

雇用制度改革の議論が盛んだが、誤解や偏見に基づく意見が多い。どうすれば皆が働きやすくなるのか。気鋭の論者が解雇規制など注目テーマを取り上げ、問題の本質を明らかにし、あるべき働き方のルールを提示する。

大内節、ますます好調、というところですが、読んで違和感を感じるところも結構あります。

それは何かと考えると、労働法学の正統なバックグラウンドにもとづくあまりにも法解釈論的な記述と、その上に乗っかった経済理論に引っ張られた政策論的な記述とが、やや密接な論理的関連の薄いままにつなげられすぎている感があるからではないかと感じました。

前者がなければ、それはそれで政策論としては素直に読めるのですが、そしてそこから既存の法をどう解釈するかということとは一応切り離した法政策論が展開できる面もあるのですが、そこを前者の法解釈論が抑制するので、既存の規制の緩和は経済合理性に基づいて大胆に主張する一方でそれに伴って導入されるべき新たな規範理論に対しては既存の解釈論で慎重な姿勢になるという、なんだか都合のいい議論になっている印象を読者に与えてしまうのではないかと思うのですね。

あとそれから、これは多分出版社の意向が強く働いているのだろうと思いますが、章のタイトルがあまりにもぎらつきすぎで、実際に書いてあることとかなり乖離があります。

第1章 解雇しやすくなれば働くチャンスが広がる

第2章 「限定正社員」が働き方を変える

第3章 有期雇用を規制しても正社員は増えない

第4章 派遣はむしろもっと活用すべき

第5章 政府が賃上げさせても労働者は豊かにならない

第6章 ホワイトカラー・エグゼンプションは悪法ではない

第7章 育児休業の充実は女性にとって朗報か

第8章 定年延長で若者が犠牲になる

中で言われていることの半分くらいは、実は私の意見と同じです。しかし、私だったらその中身にこういう章タイトルはつけないし、編集者がつけたいと言っても拒否するでしょう。

とりわけ最後の「定年延長で若者が犠牲になる」は、思わず、

いつから城繁幸の亜流になったんだ!?

と言いたくなるタイトルですが(ですから多分編集者のアイディアだと思うのですが)、実は中で書かれているのは、わりとまっとうなことなんですよ。

この章で書かれていることは、私の近著『日本の雇用と中高年』と相当程度重なるので、是非読み比べてもらいたいのですが、認識としてはかなり共通するところがあります。

・・・高年齢者にも、定年後も引き続き戦力として働いてもらう必要があるし、若年者はいきなり戦力として働くことが求められる。・・・

・・・実力主義の広がりは、良好な雇用機会から排除される傾向にあった人たちにとってチャンスの到来を意味する。・・・

実力主義が徹底されたとき弱者に転落する可能性があるのは、若年者である。若年者は仕事の経験が少なく、企業に即戦力として雇われる可能性は低い。これまでのように企業内で長期的に時間をかけて育成してもらえるならば、企業に貢献できる期間が長い若年者は有利となるはずだが、即戦力として直ちに企業に貢献しなければならない状況だと、若年者はたちまち不利になってしまう。

まさにそうなんですが、それを城繁幸流の「定年延長で若者が犠牲になる」などという全く違う認識枠組みの表現のタイトルの下に置くいわれは全くないように思われます。

まあ、これは編集者を責めるべきことなのでしょう。なんだか大内さんの本に対しては、編集者のタイトル感覚を責めるエントリが多いようですね。

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コメント

解雇しやすい=雇用しやすいは大ウソです。
解雇規制の厳しい欧州の国で、正社員を解雇しやすくしたら未経験の若者は採用されず、むしろ逆に若者失業率は大幅悪化しました。経営者は未経験の若者を育てるより失業した経験者を選んだ。アメリカでは「お前は火だ」といわれたら即時解雇。ロックアウト解雇も横行し、労働者は解雇に怯えて無理難題を押し付けられ疲弊しています。解雇しやすいアメリカではコネばかり盛んで、実力主義なんて技術者だけの世界。
経団連の顧問である大内氏の主張は嘘ばかり。信用に値しない。

「お前は火だ」というのは" You’re fired!"ですな。

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