フジ三太郎と島耕作
最近割とソーシャル系づいている『現代思想』ですが、4月号は「ブラック化する教育」特集だそうです。
目次は下の通りですが、やはり面白かったのは仁平典宏さんと牧野智和さんの対談「「人間力」と冗長性のはざまで」でした。
人間力シューカツの問題については既に耳タコ的に論じられていますが、ここで仁平さんが提起するのは、(今野晴貴さんのブラック企業の定式化に続けて)
・・・ただ一方、このメンバーシップ型雇用は「ダメ社員」の存在も実質的に容認するという形でも機能していました。そこは私は面白いところだと思うのです。もちろん、それは女性と非正規労働者という多大な犠牲の上に成り立っていた冗長性で、その点は擁護できない。ただ、ジョブ型とメンバーシップ型では包摂と排除の線引きの仕方が異なりますが、「モーレツ社員」と共にグダグダしたやつもいるというメンバーシップ型の包摂の形自体は、個人的に興味深い。この20年間は、そこの部分がごっそりなくなって、冗長性に対する憎悪が先鋭化した時期だったと思います。・・・
そう、この話は、私も講演なんかでは、昔は「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだぁ~」てな歌もあったくらいでね、と喋ったりするんですが、どうしても日本型雇用というと島耕作モデルで語りがちになってしまうんですね。
この仁平さんの語るメンバーシップ型「ダメ社員」って、同じ漫画の世界で言うと、フジ三太郎モデルとでもいうべきでしょうか。もちろん、こいつスケベでズルで、情けない奴ですけど。そういう観点から改めて議論してみるといろんなものが違った風に見えてくるかも知れません。
ブラック化する教育
【討議Ⅰ】
「教育再生」の再生のために / 大内裕和+斎藤貴男+佐藤学【概論】
教育商品化の現在 / 佐々木賢【インタビュー】
「教育再生」の再生のために 高校中退と定時制高校から / 青砥恭【改革の方向性】
高大接続と大学入学者選抜のリアル / 児美川孝一郎
首長主導と国家統制強化の教育委員会制度改革を問う / 中嶋哲彦【学校「内」/「外」の現場から】
「俺のとは違うなぁ」 学校に臨場すれば見える「アベ暴走教育改革」のアウト! / 岡崎勝
「いびつ」な学校に臨んで 教員「わいせつ行為」「処分」からみえてきたもの / 赤田圭亮【教科化へのポリティクス】
なぜ英語教育は混迷するのか 混迷からの脱却をめざして / 大津由紀雄
『私たちの道徳』の「私たち」とはだれなのか? 権利と自由を自制して、「我が国を愛する態度」を示すということ / 三宅晶子【東アジアの〈学校〉】
歴史教科書問題考察の原点 / 大串潤児
朝鮮学校の現在 / 金泰植【教育の「貧困時代」】
教育家族の逆説 / 矢野眞和
グローバル競争時代の能力論・人材養成論と内面統治の国家主義 / 中西新太郎
専任イス取りゲームをこえて 大学に背をむける非常勤講師たち / 熱田敬子【討議Ⅱ】
「人間力」と冗長性のはざまで / 仁平典宏+牧野智和【教育と「生」活】
「東京」に出ざるをえない若者たち 地方の若者にとっての地元という空間 / 山口恵子
二八になってしまいました 高卒一〇年目の若年単身女性たち / 杉田真衣
« いまこの本推してるんです | トップページ | 土田道夫『労働法概説[第3版]』 »
コメント