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2014年4月23日 (水)

市場主義の時代は終わったのか続いているのか?

『労基旬報』4月25日号に掲載した「市場主義の時代は終わったのか続いているのか?」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo140425.html

 筆者は2004年度以来、毎年東京大学公共政策大学院で「労働法政策」という講義を担当してきている。講義を始めたとき、労働法の教科書は山のようにあっても、労働法政策を論じた本などほとんど存在しなかったので、約半年かけて講義用のテキストブックを執筆した。それが『労働法政策』(ミネルヴァ書房、2004年)である。その内容は、大部分が行政関係者の手になる立法時の解説書の内容をかみ砕いて分野別かつ時系列に並べ、全体として日本の労働法制の発展史が浮かび上がってくるようにしたものである。残念ながらあまり本が売れないために増補や改訂の機会はなく、一方出版以来の10年間に労働法制は以前にも増して激動の時期を経験したため、内容は古くなりすぎてしまっている。

 ただ、立法の歴史については、各章・節ごとにその後の推移を書き足していけばアップデートできる。実際、数年前からは、受講者に本を買ってもらう代わりに、アップデート版を電子ファイルで配布し、それに基づいて講義を行っている。2012年度から講義を始めた法政大学公共政策大学院でも、同様のやり方をしている。一般読者には届かないが、これはこれで解決方法ではある。

 しかし、同書の中でアップデートしてきていない部分がある。それは総論に当たる「近代日本労働法政策の諸段階」という章である。筆者はこの章で、近代日本の労働法政策を20年ごとに時代区分した。その時代区分は、おそらく他の歴史書ではまずお目にかかれないような、筆者独自のものである。すなわち、1910年代半ば以前を労働法政策の準備期、1910年代半ばから1930年代半ばまでを自由主義の時代、1930年代半ばから1950年代半ばまでを社会主義の時代、1950年代半ばから1970年代半ばまでを近代主義の時代、1970年代半ばから1990年代半ばまでを企業主義の時代、そして1990年代半ばからを市場主義の時代と名付けて、各時代の特徴を明らかにした。

 この時代区分にも議論の余地はいっぱいあるだろうが、ここでは最後の市場主義の時代がその後どうなったのかが問題である。同書出版当時は小泉改革の全盛期であって、あと10年くらいはこの傾向が続くだろうと思っていた。科学的根拠のない20年周期説によって、2010年代半ばまでが市場主義の時代で、いい加減その頃になると世の中の雰囲気も変わってきて、逆の方向に向かいだしているのではなかろうか、と想像していたわけである。

 ところが、世の中はそう予想通りには動いてくれなかった。小泉後の安倍、福田、麻生の3政権の労働政策は、市場主義の流れの延長線上とは言いながらかなり労働者保護的な方向に傾きを示し、その後の民主党政権はかなり明確に反市場主義的な政策を打ち出した。その背景には2008年のリーマンショックによって、市場主義政策への批判が社会に広まったことがある。2010年代半ばまで健在のはずの市場主義がいささか尻すぼみ気味になったのである。

 さらに話を複雑にするのは、民主党政権の失政等もあり、2012年末の総選挙で自公両党が政権に復帰し、第2次安倍内閣のもとで、再び市場主義的に見える労働政策が推進されてきていることである。現在、2014年、当初の予想ではそろそろ市場主義の時代に幕が下りる頃だったはずが、幕引きを急ぎすぎて転んでしまって、結局幕が引けず、市場主義の時代の第二幕目を上演することになってしまっているのであろうか。それともそれは最後の炎が燃え上がっているだけで、やはりそろそろ市場主義の時代は終わろうとしているのだろうか。

 筆者の20年周期説が否定されたことはいいのだが、今がどういう時代であるのかの方向感覚が失われてしまったことは残念である。読者はどうお考えだろうか。

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