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2014年5月15日 (木)

「改正労働契約法への反応が浮かび上がらせる日本型正社員感覚」 @『月刊社労士』5月号

『月刊社労士』5月号の「論点焦点」に、「改正労働契約法への反応が浮かび上がらせる日本型正社員感覚」を寄稿しました。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/sharoushi1405.html

改正労働契約法への否定的反応
 一昨年に改正され、昨年4月に施行された労働契約法の有期契約法制について、各方面から反発が相次ぎ、部分的な修正が相次いでいる。官邸に設置された国家戦略特区ワーキンググループに昨年5月出された「規制改革事項の提案趣旨」には、「一定期間を経過した有期雇用は、終身雇用に切り替えない限り、打ち切りにすることを雇用者に義務付けている」という奇妙な認識をベースに、「有期労働契約期間(5年)の延長」(契約型正規雇用制度の創設等)が提起されていた。
 昨年10月に日本経済再生本部が決定した「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」において、「有期雇用の特例」として、「例えば、これからオリンピックまでのプロジェクトを実施する企業が、7年間限定で更新する代わりに無期転換権を発生させることなく高い待遇を提示し優秀な人材を集めることは、現行制度上はできない。したがって、新規開業直後の企業やグローバル企業をはじめとする企業等の中で重要かつ時限的な事業に従事している有期労働者であって、「高度な専門的知識等を有している者」で「比較的高収入を得ている者」などを対象に、無期転換申込権発生までの期間の在り方、その際に労働契約が適切に行われるための必要な措置等について、全国規模の規制改革として労働政策審議会において早急に検討を行い、その結果を踏まえ、平成26年通常国会に所要の法案を提出する。」と書き込まれた。これに基づき、昨年11月に国家戦略特別区域法案が国会に提出され、昨年12月に成立した。
 これを受けて、労政審労働条件分科会では有期雇用特別部会を設け、審議を始めた。なお、経営側から2012年改正高齢法による65歳までの継続雇用についても、60歳から65歳まで有期契約を更新した結果無期化することを防ぐ措置を求める声があり、職業安定分科会に高年齢者有期雇用特別部会を設けて、合わせて審議することとされた。労働側からは、現行労基法14条でも7年間のプロジェクトのために7年間の労働契約を締結できるのではないかというもっともな疑問が提示されたが、結論先にありきであった。
 結局今年2月に、一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期契約労働者について、プロジェクトの完了までは無期転換申込権が発生しない(ただし10年を超えると無期転換申込権が発生する)こととする旨の建議を行い、今月に改正法案を国会に提出した。法案では、事業主が計画を作成し、厚生労働大臣の認定を受けることをその要件としている。
 
実は極めてヨーロッパ的な法律
 このような否定的な反応が発生するそもそもの根源は、実は(多くの人々の想定とは逆に)改正労働契約法が日本的な法律ではなく、極めてヨーロッパ的な法律であることにある。周知の通り、EUではパート、有期、派遣といった非正規労働についてそれぞれ指令を設け、すべての加盟国の法律となっている。このうち、有期労働指令は、無期労働者との均等待遇を定めるとともに、有期労働の反復更新による濫用を防ぐため、一定期間ないし一定回数の上限の設定を求めている。各国は国内法でそれぞれの上限を定め、それを超えた場合には有期契約が無期化することとしている。これは欧州のグローバルスタンダードである。
 今回の改正労働契約法は、このEU指令に極めて近い法制である。どこがそうか?有期契約の対概念と無期契約としているところである。当たり前ではないかと思われるかも知れないが、日本ではそうではない。日本のこれまでの非正規労働法制は、伝統的日本型正社員を所与の前提においたすぐれて日本型の非正規労働法制だったのである。改正法への反発の原因は、この非正規労働法制の文脈のずれにある。
 特殊日本型非正規労働法制の典型はパート法である。パート法におけるパートタイム労働者の対概念は何だろうか?EU指令と同じくフルタイム労働者だろうか。違うのだ。「通常の労働者」なのである。これは、日本型正社員の法律的表現であって、「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が・・・変更すると見込まれる」ことが要件である。それゆえ、同一の範囲で職務内容と配置が変更されると見込まれるパートのみが差別禁止の対象となる。
 改正労働契約法には、「通常の労働者」などという概念はでてこない。欧州型非正規労働法制たる所以である。ところが、これを特殊日本型システムの眼鏡を通して見ると、奇妙奇天烈なことになる。
 
日本型正社員感覚に満ちた経済評論家諸氏の批判
 彼らの目には、改正労働契約法18条は、有期を5年反復更新したら「正社員」にしなければならないというばかげた法律に見えたのであろう。人材活用の仕組みが違うのに、5年経ったというだけで「正社員」にできるはずがないではないか!
 圧倒的に多くの経済学者や評論家がそう思い込んでいるようである。しかもそういう人々ほど、「正社員は解雇できない」という(判例法理の局部的理解による)誤ったイメージで語る傾向にある。こうして、法律にはまったく書かれていない「正社員化」強制法という奇怪なイメージが、上記改正への動きを駆動している。
 しかし、改正労働契約法18条が求めているのは、「有期契約」を「無期契約」にすることだけである。人材活用の仕組みをどうするかは別の話である。無期化しても、「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が・・・変更すると見込まれる」ように変える必要はない。つまり、「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が・・・変更」されない無期契約労働者があってもいいし、むしろそれが望ましい場合もある。日本型正社員ではない無期契約労働者とは、ヨーロッパではこちらこそ形容詞の付かない通常の労働者だが、日本では有徴の「限定正社員」とか「ジョブ型正社員」と呼ばれ、「解雇しやすい労働者」などと曲解されることすらある。
 では、労働契約法18条、ひいてはそのもとになったEUの有期労働指令の目的は何なのか?端的に言えば、無期契約であれば解雇規制(言うまでもなく、解雇禁止ではなく、解雇には正当な理由が必要ということ)がかかるのに、有期契約を反復更新することで、雇止めという形でそれを潜脱することを防止することにある。期間満了と言うだけで正当な理由なく雇用終了されることを防ぐことがアルファであり、オメガであって、それ以上でもそれ以下でもない。「正社員」並みの(職務内容や配置の無限定と引き替えの)手厚い雇用保障を与えることではない。
 とかく日本型雇用システムを目の敵にして解雇自由を叫ぶような人々に限って、自分の目の中にある無意識の日本型正社員意識には無反省で、そういう偏見から自由なヨーロッパ型の非正規労働法制に対しては、自分たちの偏見を露呈するような奇怪な批判を繰り広げるという、まことに皮肉きわまる事態が展開した過去1年であったといえよう。 
 
社会保険労務士に求められること
 このように、労働政策が世間の注目を集めるようになればなるほど、労働法制への基本的リテラシーを欠く学者や評論家の議論が横行するようになり、それが政策の行方を左右することもある。このような中で、現場の企業労使が妙な議論に動かされることなく、的確な対応を行っていく上では、社会保険労務士の役割はますます大きいものがあろう。
 今回の労働契約法改正への対応についていえば、法が求めているのは有期契約を無期にすることだけであり、その前提の上でどのような雇用形態を構築していくべきかは、挙げて個別企業労使に委ねられているという事実をきちんと伝えることがまず何よりも重要であろう。そしてその上で、既にいくつもの企業が先行的に進めている多様な正社員の在り方について、個別企業の実情に応じて的確なアドバイスをしていく積極的な行動が求められると思われる。そのような能力のある社会保険労務士にとって、これからの数年間は極めて重要な時期になるのではなかろうか。

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コメント

正社員にするしない以前の話で「労働者が無期労働契約への転換申し込みをすれば、使用者がその申し込みを承諾したものとみなされ…」のところ、つまり「有期契約を無期にすること」そのものを、会社は嫌がっているのだと思っていましたが、ちがうんでしょうか。
いくつか労働関連のサイトやブログを見ていますが、ここのブログが最もわかりにくいと個人的に思っている者ですので、読みが足りなかったらお許しください。

それは突き詰めると、「こういう理由であなたを解雇します」と言いたくないというただ一つのことに集約されるわけです。理由を言わずに、ただ期間が満了したと言うだけで雇用を終了したい、と。改正法への反対は純粋の中身としてはそれだけであって、それ以上は何もないということを上の文章は主張しています。

つまり正当な理由を示すことなく自由に解雇をしたいという権利です。

それが、それだけがあれほど大騒ぎして断固として守らなければならないほどの重大至極な権利であると考える人にとっては、それ以上言うべきことは何もないと思います。

もっとも、18条の次の19条で、解雇をすり抜けてもやはり雇い止め自体に対する規制はつきまとうので、ほんとに完全に自由になるわけではありません。

という至極単純なことを言っているつもりなのですが、それが「わかりにくい」というのは、いったい「わかりやすい」議論とはどんなものなのだろうかと思わざるを得ません。

自分たちで「定年まで雇い続けますよ。その代り何でもさせるしどこへでも転勤してね」という契約をしておきながら、「解雇しにくいのは法律のせいだ」というから大変なのですな。
で、社労士もおおよそはそういう考えなので、「では4年以内の契約社員を活用しましょう」という提案をすることになるのでしょう。企業としてはいかに従業員の出入りを簡単にするかが重要で、それを手伝うのが社労士ですから。

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