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志學館大学法学部入学試験問題(法ビジネス学科)

問題 次の文章を読んで、設問に答えなさい。

コース別雇用管理
 男女別扱いが大前提の日本の企業社会に対し、一九八五年に制定された男女雇用機会均等法は一定の変化を求めました。その結果生み出されたのが「コース別雇用管理」という仕組みです。これは、「総合職」と呼ばれる基幹的な業務に従事する「職種」と、「一般職」と呼ばれる補助的な業務に従事する「職種」を区分し、それぞれに対応する人事制度を用意するというものです。この「職種」という言葉は、驚くべきことに男女雇用機会均等法の第六条(「労働者の職種及び雇用形態の変更」)にまで出てきます。日本国の法律は、ジョブの中身とはほとんど関係のないコースの違いに「職種」という言葉を用いているのですね。外国人に聞かせたら、それだけで小一時間くらい話のネタになりそうな規定です。
 それはともかく、このジョブと無関係な「職種」概念は、要するにそれまでの男性正社員の働き方と女性正社員の働き方をコースとして明確化しようとしたものでした。ただ、男女均等法制に対応したものにするために、女性でも総合職になれるし、男性が一般職になることもあり得るという仕組みにしたわけです。
 実際には、総合職にて転勤に応じられることという条件がつけられることが多く、家庭責任を負った既婚女性にはこれに応えることは困難でした。やがて企業の人事管理も変わっていき、それまで一般職正社員という形で採用していた女性たちを、派遣労働者その他の非正規雇用形態に切り替える傾向が出てきました。正社員の少数精鋭化が進められる中で、女性一般職という存在自体、存在を許されない贅沢と見なされるようになっていったのかもしれません。

「一般職」からジョブ型正社員へ
 しかし、改めて考えてみれば、職務が限定的で配置転換の可能性もほとんどない一般職というモデルは、結婚退職などといった公序良俗に反する慣行を前提にしていることを別にすれば、実は欧米社会でそれこそ一般的な労働者の姿そのものです。まさか、だから「一般職」と名付けたわけでもないのでしょうが、そういう「一般的」な労働者の在り方があまり認められない、とりわけ男性にはほとんど許されないというのは、日本の労働社会がいかに「一般的」でないかを雄弁に物語っているようでもあります。
 この感覚は二〇一〇年代の日本でもなお強固に残っていると見え、「日経ビジネスオンライン」に同年4月に掲載された「ゆとり世代は男子も「一般職」」という記事では、冒頭から「一般職に、男ですよ」と揶揄的な調子で、「遠方への転勤がないから」という理由で一般職を志望した男子学生に対し、「一般職に応募する男性は、まず採用しない」と批判しています。一方でワーク・ライフ・バランスといった言葉を踊らせていても、本音では伝統的な無限定社員のみを求める企業社会の姿をよく示すエピソードと言えましょう。
 しかしここであえて一般職といういささか古くさく見える概念を持ちだしたのは、それを若干修正することで、欧米社会で一般的な労働者の姿を日本の既存のシステムの中に見いだすことができるかもしれないからです。ジョブ型正社員というモデルをいささかの誤解を恐れずに近似的に表現するならば、それは男性も女性もデフォルトで一般職になれるようにしようよ、ということになるのではないでしょうか。これは、反復更新された有期契約からの道筋と並ぶ、もう一つのジョブ型正社員への道と位置づけられるように思われます。

問 男性が一般職になることが特別のことではない社会を実現するという考え方についてのあなたの考えを、800字以内で述べなさい。

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コメント

え……難しすぎw
高校生困りそう(笑)
他の問題で前提知識を出してフォローしてればいいけど、私だったら問題文が理解できなかったと思う。きっと一般職と総合職の違いがイメージできない。それと、「ジョブ」は、「メンバーシップ」と比べないとわかりにくそう。どうせなら、もっとわかりやすく説明してほしいと思った(笑)

この問題を入試で出すこと自体は面白いと私は思う、新しいから(^^)!

投稿: さやか | 2014年5月 8日 (木) 10時48分

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